ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~ 作:Mr.エメト
~魔界・風と森林の国 常夜の樹海~
人が入って来れない樹海の奥地―――。
柵で囲まれ、6本の御柱に注連縄がはられていた。
祭壇の四隅に壺、そして六角形の銅製の箱が置かれていた。
傍から見れば不気味な場所でその空間から異様な空気が漂わせていた。
すると、空間を歪ませて何者かが現れた。
茶髪の優男がボロボロの白いマントを身に纏ている。
【とうとう見つけましたよ・・・。封印されし蛇神姫】
スッと左手を上げると雷が迸り、祭壇を破壊したのだ。
空気が変わり、恐ろしい気配が漂ってきた。
チリンチリンと鈴の音色が響き渡る。
音がする方を見ると、其処には黒の長髪に美しい女性が立っていた。
【さぁ、その身に宿る怒りを解き放ち、全てを破壊しなさい】
女性の目が赤く染まりだすと、雄叫びが樹海に広がった。
◇◆◇◆
夏休みが終わり、二学期が始まった駒王学園。放課後、オカルト研究部のある日のことだった。
鋼弥に新たな依頼の手紙が届き内容を読んでいたが、いつもより険しい表情になっていた。
皆はどうかしたのかと心配になり、朱乃が話しかけた。
「あの、鋼弥さん、どうかしたんでしょうか?」
「ああ、魔界中央からの極秘の依頼だ。今度のは相当危険だ」
「魔界中央ってルシファー陛下を始め多くの魔王達が治めている国でしょ?それほど大事な依頼?」
鋼弥はゆっくりと頷き口を開いた
「カンカンダラが復活したという依頼だ」
「カンカンダラ・・・?何よそれ?」
オカルト研究部メンバーは初めて、聞く単語に首を傾げる。
鋼弥は一呼吸して、説明を始めた。
「俗称は≪生離蛇螺≫、古くは≪姦姦蛇螺≫と書く。ナリジャラ、ナリダラ、カンカンジャラとも呼ばれている」
―それは神話や伝説とも言われる話だ。
―人を食らう大蛇に悩まされていたある村の村人達は、
神の子として様々な力を代々受け継いでいたある巫女の家に退治を依頼し、
特に力の強かった一人の巫女を大蛇討伐に向かわせた。
―村人達が陰から見守る中、巫女は大蛇を退治すべく懸命に立ち向かった。
―しかし、わずかな隙をつかれ、大蛇に下半身を食われてしまったが、それでも巫女は村人達を守ろうと様々な術を使い、必死で立ち向かった。
―下半身を失っては勝ち目がないと決め込んだ村人達はあろう事か、巫女を生け贄にする代わりに村の安全を保障してほしいと大蛇に持ちかけた。
―強い力を持つ巫女を疎ましく思っていた大蛇はそれを承諾し巫女を食らった。
―大蛇は立ち去り、村人達は一時の平穏を得た。巫女の家の者が思案した計画だった事が明かされたのだ。
「なんだよ、それ・・・」
「酷い事をするわね・・・」
「村を護る為に命がけで戦ったのに、生贄に差し出されるなんて・・・」
一誠たちは巫女の家族や村の人達の所業に怒りを出していた。
「所がだ。大蛇が姿を見せなくなったその日に、異変が起きた」
―襲うものがいなくなったはずの村で次々と人が死んでいった。
―死んだ者達は皆、腕が無くなっていたという変死だった。
―恐らく、巫女が怨念と化して村の人々に殺しているんだという。
―名のある僧侶たちが、怒りを鎮めようと向かったが・・・一人残さず殺されてしまった。
「最早どうにもならなくなり、師匠と仲間たちがカンカンダラの所へ向かった。
樹海の奥地にある根城にしている洞窟へと突入したが、彼女は恐ろしい姿をしていた。
上半身が生前の巫女の姿をしていたが六本の腕を持ち、下半身が巫女を喰らった大蛇という姿をしていた」
大蛇に食われた巫女は逆に変生して、恐るべき魔物へと変えた。
それは、巫女の復讐心から成せた業(わざ)だからこそだろう。
「彼女の姿を哀れんで、怒りを鎮めようとするが、その身に宿る怒りは収まる事は出来なかった。
止む負えず、彼女を封印して事件は解決した。祭壇を魔界へ移し、樹海の奥地へと封印された。
いつの日か彼女の怒りが消えるその日までに・・・。これがカンカンダラの全てだ」
あまりにも壮絶な話に絶句していた一誠達。
リアスが口を開いて、最もな疑問を発言する。
「・・・じゃあ、話を戻すけど、何故、封印が解かれたの?」
「レイナーレとドルキーがその場所へ調査したが、何者かが封印を破壊していたとの事だ。
カンカンダラの気配も既に無くなっており、今は彼女を捜索しているということだ。
放っておけば、昔と同じ様に血の海になってしまうだろう、怒りに身を任せて・・・」
鋼弥達は最初に魔界中央のパンデモニウムへと向かった。
ルシファー陛下から、事実の確認の為を取る為とカンカンダラの捜索結果を聞きに・・・。
◇◆◇◆
=魔界中央・パンデモニウム=
魔界の城パンデモニウムへ到着した鋼弥は、エレベーターに乗って謁見部屋へと辿り着く。
巨大な扉が重く開かれると、裁判所の造りみたいな部屋だった。
中央の席に魔界の王ルシファーが座っていた。姿は金髪の長髪に蒼い紳士服をきていた
【来たようだね。涼刀鋼弥くん。
会うのは初めてだね。リアス・グレモリー譲と仲間達。
私が魔界を治めているルシファーだ、以後よろしく】
フフッと紳士的に笑う。今回は客人に合わせた姿だという。
本来の姿を出すと、流石に威圧に満ちた空気には耐えられないだろう配慮している。
更にルシファーは他の魔王達を紹介する。
【私が信頼する友の二人、蝿王ベルゼブブと総裁ルキフグスだ】
蒼黒い肌に虎の毛皮を身に纏い、髑髏の杖を持つ男がベルゼブブ。
白い肌に痩せ細った老人、書物を持っているのがルキフグス。
ルシファーの片腕となる二柱の魔王が姿を現す。
【八柱の魔王だ。べルフェゴール、バルベリト、アスタロト、アリオク、スルト、イザベル、ヘカーテ、リリスだ】
順番に紹介されて行く八柱の魔王。
べルフェゴールは青白い髪に魔導師の姿をした子供。
バルベリトは緑色の髪に真紅の鎧を身に包んだ美少年。
アスタロトは金色の短髪、二本の角、何重にも重ねたローブを身に纏った美青年。
アリオクは大きな口から覗く鋭い牙が並んでおり、蝙蝠の羽、大きな斧が不気味に光っていた。
スルトは緑色の鎧を身に包んでおり、鞘には僅かながら火の粉が飛んでいた。
イザベルは黒い修道服を身に包んでおり、口元はマスクで隠していた。
ヘカーテは獅子の耳と尻尾を持ち、ボンテージ服を身に纏っていた
リリスは黒い長髪、大蛇が身体にまとわりついていた
一誠はイザベル、ヘカーテ、リリスにメロメロだった。
魔界の魔王のうち三人が女性だと知って喜んでいたが、リアスとアーシアに両頬を抓られていた。
【それから、もう一人魔王がおられる。軍事を指揮している魔王だ】
「軍事関連を管理している魔王ってどんなのかしら?見てみたいわね」
リアスの言葉にルシファーとベルゼブブ以外の魔界陣営の悪魔達から気不味い空気が流れてきた。
言ってはいけない言葉だったのだろうかと思ったが、ベルゼブブとルキフグスの間に光の柱が現れた。
やがて、その光が収縮すると・・・
【グワーハッハッハッ!!遅れてしまって済まなかったな皆の者!!魔王マーラじゃ!!】
戦車(チャリオット)に乗っている悪魔は身体が緑色、下半身が6本の触手、四本の腕を持った魔王だ。
その形状がなんとも言い表せないものだ。一誠は敗北したかのように涙を流して落ち込んでいた。
祐斗は苦笑いしており、ギャスパーはビクビクと物凄く怯えていた。
女性陣たちはどうコメントしたらいいのか解らないほど仰天していた。
鋼弥はやれやれという表情をしていた。
(作者通達:魔王マーラについては後の悪魔事典No.2で紹介します。あまりにも紹介するのは厳しいので)
なにはともあれ、魔界を治める魔王達が勢ぞろいした。
改めて見ると、圧巻の一言である。
魔界を治める大魔王を初めて、多くの魔王達がこの場に居るのだ。
【さて、君たちがここに来た理由は、私が送った依頼を読んだと思うが・・・】
「彼女を探し次第、再度の封印あるいは倒すというわけですね」
鋼弥はどうにも納得のいかない表情をルシファーは感付いていた。
【・・・どうしたかね?なにやら納得しない表情だが?】
「それしか、方法が無いのでしょうか・・・。
彼女はあの姿になる前に人間の為に戦ったというのに、裏切られて魔の者へとなった。
そして、封印されて一人ぼっちになるのではないのかと・・・」
鋼弥が意見を言うが、アスタロトが口を開く。
【アルギュロス殿、そなたの言い分は解る。
しかし・・・彼女は人間を殺し過ぎたのだぞ?
彼女は既に人間の心を無くし、化け物の心を持ったものだ】
次にアリオクが口を開く。
【まさかだと思うが、あの化け物を説得するつもりか?それは無理な話だ。
お前は陰陽極神の威霊や森羅万象なる龍神と戦い契約を果たすという偉業を成し遂げた。
しかしだ、お主には詰めが甘い部分がどうにもある】
更にはスルトが口を開く。
【よもや魔界の掟を忘れた訳ではあるまい?
我々、悪魔達がこれまで幾多の戦いで勝利を築き上げてきたのだ。
危険な存在となるものには死を与えるしか他は無いのだ】
三人の魔王たちはどうもカンカンダラは危険な存在だから、始末をするのが優先という意見だ。
しかし、マーラが意見を述べたのだ。
【ワシは殺すという意見は反対じゃの。幾ら、危険な悪魔だからと言って殺生はいかんと思うぞ?】
【僕は鋼弥くんの言うようにカンカンダラを封印か始末以外の他の道に試すのも良いかと】
【私もだな、カンカンダラは凶悪な存在とは言え女性ですからね。封印や討伐すると後味が悪い】
マーラの意見に便乗するべルフェゴールとバルベリト。
【イザベル、ヘカーテ、リリス。君たち三人はどうかの?】
残りの三人に意見を聞く、ルキフグス。
三人は同じ女性悪魔としてか、カンカンダラを殺すというのは反対の意思を示していた。
アスタロト、アリオク、スルトは不満そうな顔をしていたが、ルシファーは・・・
【確かに三魔王の言うとおり、我々悪魔達は力で栄光を築きあげたのかもしれない。
しかしだ・・・冥界の悪魔、天使、堕天使の三勢力は手を取り合い共存の道を選んだのだ。
我々も彼らに見習わなければならない事がある。かつて、我々が天界と平和を結んだ時のように】
ルシファーの発言で、皆は納得したようだ。
一誠達はルシファーのカリスマ性に驚いたのだ。あれほどの大物の悪魔達を納得させる言葉。
巨大な魔力だけではなく、信頼されているカリスマ性があるからこそ魔界全土を治める閣下として就いた。
リアスは自分の兄であり、ルシファーの名を受け継いだサーゼクスの事を思い出していた。
(私も次期グレモリー当主として恥じないよう、頑張らないとね)
【さて、鋼弥くん。君はカンカンダラを封印や討伐ではない道ではなくどのようにして解決するのか楽しみに待っているよ】
「任せて下さい」
鋼弥は強い意志が籠った目でルシファーに返事をする。
するとベルゼブブが羊紙を鋼弥に飛ばす。
【カンカンダラが目撃された場所だ。其処にはお前の友人と合流するポイントも書かれてある】
「御意!!」
◇◆◇◆
ルシファーの指示を受けた鋼弥達は、≪風と森林の国・常夜の樹海≫へと到着。
その国にカンカンダラが目撃されたという場所へと向かった。合流地点に3人の男女がいたのだ。
「おう、来た様だな」
「お久しぶりです、鋼弥さん」
ドルキーのほかにも、三人の女性がいた。
鋼弥は久々の友人に会えてうれしそうな表情をした。
一誠達の方を向いて、四人に紹介する。
「みんなに紹介するよ、赤い帽子をかぶった男は風使いのドルキー・サーティン」
「フッ、宜しくな」
帽子を直して、キザっぽく挨拶する
「幻鏡騎士団所属の如月珠樹(きさらぎ たまき)」
「よろしく」
赤桃色の髪にリボンを付けており、手には刀が持っている
「それから、この国の巫女である花咲彗花(はなさきすいか)」
「初めまして、花咲彗花と申します。主に結界術・治癒術・探索能力が得意です」
黒髪の女性の彗花が礼儀正しく挨拶をする。
一誠は2人の女性とも好みで鼻の下を伸ばしているが、またリアスとアーシアに頬を抓られた。
鋼弥は一誠達の事を紹介して、これからの作戦行動を確認する。
「カンカンダラが出ないように、この赤い点を中心に結界を囲っておいたわ。
最も結界を張ったとしても時間稼ぎに過ぎないから、どうにかしないといけないわね」
「一つに気になっていたんだが、カンカンダラが封印されてた祭壇はどうなっているんだ?」
ドルキーの質問に彗花は深刻そうな顔をして首を横に振るう。
「完全に破壊されてますから再度の封印は不可能です。道具に霊力を込めるのに時間が足りません・・・」
「残されているのは、カンカンダラを倒すしかないわね」
「倒すのは待って欲しい、彼女は元は人間だ。説得して怒りを鎮めるという方法がある」
鋼弥の言葉に、ドルキー、珠樹、彗花が驚きの表情をする。
一番最初に口を開いたのは珠樹だ。
「鋼弥、本気で言っているの?
カンカンダラは村人に復讐するために大蛇を取り込み妖魔化したのよ?
話を聞いてくれるような相手じゃないわ」
「私も珠樹さんと同じです。封印が不可能となれば倒すしかありません」
「彼女は本当に、悪魔や妖魔になったとしても、僅かな人間の心が残っていると信じている。彼女を倒すのは待って欲しい」
「・・・俺は鋼弥の意見に賛成だな」
「ドルキー!?貴方まで!?」
「こいつのバカ素直な所に信じて見ようと思ってな、友人として。勿論、説得だけというわけじゃないだろ?」
「・・・説得した後、ヒジリの聖なる力でカンカンダラを浄化させる事だ」
ヒジリは魔導師と僧侶としての力を誇る
彼女の浄化魔法でカンカンダラの怒りを鎮める事が今回の成功の鍵となる。
作戦の内容と準備が決まり、二手に分かれて探す。
Aチームは一誠、祐斗、リアス、アーシア、珠樹、彗花。
Bチームは鋼弥、朱乃、小猫、ギャスパー、ゼノヴィア、ドルキー。
通信手段は、ドルキーのお手製の通信機で連絡を取り合う(ドルキーは機械系が得意)。
皆は手分けして、カンカンダラを探すのだった。
今回登場したカンカンダラは洒落怖から出典しました。
原文は調べれば出て来ますので是非とも、読んでみてください。
尚、このカンカンダラは色々と直してますので、あしからず。