これからもがんばります。
―フェアリーテイル
大魔闘演武に出場することになったフェアリーテイル。大会までは残り3ヶ月、燃える天狼組を中心に実力向上の為の合宿を行うことになった。が、その合宿を前にギルドでは、一つの争いが起こっていた…
「ツナはあたし達と海に合宿に行くんです!!」
「そうです!絶対に譲りません!」
「あら二人とも。ツナは私達と山に合宿に行くのよ。」
ルーシィ、ウェンディの二人と、ミラの間でツナの取り合いと言う争いが勃発していた。ナツやエルザ、リサーナ、カナなどの同行者も強いツナにはぜひ来て欲しいので成り行きを見守っている。
「ねぇ、ツナはあたし達と海に行きたいよね?」
「行きましょうツナさん!」
「ツナ、山で私の手料理たくさんご馳走してあげるから。」
「…間を取ってラクサスさん達と行くのはだめなの?」
「「「絶対ダメ!!!」」」
「ですよね~」
ちなみに巻き込まれるのを恐れたラクサス達は、そそくさと出発した。見捨てられたツナは今度一発殴ってやる!と決意した。話は平行線のままだ。
「分かった!こうしよう!前半は海、後半は山に行くから!」
「おいツナ…さすがにそれは無理なのではないか?かなり離れているぞ。」
エルザが指摘するが地図を見ながら、
「いや…幸い直線距離ならそう離れてないし、飛べば2時間くらいで着くと思う。」
その言葉にみんな驚く。あらゆる意味で規格外の男だ。
「そうか…ならそれでいいな。ルーシィ、ウェンディ、ミラ。これ以上は時間がもったいない。」
エルザのまとめに渋々頷く3人。ようやく合宿が始まるのであった。
やってきたのは海。しかし、修行どころかついた瞬間からエンジョイするメンバーの姿があった。
「よっしゃあ!!」
「勝負だ!」
「グレイ様ステキ…」
遠泳をするナツとグレイ。グレイを見つめるジュビア。
「修行にはメリハリが大事だ。よく遊び、よく食べ、よく寝る。」
「修行抜けてない?」
海を満喫しているエルザとレビィ。
「遊びに来たんじゃないのよ。」
「そうだぞー。」
口ではそう言いながら遊ぶ気満々な装備のハッピーとシャルル。監督役として着いてきたジェットとドロイは、
「思いっきりエンジョイしやがって…」
「初日くらいは大目に見るか。なぁツナ…」
と、ツナを振り返ると、
「ねぇツナ…どうかなこの水着…」
「ちょっと恥ずかしいけどツナさんに見てもらいたくて…」
「二人ともすごくよく似合ってるよ。」
両サイドを美女と美少女に挟まれたツナが目に入った。さらに周りにいる女性の幾人かがツナを見ている。週ソラの効果が出ているようだ。ジェットとドロイは憎しみで人が殺せたら…と涙を流した。
午後からはきちんと修行を始めるメンバー達。みんなそれぞれの方法で、修行を開始した。もちろんツナも修行している。ツナは炎を出しつつメイビスの残した言葉について考えていた。
―
修行の方針を決めると、ツナは炎圧を高めていく。各々は日が暮れるまで訓練を続ける。7年間帰りを待っていたみんなのために…
民宿に帰ってきたツナ達は、男女分かれた部屋で過ごしていた。充実した一日だった為、お腹が空いていた男性陣達は揃って大広間へ移動したが…そこで見たのはすでに食べつくされた食事と、べろんべろんに酔っ払った女性陣だった。
酒瓶を手に怒鳴っているエルザ、笑い上戸のレビィ、泣き上戸のジュビア、絡み上戸のルーシィ、女王状態のシャルル、すでに酔いつぶれて目を回すウェンディとすでに全滅状態だ。
「料理が…」
「困ったねこれは…」
「女将ー!!何で酒がここに…がはっ!!」
グレイが女将を呼ぼうとすると、エルザからお猪口が飛んでくる。そのまま酒を注げと言われるがジュビアが泣きながら、グレイをひったくる。エルザの次の標的はジェットとドロイだ。相当に理不尽なことを言っている。シャルルはハッピーの背に乗りまるで奴隷のように扱っている。レビィの相手をしていたナツは我慢の限界を迎えたのか、
「だぁー!!これはフェアリーテイル存亡の危機だ!!男共集まれ!作戦会議だー!!」
と叫ぶが、誰も集まらない。絶望しかけるナツに、
「少しは落ち着きなよ、ナツ。」
と声がかかり、そうだ、ツナがいたと希望を見出すが振り向いた先には、目を回してつぶれているウェンディを膝枕し、甘えてくるルーシィをあやす様に相手をしているツナの姿だった。
「ツナ!何でそんなに余裕なんだよ!」
「だから落ち着きなよナツ。酔っ払ってる女の子を介抱する優しさはないの?」
「この状態を見て言ってくれーー!!」
ジュビアの水の体に飲まれそうになっているグレイが叫ぶ。ナツに今度はエルザが迫る。足元にはジェットとドロイが沈んでいる。恐ろしいことに剣まで換装している。
「ナツー!!酒を注げーー!!」
「ぎゃああ!!ツナー!助けてくれー!!」
「ナツ。だから酔った女の子には…」
「ツナだと!あいつは本当に男か?!」
「ーは?」
ピシィと空気が凍る音がした。その余波でエルザ以外の女性陣の酔いが覚め、表情が青ざめる。ウェンディも飛び起きた。特にナツとグレイは恐怖に震えている。
「よく聞こえなかったんだけど今エルザ何て言ったのカナ?」
「だから!アイツは本当に男かと聞いて…い…る…」
笑顔で近くまで来たツナの顔を見て、エルザも酔いが覚めると同時に顔を青ざめさせる。目が全然笑ってない。
「へぇ~…エルザってそんな風に俺のこと思ってたんだ…」
「ツナ!落ち着いてくれ!不覚にも私は酔っ払って…」
「エルザ知ってる?人は酔ってる時に本音になるらしいよ…」
エルザの言葉を最後まで聞かずに言葉を重ねるツナ。助けを呼ぼうと周りを見渡すとみんなはこちらを一切見ずに、
「ここの温泉は広くて気持ちいいらしいぜー。」
「わぁ楽しみー。みんな早く行こうよー。」
「じゃあ行こうぜー。」
「覗いたら許さないわよー。」
「ツナ様がいるのにそんなことするかよー。」
「それもそうですねー。」
「お…お前達ぃぃぃぃっ!!!」
明らかに棒読みの台詞を言いながら広間を後にするみんなに縋るエルザ。だがツナが逃がすわけもなく、エルザの肩を掴む。
「エルザ…お酒は節度を持って楽しむものだと思うんだ。前にいたところでもね、毎回毎回酔っ払うたびに暴れたり、喧嘩したり、挙句の果てには銃をブッ放す奴までいたんだ。その後始末は全部俺がやってたんだよ。そんな奴らは凍らせて黙らせてたんだ。あ、安心して。エルザにはそんなことしないよ。女性に俺がそんなことするわけないじゃないか。でもね分かって欲しいのは…」
その後お風呂で覗きなどが発生するわけもなく、風呂から上がったナツたちが見たのはつやつやに輝いて笑顔のツナと、真っ白に燃え尽きて、お酒は節度を守って飲みます…と呟くエルザだった…
合宿二日目、昨日の悪夢を振り払うかのように特訓するメンバー達。その甲斐あってか、全員が実力の向上を肌で感じていた。だがルーシィの星霊であるバルゴが出てきて星霊界の危機を救って欲しいと告げる。快諾したツナ達は星霊界へと連れて行かれる。何故かジェットとドロイを残して…
星霊界はまさに幻想的という言葉がぴったりだった。そして現れた星霊王が口にしたのは、危機はでたらめで時の呪縛より帰還したルーシィと、その友を祝福する宴であった。盛大な宴が始まった。チラッと嫌な予感が頭を掠めたが楽しい宴に忘れていった。以前会ったバルゴは、
「ツナ様。この前はご挨拶もせずに申し訳ありません。姫の星霊、バルゴです。」
「こちらこそ。様はつけなくていいのに…てか何で姫?」
「姫がそのように呼ぶようにと。」
「合ってるけど違ぁう!!」
「ルーシィ大丈夫。女の子はいつまでもお姫様に憧れるものだと思うし…」
「あ~ん、違うのツナ!!」
アクエリアスは、
「へぇ~じゃあアクエリアスは小さい頃からルーシィと一緒だったんだ。」
「まあね。ガキの頃のコイツはすぐピーピー泣くし…」
「ちょっと!」
「優しいんだね。アクエリアスは…」
「なっ…」
―アクエリアスが照れてる?!―
ロキは、
「ロキもフェアリーテイル一員なんだよね?」
「うん。よろしくねツナ。でもルーシィのナイトの座は簡単には渡さないよ。」
「ナイトにした覚えはないわよ…」
楽しい時間はあっという間に過ぎ、ルーシィがどれだけ星霊達に愛されているかを知った。涙とともにお別れしたルーシィ。バルゴが現世と星霊界とは時間の流れが違うと言う。ナツとグレイは喜んでいるがやはり嫌な予感は消えない。
その予感は現実となり、現実では3ヶ月の時が過ぎ、大魔闘演武まではあとたったの5日…
「「「終わった…」」」
ツナは大事な何かを忘れています…