ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第九話 =業魔跋扈=

嶺爾の発言に驚く一誠たちだが、鋼弥だけは睨んで怒気を含ませて言葉を放つ。

 

「正気で言っているのか?」

 

「ああ。この街が消滅したら、貴様と戦う事が出来なくなるからな」

 

「あくまで、俺と戦うという目的の為か・・・」

 

「それ以上の理由でも必要なら、聖魔剣の騎士、デュランダル使いも俺が戦う相手として見ているからな」

 

「強い者と戦う事に喜ぶなんて・・・コカビエル以上に危険ね」

 

リアスがそう言うが、嶺爾は冷めた表情で言い返す

 

「・・・これが俺の性分だからな」

 

嶺爾はコカビエルと対峙する

 

「さて、大戦で生き延びたという猛者がどれほどの実力者なのか。

 楽しませてもらおうか、退屈させるなよ?」

 

スッと召喚の陣を描き出すと、周りに無数の蛇が出現し嶺爾を囲む

 

「――ヴァスキ」

 

その瞬間、無数の蛇が嶺爾を飲み込まれる。

蛇たちが消えると、インド風の衣装、コブラの頭、四本の腕を持った蛇神が姿を現した

これには鋼弥と体内のヘルハウンドが驚く

 

(ヴァスキ!?まさか"あのナーガ"なのかよ!?)

 

「まさかと思うが、"昇格(ランクアップ)"したというのか・・・!!」

 

【そのとおりだ。

 ワシは修練を重ね、力を蓄えてナーガからヴァスキへと昇格(ランクアップ)したのだ。

 くくくっ・・・残念だったな犬コロ】

 

ヴァスキがヘルハウンドを馬鹿にしていた。

体内からヘルハウンドの(グヌヌヌ・・・)と悔しがる声が聞こえる

ヴァスキは舌でチロチロと出しながら、コカビエルを睨む

 

【さて、我が毒気と冷気、どこまで耐えれるかな?――アイシクル!!】

 

四本の腕から、同時に巨大な氷の結晶が放たれる。

 

「ふん、こんな氷なんぞ、破壊してくれる!!」

 

コカビエルは光の槍を生成し、氷の結晶を破壊する。

だが、その場にいたヴァスキが居ない。

 

【シシシシッ・・・こっちだよ】

 

背後に回って、長く太い尾でコカビエルを締め上げる

万力の様にジワジワと締め上げていく

メキメキッとコカビエルの身体が悲鳴を上げる

 

「がああああっ!!」

 

【クラエ!!ポイズダイン!!】

 

コカビエルを放り投げて、紫色に輝く手刀を腹部に打ち込む。

地面に叩きつけられて、ヨロヨロと立ち上がるが足元があぼつかない。

 

「き、貴様・・・何をした!?」

 

【シシシシッ・・・。

 魔力に毒をのせた攻撃と言えば納得できるか?先程の攻撃でお前の体力をジワジワと削る毒でね。

 10分、経てば完全に動けなくなるぞ?】

 

「な、なにぃ・・・!?」

 

【最も、10分も待たずに、八つ裂きにされるがな!!】

 

姿を解くと、嶺爾の足元に新たな召喚の陣が描かれる

 

「――アメノサギリ」

 

背後から、空間が裂けると無数の目が覗いていた

あれを見ているだけで寒気、恐怖が襲い掛かってきそうだ。

嶺爾はバックステップでその中へと入ると、裂け目がザワザワとし、その中から紫色のドレスに、巨乳で金色の長髪の女性が現れた

 

【ウフフッ、御機嫌よう、堕天使さん。私の名はアメノサギリと申しますわ】

 

「す、姿が変わっただと・・・?貴様も其処の男と同じ能力を持っているのか?」

 

【ええ、その通りよ。でもねぇ・・・】

 

にこやかな顔から冷めた表情となり、周りの空気が凍り付きそになった。

これは、鋼弥のコノハナサクヤと同じ雰囲気だ。

 

【貴方の様な三流堕天使が調子に乗るのは腹が立つのよ】

 

裂け目から西洋傘を取り出すと、先からサッカーボールサイズの紫電色の光球が集まる。

 

【メギド】

 

紫電色の光球が放たれるとコカビエルの目の前で止まった

 

「こんなもの!!」

 

黒い翼で破壊しようとした瞬間、凄まじき爆発が起こりコカビエルの黒い翼が消し飛んだ。

 

「うぐぐ・・・これほどとは・・・」

 

【一つ言っておくけど、さっきのは中級の魔法よ】

 

鋼弥以外は皆が驚愕した。

あのサイズで、コカビエルの翼を焼き尽した威力と破壊力だ。

鋼弥が口を開く

 

「・・・あれは上級悪魔と天使のみが使う事が許される。万能魔法"メギド"だ」

 

「万能魔法?」

 

「ありとあらゆる属性を無視して、ダメージを与える万魔の閃光。防ぐ事は―――不可能だ」

 

ありとあらゆる悪魔の属性を無視し全て等しくダメージを与える万魔の閃光"メギド"。

しかも、あれで中級クラスで、それ以上が存在するというのか!?

 

【じゃあ、特別にその上を見せてあげるわよ。耐えればの話だけどね?】

 

先程のメギドを6つ作り、それをコカビエルに囲んだ。

そして、七つ目のメギドをコカビエルの頭上に放つとそこから放たれる紫電が繋がりだす

 

【メギドラ】

 

ズッドオオオォォォォォォォォォォン!!!!

 

先程よりも轟音が響き渡り、土煙が舞う。

鋼弥は魔力障壁で皆を護っていたが、それでも空気の振動でここまで響くのが解る

 

「なんて、威力なの!?わたしの"消滅"の力と同じだわ!!」

 

「ここまで来ると、強さのレベルがあまりにも違いすぎますわ・・・」

 

煙が晴れると黒い翼がボロボロになっており、ボロボロとなったコカビエルが其処に居た。

 

【あら?身体は意外と頑丈なのね?】

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

翼を羽ばたかせて、両手を宙に広げる

 

「俺の光に勝てると思うかァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

コカビエルの頭上に巨大な光の槍を作りだす。

学園を破壊するほどの大きさを持った光の槍が、アメノサギリに向けて放たれようとしていた。

 

【あらあら。

 ヴァスキの毒を喰らってもまだそんな余力を持っているなんてね・・・

 でも、止めを刺すのはわたしじゃなくてよ?】

 

そう言い残すと、アメノサギリの姿を解除しまた嶺爾となり、召喚の陣を描き出した。

それはとてつもなく大きい陣が描かれていた。

 

「――セト」

 

その瞬間、砂嵐が巻き起こり始めた。コカビエルはその隙を見逃さず・・・

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

光の槍を投擲し砂嵐まで迫った刹那だった。

砂嵐が晴れると、全長20mはあろう黒い翼竜が姿を現したのだ。

瞼がカッと開かれ黄色い瞳が映りだす。

 

――グァァァアアアアォォォォォォォォォォオンッ!!

 

荒々しい雄叫びをあげた後、口から青白い光線が放たれコカビエルの光の槍を破壊したのだ

 

「ば・・・バカな・・・」

 

【邪神である我にそのような物が通用すると思っているのか?】

 

遠雷の様に響き渡る重々しい声を放つ黒き翼竜の邪神セト。

翼を羽ばたかせ、空へと飛び立つ、その羽ばたきだけで強風が巻き起こり、飛ばされそうになる一誠たち

グルルルッと咽喉を唸らし、コカビエルに近づき、コカビエルは一歩下がる

 

「く、くるな・・・!!」

 

【恐怖したか、無理もない。

 自分が持てる力を出してそれを破壊されれば勝てないという恐怖心にかられるからな。

 さぁ・・・この世の暴風に飲まれるがいい】

 

セトは身体を丸めるようにちぢこませると力を溜めてる

すると、風がシンッと止んだ。

いや・・・正確に言えば、大気がセトを吸収しているのだ。

 

「まさか・・・!!」

 

鋼弥はヒジリに変身して、経巻を広げる

 

【皆さん!!私の後ろに集まって下さい!!】

 

「な、何が起きるんだよ!?」

 

【おそらく、最大技を放つつもりです!!】

 

一誠たちは、ヒジリの指示に従って後ろに集まる。

ヒジリは最大の魔力障壁を張り巡らして、衝撃に備える。

 

その瞬間―――

 

【ミッドバル・アヴォン!!】

 

セトは翼を思いっきり広げると大気が荒れ狂いだし、学園に悪意に満ちた砂嵐が巻き起こった

轟音が鳴り響き巻き起こる砂嵐は止むことなく荒れ狂う。

更には学園全体に張られていた結界にビシビシッとヒビが入り始めたのだ。

砂嵐が収束すると・・・校庭のグラウンドが、あちらこちらと抉れていたのだった。

そこに、ボロボロのコカビエルが地に倒れていた。

 

――グァァァアアアアォォォォォォォォォォオンッ!!

 

セトは、地面に降り立ち勝利の雄叫びをあげた後、嶺爾となった。

 

「堕天使の幹部と聞いて、どれくらい持つのかと思ったがその程度だったとはな・・・」

 

嶺爾はふっと夜空を見上げていた、其処に現れたのは白き全身鎧を纏った者

背中から生える八枚の光の翼が神々しい輝きを発している

そして色と形は違えど、一誠の"赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)"に似ていた

神秘の輝きを放ち、汚れが一切ない白き姿に心を魅了されそうだ

嶺爾はついに見つけたという、顔をしていた

 

「・・・"白い龍(バニシング・ドラゴン)"か」

 

【"白い龍"。ゼノヴィアさんが言っていた。"赤い龍(ウエルシュ・ドラゴン)"と遂になる存在・・・】

 

「"神滅具(ロンギヌス)"のひとつ、"白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)"。

 鎧と化していると言う事は、既にその姿は禁手(バランス・ブレイカー)状態である"白龍皇の鎧(ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル)"だな。

 "赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)"同様、最高クラスの存在だ」

 

【・・・嶺爾、そこまで知っているの?】

 

「赤い龍が目覚めていれば同じ様に白い龍も目覚めているのさ。

 最も、こんなに早く出会えるとは予想外だったがな・・・」

 

ヒジリの姿を解いて、鋼弥となると白い鎧から声が聞こえる

 

「なるほど、君たちが噂に聞くという"神魔"を操る者たちか、中々面白いな

 コカビエルを無理矢理にでも連れて帰るようアザゼルに言われてたんだが・・・、

 君のお陰で手間が省けた」

 

コカビエルはピクリッとも動かなかった。

先程のダメージとヴァスキの毒が蓄積し、動けなくなったのだろう

 

「別に貴様の為にやった訳ではない。戦争狂の堕天使がどれほど強いのか、戦っただけさ」

 

「そうか・・・。では、今度は俺と戦ってみるか?」

 

「それは面白い提案だな。だが、やめておくとしよう」

 

「俺もだな・・・。あんたの能力、対策無しで戦うとこっちが負ける」

 

「一目で我が力を察知するとは・・・。

 君達の考え通り、我が神器(セイクリッド・ギア)"白龍皇の光翼"の能力ひとつ、

 触れた者の力を十秒毎に半分にさせていき相手の力は我が糧となる」

 

「赤龍帝は十秒毎に倍増、白龍皇は逆に半減で力をモノとする・・・規格外過ぎるな」

 

いや、あんな大規模な攻撃ができる神魔になる兄弟の方が規格外過ぎる、と一誠たちは心の中でそう思っていた。

白い鎧の男はコカビエルとフリードを肩に担ぐ。

すると、一誠の籠手が光りだし、白龍皇の鎧の宝玉も輝きだした

 

『起きていたか、赤いの』

 

『せっかく出会ったのにこの状況ではな・・・』

 

『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういう事もある』

 

『しかし、白いの。以前の様な敵意が伝わってこないが?』

 

『赤いの、そちらも敵意が段違いに低いじゃないか』

 

『お互い、戦い以外の興味対象があるという事か』

 

『そういう事だ。こちらは暫く独自に楽しませてもらうよ。

 たまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ』

 

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

 

赤龍帝と白龍皇の会話が終了した

 

「アルビオン、それがお前の名前か・・・?」

 

「正確には、この鎧に宿るドラゴンの名前だ。銀髪の少年たちよ、名は?」

 

「俺は涼刀鋼弥だ」

 

「・・・涼刀嶺爾」

 

「ふっ、なるほど。覚えておくよ赤龍帝、二つの銀牙」

 

白龍皇は白き閃光となって飛び立っていった。

コカビエルの展開していた破壊の魔方陣も消滅した。

こうして、戦いが終わり町が救われたのだ

 

「・・・嶺爾」

 

いつの間にか、嶺爾は消え去っていた。

出会えるのかは解らないが、出会ったときは必ず・・・

今は、無事に終わったこの今を大事にしよう

 

「お前もやったじゃねぇか色男!それが聖魔剣か。白いのと黒いのが入り交じっててキレイなもんだなぁ」

 

「イッセーくん、僕は・・・」

 

「ま、今は細かいの言いっこ無しだ。

 とりあえず、いったん終了って事で良いだろう?

 聖剣もさ、お前の仲間の事もさ」

 

「うん・・・」

 

「木場さん、また一緒に部活出来ますよね?」

 

アーシアが心配そうに訊いてくる

神がいない事を知ってショックを受けている筈なのに、祐斗を心配してくれている

大丈夫と答えようとした祐斗をリアスが呼ぶ

 

「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに禁手だなんて、私も誇れるわよ」

 

「部長、僕は・・・部員の皆に・・・、

 何よりも、一度命を救ってくれたあなたを裏切ってしまいました・・・。

 お詫びする言葉が見つかりません・・・」

 

「祐斗、君は俺たちの所へ無事に帰って来たんだ。それだけでも、十分さ」

 

「ありがとう、鋼弥くん。」

 

「・・・ようやく、名前で呼んでくれたか」

 

「部長、僕はここに改めて誓います。

 僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷属の"騎士"として、

 あなたと仲間達を終生お守りします」

 

「うふふ。ありがとう。

 でも、それをイッセーの前で言ってはダメよ?」

 

見てみると、一誠が祐斗を嫉妬の眼差しで睨んでいた

 

「俺だって、騎士になって部長を守りたかったんだぞ!

 でも、お前以外に部長の『騎士』を務まる奴がいないんだよ!

 責任持って、任務を完遂しろ!」

 

「うん、分かっているよ。イッセーくん」

 

「さて、と」

 

ブゥゥゥン、とリアスの手が紅いオーラに包まれる

 

「あ、あの、何事でしょうか?」

 

「祐斗、勝手な事をした罰よ。お尻叩き千回ね」

 

祐斗が尻叩きをくらってる間、一誠はその様子を見て爆笑した

日が差し込み、太陽が昇り始めたのだ


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