ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第十二話 =JACK POT=

『ヴァーリ、奴は半減の力に対する解析は済んだ。こちらの力の制御方法を照らし合わせれば対処は出来る』

 

「アルビオン。今の兵藤一誠に白龍皇の≪覇龍(ジャガーノート・ドライブ)≫を見せるだけの価値はあるんじゃないか?」

 

『ヴァーリ、無暗に≪覇龍(ジャガーノート・ドライブ)≫を発動すれば、ドライグの呪縛が解けるかもしれないぞ』

 

「それでも、願ったりかなったりだアルビオン。『我、目覚めるは、覇の理に・・・』」

 

『自重しろヴァーリ!!我が力に翻弄されるのがお前の本懐か!?』

 

アルビオンが怒りながらヴァーリを止めようとする。

一誠は新たな攻撃が来る前にトドメの一撃を放とうとしたが、その間に三国志の鎧を着た男が入り込んできた。

 

「ヴァーリ、迎えに来たぜぃ」

 

「美猴(びこう)か。何をしに来た?」

 

「それは酷いんだぜぃ?

 相方がピンチだっつーから遠路はるばるこの島国まで来たってのによぅ?

 他の奴らが本部で騒いでるぜぃ?

 北の田舎アース神族と一戦交えるから任務に失敗したのなら、さっさと逃げ帰ってこいってよ?

 カテレアはミカエル、アザゼル、ルシファーの暗殺に失敗したんだろう?

 なら監察役のお前の役目も終わりだ。俺っちと一緒に帰ろうや」

 

話し込むヴァーリと美猴となる男。

鋼弥はその風貌を見て、言葉を発した。

 

「闘戦勝仏(とうせんしょうぶつ)。斉天大聖(セイテンタイセイ)の孫悟空の者か」

 

「えええええええええええええええっ!?そ、そ、孫悟空!!?」

 

一誠が物凄く驚いていた。

無理もない一誠が読んでいる漫画がまさにそれだからな・・・。

アザゼルが続けて言う。

 

「正確には孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だ。仏になる筈の妖怪が≪禍の団(カオス・ブリゲード)≫とやらに入っているとは世も末だな」

 

「俺っちは仏になった初代と違うんだぜぃ。自由気ままに生きるのさ。

 そんで、俺っちの名は美猴。よろしくな、赤龍帝に魔界のハンター」

 

美猴は手元に棍を出現させ、地面に突き立てる。

地面に黒い闇が広がり、ヴァーリと美猴を沈ませていく。

一誠は逃がすまいと捕まえようとするが、神器が解除された上に激しい疲労が襲う。

鋼弥は倒れる一誠を支えて、逃げていくヴァーリと美猴をただ見るだけしか無かった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

校庭には祐斗とゼノヴィアが斬り捨てた、魔術師たちの死体だらけだった。

≪禍の団≫が去り、戦闘は終わった。鋼弥はカテレアを拘束しようと歩み出した。

 

「鋼弥、一つ聞きたい事があるんだ」

 

「なんだ?」

 

「嶺爾の奴が、お前たち兄弟の両親はゾロアスターの奴らに奪われたって・・・本当なのか?」

 

鋼弥は目を瞑り頷いた、どうやら本当の事だった。

リアスは腕を組んで鋼弥に問い詰めた。

 

「どうして、事故で亡くなったと嘘をついたの?」

 

「・・・すまない。こればかりは本当にお前達には巻き込んで欲しくなかった件なんだ」

 

「なんでだよ!!俺たちは仲間だろ!!なのになんで・・・」

 

「仲間だから!!仲間だからこそ、お前達に迷惑をかけたくない。命の危険を曝させたくないんだ」

 

鋼弥は顔を上げて、一誠達にそう言う。シンディは鋼弥の所へ近づく。

 

「鋼弥。貴方は人一倍、責任感があり、仲間の事を何よりも大切にする優しい性格です。

 しかし、一人で頑張っても限界があります。ここは頼ってもいいのではないでしょうか?」

 

「・・・・・・。」

 

「鋼弥。俺は俺たちは何があっても、仲間だから。話してくれよ」

 

「・・・解った」

 

 

――ゾロアスター。

 

――それは、原初の悪神(ヴァイス・オリジン)のアンリ・マンユを崇拝している軍団。

 

――かつて、俺の父さんと仲間達はアンリ・マンユとその配下と戦い、遂には封印した。

 

――封印されたアンリ・マンユはアマラ深界へと追放されたが、配下の悪魔達は諦めた訳では無かった。

 

――再びアンリ・マンユを甦らせんが為に暗躍していた。

 

 

「そんなことが・・・」

 

「配下の悪魔達は恨みを晴らす為に俺たち兄弟を人質に取り、父さんは殺され、母さんは俺を庇って・・・」

 

あの時の光景は一度も忘れた事は無い。

卑怯にして残忍なゾロアスターの悪魔は、幼い鋼弥と嶺爾を人質に取り父は殺された。

今度は鋼弥を殺そうとするが、母が庇い最後の力を振り絞って、転移魔法を使った。

自分が幼く弱かったばかりに、父と母は死に、嶺爾は力を求めて立ち去ったのだ。

 

鋼弥の過去を聞いて、一誠たちは衝撃を受けていた。

まさか、鋼弥と嶺爾にそんな、悲しい過去を背負っていたなんて・・・。

その時だった。

 

ドッガシャアアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

新校舎の窓から二人の影が突き破り、侵入してきた。

ギャスパーを捕獲していたザリチェとタルウィだ。

遅れて、タナトスが降り立つ。

 

【あ゛ー、あのクソ野郎が、マジで手加減しネェナァ!!】

 

【しかも・・・やっべー、所に出ちまったしな・・・】

 

「やはり、ゾロアスターもここに来ていたのか」

 

【うげっ、"アルギュロス"の野郎かよ。メンドクセー時に出会っちまったぜ・・・】

 

【どーすんだよザリチェ。召喚の御符はカテレアの奴に一枚しか持ってきてないぜ?】

 

【ったく、サルワのアホがケチッたからなぁ・・・。ここは最後の手段を使おうか?】

 

ザリチェが、ボロボロになっているカテレアを見る。

タルウィは何か理解したのかニヤッとしていた。

ふら付きながら、起き上ったカテレアはザリチェとタルウィに助けを求めた。

 

「あ、貴方達、今直ぐに私を助けなさい!!私はここで、倒れる訳にはいかないのです・・・!!」

 

【・・・ああ、助けてやるよ。お前の身体を乗っ取ってな!!】

 

「な、なにを!?」

 

【【憑依合体!!】】

 

二人は黒い煙になってカテレアの中へと入り込んだ。

ドクンッドクンッと胎動すると、見る見るうちにカテレアは黒い渦へと呑みこまれた。

渦が消えると、其処には蒼色の海竜が姿を現したのだ。

それこそ、終末の時に現れる海の怪竜リバイアサン(レヴィアタン)そのものだ。

 

「怪物へと変わり果てたか・・・」

 

【ゾロアスターに関わった者の末路と言う訳だ、同情の欠片もない愚かな女だな】

 

タナトスが淡々と呟くが、鋼弥は業魔化身を使いアンクーへとなる。

 

【だからと言って、放っておく訳にはいかない】

 

アンクーは大鎌を取り出し、タナトスは大刀を抜き取る。

同時に駆け出し、鎌と剣による斬撃を海竜へ与える。

海竜は雄叫びをあげて、巨大な尾を振るったり、口から凍える息吹を放つ。

アンクーは鎌を振り回して、冷気を弾き、タナトスは大刀で尾を切り払う。

いくら、殺し合う仲とはいえ、お互いがどの部分を攻撃するのか解っている。

いや、二人が兄弟だからこそできる技と言えよう。

二人の目が輝き、そして―――――。

 

【【空間殺法!!】】

 

アンクーの鎌とタナトスの剣が振り下ろされると同時に、海竜の範囲だけ切り刻まれていく。

無数の刃が海竜を斬り付けまくる、海竜は悲鳴を上げて、弱る。

最後の力を振り絞って二人を呑みこまんと口を大きく開けて襲い掛かろうとする。

アンクーとタナトスは銃を構えて、狙いを定めていた。

 

【・・・今回だけは付き合ってやる】

 

【・・・合言葉は覚えているか?】

 

二人の死神がニヤリッと笑い―――。

 

【【JACK POT!!】】

 

ズドンッ―――!!

 

魔力が込められた弾丸が同時に撃ち、海竜の頭を撃ち貫いた。

海竜は力尽きて、倒れると身体がボロボロと崩れた。

其処から、カテレアから分離したザリチェとタルウィが現れたが弱っていた。

 

【くそったれが・・・作戦は失敗かよ】

 

【悔しいけど、ここは逃げるしかないねぇ!!】

 

アンクーとタナトスを憎々しげに睨む二人は、その場から消え去った。

タナトスは何も言わず歩み、壊れた窓から外へと出て行った。

姿を解いて、元の姿へと戻る鋼弥、すると入れ替わりに祐斗とゼノヴィアが入って来た。

 

「今、黒い死神が飛び出したけど、あれは嶺爾・・・?」

 

「ああ・・・また、逃げられてしまったけどね」

 

その後、鋼弥は他のオカルト研究部。

サーゼクス、ミカエルに俺の真の目的と嶺爾が地上世界に現れた理由を話した。

軽蔑されても構わなかった。そう思っていたが・・・皆は励ましてくれた。

辛かったけど、よく話してくれたとも言ってくれた。

朱乃はギュッと抱きしめて―――。

 

「鋼弥さん、貴方だけ辛い思いはさせません。私はずっと貴方と傍に居ますから・・・」

 

「ありがとう、朱乃・・・」

 

皆に知られたって構わないくらい。俺は朱乃事を思いっきり抱きしめ返した。


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