ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第八話 =重い選択と涙の拳=

最奥の神殿の内部に入っていくと、前方に巨大な装置らしきものが姿を現す・

巨大な円形型の装置で、あちこちに宝玉が埋め込まれており、怪しげな紋様と文字が刻まれていた。

装置の中央にはアーシアが張り付けられていた。

 

「アーシアァァァァァッ!!」

 

「やっと来たようだね」

 

装置の横からディオドラとローブ姿の男が現れる。

ローブの男は顔を隠してて、解らない。

 

「・・・イッセーさん?」

 

一誠の声を聞いてアーシアが顔を向けた。

彼女の目元は腫れ上がっており、尋常じゃない量の涙を流したと思える程に目が赤くなっていた。

 

「ディオドラ、アーシアに事の顛末を話したのか?」

 

「うん。全部アーシアに話したよ。ふふふ、キミ達にも見せたかったな。

 彼女が最高の表情になった瞬間を。全部、僕の手のひらで動いていたと知った時のアーシアの顔は本当に最高だった。

 ほら、記録映像にも残したんだ。再生しようか?本当に素敵な顔なんだ。

 教会の女が堕ちる瞬間の表情は、何度見てもたまらない」

 

「貴様・・・」

 

「本当は堕天使の女――レイナーレを殺して、僕の駒を与える予定だったんだ。

 だけど、涼刀鋼弥。君がアーシアを連れてグレモリー達と合流して手が出せなく計画がだいぶ遅れてしまったよ。

 でも、ようやくアーシアを手に入れたよ」

 

「黙れ」

 

一誠の口から普段発せられない様な低い声音が出た。

それはヴァーリが両親を殺すと言ったとき以上にも怒りが溢れだしてきたのだ。

鋼弥も、ディオドラのくだらない計画のせいでアーシアが辛く悲しい思いを味合わせた事に怒りに燃えていた。

 

「アーシアはまだ処女だよね?

 僕は処女から調教するのが好きだから、赤龍帝のお古は嫌だな。

 あ、でも、赤龍帝から寝取るのもまた楽しいかな?

 キミの名前を呼ぶアーシアを無理矢理抱くのも良いかもしれ―――――」

 

「黙れェェェェェェェェェッ!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!』

 

一誠の中で怒りが弾け飛び、2分と経たずに禁手と化し、鋼弥は闘気を全開にし、瞳が赤く光る。

 

「ディオドラァァァァァァァァァッ!てめぇだけは!絶対に許さねぇ!

 部長、鋼弥、俺はディオドラをやる!絶対に手を出さないでくれよ!」

 

「無論だ」

 

「イッセー、全員で倒すわ――――と言いたいところだけれど、今のあなたを止められそうもないわね。

 絶対に手加減してはダメよ。貴方の力をディオドラに思いっきり見せなさい!!」

 

「アハハハハ!凄いね!これが赤龍帝か!でも、僕もパワーアップしているんだ!オーフィスから貰った『蛇』でね!キミなんて瞬殺―――――」

 

一誠は背中の噴出口から火を噴かして瞬間的に距離を詰め、ディオドラの腹に強烈な拳を鋭く打ち込んだ。

 

「な、に・・・?」

 

「瞬殺がどうしたって?」

 

ディオドラの体はくの字に折れ曲がり、口から血と共に内容物を吐き出した。

一誠は更に追撃を加えて、奥へと向かう。

 

「一誠はディオドラに任せるとして・・・、俺がお前の相手になってやる」

 

鋼弥はディオドラの隣にいた、ローブ姿の男と対峙する。

 

【クククッ・・・涼刀鋼弥。君には素敵な相手を用意したよ】

 

指を鳴らすと、四人の影が現れた。

それは倒した筈のディオドラ眷属の女王、僧侶、戦車2人だった。

四人とも何が何だか、解らない状態だった。

 

【さぁ、御立ち合い!!今から、君達は奇跡の目撃者となる!!】

 

両手を広げると魔力でできた鍵盤を引く、ローブの男。

すると、人でも入りそうな5つの培養カプセルと真ん中に召喚の陣が出現したのだ。

 

【これから行われるのは悪魔と悪魔の融合儀式・・・悪魔合体】

 

「悪魔合体だと・・・!?」

 

鋼弥が驚くが、リアス達は何の話なのかサッパリだった。

 

「悪魔合体って・・・?」

 

「その名の通り、悪魔と悪魔を合体させて、新たな悪魔を生み出すと言う邪法・・・」

 

【この眷属達と『デビルソース』を使って、新しい悪魔を創るのだよ】

 

男が取り出したのは、正八面体の形をした物だった。

それを、一つ目のカプセルへと放り込む。

 

【くくく、前から実験して見たかったんだよね~。冥界の悪魔と魔界の悪魔と合体させたら、どうなるのか?】

 

「い、いや・・・やめて助けて!!」

 

【安心したまえ、他の三人も同じ様に、素敵な姿へと変わるから、さ!!】

 

ディオドラの女王を掴んで空いたカプセルへと放り込む。

他の三人も逃げだそうとするが、ローブ姿の男は緊縛魔法"シバブー"を唱えて動けなくして、カプセルへと放り込む。

 

【さぁ!!イッツ・ショータイム!!】

 

鍵盤を思いっきり叩くと、ディオドラ眷属たちが次々と原子分解して、召喚の陣へと吸収された。

デビルソースが妖しく輝き、召喚の陣へと送り込まれた。

召喚の陣がゆっくりと点滅するが段々と激しく点滅し、赤黒く噴出しその姿が現れた。

金色の長髪、青黒い肌、赤い眼、鮫の様な鋭い牙、巨大な尾、無数の白い蛇に絡まれた女性。

それは原初の地母神として崇められ、敵も味方からも恐れられた龍、神々と戦った魔物の女王。

 

【グルギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!】

 

【フハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!

 見たまえ、かつて太古の海を支配したティアマットが再びこの世に出現した!!

 もっとも・・・失敗作の様だがな。本来は山よりも大きく知性はあったが、冥界悪魔を素材にしてもこの程度か】

 

男は嘆息して、培養カプセルを直ぐに片づけた。

目の前の出来事に加え失敗作と聞いて、リアスは激しく激昂した。

 

「失敗作ですって!?復活させた者を合体材料にして、なんて酷い奴なの!!」

 

【何を言うか、悪魔召喚師は悪魔と契約し合体させることによって、強い悪魔を創りだしたのだよ?

 いや、そもそも・・・このような邪法を創りだした人間の方がよほど悪魔よりも才能があるけどね】

 

「違う!!貴様のやっている事は・・・命を弄んだ邪悪なる所業だ!!

 貴様の様な男に、悪魔合体を創った者達の愚弄する事は絶対に許さん!!」

 

【そこまで言うのならば、このティアマットを倒してから言うのだな!!】

 

ローブ姿の男は、影へと沈んで姿を消した。

ティアマットは喉笛を鳴らして、鋼弥に襲い掛かる。

絡まっている無数の白い蛇の攻撃を掻い潜るが、鋭い爪で引っ掻かれて頬に傷を負う。

更に、巨大な尾に直撃して吹き飛ばされる。

 

「鋼弥さん!!」

 

「本来のティアマットだったら骨が折れてしまうほどの怪力を誇るが、それでもこの威力とは・・・」

 

ティアマットは口から凍える吹雪を勢い良く吐いてきた。

辺りが見る見るうちに凍り付いてゆくが、朱乃の雷光で吹雪を弾く。

 

「鋼弥、ディオドラの眷属たちを元の姿に戻せないの?敵とはいえ、あんな風に利用されるなんて、可哀相よ・・・」

 

リアスは鋼弥にそう尋ねるが、鋼弥は首を横に振るう。

 

「彼女達は二度と元の姿に戻れない、心と魂を失いあんな怪物へと貶められた・・・。

 倒す事でしか、解放されない。彼女達を助けるにはこれしか方法がない・・・!!」

 

ゆっくり立ちあがり、歪んだ合体で誕生した邪龍を睨んで、深呼吸をする。

ティアマットの口から燃え盛る炎を放つが、鋼弥は『吸収陣の法』を構えて相手の炎が右手に吸収した。

 

「貴女達の魂を・・・救って見せる!!」

 

鋼弥はゆっくりと弧を描き、左足を後ろに引き、右足を前に出す。

両の眼には透明の雫が流れていた。

 

「この拳で!!」

 

灼熱の拳を握り、一気に駆け抜けて、ティアマットの腹部目掛けて、叩き込んだ。

 

「真覇業炎撃!!」

 

業火が邪龍の腹を突き抜けた。

顔を上げると、ティアマットの両眼に涙が流れていた。

それを見て、鋼弥は歯を食い縛り、言葉を呟いた。

 

「・・・すまない」

 

ティアマットはグラリッと後ろに倒れて、その身は炎で焼かれた。

おそらく、ディオドラの眷属たちも死によって解放されたかったということだ。

鋼弥は救えなかった悲しみと命を弄んだ怒りに震えていた。

ローブ姿の男を倒す事も大事だが、アーシアを救う事を最優先した。

 

ドゴォォオオオオオオンッ!!

 

神殿が大きく揺り出した。

一誠が床に拳を叩きつけて巨大なクレーターを作っていた。

ディオドラは血まみれで左腕と右足が折れており、歯をガチガチ鳴らしていた。

完全に一誠に恐怖し、一誠はディオドラの胸ぐらを掴み、素顔を晒して睨み付ける。

 

「二度と、アーシアに近づくなッ!次に俺達のもとに姿を現したら、本当に消し飛ばしてやるッ!」

 

『相棒、そいつの心はもう終わった。そいつの瞳はドラゴンに恐怖を刻み込まれた者だ』

 

「一誠、そっちも終わったようだな・・・」

 

「ああ、なんとかな。」

 

アーシアを装置から外そうとしたが、少しして祐斗の顔色が変わる

 

「・・・手足の枷が外れない」

 

「クソ!外れねぇ!」

 

一誠はアーシアと装置が繋がっている枷を外そうと取りかかる。

赤龍帝のパワーでも外れず、リアス達の攻撃を受けてもビクともしなかった。

その時、ボロボロになったディオドラが言葉少なく呟く。

 

「・・・無駄だよ。

 その装置は機能上一度しか使えないが、逆に一度使わないと停止出来ないようになっているんだ。

 アーシアの能力が発動しない限り停止しない」

 

「どういう事だ?」

 

「その装置は神滅具所有者が作り出した固有結界の1つ。

 このフィールドを強固に包む結界もその者が作り出しているんだ。

 『"絶霧"("ディメンション・ロスト")』。結界系神器の最強。所有者を中心に無限に展開する霧。

 その中に入った全ての物体を封じる事も、異次元に送る事すら出来る。

 それが禁手に至った時、所有者の好きな結界装置を霧から創り出せる能力に変化した。

 『"霧の中の理想郷"("ディメンション・クリエイト")』。創り出した結界は一度正式に発動しないと止める事は出来ない」

 

祐斗はディオドラに問いただす。

 

「発動の条件と、この結界の能力は?」

 

「・・・発動の条件は僕か、他の関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら。

 結界の能力は枷に繋いだ者、つまりアーシアの神器能力を増幅させて反転すること」

 

反転(リバース)とは名前の通り、能力の質を逆転させる力

例えるなら、これを使えば聖なる力は魔の力に、魔の力は聖なる力に変わる

反転に気付いた祐斗は更に問いただした。

 

「効果範囲は?」

 

「・・・このフィールドと、観戦室にいる者達だよ」

 

「アーシアの回復能力は悪魔や堕天使さえも治す、それが増幅されて反転されたら――――」

 

「各勢力のトップ陣が全て根こそぎやられるかもしれない・・・!」

 

衝撃の事実に全員が青ざめた。そんな事になれば人間界、天界、冥界は主導者を失い、大変な事になる。

 

「ソーナの一戦でそんな作戦が思い付かれたのか・・・」

 

「随分前からその可能性が出ていたようだよ。シトリーの者がそれを実際に行った事で計画は現実味を帯びたそうだ・・・」

 

それを聞いたリアスが怒りで顔を歪める。

 

「堕天使の組織に潜り込んだままの裏切り者がソーナに『反転』を貸す事でデータを集め、利用していたかもしれないのね!」

 

「グラシャラボラスの不審死どころか、ソーナの戦いも、貴様も『禍の団』が絡んでいたと言う訳か」

 

更に神滅具が創った装置も『禍の団』の者が関与しており、ドライグから『絶霧』はブーステッド・ギアよりも高ランクで創られた装置の破壊は無謀である事を告げられ、一誠は床を叩いて悔しがる。

 

「ここまで来て・・・ちくしょう!!」

 

「イッセーさん、私ごと・・・・」

 

「バカな事言うんじゃねぇ!次にそんな事言ったら怒るからな!アーシアでも許さない!」

 

「で、でも、このままでは、先生やミカエル様が私の力で・・・。そんな事になるくらいなら、私は――――」

 

「俺は!アーシアに悲しい思いをさせないって誓ったんだ!

 だから絶対にそんな事をさせやしない!

 俺が守る!何があっても絶対に守るさ!俺がアーシアを絶対に守ってやる!」

 

アーシアの肩を抱き、泣きながら言う一誠にアーシアも感極まって涙を溢れさせるが、非情にも装置が動き出す。皆は装置を壊しにかかるが傷一つもつかない。

(考えるんだ。アーシアを助ける方法が、何処かに・・・)

 

鋼弥はアーシアを戒めている枷を見る。

枷はアーシアにぴったり服に絡んでいた。

アーシアの服にぴったりと・・・枷がくっついている?

 

――――もしかしたら!!

 

「一つだけ、アーシアを助ける方法がある。一誠の『洋服破壊(ドレス・ブレイク)』なら」

 

「『洋服破壊』で?」

 

「この枷はアーシアの服にピッタリとくっついている。これを装飾品だと思えば破壊は出来る筈だ」

 

「そ、そんな事が可能なの・・・?」

 

「アーシアを救出するにはこの方法でしかない。一誠、できるよな?」

 

「で、でも・・・アーシアを裸にするのは・・・」

 

「大丈夫です、イッセーさんになら、何をされても構いません・・・。皆さんに見られても、我慢します!」

 

「・・・解った!!」

 

アーシアの確認に一誠は決意したのか枷に触れた。

 

「高まれ、俺の性欲!俺の煩悩!『洋服破壊』!バランス・ブレイカー・ブーストバージョンッ!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

一誠の鎧の宝玉が赤く輝き、枷に触れている手に流れ込んでいく。

鼻血を噴き出しながらアーシアの全裸を強くイメージしていく。

 

(アーシアのキメが細かくてスベスベな白い肌、柔らかい体、そして綺麗な、ピンク色の乳首ぃぃぃぃぃぃっ!)

 

「ドレス・ブレェェェェェェイクッ!!!!」

 

バギバギバギバギンッ!ズバババンッ!

 

アーシアの両手両足を捕らえていた枷は木っ端微塵に吹き飛び、同時にアーシアのシスター服も消し飛んだ。

 

「や、やった!」

 

装置から解放されたために、装置の動きも止まった。

アーシアは朱乃が魔力で出した新しいシスター服に着替え、一誠に抱きついた。

 

「信じてました・・・。イッセーさんがきっと助けに来てくれるって」

 

「当然だろう。でも、ゴメンな。ツラい事、聞いてしまったんだろう?」

 

「平気です。あの時はショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから」

 

笑顔で嬉しい事を一誠に言うアーシア。

ゼノヴィアも目元を潤ませ、アーシアと抱き合う。

 

「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私のために・・・」

 

「アーシア。そろそろ私の事を家で部長と呼ぶのは止めても良いのよ?私を姉と思ってくれて良いのだから」

 

「はい!リアスお姉さま!」

 

今度はリアスとアーシアが抱き合う。

ギャスパーは大泣きし、小猫が頭を撫でる。

 

「さて、アーシア。帰ろうぜ」

 

「はい!その前にお祈りを・・・」

 

アーシアは天に向かって何かを祈る。

一誠が何を祈ったかを訊くと、「内緒です」と返された。

笑顔で一誠のもとへ走り寄るアーシアだったが、突如、まばゆい光の柱が発生する。

光の柱が消え去ると―――――。

 

「・・・アーシア?」

 

そこにはアーシアの姿がなかった―――――。


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