ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第五話 =壊れた親子の絆と償い=

「単刀直入に訊くぞ。君は朱乃をどう思っている?」

 

鋼弥はバラキエルの問いに真剣かつ簡潔な答えを出した

 

「朱乃は俺が護らなければいけない人だ」

 

「だが、君は・・・我を忘れて朱乃に手をかけようとしたのだぞ。それでも、護り通せる自信はあるのか?」

 

それは、サルワとの戦いで怒りで我を忘れて、危うく朱乃を殺しかねない所だった。

怒気が含まれたバラキエルの言葉に、鋼弥は目を瞑って答えた。

 

「あの時は自分が未熟故に朱乃を殺してしまう所だった。

 でも、そんな俺を助けてくれた朱乃は絶対に護りたいと誓った」

 

「その言葉を信じろというのか・・・?」

 

バラキエルは怒りを露にして、両手に雷光を纏わせる。

一人娘を殺しかけない目の前の男に激怒をしているのだろう。

鋼弥はそれでも臆する事なく反論する。

 

「それでも、彼女を護りたいと言う意志は曲げる事は無い」

 

「・・・その相手が、私でもか?」

 

「・・・はい」

 

断言する鋼弥、次にバラキエルは朱乃に訊く。

 

「・・・朱乃。お前はこの少年をどう思っている?」

 

「私もこの方を涼刀鋼弥の事が好きです。愛しています。この方以外の男性なんて考えられません。

 あなたが私と鋼弥さんの仲を引き裂くと言うのなら私は――――――死を選びます」

 

「「なっ!?」」

 

朱乃の真剣な言葉にバラキエルだけでなく、鋼弥も驚いてしまった。

 

「朱乃、なんてことを言うんだ!!」

 

「だって・・・だって・・・、やっと私を支えてくれる。

 こんな私を本気で愛してくれる男性に出会えたんですよ?

 私はあなたと離れたくない!離れるなんて嫌!そんな事になるくらいなら死んだ方がマシよ!」

 

朱乃は涙を流しながら鋼弥を強く抱き締める。

 

「・・・あ、朱乃」

 

「来ないで!触らないで!私からこの人を取らないで!今の私には彼が必要なのよ!

 だから、ここから消えて!あなたなんて私の父親なんかじゃない!」

 

今までに無かった朱乃の強い叫びにバラキエルは雷光を止め、瞑目して言った

 

「・・・・・・・・すまん」

 

自分の娘に言われたのがショックだったのか、バラキエルの背中が寂しそうに見えた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

一誠の家を出て自宅に戻った鋼弥と朱乃

鋼弥は朱乃に話があると言って、小猫、ゼノヴィア、リオには席をはずして欲しいと頼んだ。

完全に朱乃と2人っきりとなり、鋼弥は朱乃に問いかけた。

 

「朱乃・・・過去を、話してくれないか?」

 

「―――――ッ!」

 

朱乃は驚きと動揺を隠せなかった。

自分の好きな人から、自分の思い出したくない過去について話して欲しいと言われたのだから当然の反応だった。

予想通りの反応に、鋼弥は朱乃の手を握る

 

「辛い事だと思うが・・・バラキエルとの間に何があったのか教えてくれないか?」

 

「・・・解りました」

 

朱乃が涙を拭き、自分とバラキエルの過去について話してくれた。

 

 

――朱乃の母は日本のとある有名な寺の巫女、名は姫島朱璃と言い、朱乃はお母さんの姓を名乗っている

 

――朱乃のお母さんがいる寺の近くにある日、敵勢力に襲撃されて重傷を負ったバラキエルが飛来し、朱璃は傷ついたその堕天使幹部を救い、手厚く看病した。

 

――その時に親しい関係になり、朱乃の身に宿した。3人は慎ましい生活ながらも充実して幸せな日常を送っていた。しかし、幸せは長く続かなかった。

 

――朱璃の親類は黒い翼を持つ堕天使の幹部に娘が洗脳されて手籠めにされたと勘違いし、高名な術者達をけしかけた。

 

――バラキエルは何とか退けたが、やられた術者達は堕天使と敵対している者達へバラキエルの住まう場所を教えた

 

――運が悪くその日、バラキエルは家におらず、敵対勢力は朱乃と母が住まう家を躊躇せずに攻撃された。

 

――バラキエルが駆けつけた時には、朱乃は命がけで庇った母のお陰で助かったが、母の朱璃は命を落としてしまった。

 

――朱乃は敵対勢力に自分の父を堕天使の幹部がどれだけ他の勢力に恨みを抱かれているかを語られ、現実を突きつけられた

 

――それ以来、朱乃は堕天使に対して良いイメージを持たなくなり、殺された母親の無念を抱いてバラキエルに心を閉ざした。

 

――それから数年後、堕天使とのハーフでもある朱乃は住む家も追われ、天涯孤独の身となって各地を放浪し、リアスと出会った・・・

 

 

「・・・そういう、ことだったのか」

 

話し終えた朱乃は、鋼弥の胸に顔を埋めて泣いた。

 

「・・・すまない、朱乃。君が泣き止むまで待っている」

 

抱き締めながら朱乃の頭を優しく撫でる。

今、出来る事はそれしか無かった。

 

「鋼弥・・・キスして、お願い・・・」

 

鋼弥は拒まず朱乃の唇に自分の唇を合わせる。

 

 

◇◆◇◆

 

 

その次の日に、アザゼルからバラキエルと朱乃の関係を聞いてみた。

 

「・・・俺が悪かったんだ。あの日、バラキエルを招集したのは俺だ。

 どうしても奴じゃないとこなせない仕事だった。だから、無理を言って呼び寄せたんだよ。

 その僅かな間に、俺が朱乃とバラキエルから、母と妻を奪ったんだ」

 

「その償いとしてバラキエルの代わりに朱乃を見守ろうと?」

 

「・・・ああ。最も二人にしては余計なお世話だろうけど」

 

「アザゼルの行為は朱乃とバラキエルさんにきっと解ってくれる時が来る。

 決して、無駄ではない。無駄な事なんてないよ」

 

鋼弥がそう言うと、アザゼルは照れ臭そうに笑う

 

「そう言ってくれると嬉しいな。ところで、鋼弥。一つ頼みがあるんだ」

 

「なんだ?」

 

「グレモリー眷属の男性陣を鍛えて欲しいんだよ。お前の新しい仲魔を使ってな」

 

アザゼルのイタズラな笑みを見て、絶対にヤバそうな修行だと予想していた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

ここは、涼刀事務所の地下トレーニング。

アザゼルの提案したトレーニングとは、一誠、祐斗、ギャスパーと相手にするという事だ。

 

「はああああああっ!!」

 

【ムンッ!!】

 

祐斗の聖魔剣とレッドライダーの剣がぶつかり合い火花が散る。

レッドライダーの剣に炎が集まり、思いっきり振りかざす。

 

【ヒートウェーブ!!】

 

祐斗を思いっきり弾き飛ばす、剣技が炸裂した。

一見、火炎属性に見えるが実は物理技のヒートウェーブ。

物理技としては弱いが敵全体に攻撃かつ低コストで叩ける。

 

「くっ!!」

 

【ちぃーと、レベルを上げるぞ。デスバウンド!!】

 

巨剣から繰り出される、斬撃波が祐斗に襲い掛かる。

祐斗は避けて、次の攻撃を仕掛けようとしたが、レッドライダーは読んでいた

 

【ほれほれ。ジジイの剣戟は避けるんじゃなく、真正面から受けて攻撃に移らんと痛い目を見るぞ?】

 

テラーソードを発動させて、祐斗を吹き飛ばす。

威力は小限に留めて放っていたから、対したダメージは無い。

ここで、禁手化した一誠が背中のブーストで一気にレッドライダーに近づく。

 

【バトンタッチじゃて、白の騎士~】

 

すると、レッドライダーが変化し、瞬時にホワイトライダーとなった。

黙示録の騎士は四人にして一つの存在、このように瞬時に姿を変える事が出来る。

 

「げっ!?」

 

【マハジオダイン!!】

 

天から雷の雨が降り注がれて、ホワイトライダーと一誠の間を阻んだ。

スピードを緩める事ができずに一誠は雷の壁に激突して感電した。

 

「あばばばばばばばっ!!」

 

【甘い!!砂糖よりも甘い!!敵が仕掛ける予想を把握せねば、ピンチに追い込まれるぞ!!】

 

ホワイトライダーは指摘しつつも、感電した一誠を騎乗馬のバックキックを繰り出して弾く。

 

「どあああああっ!!」

 

吹き飛ばされるが、どうにか態勢を立て直して、ホワイトライダーを見るが・・・

 

【刹那五月雨撃!!】

 

矢を幾つ物を束ねて、撃ちまくるホワイトライダー。

豪雨と化した矢は一誠に襲い掛かってくる。

しかし・・・

 

「と、と、停まってくださいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

ギャスパーの神器が発動して、無数の矢が止まった。

 

【ほぉ・・・中々やるな金髪の小僧。しかし・・・】

 

白い閃光の矢がギャスパー、目掛けて飛んできたが祐斗がその矢を叩き落す。

どうやら、気を取られていた隙にゴッドアローが放たれていたようだ。

 

【防いでも安心するな!!敵は次々と攻撃を変えてくるからその気配を感じ取れ!!選手交代するぞ】

 

ホワイトライダーは次にペイルライダーとなった。

 

【では、参らせて貰うぞ】

 

大鎌を振りかざすと、ペイルライダーが三人となった。

 

「分身かよ!?どれが本物なんだ!?」

 

【敵の魔力と気を覚えつつ、本物を見分けることも戦いを有利に運ぶ】

 

三体のペイルライダーは同時に駆け出す。

衝撃魔法の全体のマハザンダインが同時に唱えた。

最大呪文が三つも迫りくると迫力と風の荒々しさに怯みそうになる。

 

「ギャスパー!!あの竜巻を停止できそうか!?」

 

「や、や、やってみますぅぅぅぅぅ!!」

 

ギャスパーの停止の邪眼を発動させて、竜巻の動きを止める事が出来た。

その隙に、祐斗と一誠はダッシュしてペイルライダーを討ち取りにかかる。

しかし、祐斗の剣で切り裂いた右端の者も一誠の拳で殴った左端の者は外れだった。

真ん中に攻撃をしようとしたが、大鎌が祐斗の眼前に、衝撃の渦が一誠の眼前に突き付けられていた。

 

【ふむ・・・まだまだ、だな】

 

 

◇◇◇◇

 

 

「あー・・・しんどかった」

 

「本当だね。四騎士と相手にすると、こうまで実力の差を思い知らされるなんて・・・」

 

模擬戦が終了し一誠と祐斗は、タオルを首にかけて水を飲んでいた。

 

「でも、最後のペイルライダーの時、3つのマハザンダインを停止させる方法をよく思いついたね」

 

「ホワイトライダーの無数の矢を止めたから、もしかしてと思ってさ」

 

「根拠もないのに本番で試したと言う事かい?」

 

相変わらず、一か八かのギャンブルを思いつく一誠に苦笑いをする。

 

「そういえば、ブラックライダーは出さなかったけど、どうしてだい?」

 

「ブラックライダーは、魔法戦の不得意な君たちでは出さなかったんだよ。

 物理技かつスピードのある白の騎士、赤の騎士、蒼の騎士ならば三人の特訓に向いていると思ってね」

 

「はは・・・そうなのか」

 

更にブラックライダーは、このトレーニング場が氷河期がくるほどの魔力を持つので出さなかった。

もっとも、魔力が高くサポートタイプのギャスパーなら苦戦はしないと思う。

そこに、この特訓を提案した堕天使の総督アザゼルがやってきた。

 

「おー、どうやら、終わったようだな」

 

「先生。俺たちの特訓の相手がやばすぎだって。命がいくつあっても足りねぇよ」

 

「なんなら一誠。タンニーンと修行した時と同じ内容でやろうか?勿論、祐斗とギャスパーも含めて」

 

その言葉を聞いて、一誠、祐斗の表情はこわばりギャスパーも段ボール箱に入ってビクビクとしていた

 

「・・・冗談だよ」

 

「お、お前が言うと冗談に聞こえないからやめてくれよ!!」

 

少しだけの会話をした後、鋼弥達はまた訓練を再開した。


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