-闘技場
「俺の方があなたより強いということです。」
言葉と共に先制の一撃を加えたツナはジュラが起き上がるのを見ていた。聖十の称号を持つ者に対する言葉としては、かなり無礼な言葉と自覚してはいたがその言葉にジュラが見せた表情は怒りではなく…歓喜。かつての風紀委員長が獲物を前にした時のような獰猛な笑みを浮かべ腕を振るう。
「崖錘!!」
隆起した岩がまるで生き物のようにツナに迫るが、ツナにとっては充分避けれるスピードだ。両手の炎で空を飛んで複雑な軌道で動き回り、岩同士をぶつけて破壊する。と、同時にジュラへ向かって正面から突進する。
「岩鉄壁!!」
ブロック状の岩が地面から瞬時に現れて壁になるが、ツナは分かっていたかのようにその壁を避けてジュラの周囲をさらに速度をあげて周回する。
「
そのスピードゆえにすぐさま現れた炎の竜巻は一瞬でジュラを飲み込む。観客達は目を見開いている。竜巻が消えたとき目にしたのは先程のブロック状の壁がジュラの四方を隙間なく囲んで熱が伝わるのを軽減していたようだ。
「むんっ!!」
その壁を全て分割し、ツナへ向けて飛ばしてきた。壁四つ分のレンガ状の岩の一つ一つが充分な威力を備えている。その大量の岩はツナに当たらない。
一般客には目で追えないほどの、優秀な魔導士でも目で追うのがやっとのスピードでツナは空中を自在に動き回る。ジュラはそのスピードに感嘆しながらも岩を操りツナを追わせる。四方八方より飛来する岩に流石にツナも逃げ場がなくなると思ったのか両手を構える。
「
ツナの両手からまるでマシンガンのように炎の矢が飛び出しレンガ状の岩を次々と粉砕していく。かつてザンザスが使っていた技を自分なりに再現したものだ。
次々と岩が粉砕されていき、闘技場を粉塵が舞う。しかしやはり全ては消しきれない。岩が数発直撃してツナは粉塵の中へ叩き落とされる。
「うおおおぉっ!!」
その粉塵を利用してジュラに接近したツナは大振りの右ストレートを放った。ジュラは手首を掴みそのパンチを止めるがそれは予想済み。
「食らえ!」
掴まれた瞬間掌を開き強力な大空の炎を放った。至近距離からの一撃は流石のジュラも避けようがなく炎に飲まれる。
炎を放った反動で後ろに跳び距離を空ける。ジュラはその身体に決して浅くない傷を負っていたがその獰猛な瞳は変わっていない。距離を開いたことにより間が空いて観客達は息を吐き出す。そして大歓声が巻き起こった。
-実況席
「こ…これは、いったい誰が予想したでしょうか?何とツナヨシが聖十の魔導士を押しているー!?」
「スンゴイね。」
「ツナくんがここまで強かったなんて…」
-Bチーム観覧席
「オイオイ…聖十よりも強えぇのかよ。」
「俺とやった時よりさらに速えな…」
「ツナさん…これほどの強さを持っていたなんて…」
「ツナ…すごいわ…」
-Aチーム観覧席
「だーっ!やっぱツナ強えーなー!!」
「ジュラのおっさんを相手にあそこまでやるとはな…」
「うぉおおっ!!その調子だぁぁ!!」
「ツナー!ファイトだよー!!」
「これがツナの実力…(あるいはその一端か…)」
-ラミアスケイル観覧席
「リオン!ジュラさんが!」
「落ち着けシェリア!ジュラさんがこのまま負けるわけがない!」
「ほら!言ったじゃねーか!あいつこえーって!!」
「きれんなよ。」
-闘技場
再び間合いを詰めたツナと全身に魔力を漲らせたジュラが殴り合う…が当たるのはツナの攻撃のみ。超直感で攻撃を読みながらジュラの攻撃を防ぐツナにジュラは接近戦は不利と悟る。
-これはたまげた。まさかここまで押されるとは…動きが速すぎる上にこちらの攻撃を読んでいるような反応…まずは動きを封じねば。クックッ滾ってきたわい!!-
ジュラはかつてない強敵の出現に心を躍らせると、地面を隆起させて強引にツナとの距離をとる。そして岩でできた巨大な腕を二本作り出す。
その腕の片方がツナに向かって突き進む。迎え撃とうとするツナの目の前でその腕が爆発し、弾け飛ぶ。さすがに避けきれずに数発食らって吹き飛ばされる。
「岩鉄牢!!」
岩の弾丸から目を庇いながら着地して体勢を整えようとするツナの周りに牢のように岩がせり出す。真上が開いているがそこにはもう一本の腕が迫る。
「ナッツ!」
「GAOOO!!」
とっさにボックスを開匣してナッツを呼び出し正面の岩に咆哮させる。すると調和の属性によりジュラの魔力によって鉄以上に強化された岩が、魔力を失いただの岩になる。
そこを破壊して脱出したツナだったが足を何かにつかまれる。下を見ると先ほどの巨大な腕とは比べ物にならない小さな腕がツナの両足をしっかりと捕まえていた。
「しまった!」
「好機!!」
ジュラが掌を合わせると巨大な腕と牢がばらばらになり、ツナに吸い付くように集まってツナの体を覆う。かつてこの魔法を見たことがあるナツ達は焦る。
「やべぇ!!」
「ブレインを倒した魔法か!?」
「ツナ!」
「
岩に覆われる前にツナは呟く。ついに完全に岩に覆われたツナにジュラが宣告する。
「覇王岩砕!!!」
岩に込められたジュラの魔力により内側から大爆発を起こす…
「ぬ?」
はずが何も起こらない。岩の隙間からツナの炎の色と同じオレンジの光が溢れ出し、どんどん強くなっていく。魔力で固めたはずの岩が崩れ姿を現したのは裾の部分が燃えているマントを翻すツナの姿だった。
「
-フェアリーテイル応援席
「ツナさん!よかった…」
「あのマントはなんじゃ?」
「かつてジョットも同じものを使用していました。大空属性の調和の炎を纏わせて岩に込められた魔力を散らして攻撃を無効化したのでしょう。」
「なんと…」
-闘技場
ジュラは己の魔法が防がれたと知るとすぐさま動き出す。先程よりも巨大な拳を作り出しツナに向けて放つ。まだ足を掴まれたままのツナは躱せない。ガードに徹する。
「ぐうっ!!」
ツナに直撃すると同時に足の拘束は解かれ、岩の拳はそのまま闘技場の壁まで伸びてツナを押し潰す形で壁と激突する。
「「「ツナ!」」」
フェアリーテイルの仲間達の悲鳴が飛び交う中、ツナは痛む身体を無視して呟く。
「零地点突破、
一拍置いた後ツナが触れた部分から侵食するように岩全体が凍りつく。
「何と!!」
これにはジュラも驚愕する。グレイとリオンも同じように驚愕していた。
「まじかよ!!ツナの奴氷も使えたのか!」
「ありえん!ジュラさんの魔法を凍らせるなど…」
ジュラが驚きで動きを止めたのはほんの一瞬の出来事だったがその一瞬をツナは見逃さない。これを好機と見たツナは一気に決めるべく動き出す。
「ナッツ!
ナッツがマントから光になり、ツナの右手を覆っていく。
「
攻撃態勢に入ったツナのガントレットに包まれた右手に今までにないほどの魔力が集まっているのを感じたジュラは、自身の最高の防御力を誇る仏像のような形をした岩を出現させる。
「巌山!!」
「バーニングアクセル!!」
巨大な火球が仏像を飲み込もうとする中、ジュラは必死で魔力を込めて仏像を強化する。しかしその隙にツナは高速移動でジュラの背後に回りこむ。
「ジュラさん!!」
リオンが叫ぶがもはや遅い。ツナが再び右腕を振るうと先程と同等の火球が生み出されジュラに迫るが、前方の火球に耐えている為何もできない。火球がジュラに直撃し、さらに前方の火球と衝突して爆発する。
爆発が収まり闘技場を包む煙が晴れたときそこにはツナとボロボロになったジュラが立っていた。ジュラはツナに対してニヤッと笑う。
「完敗じゃ…」
そう言ってゆっくりと仰向けに倒れた。会場は静寂に包まれる。
「し…試合終了ー!勝者!フェアリーテイルBチーム!ツナヨシ・サワダー!!なんと圧倒的な強さで聖十の魔導士を撃破ー!!」
会場が大歓声に包まれる。誰も予想しなかった結末に会場の全ての人が驚きと興奮に包まれていた。
-フェアリーテイル応援席
「「「「「やった~!!!」」」」」
「ツナさん…」
「よかったねウェンディ。」
「はい!信じてましたから!」
興奮に包まれる応援席でマカロフがメイビスと話している。
「それにしてもツナには驚かされました。てっきり炎使いだと思っていましたがまさか氷も使えるとは…」
「あれはジョットの奥義でもある零地点突破です。死ぬ気の炎が➕のエネルギーならあの氷は-のエネルギーということになります。ただの氷ではありませんのでおそらくナツでも溶かせません。」
「本当に驚かせられますなぁ~」
Aチーム観覧席
「よっしゃあ!」
「勝ったぜ!!」
「圧勝じゃねえか!しかも氷まで使いやがるとはな!」
「見事としか言えないな…」
「ツナ…凄かったよ!」
-Bチーム観覧席
「やりましたね!」
「オイオイ…マジかよ。」
「まぁ俺に勝つんだから当然だな…」
「ツナ~!素敵よ~!」
フェアリーテイルのみんなの喜びを聞きながら応援してくれた仲間に手を振る。歓声はまだ鳴りやまない。ガントレットから元に戻ったナッツがツナの周りを飛び回りながら、勝利の雄叫びというには可愛らしい声で吠える。こうしてフェアリーテイルはニチーム共にバトルパートを勝利するのだった。
オリジナルバトルは難しいですね。ツナの圧倒的な力とジュラの見せ場を上手く表現できません。Xバーナーは周りに観客がいたら出しにくいですし…次回は試合後のこととか周りの反応ですかね。昨日の後書きにも書きましたが明日からしばらく休載します。申し訳ありません。