ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第十二話 =神雷の魔神=

鋼弥が祐斗とゼノヴィアが合流する前に遡る。

 

それは、匙と一誠との激しい戦いが繰り広げられていた。

黒い龍脈で足止めされて、匙の蹴りが一誠の腹部に食らった。

だが、基本トレーニングを済ませた一誠には通用しなかったようだ。

 

「結構、本気(マジ)で蹴ったんだが、お前も相当トレーニングを鍛えたというわけだな」

 

小猫は加勢したいが、タイマン勝負に手を出さないでくれと二人に言われて距離を取っていた。

 

「俺はお前がうらやましかったんだ。主にである先輩に自慢の赤龍帝。

 同時期に、"兵士(ポーン)"になったのに何もないのが悔しかった。

 だから、赤龍帝のお前を倒して、自慢と自信を手に入れる!!」

 

匙の手にはソフトボールサイズの魔力の弾を作り出して、投擲する。

避け様にも黒い龍脈のラインに繋がれて身動きがとれなかった。

一誠は迫りくる魔力の弾に右手を翳す、すると白い籠手が出現した。

 

『Divide!』

 

それは、白龍皇の力で半減させたのだ。

 

「俺の魔力弾を半減したのかよ!?」

 

「山ごもりでなんとか発動できるようになったが発動する確率は一割以下。博打に近いけどな・・・」

 

無茶な賭けだったが、運は一誠に味方したが、白い籠手は直ぐに消えてしまった。

タイミング良く、一誠の神器のカウントが終わり一誠は禁手を発動させて『赤龍帝の鎧』を身に包んだ。

 

「うおりゃあああああああああ!!!!」

 

ラインを引き千切って、ブースターから火が吹いて匙の所まで一直線に進み何度も拳を撃ち込んだ!!

だが、匙は倒れても脚が震えていても立ちあがったのだ。

 

「・・・俺はお前に勝つまで・・・夢の第一歩を踏む・・・!!」

 

匙のこの気迫は・・・タンニーンとの修行に聞かされた。

この世ので一番、恐れなければいけない力、それは『こもった一撃』。

夢を魂をこめたその一撃は身体の芯に届くほどの威力を誇るという

 

『この気迫≪黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)≫ヴリトラの力が匙の想いに応えたといるのか』

 

「兵藤ォォォォッ!!一つ聞かせろォ!!主様のおっぱいは柔らかいのか!?

 マシュマロみたいって本当か!?女の人はプリンのごとくとはマジなのかァァァ!?」

 

嫉妬に燃えた瞳で一誠に殴りかかってくる。

一誠は吹き飛ばされてベンチが粉々に壊れて床に散らばった。

 

「おっぱいを揉んだ時、どうおもったんだよ!?ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

ラインを複数、展開させて、大型家具引っ張りそのまま一誠に振り下ろした。

最小限にとどめたドラゴンショットで全て撃ち落とすが、タンスが一誠の背中に直撃したのだ。

一本だけ軌道を反らして、叩き付けたのだ。ダメージこそないが、身体に悪影響は出るだろう。

 

「俺だって・・・俺だって・・・俺だって揉みたいんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 乳房すら、見た事ないのに!!乳首なんて一生拝めるか解らないのに!!

 それを、お前は自由気ままに見やがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ドンドン怒りの方向性がおかしくなり匙はただ只管に一誠を殴る。

一誠も負けず、反撃に頭突きからの拳を撃ち込む。

この二人は本当に愚直な所や熱い性格など似ていた。

 

―――この二人は、どちらかが倒れるまで只管、拳で語るのみ!!―――

 

やがて、二人の拳が交差して互いの顔面に拳が入る。

クロスカウンターが決まったが、グラリッと崩れ落ちたのは匙の方だった。

だが、彼は崩れる最後まで一誠の右手を両手で掴む。

そして、リタイアするまで掴んだままリタイアしたのだった。

激しい戦いが終わり、一誠は大の字になった。

親友を倒したのが初めてなのか、少しだけ震えていた。

小猫は震えている手をやさしく握ってくれた。

 

「カッコよかったですよ。一誠先輩」

 

今の一誠に小猫の言葉に十分なぐらい届いた。

休憩したら、すぐに敵の本営へと向かおうとした。

だが・・・二人は気づいていなかった。

匙が消滅しても、一誠の右手に付いていたラインが消えていない事に・・・

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

―――そして、時間は現在になる。

 

ショッピングモールの中央広場に辿り着いた鋼弥。

周りを見るが、他のメンバーはまだ来ていないようだ。

道中、相手側の兵士がリタイアしたという事は一誠が勝ったという訳だな。

其処に三人の影が映った、"僧侶"の花戒桃と草花、そして、"王"のソーナだ。

 

「ごきげんよう、涼刀鋼弥くん。いずれ来るだろうと思っていました。単独でこちらに来るのは予想外でしたが・・・」

 

「リアスは俺に遊撃手として与えられたからな、一誠か祐斗のどちらかにいると思っていたが残念だったな」

 

「ですが、兵藤くんはここに来ませんよ。私の策に嵌まりましたからね」

 

「なに・・・?」

 

ソーナがバッグを持っている僧侶に目で指示を出す。

コクリッと頷いた僧侶の女性がバッグから何かを取り出した。

それは、病院で患者に点滴や血液をうつ為に使うパックだ、しかも中身は赤い。

そういえば、匙のラインは一誠に絡まっていたが、不自然な一本は何処かへと繋がっていた。

つまり、あれは・・・。

 

「一誠の血液を吸収したのか・・・!!」

 

「ご名答です。兵藤くんは人間がベースとなっている転生悪魔。人間は体に通う血液の半分を失えば致死量です。

 レーティングゲームのルール、ゲーム中に眷属悪魔が戦闘不能状態になると、強制的に医療ルームへ転送されます」

 

「レーティングゲームのルールで倒したというわけか・・・」

 

「サジは神器(セイクリッド・ギア)を用いて、兵藤くんの血を少しずつ少しずつ吸い取っていたのです。

 対象のエネルギーを吸い取るのが本来の能力である神器で血液を吸い続けるには、相当な修業と緻密なコントロールがいりました。

 しかし、サジはそれを完遂させたのです。もう手遅れです。兵藤くんは医療ルームへ転送されるだけの血を失いました」

 

「匙は相撃ち覚悟で任務を果たした訳か・・・」

 

「本当は涼刀くんも同じ罠か別の策でリタイヤさせたかったのですが、

 あなたは正式にリアス眷属ではありませんが、トップクラスの実力を誇っています。

 フェニックス戦での記録映像でも、あなたは格闘術や業魔化身を使い敵を撃破していました。

 今回のルールとあなたの力量から、サジの神器で倒す標的を兵藤くんにしたのです」

 

「一誠の攻撃は殆どが高火力だが、ギフトで味方の能力を上げる。確実にリタイアさせるために。

 今回のゲームはデパートを破壊してはいけないと言うルール縛りを利用した作戦は見事だ」

 

ここでリアス、朱乃、祐斗、子猫、アーシアと合流したのだ。

一誠は血液を搾り取られたのか、フラフラとしていた。

 

「驚きましたね。半分も血を取ったのにここまで来るとは」

 

「どうしても・・・リタイア前にとっておきの見せてやろうと思ってな・・・」

 

隠し玉を用意しているようだが、貧血状態で何を?

一誠の身体にオーラが現れ、包み込んだ。

 

「高まれ、俺の欲望!!煩悩解放!!貴方の声を聞かせて頂戴!!」

 

すると、リアスを見て、ウンウンと頷いた。

 

「部長、いま俺の事を心配してくれましたね?変な事ばかりすると身体に障ると・・・」

 

一誠の言葉にリアスが驚愕の表情をする。

 

「イッセー!?どうしてそれを!?」

 

「まさか、一誠に≪心眼≫か≪悟り≫が使えるのか!?」

 

「ふふ、鋼弥・・・半分正解だが半分違う。

 俺は心じゃなく胸の内に聞いたんだ!!否!!おっぱいの声を!!」

 

一誠はふらつきながらも、堂々としたポーズで新技を叫んだ

 

「相手の胸を読み取る『乳語翻訳(パイリンガル)』!!

 女性限定で相手が何をするのかを読み取る事が出来る!!・・・ハァハァ。

 質問すれば相手のおっぱいは嘘、偽りなく応えてくれる!!・・・ハァハァ。

 相手の心が解る、最強の技なんです!!あう・・・血が足りねぇ」

 

この場に居る人はこう思っただろう。

なんという≪無駄な事に技を開発している≫と・・・。

特に小猫は、一誠と匙の勝負に感動していたのに一気にガクンッと降下した。

 

「・・・先輩、最低です」

 

「あれ?何この反応・・・これじゃあ、俺が本当のド変態じゃないか!!?」

 

『ド変態です!!!!』

 

女性陣(朱乃、アーシア、祐斗、鋼弥は除く)から総ツッコミが入った。

それが止めとなったのか、一誠はガクリッと力尽きた。

 

「イッセーさん!!」

 

アーシアは一誠の元へと走り、神器を発動させて回復させようとしたが・・・

 

「それを待っていたわ!!反転(リバース)!!」

 

淡い緑色の光が、赤色の光りとなり――

 

「キャッ!!」

 

「グアッ!?」

 

一誠とアーシアにダメージが入り、二人はリタイアされたのだ。

まだ反転使いが残っていたか、しかし、反撃の糸口は見えた。

考えが正しければ、あそこに居るソーナもおそらく・・・。

 

「朱乃、お前の力を貸して欲しい」

 

「良いですわよ。私はどうすれば?」

 

「雷光を俺に向けて撃て」

 

朱乃の雷光を鋼弥に向けて撃つという言葉に皆が驚愕した。

リアスは慌てて、鋼弥に向けて叫ぶ。

 

「ちょっと!?鋼弥!?自棄になっちゃだめよ!!」

 

「自棄になってこんな事は言わないよ。俺は正気で言っているんだ」

 

「・・・解りましたわ、行きますわよ!!鋼弥さん!!」

 

「ちょっと、朱乃!!?」

 

リアスが制止しようが間に合わず、朱乃の両手から雷光が奔り出し、鋼弥に向けて放たれた。

鋼弥は両腕を突き出すと、朱乃の雷光を取り込んだのだ。

これには、誰もが驚愕したのだ。

 

「一誠が寝ている間、俺はタンニーンと相手にした時に開発した技だ。

 相手が放つ物は何でも良い、自然界のエネルギーや覇気などを自分の両拳に宿らせて繰り出す闘技。

 ―――『吸収弾の法』。そして、俺の格闘技を併せれば、負けない!!」

 

ダッと駆け出し、二人の僧侶が反転をしたが、それでも眼前に迫った。

雷光の力をものとしたため、今の鋼弥は雷その物となったのだ。

 

「真覇双雷烈!!」

 

二人の僧侶に雷が帯びた双掌打が撃ちこまれて、雷光が二人を包み込んだ。

雷光が消えると、二人は倒れて、リタイアした。

これにはソーナが予想外の事で驚いていた。

 

「反転が通用しない・・・!?」

 

「朱乃が放ったのはただの雷では無い。悪魔が嫌う光と合わさった雷光だ。

 雷だけなら反転できたが、光の部分だけは反転できなかった。

 更に、魔法が反転されるのならば、物理には反応しないという予想も当たっていたな」

 

「・・・!!」

 

すると、ソーナが突然消えた。ホログラム的なものだったろう。

二人を倒したから、それを長く続ける事ができなく消えたという訳だ。

王は司令塔の様なもの、つまり、ソーナが居るのは・・・

 

「屋上か」

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「まさか、涼刀くんが其処まで読んで、追い詰められるなんてね・・・」

 

ソーナは涼刀鋼弥を甘く見過ぎてはいなかった。

業魔化身を警戒していたが、勘の鋭さや洞察力もずば抜けていた。

屋上の扉が開かれる音が聞こえた。振り向くと、リアス達と銀色の少年がいたのだ。

リアスは前に出ようとするが、鋼弥が手で制止する。

 

「すまないが、ここは俺に任せてくれ」

 

リアスはゆっくりと頷く。鋼弥はソーナと対峙する。

 

「来ましたね。涼刀くん」

 

「もう残ってるのは貴女だけだ」

 

「・・・サジは赤龍帝に勝ちました」

 

「ああ、匙も頑張って成長したんだと感心したよ」

 

「フフフフ、ありがとう」

 

少しばかりの他愛のない会話だった。

ソーナは周囲に水のオーラを集め、鋼弥は力を集中させる

 

「では、始めますか?」

 

鋼弥は首を縦に頷いた。

ソーナは集めた大量の水を変化させ、鷹、大蛇、獅子、狼、巨大なドラゴンを幾重にも作り出す。

 

「セラフォルー殿は氷の魔力、ソーナは水の魔力を得意とするか。これほどまでの数、繊細技術は初めてだよ」

 

「さて、涼刀くん。私の水芸、とくと披露しましょうか!」

 

「ならば、俺も業魔化身で対抗しよう。それも新しいの姿をね」

 

鋼弥に足元に召喚の陣が描かれる。それも、今までのとは違い雷が奔っていた。

 

「――ルーグ」

 

契約した者の名前を告げると大雷が鋼弥を飲み込んだ。

姿を現したのは、金色の長髪と口元を覆うマスク、緑色のマント、両脇には刀が帯刀している。

ケルト神話において多くの伝説を残し、クー・フーリンを息子に持つ光明の神。

 

【我がの名はルーグ。鋼弥殿の召喚に応じ、ここにて参上!!】

 

威風堂々となる魔神ルーグ。互いに準備が出来た。

後は、戦いが始まるだけだ。

 

「新たな業魔化身ですか・・・面白い!!」

 

ソーナが手を向けると、水で形成された生物達が一斉に襲い掛かる。

ルーグは両脇の刀を抜き水の生物達を斬り払いながら、ソーナの所へ突き進む。

 

「簡単にはやられませんよ!」

 

ソーナは手を翳して命令を下し水出てきた生物たちが襲い掛かる。

ルーグは二刀流で襲いくる水の生物達を斬り捨てるが、幾ら斬り捨てても相手は水でできた生物達。

バラバラに切り裂かれようが、直ぐに元の形へと戻る。

 

「無駄です、水がある限りこの子たちは何度でも再生します」

 

【確かに水があれば直ぐにでも再生されてしまうか。ならば・・・】

 

刀を収めて、右手を天に翳すと雷が奔り、鑓の形を作る。

先端が黄金に輝いており、帯電していた。

 

「雷の鑓・・・?」

 

【ただの鑓ではない。我が最高の武器――魔鑓ブリューナク。雷その物の鑓だ】

 

ブリューナクを振り回して、構えをとる。

 

【押して参る!!】

 

ロケットスタートの如く、駆け出し、槍を振り回して水の生物達を次々と斬り捨てた。

直ぐに再生されるはずだろうが、何も変化しなかった。

何も加護を受けていない武器だったらソーナが作りだし水の魔物たちは直ぐに再生するだろう。

しかし、ゲイボルグ、ブリューナク、バルムンクなどの神や魔の武器と言った加護を受けている武器は無生物と言えど再生する事はできなくなる。

 

「行きなさい!!」

 

水でできたドラゴンに指示を出して、ルーグを呑みこもうとするが、高くジャンプして鑓を構える

 

【セヤアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!】

 

目にモノ止まらぬ速さでドラゴンを高速で突き、胴体に強烈な一撃で貫く。

地面に着地して、鑓を地面に指すとドラゴンはただの水となり崩れた。

 

「まだ、諦めません!!」

 

ソーナは水を集めて特大の水流を何本も作り上げる。

決意の眼差しで、断言する。

 

「夢を叶える為にも、仲間の為にも、命を駆けて道を切り開きます!!」

 

ルーグはフッと笑い、鑓を構える。

それは、真っ向勝負に応えるつもりだ。

 

【ソーナ・シトリー。そなたの覚悟と心意気しかと焼き付いた。ならば私はこの戦いに勝利を捧げん!!】

 

両者に緊張感が漂う。

 

【では、征くぞ?】

 

「望むところです」

 

ルーグの雷鑓ブリューナクとソーナの激流がぶつかり合った。

水蒸気で何も見えなくなったが、晴れると影が見えた。

ルーグの鑓はソーナの眼前で止まっていた。―――勝負は決まった。

 

「・・・わたしの完敗ですね」

 

『ソーナ・シトリー様の投了(リザイン)を確認しました。このゲームはリアス・グレモリー様の勝利です』


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