妖精達と歩む大空   作:グリーン

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な…なんとか気合いで更新できました


戦車と陰謀

-大魔闘演武二日目

 

二日目の競技パートである『戦車(チャリオット)』が行われていた。今日の実況席にはゲストとして、ツナとミラがモデルをした時に会った週刊ソーサラーの記者ジェイソンが呼ばれていた。

 

 

-実況席

 

「この競技は連結された戦車の上を落ちないようにゴールを目指すものです。戦車は動いているので注意が必要です。クロッカスの観光名所を周りゴールであるドムス・フラウまで一番早くたどり着くチームはいったいどこだ!?」

 

「ただのレースではないんだよなァ」

 

「COOL!COOL!!COOL!!!」

 

「会場のみなさんにはラクリマビジョンにてレースの様子をお届けしていますが……ヤジマさんこんな展開誰が予想できたでしょうか?」

 

「う~む……」

 

フェアリーテイルの選手席にいる者、応援席にいる者全てが口を開けて呆然としていた。

 

 

 

-Aチーム観覧席

 

「何でナツを出したぁ!?」

 

戦車(チャリオット)って競技名で予想できるよね?フツー」

 

「どうしても出ると聞かないものでな」

 

 

-戦車後方

 

『先頭より遥か後方フェアリーテイルAナツがグロッキー状態です!!』

 

「お…おお…おぷ…」

 

『それだけではありません!そのすぐ近くでフェアリーテイルBガジルとセイバートゥーススティングまでもがグロッキー!!』

 

「な…なぜ俺が……」

 

「お…お…お……」

 

三人は戦車後方をフラフラしながら走っている。…というか歩いている。

 

 

-Bチーム観覧席

 

「嫌な予感はこれだったのか…やっぱり昨日止めるべきだったかな?」

 

「何でガジル君も!?乗り物は平気でしたよ!」

 

「……」

 

「もしかしてドラゴンスレイヤーだからかしら?セイバーの人もそうだし」

 

「でもウェンディは平気だったけど…もしかしてある程度成長するとそうなるのかな?」

 

「じゃあもしかしてラクサスも?」

 

「他の奴等には黙っとけよ」

 

「もうバレバレだと思うけど」

 

とりあえず最下位争いが確定したので薄情だがトップグループを見ることにした。

 

「昨日のバッカスって人調子悪そうっていうか、昨日の酒が残ってない?」

 

「本当…ふらふらしてるわ」

 

「というよりあんなに飲んでたのに何でツナさんは普通なんですか!?」

 

「確かにな…お前のせいで応援席の連中の大半が二日酔いだぜ」

 

「選手には飲ませてないからいいでしょ。久々にたくさん飲んだからテンション上がっちゃって…俺は二日酔いはしないんだ」

 

「でも飲み過ぎはダメよツナ」

 

「俺は味わって飲むタイプだから昨日みたいなことがない限りはそんなに飲まないよ」

 

「ラクサスさんこの二人って……」

 

「ああ…昨日の惨状を全く気にしてねぇな……」

 

そんな話をしている間に先頭グループでは動きがあった。一位はレイヴンのクロヘビが少し独走している。

 

二位争いでラミアのユウカが魔法を打ち消す波動を放つ。マーメイドのリズリーは重力魔法を使い波動を躱して戦車の側面を走る。天馬の一夜は何と試験管を鼻の穴に突っ込むことで波動を防ぎ魔法を使用して俊足になる。その様子がラクリマにアップで映し出される。まさに視界の暴力だ。

 

「うわぁ……」

 

「こりゃひでえな……」

 

「えっ!何!ツナ何が見えるの!?」

 

「どうしたんですか!?ツナさん?」

 

「二人は見ないほうがいいよ」

 

「紳士だな」

 

一夜が試験管を鼻に突っ込みそうなところでミラとジュビアに腕を回して視界を塞ぐ。

 

その時バッカスが動く。相撲の四股を踏むように足を上げて降り下ろすとバッカスの乗っている戦車だけでなくその前後いくつかの戦車がひっくり返った。

 

そのまま一夜達を置き去りに激走するバッカス。そのままクロヘビを抜いて一位でゴールした。

 

「すげぇパワーだな」

 

「さすがはエルザが言うだけのことはあるね」

 

「二位がレイヴンテイルね」

 

「三位がマーメイド、四位がラミア、五位が天馬ですね。後は……」

 

「最下位争いか…最下位は避けて欲しいよね」

 

ツナ達はガジルとついでにナツの応援の為にラクリマに注目することにした。

 

 

-最下位グループ

 

観客はフラフラと走る3人を大笑いしている。走る三人は今にも吐きそうだ。

 

「おぼ…おぼぼ……」

 

「バ…バカな…俺は乗り物など平気…だった…うぷ」

 

「じゃあ…うぷ…やっとなれたんだな本物のドラゴンスレイヤーに…おめでとう新入り」

 

「ぬぐ…!てめえっ!!がはっ…力がでねえ……」

 

嘲るように発言するスティングに体当たりをかますガジルだが自分を含めた3人とも更に酔いが激しくなっただけだった。

 

全く力は出せなくてもナツとガジルは前へと進む。這ってでも進むその姿にスティングは勝負を捨てる。

 

一点二点なんかいらないと言うスティングに対してガジルはその一点に泣くなよと告げる。スティングはなぜフェアリーテイルがこの大会に出場したのかを聞いてきた。

 

昔のフェアリーテイルはもっとマイペースで他からどう思われようと気にしないはずだったと。その疑問に地面を這って進みながらナツが答える。

 

「仲間の為だ!7年も…ずっと…俺たちを待っていた…どんなに苦しくても悲しくても…バカにされても耐えて耐えて…ギルドを守ってきた……」

 

ナツの独白に応援席の7年後のメンバー達の目に涙が浮かんでくる。

 

「仲間の為に俺たちは見せてやるんだ。フェアリーテイルの歩き続けた証を!!だから前に進むんだ!!」

 

その言葉に7年後のメンバー達が号泣する。観客達もその言葉に感動しているようだ。

 

 

-Bチーム観覧席

 

「ふふ…ナツらしいわね……」

 

「アイツは昔からあんな感じだったな。だからこそみんなが集まってくる」

 

「ガジル君もきっと同じ気持ちです」

 

「観客の空気も変わったね。やっぱりナツはすごいな」

 

結果はナツが六位、ガジルが七位となりスティングは途中リタイアとなった。会場の幾人かはその健闘を称えて拍手をする。

 

 

-医務室

 

医務室には眠っているウェンディと苦しんでいるナツ、ポーリュシカ、シャルル、ルーシィ、ツナがいた。

 

「ナツ…大丈夫ですか?」

 

「何の心配もいらないよ。ただの乗り物酔いじゃないか。ウェンディはほぼ回復したよ」

 

「ガジルも来れば良かったのに意地っぱりだな」

 

「シャルルはもう元気になったの?よかった~みんな待ってるからあたし達行くね。行こツナ」

 

「じゃあみんなのことよろしくお願いします」

 

二人が出ていくとポーリュシカとシャルルは話し出す。

 

「黙っているつもりかい?」

 

「伝えてどうするの?あんな未来信じてくれるわけない。あれは夢…予知じゃないわ…」

 

その時ドアのノックの音が聞こえる。ポーリュシカが出るとそこには……

 

「動くな!」

 

仮面で顔を隠して銃を構える三人組がいた。

 

「なんだい!アンタ達は!!」

 

「ウェンディ!起きなさい!!」

 

「えっ!何!?」

 

「こいつらを眠らせてさっさとずらかるぞ!」

 

男達は睡眠薬をばらまこうとするが……

 

「させるか!!」

 

飛び込んできたツナがその男を殴り飛ばした。

 

「ツナさん!!」

 

「やべぇ!聖十のジュラを倒した奴だ!!」

 

「さっき闘技場に行ったはずなのに!」

 

あっという間に男達は叩きのめされてポーリュシカが用意したロープで縛られた。

 

「ナイスよツナ。でも闘技場に行ったんじゃなかったの?」

 

「嫌な予感がして戻って来たんだ。どうやら正解だったようだけどね」

 

「相変わらず凄い勘ですね……」

 

「さて…君達は何の目的でこんなことを?」

 

炎を灯した手を男達に向けて尋問するツナ。こんな雑魚がツナの迫力に耐えきれる訳がなく口を割る。

 

「た…頼まれたんだよ!医務室にいた(・・)少女を連れて来いって!レイヴンテイルの奴等に!」

 

「レイヴンテイル!?」

 

「イワンのバカの仕業かい…」

 

「医務室にいた(・・)!?」

 

「……で?誰に頼まれたんだって?」

 

「え?いやですからレイヴン…」

 

「嘘付くなよ。本当は誰に頼まれたんだ?」

 

ツナの右手の炎が激しさを増す。男達は恐怖に震えてその炎を見つめている。

 

「そうか…言いたくないか…俺の炎はウソつきだけ燃やし尽くすこともできるけど…試してみる?」

 

「わ…分かりました!言います!!」

 

その時医務室に王国兵達がやって来た。

 

「通報を受けて来ました。御苦労様です。後は我々が引き受けますので」

 

「今背後関係を吐かせる所だったんですけど?」

 

「それは私達が行い後日ご報告しますので」

 

「ちなみに通報したのは?」

 

「通りすがりの方です。銃を持って医務室に入るのを見たとのことです」

 

「……なるほど。素晴らしく早い対応ですね。さすがは王国に仕える兵士さん達だ」

 

「ハッ!ありがとうございます!それでは私達はこれにて失礼します!」

 

ツナの笑顔の賞賛に兵士達は揃って敬礼するとさっさと男達を引っ立てて出ていった。ツナの疑惑の視線には気付かずに…

 

「ツナさん……」

 

「怖がらせてごめんね。ウェンディ」

 

「いえ!怖くなんてありません!」

 

「ありがとう……レイヴン以外に俺たちに手を出そうとする奴等がいるみたいだね」

 

「そうね…ツナのおかげでハッキリしたわ。また勘なの?」

 

「勘と…経験かな。マフィアのボスなんてやってると平気で騙してくる奴もいるしね」

 

「話には聞いてたけど本当だったのかい?でもさっきのハッタリはなかなかのものだったよ」

 

「えっ!ハッタリだったんですか!?」

 

「ウェンディ……あんた……」

 

シャルルがやれやれという感じで首を振る。ウェンディは顔を真っ赤にする。

 

「とにかく気を付けておかないと…ウェンディはもう大丈夫なの?」

 

「はい!もう全開です!」

 

「あんたはもう少しここにいな。ナツもそろそろ回復するだろうし、ここの心配はいらないからツナヨシはそろそろ行きな。……後で二人にどんな治療をしたのか教えてもらうよ」

 

「えっ!ツナさんが?」

 

「そうなの?」

 

「本当に大したことはしてませんけどね…それじゃあまた後でね」

 

「ありがとうございました!ツナさん!」

 

ツナは観覧席へと急ぐ。その途中で先程のことを考えていた。

 

-王国兵の素早い対応…狙ったようなタイミング…裏で糸を引いているのは……考えすぎか?-

 

ツナは城の方から感じた嫌な予感と合わせて一抹の不安を覚える。

 

-そして医務室にいた(・・)少女…つまり狙われたのはウェンディではなく…ルーシィ……-

 

 

 

-王宮

 

「作戦は失敗です」

 

「バカモノ。対象を間違えるとは…外見の特徴は伝えてなかったのか?」

 

「申し訳ありません」

 

「まあよい。計画をプランBに移行するだけのこと。実行犯はどうした?バレてはいまいな」

 

「実行犯の兵士については休養を取らせています。打ち合わせ通り依頼主はレイヴンテイルと言わせましたが…ツナヨシ・サワダが嘘だと見破ったようです。…ですが我々のことはバレてはいないはずです」

 

「くっ!あの名高き聖十をも破った男か…だがなんとしても星霊魔導士は手にいれなければならん!全てはエクリプス計画の為に……」

 

 

 

 




誘拐犯は山賊ギルド→兵士の変装ということにしました。ツナのおかげで誘拐される前にお縄に……

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