-闘技場
本戦出場ギルドの紹介が終わり、会場の興奮は最高潮に盛り上がっていた。もちろん予選の結果は本戦に関係ないのでどのギルドも優勝を狙っていた。そんななかフェアリーテイルの両チームは、
「それにしても俺らほとんどブーイング来なかったね。」
「そうね。セイバートゥースを破って1位だからすごいのが来ると思ってたわ。」
「多分ツナさんとミラさんがいたからじゃないですか?二人ともすごいファンがついてたみたいですし。」
「くそっ、俺らはブーイングしかなかったぞ!」
「ギヒッ!そこは1位と8位の差だろ。」
「何をー!!」
「落ち着けナツ!お前達はどうやって迷宮を攻略したんだ?」
エルザの問いにツナ以外の四人は顔を見合わせ答える。
「「「「ツナ(さん)の勘(です)」」」」
「「勘かよ!!」」
「そんなのアリ?!」
「迷うどころかまったく止まらずにゴールまで駆け抜けたって感じね。」
「ありゃマジですげぇ…」
「まあまあ…ところで何でエルフマンが?ウェンディはどうしたの?」
「そうなのよ!実は…」
ルーシィがBチーム全員に事情を説明する。全員が驚愕し、レイヴンテイルを睨み付ける。
「なんて酷い!」
「許せません!」
「気に入らねぇな…」
「くそ親父め…これ以上やるなら…」
「…」
ツナは俯いて肩を震わせている。心配になったルーシィが顔を覗くと顔をあげて、
「へえ~そうなんだ~あのカラスどもがウェンディをね…腐った死骸に群がるしか能がないカラスどもがウェンディに手を出すなんて随分と身の程知らずじゃないか…」
口元に薄く笑みを浮かべ、毒を吐き、レイヴンテイルを射殺さんばかりに冷たい視線を送るツナの姿があった。
(((ツナ様ご降臨ー!!)))
ナツ、グレイ、エルザが同時に心の中で思う。エルザは合宿を思い出して震えている。
「一人ずつ行方不明になって貰おうかな?そうすれば最終日はリーダー1人。一人ずつ消えていく恐怖が身を苛むだろうな…クックッ…これは面白いな。」
「「こえーよ!」」
ラクサスとガジルが同時に叫ぶ。
「冗談だ…殺るなら試合中だ。何かあっても事故になるからな。」
「何をする気なんですか?!と言うより字が違いませんか?!」
ジュビアも思わず突っ込む。
「お…落ち着けツナ様!」
「ツナ様!ここは何とぞ…」
「ルーシィ、ミラちゃん!お前らからもツナ様に…」
ナツもエルザもいつもは止められる立場なのになんとかツナを諌めようとする。何故か様付けで…グレイは一縷の望みをかけてルーシィとミラに振り返るが…
「「ツナ様…素敵…///」」
そこにいたのは頬を染めた二人の乙女だった。そのままグレイはズッコケる。
「だめだコイツらー!!」
「ね…姉ちゃん…」
「誰かツナ様を止めろー!!」
いつも通りに騒がしいフェアリーテイルだったが、何とかツナが落ち着いた頃大魔闘演武のプログラムが発表された。その内容は、
DAY1
DAY2 ??? + バトル
DAY3 ??? + バトル
DAY4 ??? + タッグバトル
DAY5 ??????
と言うことだった。競技パート+バトルという内容にナツは大喜びだ。なお、競技パートは参加者は自由に決めていいらしい。バトルパートは主催者側で選手が決められるということだ。運が悪ければ連戦になる。得点配分は、
競技パート
1位→10点
2位→ 8点
3位→ 6点
4位→ 4点
5位→ 3点
6位→ 2点
7位→ 1点
8位→ 0点
バトルパート
勝ち→10点
負け→0点
引き分け→5点
となる。各チーム誰を出すか話しているようだ。ツナ達も話し合おうと言うときにミラがツナに声をかける。
「ツナ…医務室のウェンディの所へ行ってあげて。競技は私達でやるから。」
「え…でもヒドゥンがどんな競技か知らないけど俺が有利な気がするけど…」
「バトルパートは誰が来ると思う?」
「…俺…かな?」
「なら行ってこいよ。わざわざ連戦することはねぇだろ?」
「分かった。じゃあ頼むね。」
そうしてみんなに見送られてツナは医務室に向かう。
-医務室
医務室に来たツナはポーリュシカに嫌な顔で出迎えられるも、少しの間だけ許可を貰いウェンディに面会した。ポーリュシカは席を外している。
「ツ…ツナさん!!」
「あ、ダメだよ寝てなきゃ!」
体を起こそうとしたウェンディをツナが優しく咎める。
「ゴメンね。今まで来れなくて…」
「いえ…ラクリマで見ました。Bチームで出てるんですよね。予選1位おめでとうございます。でもここに来て大丈夫なんですか?」
「ありがとう。競技パートは他の人が出てくれるからね。ポーリュシカさんも少しならいいってさ。」
ウェンディは嬉しそうに笑顔を見せて、次の瞬間その笑顔を曇らせ泣き出した。
「どうしたの?辛いの?」
「違います!ツナさんが来てくれて嬉しくて…でも私出られなくて…悔しくて…」
ウェンディは顔を手で覆って泣く。ツナはウェンディの肩を抱きなから優しく声をかける。
「大丈夫。まだ大会は終わってないよ。ポーリュシカさんを信じよう。」
顔を見せたウェンディの額に手を当てる。
「だからきっとすぐよくなるよ。もちろん…」
横で眠っているシャルルの額にも手を当て、
「シャルルもね…」
「ツナさんの手あったかいです…」
気持ち良さそうに目を細めるウェンディ。その時部屋にポーリュシカが入ってきた。
「そろそろ出て行きな。あんまり無理させるんじゃないよ。」
「はい。じゃあまたねウェンディ。ゆっくり休みなよ。」
「あ、あの…来てくれてありがとうございました。」
返事の代わりににっこり笑うと、ポーリュシカに後を頼み出ていった。
「やれやれ…まぁ他の奴よりはましな男かもね…どれちょっと診るよ。」
診察するポーリュシカはおかしなことに気付く。
「ん…なんだい随分良くなってるじゃないか。この分だと明日には治りそうだね。」
「本当ですか?そういえばさっきより気分がいいですね…」
「やれやれ、医者より好きな男で病気が治るなんてこれだから若い女は…」
ポーリュシカの言葉に顔を真っ赤にして頭から布団を被ったウェンディを見ながらポーリュシカは考える。
-それにしてもこっちのエクシードも回復してるなんて…まさかツナヨシが…?-
大空属性の調和の炎は傷を治癒させることはできないが、体調のバランスを整えることができるのをもちろんポーリュシカは知らない…
-Bチーム観覧席
「あ、ツナ。ウェンディはどうだった?」
「うん。随分よくなってたよ。多分明日には復帰できそうだよ。こっちは?」
「それがね…」
ツナはヒドゥンの説明を聞く。敵を攻撃したら1点、攻撃されたら➖1点、街中に溢れてるコピーに攻撃したら➖1点。コピーに攻撃せずに本体に先に攻撃を加えることが勝利への鍵だ。Bチームからはジュビア、Aチームからはグレイが出場している。
「なるほどね…」
「お前向きってのは正解だな。」
「まあね…ジュビアもグレイも戸惑ってるね。特にグレイは頭に血が昇ってるな。ジュビアなら雨を降らせたりすればなんとかなりそうだけど…」
「あ、ブルーペガサスのイヴ君が雪を降らせてるわ。」
「ギヒッ!寒さで見付けるって訳か…」
「いい手だね…あ、連続ポイント!」
「セイバーの奴あんなとこで何やってんだ?」
街の一番高い所に陣取って動かないルーファスに目を向ける。するとそこからルーファスは全員に光の矢を降らす。レイヴンテイルのナルプディング以外は直撃を喰らい、避けたナルプディングもルーファスに突っ込むが返り討ちになった。
その後、ナルプディングはグレイとジュビアを集中的に狙う。本来の力を発揮できぬままジュビアは7位、グレイが8位という結果になった。肩を落とす二人に観客からの嘲笑と罵声がとぶ。
「やっぱり弱ぇじゃん!フェアリーテイル!」
「だから言ったろ!」
「予選はまぐれだって!」
止まない嘲笑にナツが激昂するもさらに嘲笑は広がる。ジュビアは俯きながら戻ってきた。
「お疲れ様。」
「ご…ごめん…なさい…」
俯いて泣きながら謝罪するジュビアにみんな何と声をかけるべきかと思案していた時、
「きっと今何を言っても慰めにならないと思う。だから今は泣くだけ泣いて、悔やむだけ悔やむといい。そして明日にはジュビアの笑顔を見せて欲しい…まだ1日目が終わった訳じゃないんだから。」
ジュビアは顔をあげて泣きながらもしっかりとはい。と返事をして控え室に戻って行った。
「ガジルとラクサスも見習いなさい。」
「けっ。」
「ウッセ。…それにしてもレイヴンの奴らあからさまに俺らばっかり狙っていたな…」
「私達に恥をかかせるのが目的なの?」
「いや…それなら7年間何もしてこなかったのはおかしい。」
「奴らには別の目的があるのは間違いない。…今回はルールを守っていたから何も言えないが、もし何か仕掛けてくるようなら俺が絶対に防ぐ!」
バトルパート第一試合の組み合わせが発表された掲示板を見ながら誓う。
『第一試合 フェアリーテイルA ルーシィ・ハートフィリアVS.レイヴンテイル フレア・コロナ』
超直感を最大限に働かせながら試合が始まるのを待つツナだった…
いよいよ本戦が始まります。ここからちょっと展開を変えていきますので頭の中がパニックになりそうです。