妖精達と歩む大空   作:グリーン

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ボンゴレデーチモ

-Bチーム観覧席

 

先程控え室に戻ったジュビアを除く四人はルーシィとフレアが出てくるのを見ながら会話していた。

 

「ルーシィ…大丈夫かしら?」

 

「ギヒッ!いきなりレイヴンの奴とあたるとはな。」

 

「いいのか?このままやらせて?何を仕掛けてくるか分かんねぇぞ。」

 

「嫌な予感はする…けどさっきの競技みたくルールの範囲内なら仕方ない。ルーシィなら何とかするだろう。だから俺が警戒するのはルール違反に関してだけだ。外野の支援とかね…」

 

ツナはレイヴンテイルが何かを仕掛けてくることを確信していた。自身の超直感のこともあるが数多くの悪徳マフィア達と対峙してきた自身の経験談からくるものだ。

 

人質、脅迫、裏切りなど様々な方法でこちらを陥れようとしてきた悪徳マフィア達と同じような雰囲気を持っている。だからこそ奴らがしてきそうなことも予想がつく。

 

医務室で見たウェンディの泣き顔が脳裏によぎる…もう誰にもそんな顔をさせたくない。ツナは決意を固めて試合に集中することにした。

 

 

-闘技場

 

ルーシィは怒っていた。ウェンディを傷付けておいて挨拶代わりなどといい放つ。先程のヒドゥンでもこちらの邪魔をすることを優先していた。

 

「ルーシィ、修業の成果を見せてやれ!」

 

「ここで勝てばまだ繋がるぞ。」

 

「かっ飛ばしてやれ!」

 

仲間達の声援を背に受け戦場に向かう。控え室で落ち込んでいるであろうグレイの分もやってやると、気合いを入れBチーム観覧席のツナを見る。目が合うとにっこり笑ってくれた。

 

-見ててね。ツナ!-

 

目の前の対戦相手を睨み付ける。相手は何かブツブツ呟いているようだが関係ない、

 

-絶対、負けない!-

 

「それでは第一試合!開始!」

 

「開け!金牛宮の扉!タウロス!!」

 

「MOオーー!!」

 

先手必勝とばかりにタウロスを呼び出し、タウロスがその大きな体と変わらない斧を振り回す。それを感心したように見ながら軽く躱すフレア。しかし、今のルーシィはこれで終わらない。

 

「開け!天蠍宮の扉!スコーピオン!!」

 

「ウィーアー!サンドバスター!!」

 

二体同時開門。ルーシィが修業で得た力だ。スコーピオンはその尻尾から砂の竜巻を繰り出す。それをフレアは髪でガードする。

 

「まだまだ!タウロス!スコーピオンの砂を!」

 

「いきな、タウロス!ウィーアー!」

 

スコーピオンの砂がタウロスの斧にまとわりつき、その力を利用したタウロスの一撃が決まる。

 

「砂塵斧アルデバラン!!」

 

フレアは砂を纏った竜巻に吹き飛ばされたが、すぐに立て直し反撃する。髪がまるで狼になったようにルーシィを襲うが、

 

「開け!巨蟹宮の扉!キャンサー!!」

 

自身の髪の手入れを任せているキャンサーを呼び出し、迎撃する。フレアの狼のような髪を難なく切り刻んだ。

 

 

-Bチーム観覧席

 

「うおっ!!あのバニーガール、やるじゃねぇか!」

 

「そーいやビッグスローも一度やられたっけな。」

 

「今のところルーシィが優勢みたいね…ツナどうしたの?」

 

「優勢だからこそだよ。こういう時に仕掛けてくる悪徳マフィアを何度も見てきたからね…油断はできない。」

 

真剣な顔で試合に集中するツナの横顔を頬を染めて見つめるミラ。その様子を見てラクサスとガジルはまたか…と溜息をついた。

 

 

-闘技場

 

ルーシィは確かな手応えを感じていた。ウルティアの時のアークによる激痛に耐えた甲斐があったというものだ。一気に決めるつもりだったが相手もさる者、土の中に髪を潜らせ地面の下を通じてルーシィの足首をつかみ、振り回す。

 

「私の髪は自由自在なのよ!」

 

「なら、こっちだって!」

 

ルーシィがバルゴより貰った星の大河(エトワールフルーグ)を抜き、フレアの左腕に巻き付ける。こちらも自由自在に動く鞭だ。お互いに意地を見せて振り回すが両者痛み分けの形で離れることになった。が、やはり優勢なのはルーシィに見える。焼ける赤い髪でブーツが焼かれたが大したダメージではない。

 

危機感を感じたフレアが再び髪を地面に潜らせる。ルーシィは警戒するがどこからも出てこない。不思議に思っているとフレアが胸の前で小さく横を指差している。その先には

 

「アス…ムグッ!」

 

アルザックとビスカの娘であるアスカの横に灼熱の赤髪が地面を通して出現していた。思わずアスカの名前を呼ぼうとするが、途中で髪に口を押さえられ地面に引き倒される。

 

「声を出すな。これは命令。逆らったらどうなるか分かるよね。いくら頭の悪い金髪でも…」

 

周りに聞こえないような小さな声でしかし、本気であることが分かる冷たいで告げられる。悔しさに身を震わせるルーシィは俯きながらもう一度アスカの方を見る。

 

「もう一度言うよ。声を出すな。魔法を使うな。さもなくば…分かるよね。」

 

ルーシィは俯いたままだ。フレアが勝ち誇ったような笑みを浮かべルーシィをその髪で打ち払おうと髪を伸ばす。その髪がルーシィを打ち払おうとした時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャンサー!!」

 

「何!!」

 

先程と同じようにキャンサーを呼び出し、迫る髪を切り刻む。さらに鞭を振るいフレアを二度三度と打ち払う。

 

「ガキがどうなってもいいのか!」

 

「やれるものならやってみなさい!」

 

「上等…なら望み通りにやっ…」

 

アスカを攻撃しようとそちらを見たフレアの顔が凍る。

 

その視線の先には…アスカを左腕に抱え、右手に自身の髪を掴み、無表情で自身に恐ろしく冷たい視線を向ける死ぬ気の炎を灯したツナの姿があった。

 

 

-Bチーム観覧席

 

フレアがルーシィを脅迫した時、ツナは既に動いていた。七属性で最高の推進力をもつ大空属性の炎による高速移動でフレアが確認の為に二度目の脅迫をしたときには、髪を掴みアスカを抱えていた。俯きながらこちらを見るルーシィに笑顔を送り、ルーシィも笑顔で応える。いきなり現れたツナに驚愕するフェアリーテイル一同。

 

「ツナ!お主なぜここに!ん、その持ってるのはなんじゃ?」

 

「あの女の髪ですよ。アスカちゃんを人質にルーシィを脅迫したようです。」

 

「「「「「何ーー!!!」」」」」

 

「汚ねぇまねを!!」

 

「なんて奴らだ!!」

 

「やはりアイツら…」

 

「早くルーちゃんに伝えないと!」

 

「もう伝えたよ。ホラ。」

 

闘技場を見ると反撃するルーシィの姿。みんなが歓声をあげる。フレアがこちらを見てきたので視線に殺気を込める。固まったフレアに対し、さらにルーシィが攻撃を加える。そこまで見るとツナは右手の髪を引きちぎり投げ捨てる。

 

「ツナお兄ちゃん。お顔怖いよ。」

 

「あ、ごめんねアスカちゃんこれでい~い?」

 

「うん。ツナお兄ちゃんの笑ったお顔大好きー。」

 

「ふふ…ありがとう。」

 

タラシめ…とみんなが思っているとツナはアスカをビスカに渡して、

 

「同じ手は使ってこないとは思いますが、一応注意しておいて下さい。」

 

「わかったわ。ツナ、本当にありがとう!」

 

「俺からも、ありがとうツナ!」

 

ビスカとアルザックのお礼に笑顔で応えたツナはみんなに背中を向ける。

 

「ん、どこへ行くのじゃ?」

 

「このまま終わるとは思えませんから…」

 

と、言って去っていった。

 

「やっぱりルーちゃん達を落とすだけのことはあるね~」

 

「やっぱツナ兄カッコいいな~!」

 

レビィとロメオの言葉に盛り上がる一同。ツナを見つめていた初代にマカロフが気付いて声をかけると、

 

「…やはりツナは仲間を傷つける者は許さないようですね。そんなところまでジョットにそっくりです。」

 

初代は昔を思い出しながら笑顔を浮かべた。

 

 

-闘技場

 

-ありがとう!ツナ!-

 

ルーシィはツナに感謝しながら自らの鞭とキャンサーで猛攻を加えていた。ツナの殺気をまともに受けたフレアは動きが鈍い。ここで決める!

 

「開け!双児宮の扉!ジェミニ!!」

 

呼び出したのはコピー能力のあるジェミニ。それを自分に変化させる…バスタオル一枚の自分に変身した。

 

「何よ!その格好ー!」

 

「仕方ないよ。コピーした時の格好なんだから」

 

「あっそうか。昨日お風呂あがりに…」

 

男性客の異様な盛り上がりに恥ずかしがりながら、自分同士で手を合わせ魔力を高めて詠唱を始める。

 

「天を測り天を開きあまねく全ての星々、その輝きをもって我にその姿を示せ-」

 

その詠唱にブルーペガサスのヒビキは口元を緩め、自身の力で発動できるようになったルーシィに賞賛を送る。もはやフレアは邪魔すらできない。そして、詠唱が完成する。

 

-これがギルドの誇りをかけた一撃!-

 

「全天88星…光る!ウラノ・メトリア!!」

 

 

 

-2分前 レイヴンテイル観覧席

 

「ち…フレアめ使えん奴だ…」

 

「アレクセイ様~このままじゃ負けそうでさぁ。」

 

「オーブラ、あの女の魔力を消せ。」

 

「やらせると思うか?」

 

低く、静かな、そして確かな殺意を込めた声が聞こえ、振り返ったレイヴンテイルの面々の前には無表情で恐ろしいほど冷たい目をしたツナがオーブラの肩に乗った使い魔に(・・・・)炎を纏った右の手刀を突き付けていた。

 

ツナの額の炎と殺気がさらに膨れ上がる。ナルプディングとクロヘビは全身を震わせて膝をつき、アレクセイも立っているのがやっとのようだ。

 

余談だが、ツナが怒った時に笑うのは至って単純だ。殺気を押さえる為だ。マフィア界でもボンゴレデーチモが怒る時は笑顔だということは有名だったが、それは真の怒りではない。今のようにまったく笑わない怒りこそがツナが本気で怒っていることの証明といえる。自分の仲間を酷く傷つける者には容赦はしない。ツナの本気の殺気を前にまともに動けるものは少ない。

 

ボンゴレデーチモ…その者は心優しく争いを好まず、しかし仲間を傷つける者には慈悲を与えない裏社会の王。

 

その彼の本気の殺気をまともに受けている彼らはもはや失神寸前だ。その時、ルーシィの魔法が炸裂して決着が着いた。ツナは殺気を消して背を向けるとそのまま彼らに、

 

「次はないぞ…」

 

そう言い残して去って行った。残されたレイヴンテイルのメンバーはどうにか呼吸を整える。

 

「アレクセイ様~…」

 

「予定変更だ。目的を最優先にする。例の奴と当たるまでは手の内を見せるな…順位はどうでもいい。」

 

こうして、ツナはレイヴンテイルに釘をさすことに成功したのだった。

 

 

-闘技場

 

「ウラノ・メトリア!!」

 

「きゃあああっ~!!」

 

星々の超魔法がフレアに直撃して吹き飛ばした。フレアは意識を失って倒れている。

 

「決まったぁ~!ものすごい魔法だ~!勝者、フェアリーテイルA!ルーシィ・ハートフィリア!!」

 

大歓声が巻き起こる。もちろんフェアリーテイル応援団も大盛り上がりだ。

 

「よっしゃあ!!」

 

「やったぜルーシィ!」

 

「うむ!見事な魔法だったぞ!」

 

Aチームのメンバーが駆け寄ってルーシィを讃える。喜びを分かち合いながら客席を見渡す。レビィ達フェアリーテイル応援団のみんなも大喜びで手を振ってくる。

 

視線をBチームに向けると万歳しながら喜んでるミラと笑顔でこちらを見ているラクサスとガジル、たった今戻ってきたらしいツナがいた。

 

ツナが手を振ってくるのでこちらも大きく降り返す。そしてルーシィは最高の笑顔を見せるのだった。

 

 




と、いうわけでルーシィの勝利!
最後の笑顔は原作の泣き顔との対比です。

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