妖精達と歩む大空   作:グリーン

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エルフマンVS.バッカス!お気にいりが800件を越えていました。本当にありがとうございます。


兄として、弟として

-Bチーム観覧席

 

ツナが観覧席に戻った時観客のざわめきが大きいことに首を傾げる。闘技場を見ると、ラミアスケイルのトビーが一人で立っていた。

 

「何なの?この騒ぎは?」

 

「あ、ツナ!お帰りなさい。ラミアスケイルのトビーとレイヴンテイルのクロヘビのバトルなんだけど……」

 

「レイヴンテイルのクロヘビが競技で魔力を使い過ぎた為棄権したんです」

 

「アイツ魔法使ってたか?」

 

「…多分だけどこちらに手の内を見せないようにしたんだと思う。恐らく目的の為にね……」

 

「ギヒッ!なるほどな……」

 

「ガジル…医務室に行かなくていいの?」

 

「フン!サラマンダーとは違うんだよ!」

 

「そろそろ次の組み合わせが発表されると思います。ガジル君じゃなければいいんですけど…」

 

「おいジュビア!俺はいつでも行けるぜ!」

 

「まぁ多分今日はガジルの出番はないよ」

 

(ほっ……)

 

『さあ以外なことになった第一試合!!続いて第二試合はクワトロケルベロスのバッカス!!』

 

大歓声が巻き起こる。

 

『対するはフェアリーテイルA……』

 

 

-貴賓席

 

アルカディオスが待つ貴賓室に国王陛下が護衛と共に現れた。

 

「ほっほーう、ちゃんと組み込んでくれたのだな。楽しみじゃろうバッカスVS.エルザ!これは間違いなく良き試合になる」

 

「え?い…今エルザ…と申されましたか?わ…私が組んだのは……」

 

『エルフマン!!』

 

「なんじゃとーー!!儂が見たかったのはバッカスVS.エルザじゃぞ!こんなのは勝負にならん!バッカスの圧勝に決まっておる!!」

 

「で…でしょうな……申し訳ありません……不覚」

 

しかしアルカディオスの勘違いもある意味仕方ない。何しろフェアリーテイルの変身する者でエルがつく者としか聞いてないからだ。

 

変身する者でなく換装する者にするか若しくは性別を確認しておけば間違えなかっただろう……

 

 

-闘技場

 

エルフマンはエルザと互角という前情報により肩を落としながら闘技場へと向かう。これまでのフェアリーテイルの活躍に応援する者も少なくない。ブーイングはもう聞こえなくなっていた。バッカスが寝転びながら声をかける。

 

「なぁ盛り上げる為にいっちょ賭けをしねぇか?お前の姉ちゃんと妹えれぇ美人だよなぁ……俺が勝ったら一晩貸してくれや。両方一緒に」

 

エルフマンの顔に怒りの表情が浮かぶ…ミラもツナの腕をギュッと握り、リサーナも顔を赤くして震えている。

 

「お前が勝ったら…そうだなぁ……」

 

(おとこ)……(おとこ)として許せんことがあるぞ猟犬…砕け散れ!」

 

「商談成立ってことでいいんだな?魂が震えてくらぁ」

 

 

-Bチーム観覧席

 

「またしても女性を賭けの対象にする男…エルフマンものってどうするんだよ……」

 

「つ…ツナ……」

 

「大丈夫だよ。仮に…そう万が一エルフマンが負けても約束を守る相手が行方不明になるから約束は履行されないからね」

 

「そうよね……」

 

笑顔で恐ろしいことを話すツナとその言葉に安心するミラに戦慄するBチームの残り3人。

 

「つ…ツナさん……ミラさん……」

 

「イカれてるぜ…」

 

「さすがは元マフィアのボスってことか…(つか昔のミラの性格考えたらお似合いかもな…)」

 

「「何か言った?」」

 

「「「いや!何も!!」」」

 

「そう……ツナ、エルフマンは勝てると思う?」

 

「そうだね。きっと勝てるよ」

 

「それって勘?」

 

「いや…エルフマンは家族を守る為に戦う時には実力以上を発揮するからね。だから信じよう」

 

「うん……」

 

闘技場ではエルフマンがビーストへと変身して猛攻を加えていくがバッカスはそれを不規則な動きで躱していき、魔力を込めた強力な体技でダメージを与えていく。

 

「あれは酔拳の派生技だね」

 

「動きが捉えにくそうですね」

 

「純粋にパワーなら負けてねえけどエルフマンがあの動きを捉えるのは難しくねぇか?」

 

「さっきから懐に潜り込まれて打撃を食らうの繰り返しだしな……」

 

「エルフマン……」

 

『これは一方的な試合ー!!エルフマン!バッカスに手も足も出ないーー!!』

 

ここでエルフマンはビーストソウルワータイガーに変身する。攻撃力よりスピード重視の変身だ。

 

「素早さ系のテイクオーバー」

 

「これで攻撃が当たってくれれば…」

 

「エルフマン!それは悪手だ!」

 

「「え?」」

 

ツナの叫びに思わず振り返るミラとジュビア。その言葉通りにバッカスに攻撃は当たらず逆に吹っ飛ばされる。

 

「ツナどういうことだ?」

 

「そもそも酔拳を攻略するなら相手の不規則な動きに翻弄されないことが大事だ。動きが読めない限りいくらスピードをあげても当たらない」

 

「じゃあどうすんだよ?」

 

「バッカスは相手の攻撃を不規則に躱してどんな形からでも攻撃してくるタイプだ。…エルフマンが攻略するならば防御を固めて相手の攻撃を受け止めて反撃する方がいい。」

 

「今のアイツにそんな真似が出来るか?」

 

「賭けのことで相当頭にきてるみたいですし…」

 

「問題はそこじゃねえだろ…奴はまだ一滴も酒を飲んじゃいねえんだぞ」

 

「まだ本気じゃないということね…エルフマン…」

 

 

-闘技場

 

「ぐはあっ!!」

 

もはや何度目か分からないほどに地面に叩きつけられたエルフマン。テイクオーバーも再び解けてしまった。

 

「約束守れよ~(おとこ)なんだろ?」

 

-リサーナ……姉ちゃん……-

 

「エルフマン!!負けんじゃねえ!!!」

 

その声に観覧席を見るといつの間にか戻ってきていたナツが大声で自分を応援している。エルフマンは昔を思い出していた。リサーナを失った時のことを……

 

 

-マグノリアのはずれ

 

ナツが作ったリサーナの墓の前にナツが立っている。後ろにいるエルフマンにはナツの顔は見えない。いや見ることが出来なかった。大怪我を負ったエルフマンは泣きながら謝罪している。

 

「すまねぇっ……すまねぇ!俺のせいなんだ!俺がリサーナを……ううっ!せめてあの時お前を連れて行っていれば……ううっ…すまねぇっ!」

 

ミラのS級任務に着いていったエルフマンはビーストソウルを暴走させてしまいリサーナを失った…任務の前にミラはナツも誘っていたがエルフマンが家族は自分が守ると譲らなかった為、ナツは留守番となった。

 

「ううっ……」

 

「いつまでもメソメソ泣いてんじゃねぇ!!お前がそんなんじゃリサーナだって笑えねえだろ!!…アイツはいつも笑ってた。最期の時も…笑顔だったんだろ!!だったらお前も泣くな!!あいつならきっとこう言う…悲しい時こそ笑えって…それが(おとこ)ってもんだろ!!」

 

「ナツ……」

 

ナツは泣きながら拳を握りしめエルフマンを叱咤する。実はその言葉はミラも聞いており立ち直るきっかけとなった。

 

 

-闘技場

 

-ナツは俺を救ってくれただけじゃなくリサーナも取り戻してくれた……-

 

 

「立て!エルフマン!!」

 

自分に向けられる多くの声援の中で不思議とその声はよく耳に響く。そちらを見るとツナと隣に寄り添いながら心配そうにこちらを見つめる姉の姿があった。

 

ツナ……恐らくフェアリーテイルでも最強のギルダーツよりも強いかもしれない男。この男なら目の前の強敵など苦もなく倒してしまうだろう。

 

そして…姉が初めて好きになった男…

 

姉はいつも自分とリサーナを守ってくれた。悪魔を退治したのに悪魔に取り付かれたと村を追われた時も一番辛いのに自分達を気遣ってくれた。

 

そんな姉が家で楽しそうにツナのことを話す。ツナが合宿に来ない為機嫌が悪くなる。どれも初めて見た顔だ。少々複雑だったがそれでも姉がそう思える人を見つけたのはとても嬉しかった。

 

-けど今はまだ兄として弟として姉妹を守る!-

 

 

『エルフマン立ち上がったぁ~!!』

 

「そういやまだ決めてなかったな…賭け…俺が勝ったらお前らのギルド名…大会中は四つ首の仔犬(クワトロパピー)な」

 

「ぷっ……OKそれでいいよ。じゃあそろそろ決着付けようかね」

 

そう言うとバッカスは瓢箪に入っている酒を一気に飲み干した。動きが更に不規則になる。

 

「ビーストソウル……」

 

「無駄ぁぁっ!!」

 

すれ違う一瞬の間に7発もの打撃を加えるバッカス。勝利を確信し振り返るバッカスが見たのはボロボロに傷ついた自分の手だった。

 

「なんじゃあコリャァァ!!俺の手が!」

 

「リザードマン。当たらねえなら当ててもらえばいい!オラァ!来いよ!お前の腕と俺の体、どっちが壊れるか勝負じゃい!!」

 

「へへっ!面白れぇ奴だ!魂が震えてくらぁ!!」

 

そして男二人の意地の張り合いが始まった。

 

 

-Bチーム観覧席

 

「とんでもない作戦に出たわね……」

 

「無茶ですよ。確かにリザードマンには無数の刺があって素手の相手には相性がいいけど相手はその硬質な鱗をも砕いてくる」

 

「だが…他に手がないのも事実だ。相手の攻撃が凄まじい分跳ね返るダメージも相当だ。ここからはお互いの意地の勝負だ」

 

「オラァ!エルフマン!引くんじゃねぇぞ!!」

 

「ギヒッ!そこだぁぶち殺せ!!」

 

「絶対に負けるなよ!」

 

いつの間にか死ぬ気になっているツナと身を乗り出して応援するラクサスとガジル。やはりこういうのは男の方が燃えるらしい。

 

壮絶な戦いというより意地のぶつかり合い。攻めるが果てるか、受けるが果てるか会場には打撃音が鳴り響く。勝負は両者が同時に膝をつくことによって終了した。

 

バッカスの両腕は傷だらけでエルフマンも体中に痣ができ血を流す。二人とも大量の汗をかき、呼吸が乱れている。会場中が固唾を飲んで見守る中で立ち上がったのは…………バッカス。

 

高笑いを上げながら立ち上がったバッカスにフェアリーテイルの面々はツナ以外は顔を伏せる。応援席のリサーナは大粒の涙を流し、ミラもまたツナに抱きつきながら涙を流す。そんなミラの肩を優しく抱きながらツナは呟く。

 

「エルフマン……やったね!」

 

ツナの言葉にBチームの全員がハッと闘技場に顔を向けると、バッカスは仰向けにゆっくりと倒れるところだった。

 

『ダウーン!!バッカスダウーン!!勝者フェアリーテイルA、エルフマン!!』

 

『COOL!COOL!!COOL!!!』

 

「ウオオォォオオッ!!!!」

 

エルフマンの勝利の雄叫びにフェアリーテイルだけでなく全ての観客が歓声をあげる。

 

暫定トップに立ったフェアリーテイルAチーム。この1勝が復活の狼煙をあげる大金星となった。

 

 




エルフマンと一緒に燃えつきました……またちょこちょこ書くことになりそうです。

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