ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~ 作:Mr.エメト
若手悪魔達が案内された場所は異様な雰囲気がしている場所だった。
高い所に置かれた席には悪魔のお偉いさん達が座っている。
もう1つもう一つ上の段にはサーゼクス、セラフォルー、アジュカ・ベルゼブブ、ファルビウム・アスモデウスと四大魔王が座っていた。
高い位置から見下ろされている状態にある。
冥界を支える者たちだからこその位置と言うべきものだな。
リアスを含めた若手悪魔の六人が一歩前に出た。
鋼弥が叩きのめしたゼファードルの傷痕がまだ残っていた。
「よく集まってくれた。次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認するため、集まってもらった。
これは一定周期ごとに行う若き悪魔を見定める会合でもある」
初老の男性悪魔が手を組みながら威厳の声で言い、
「早速やってくれたようだが・・・」
皮肉げに言った。
鋼弥は自分のやったことに後悔はなかったように涼しい表情をしていた
「キミ逹六名は家柄、実力共に申し分のない次世代の悪魔だ。
だからこそ、デビュー前にお互い競い合い、力を高めてもらおうと思う」
「我々もいずれカオス・ブリゲードやゾロアスターとの戦に投入されるのですね?」
サーゼクスの言葉にサイラオーグが尋ね返したが、サーゼクスは首を横に振る
「それはまだ分からない。だが、出来るだけ若い悪魔逹は投入したくはないと思っている」
「何故です?若いとはいえ、我らとて悪魔の一端を担います。
この歳になるまで先人の方々からご厚意を受け、なお何も出来ないとなれば・・・」
「サイラオーグ、その勇気は認めよう。しかし無謀だ。
何よりも成長途中のキミ逹を戦場に送るのは避けたい。
それに次世代の悪魔を失うのはあまりに大きいのだよ、理解して欲しい。
キミ逹はキミ逹が思う以上に、我々にとって宝なのだよ。
だからこそ大事に、段階を踏んで成長して欲しいと思っている」
サーゼクスの言葉にサイラオーグは一応の納得をしたが、不満がありそうな顔をしていた。
だが、若手悪魔を心配するサーゼクスの言葉に感心を抱いた。
「最後にそれぞれの今後の目標を聞かせてもらえないだろうか?」
サーゼクスの問いかけにはサイラオーグは一番最初に答えた。
「俺は魔王になるのが夢です!!」
一番早く、そして真っ直ぐで迷い無く言い切ったサイラオーグ。
その目標にお偉いさん達も感嘆の息を漏らした。
「大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」
「俺が魔王になるしかないと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」
それに続いてリアスも今後の目標を言う。
「私はグレモリーの次期当主として生き、そしてレーティングゲームの各大会で優勝する事が近い将来の目標ですわ」
リアスの目標を初めて聞いた一誠は、リアスに使える眷族としてリアスを支援していくことを心に刻み込んだ。
鋼弥は仲間としてリアス達を守っていこうと思った。
そして次々と若手の悪魔達が夢や将来の目標を言って行き、最後のソーナは・・・
「私の夢は冥界にレーティングゲームの学校を建てる事です」
「レーティングゲームを学ぶ所ならば、既にある筈だが?」
「それは上級悪魔と一部の特権階級の悪魔のみしか行く事が許されない学校の事です。
私が建てたいのは下級悪魔、転生悪魔も通える分け隔ての無い学舎です」
身分に囚われない誰もがレーティングゲームを学ぶ事の出来る学校を作る。
その夢に一誠と鋼弥は素晴らしい夢だと感心し、匙は誇らしげにしていたが・・・。
『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!』
お偉いさん達の声が会場を支配し、嘲笑うかのように次々と口にし始めた。
「それは無理だ!」
「これは傑作だ!」
「なるほど!夢見る乙女と言うわけですな!」
「若いと言うのは良い!
しかし、シトリー家の次期当主ともあろう者がその様な夢を語るとは。
ここがデビュー前の顔合わせの場で良かったと言うものだ」
鋼弥は何故ソーナの夢がここまで馬鹿にされるのか疑問を抱くと、祐斗に尋ねた。
「祐斗、何故あの人たちはソーナの夢をあそこまで否定したんだ?」
「今の冥界がいくら変わりつつあるとしても、上級と下級、転生悪魔の差別はまだ存在する。
それが当たり前だと未だに信じている者達も多いんだ」
貴族の者だから、上に立つ悪魔だから正しいと思っている連中と言う訳か。
しかし、ソーナは臆することなく自分の目標を語る。
「私は本気です」
セラフォルーもうんうんと力強く頷いていたが、お偉いさんの一人は冷徹な言葉を口にする
「ソーナ・シトリー殿。
下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出だされるのが常。
その様な養成施設を作っては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰す事となりますぞ?
いくら悪魔の世界が変革の時期に入っていると言っても変えて良いものと悪いものがあります。
全く関係の無い、たかが下級悪魔に教えるなど・・・」
その一言に匙は黙っていられなくなった。
「黙って聞いてれば、なんでそんなに会長の・・・ソーナ様の夢をバカにするんスか!?
こんなのおかしいっスよ!叶えられないなんて決まった事じゃないじゃないですか!
俺達は本気なんスよ!」
「口を慎め、転生悪魔の若者よ。ソーナ殿、下僕の躾がなってませんな」
「・・・申し訳ございません。あとで言ってきかせます」
「会長!どうしてですか!この人逹、会長の、俺達の夢をバカにしたんスよ!どうして黙っているんですか!?」
「サジ、お黙りなさい。この場はそういう態度を取る場所ではないのです。私は将来の目標を語っただけ、それだけの事なのです」
「夢は所詮、夢。叶うことと叶わぬことがありますぞ。
ましてや下級悪魔如きがレーティングゲームを学ぶために行き来する学校など・・・」
「黙れ」
お偉いさんの一人の言葉を遮り鋼弥が声を上げた。いつもより、低い声だ。
お偉いさん達が座っている方へと歩き始め、祐斗がそれを引き止めようと尋ねる。
「鋼弥くん、一体何を・・・!?」
「止めるな祐斗、あの老人共に用がある」
祐斗を軽く振り切り、ソーナの隣に並んで立つ。
「貴様等は人の夢に批判する言葉をよく平気で言えるな。
それとも、冥界の老人共は、人の夢を笑うという悪趣味な連中の集まりか?
伝統と誇りを重んじ大事にする事は構わないが、他人にまで押し付ける事は許せない。
正しいのか他人に押し付け、意見を聞こうとしない。
冥界の上級悪魔の老人共が石頭では冥界は腐ってしまうな」
「貴様ァ!半人半魔の分際で我らを侮辱し、意見するつもりか!?」
お偉いさんの一人が耐え切れなくなったのか勢い良く立ち上がり、指差しながら怒声を上げた。
鋼弥は構わず、眼を赤く輝かせて続けて喋る。
「半人半魔だから、意見をしてはいけないという理由はどこにも無い。
単刀直入に言うと、その考えは若者たちの夢と未来を奪う行為をしていると、何故、理解できない?
俺は夢を無下にする貴様等の様な愚者共を絶対に許さん!!」
鋼弥の怒気を含ませた言葉で老人達はうろたえ黙らせたのだった。
間近で見たソーナも鋼弥の怒りの表情を初めて見た。
怖いけど、真っ直ぐな目をしていると感じたのだ。
「鋼弥くんの言う通りだよ!
だったら、うちのソーナちゃんがゲームで見事に勝っていけば文句も無いでしょう!?
ゲームで好成績を残せば叶えられる物も多いのだから!」
セラフォルー・レヴィアタンも怒りながら提案してきた
「もう!おじさま逹はうちのソーナちゃんをよってたかっていじめるんだもの!
私だって我慢の限界があるのよ!あんまりいじめると私がおじさま逹をいじめちゃうんだから!」
セラフォルーが涙目で物申し、お偉いさん逹は反応に困っていた。
ソーナ会長は恥ずかしそうに顔を手で覆う。
鋼弥はセラフォルーにゆっくりと頷いた。
セラフォルーはそれに気付き、鋼弥にピースサインで返した。
「ふむ、ではゲームをしよう。若手同士のだ。リアス、ソーナ、戦ってみないか?」
リアスとソーナは顔を見合わせ、目をパチクリさせて驚く。
そんな事は気にせずサーゼクスは構わず続けた。
「元々、近日中にリアスのゲームをする予定だった。
アザゼルが各勢力のレーティングゲームファンを集めてデビュー前の若手の試合を観戦させる名目もあったものだからね。
だからこそ丁度良い。リアスとソーナで1ゲーム執り行ってみようではないか。
対戦の日取りは、人間界の時間で8月20日。それまで各自好きに時間を割り振ってくれて構わない。
詳細は後日送信する」
サーゼクスの提案により、リアスとソーナのレーティングゲームが開始される事になった。
◇◆◇◆
「鋼弥!!貴方は少し考えてから行動しなさい!!」
「反省する事は無いと思うけどね」
リアスはガミガミと説教するが鋼弥は自分がやった事に後悔も反省もしていない。
サイラオーグが豪快に笑っていた。
「リアス、お前の助っ人は本当に面白いな!!」
「笑い事じゃないわよ!?一歩間違えていたら、大変な事になっていたわよ!!」
「もう過ぎた事だ。それに夢をバカにして良い権利なんて誰にも無い。
あの後、サーゼクス様がその事を話してくれたお陰で他の方々も理解し、自粛してくださった。
しかし真っ向からお偉いさん達に発言した上、黙らせたのは初めて見たぞ」
サイラオーグが腕を組みながら感嘆するように頷く。
鋼弥はただ、冷静に答えを返す。
「諦めない限り、夢と理想は叶う。最初から不可能と決めつけ反対されるのは納得できないさ」
「随分と真っ直ぐな事を言うのだな。益々、お前と戦える日を楽しみにしているぞ」
サイラオーグと別れてリアス達は戻ろうとするが、鋼弥は用事があるから先に帰っても大丈夫と言った。
理由はソーナは先程の件で落ち込んでいないか探していた。
しばらく歩いているとソーナと遭遇した。
「涼刀くん・・・」
「先程の件で見苦しい所を見せてしまったな」
「いえ、気にしていません。さっきは私逹の事で、あんな行動を起こしたんですか?」
ソーナの質問に鋼弥は目を瞑って淡々と口に出す
「平気で夢や理想を踏み躙る様な真似をする連中の事が許せなかったからだ」
「涼刀くんは、私の夢はどう思いますか?」
「差別のない学校を作る事は素晴らしい事だ。諦めない限り夢は叶う」
100%の保証は無いが、不思議と鋼弥の言葉を聞いて夢は叶えられる気がした。
ソーナはクスリッと笑い、お礼を言う
「ありがとうございます。ですが、レーティングゲームの時は手加減はしませんよ?」
「ああ、その時を楽しみに待っている」