-BAR SUN
大魔闘演武一日目が終了してフェアリーテイルの面々は夕食と一日目の打ち上げの為にとある酒場に集まっていた。今日の結果に概ね満足していた。ツナとルーシィのバトルパート勝利により明日へ弾みをつける結果となった。カナがテーブルの上に胡座をかきながら上機嫌に笑う。
「いや~今日はみんなよくやったよ。特にツナとルーシィ!おかげで酒が旨い!」
「街中の酒場巡りで応援にすら来なかったやつが偉そうに」
「見てたよ。どこの酒場にもラクリマビジョンが置いてあるんだから」
エルフマンの文句にも全く堪えないカナ。どうやら既にそうとう呑んでいるようだ。
「しかし今日のツナは凄かったな。試合といい妨害阻止といい、本当にいい働きをしてくれた」
「そうね。明日からは私達もがんばらないと」
エルザとミラが今日一日の結果を振り返りながら明日への健闘を誓っているとナツとガジルも盛り上がる。
「明日の競技は俺が出る!一気にトップになってやるんだ!!」
「ほう…サラマンダーが出るなら俺が出ようか」
「いや~二人とも明日出るのはやめたほうがいいような気がするけど…」
「いーや!出るったら出るんだー!!」
「ギヒッ!なら俺も引けねーな!」
「まあ仕方ないか…ガンバってね」
「「おう!!」」
ツナの忠告は聞く耳持たれなかったが特に気にした様子もないツナ。まあ結果は明日分かるだろう。
その時ルーシィが呼びに来て隣の席へ連行された。さらに反対にはミラもいる。いつものことでもはや誰も気にしていない。全員が揃ったのを確認しマカロフがテーブルの上に立つ。
「聞けぇ!ガキども!今日は本当によくやった!じゃがまだまだこれからじゃ!!昇ってやろうじゃねぇか!!フィオーレのてっぺんに!!」
「「「「「「うおおおおっ!!!!!」」」」」」
その言葉を皮切りに妖精達の大宴会が始まった。飛び交う笑顔と笑い声は明日もきっといい結果になるとツナに確信させるものだった。
-華灯宮メルクリアス玉座の間
「陛下、大魔闘演武一日目無事に終了致しました」
「ウム…よき魔闘であったな。まさかジュラを倒すとは…ツナヨシ・サワダ、実に興味深い」
「二日目のバトルパートの組み合わせについてご要望があれば伺います」
「そうだのう…スティングやローグは後にとっておきたいし…そうじゃ!バッカスを組み込んでくれぬか」
「どのチームと当てましょう?」
「フェアリーテイルのあの変身するやつじゃ!名前が思い出せん!エル…エル…~~!」
「かしこまりました。そのようにいたしましょう」
騎士団長アルカディオスは国王の先を読んで承諾する。ゆっくり休むようにと労う国王に礼をとり、退席した先の廊下で怪しげな笑みを浮かべる。
「休む暇などないのですよ陛下。直にあれが完成するとあらば…ククク…」
-BAR SUN
「次は誰だー!景気づけにかかってこーい!!」
ナツの声が酒場に響く。その足元にはナツにやられたマックスが転がっていてマカオとワカバはノリノリでナツに声援を送っている。どうやらかなり酔っているようだ。
「やれやれ…いつものこととはいえナツはどこでも騒がしいね」
「だってナツだもん」
「元気なのは何よりなんだけど…」
ツナとルーシィとミラはリサーナとエルザと一緒にテーブルを囲みながら談笑している。
「そうだ。エルザはジェラールと連絡は取れる?」
「一応明日の夜に落ち合うことになっているが?」
「そう…じゃあその時に伝言頼める?ちょっと城の方から嫌な感じがするって」
「ツナの勘は当たるからな…分かった。そうしておこう」
「気のせいだといいね」
「さあ誰かいないかー!」
「面白ぇ俺が相手してやるよ」
「よせよ…お前とナツじゃ遊びじゃなくなる」
「おうおう…丸くなったねぇラクサス」
相変わらず暴れているナツに対してガジルが名乗りを挙げようとするのをラクサスが止めるが、ガジルはラクサスの頭をペシペシと叩く。本人は気にしてないがそれを見て激昂するのはフリードだった。
「貴様ぁ!ラクサスに何てことを!今我らの誇りが踏みにじられている!ラクサス親衛隊雷神衆集合ー!!」
しかし、ビッグスローとエバーグリーンはカナによって酔い潰されていた。カナの周りには無数の酒瓶が転がっており相当に呑んでいるというのにカナは平気そうだ。そこへツナがやってくる。
「カナ…いくらなんでも飲み過ぎだよ」
「ツナの小言は聞き飽きたよ…言いたいことがあるならこれで聞くよ」
そういってグラスをツナの前に差し出す。
「はぁ…分かったよ。じゃあ俺が勝ったら一日ボトル一本までに押さえること。それでも普通の人には多いくらいなんだからね」
「オッケー!私が勝ったら二度とガミガミ言わないこと。それでいい?」
「はぁ…分かったよ」
「ち…ちょっとツナ本気なの!?」
「無理しちゃダメよツナ!」
「オイツナ!やめとけよ!」
「見てのとおりこの女バケモンだぞ!」
ルーシィ、ミラ、マカオ、ワカバが止めるもツナはカナの隣へ座る。
「お…飲み比べかい。魂が震えるねぇ~俺も混ぜてくれねぇか?」
「どなたですか?」
「ただの通りすがりよ。いいだろう?」
「いいよ!どちら様か知らないけど勝つのは私だからね!」
ツナVS.カナVS.謎の男の飲み比べが始まった。三人ともものすごいハイペースで飲んでいき次々に空き瓶が積み重なっていく。ルーシィとミラは心配そうにツナの後ろで見守っているが……
「や…やるじゃないツナ、それにあんたも」
「た…魂が震えるぜ兄ちゃん」
「どうしたの?もっとガンガン行こうよ♪」
ものすごい笑顔で飛ばすツナに引っ張られるようにカナと謎の男はペースを崩されるが負けじとついていく。
「あれ?ペース遅いよホラホラ飲んで飲んで♪」
「ち…ちょっと…」
「わ…ワイルド~」
「いいから飲め♪」
自分達以上のペースで飲んでいるツナは顔は赤く笑顔で、酔っているのは分かるが潰れる気配はない。自分も飲み続けながらどんどん酒を注ぐツナにカナも男も限界が近づいていた。
「もう…ダメ…」
「やべぇ…この俺が…」
「何言ってんの?これからじゃん♪言いたいことは飲んでから♪さあ飲んで♪」
限界を口にした二人に更に酒を注ぐツナ。もはや鬼畜の所業である。ほどなくして二人は揃ってズテーンとひっくり返るように床へ倒れた。
「マジかよ!」
「カナが飲み比べで負けたの!?」
「ぶっ倒れるカナなんて初めて見た」
「あれ?二人とも何やってんの?ほら飲んで♪」
「「「鬼か!!!」」」
ジェットとラキとウォーレンがツナを見て戦慄していると倒れた二人に更に飲まそうとするツナにつっこむ。
「とにかく飲み比べはツナの勝ち!!」
「いぇ~い!」
「こんなハイテンションなツナは初めて見るわ…」
「新鮮ね~」
マカオの裁定にツナはVサインで応える。ルーシィとミラは想い人の意外な一面に興味津々のようだ。
「ん?バッカス?」
「よお…エルザじゃねえか…相変わらずいい女だねぇ…」
エルザがやって来て倒れたままのバッカスに声をかける。
「どうしたんだそのザマは?」
「情けねえことにこの兄ちゃんにやられた…」
「お前は大魔闘演武には参加していないようだが?」
「今回は若いもんに任せておこうと思ったんだけどよ…ウォークライのザマを見ちゃ黙ってられねぇ…リザーブ枠を使って参加することにしたんだ…ウプッ…」
そう言ってバッカスは起き上がり出口へとふらふらと歩いていく。
「大会で当たることがあったらいつかの決着つけてえな…ジュラを倒したあの兄ちゃんともやってみてぇがな…魂はいつでもワイルド~?」
「…フォー」
「ノリ…わりぃよ…エルザ…じゃあな……」
今にも倒れそうにバッカスは去っていった。
「エルザ知り合いなの?」
「クワトロケルベロスのS級にあたる男…奴とは仕事先でぶつかることが多くてな。その強さはよく知っている…酔いの鷹、酔・劈掛掌のバッカス。何度か戦ったことがあるが決着はつかなかった」
「え…エルザと互角……?」
「なーに昔の話だろ?今のエルザが負けるわけねぇ」
「エルザが戦う前提なのか?」
「俺がやってもいいけどな!」
ルーシィとエルザの会話にナツとグレイがお互いの顔を引っ張りながら口を挟むが、エルザは油断できる相手ではないと気持ちを引き締めていた。
…ちなみにそんな会話があってる間ツナはマカオやジェットにも酒を進めつつ未だに飲んでいた。ミラは役得とばかりにツナの隣で酌をする。それに気づいたルーシィも隣に座って同じように酌をする。ツナの前に一人また一人と潰されていく…
ここにフェアリーテイル最強の酒豪の座はカナからツナへと移り変わったのだった。
-医務室
眠っているウェンディの横でポーリュシカとシャルルがシャルルの見た予知について話している。
「アンタ何を見たっていうんだい?」
「それが…いつものことだけど断片的で……白い騎士…巨大な魔方陣……」
「他には?」
「信じられないような光景だけど…崩壊する城…そしてその中で何かを歌っている…ルーシィ」
ポーリュシカとシャルルは何かとんでもないことが起こりそうな予感を感じていた……
-???
-大魔闘演武一日目終了。私達フェアリーテイルは上々の滑り出しだったけど最悪の事件がこの時既に動いていたんだ……-
-大魔闘演武終了から数日後…ここに記す。親愛なるルーシィ・ハートフィリアへ、レビィ・マクガーデンより-
また間が空くと思います。