ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第七話 =魂の聖歌=

リアスのお仕置きから逃げのびる事が出来た鋼弥。

だが、しばらくしての真夜中・・・異様な気配を感じる

 

「堕天使コカビエルとやらが来たという訳か」

 

相手は"グリゴリ"の堕天使の幹部、そして、歴戦を生き延びてきた強者(つわもの)。

その方向は・・・駒王学園の方だ。

 

「・・・行くとしよう。おそらくイッセーもリアスも戦場に居る筈だ」

 

黒いマントを身に纏い、籠手をつけ、回復道具を袋に入れて準備をする

家を出て、屋根から屋根へと跳ぶ。

 

 

◇◆◇◆

 

 

学園の校門に辿り着くと、ソーナとサジが其処に居た。

どうやら、結界を張っているようだ

俺は二人の前に着地すると二人は驚いていた。

 

「こんばんは、二人とも」

 

「涼刀くん!?」

 

「鋼弥!?お前、今どこから・・・」

 

「それより・・・、一誠達はこの結界の向こうに?」

 

「はい。

 堕天使コカビエルの気配と複数の魔獣とぶつかり合ってる気配もします。

 おそらくはケルベロスでしょう」

 

「ケルベロスか。それは、また厄介な奴を連れてきたな・・・」

 

魔界でもその名を轟かす最強の魔獣。

姿形が異なっており伝承通りなら三つ首タイプ、獅子の様な体格と鬣をしたタイプの二種類

口からは地獄の火炎を吐くという冥府の門を護る番犬だ

 

「この中にコカビエル、フリード、バルパーがいるという訳か・・・。ソーナ、俺をこの中に入れてくれ」

 

「・・・はい」

 

ソーナは小さく頷き、結界に隙間を開ける

サジはソーナの事を呼び捨てにした事に気にしているのかムッとした顔をしていた

 

「気を付けてください、涼刀くん」

 

鋼弥はフッと笑い、親指を立てていた。

"心配するな"というサインだろう。

隙間から結界内に侵入し、一誠達の所へ駆け抜ける。

 

 

◇◆◇◆

 

 

走りながら、アンヴァルへと変身し学園の校庭に出る。

一匹はリアス達と交戦中で、もう一匹は一誠とアーシアを喰らおうとしていた。

 

【セヤッ!!】

 

超スピードでの飛び蹴りがケルベロスの腹に決まり、ケルベロスは地面へと転がった。

 

「鋼弥か!?」

 

「鋼弥さん!」

 

【間に合って良かったよ、一誠くん、アーシアさん】

 

「遅いわよ!!貴方の主は何していたのよ!?」

 

【・・・申し訳ない。ですが、主はこう言う時の為に準備をしていたんです】

 

袋の中身を取り出すと、瓢箪を取り出した。

 

「それは一体何でしょうか?」

 

【これはソーマと言って、体力と魔力を全開にする霊薬です。

 この間逃げた件と遅刻した件のお詫びとして飲んでください】

 

アンヴァルはソーマをリアス達に渡し、ケルベロスたちと対峙する。

 

【事情はソーナから聞きました。ここは、私に任せて貴方達はコカビエルを阻止してください】

 

「たった一人で、相手にするのは危険すぎるぜ!!俺だって・・・」

 

【ありがとう、一誠くん。ですが・・・この魔獣を傷つけずに追い払うのは僕の役目です】

 

あの、ケルベロスたちを!?

それは絶対に無理な話だ。

獰猛な性格をしたケルベロスを傷つけずに追い払うなんて不可能だ。

アンヴァルは銀色に輝くフルートを取り出す。

 

【力ずくで追い払うのが全てでは無い。こういうのも力だ】

 

目を瞑り、フルートを鳴らす。優しく穏やかな音色が辺りに流れる。

すると、獰猛なケルベロス達は大人しくなり、お座りをしたのだ。

これには、驚きを隠せない一誠たち。

フルートの音色を奏で終わると、アンヴァルはゆっくりとケルベロスを撫でる

 

【よしよし、良い子だね。さぁ・・・元の世界へお帰り】

 

アンヴァルは大きな召喚の陣を描くと、ケルベロス達は光に飲まれて消え去った。

 

「あのケルベロス達をどうしたの・・・?」

 

【ケルベロスは甘い物と音楽が好きなんだ。

 だから、音色を奏でれば大人しくなり言う事を聞く様になる。

 あの子たちは、魔界へと送り仲間たちと静かに暮らしている】

 

「す、すっげーな・・・。そんなことまでできるのかよ」

 

【・・・無理矢理、連れてこられたあの子たちが可哀相と思って、あの手段をとりました】

 

力で捻じ伏せて、倒す事は簡単だ。

だが、アンヴァルは音楽を奏でて、ケルベロス達を大人しくさせて魔界へと送り込んだ。

命を護る為の労り、愛しむ、慈愛の力を待ち合わせている訳か。

元の鋼弥の姿に戻ると・・・

 

「ほう・・・ケルベロス共を無傷で追い返すとは、更に獣人から人になるとは面白いな」

 

声がする方を見ると十枚の漆黒の翼を持った若い堕天使がいた。

あれが堕天使の幹部が一人のコカビエルか。

 

「くくく、魔王の妹を二人、犯してから殺せば、サーゼクスとセラフォルーの激情が俺に向けられるのなら、悪くは無い」

 

今の発言を聞いて、やっと線と線が繋がった。

神と悪魔の戦争を再び起こす為に、こんな行動を起こしたという訳か。

尚更、こいつの所業を許す訳にはいかなくなってきたな・・・

 

「くらいなさい!コカビエル!」

 

赤龍帝の力を譲渡されたリアスは、巨大な魔力の塊をコカビエルに向かって撃つ

だが、コカビエルは片手を前に突き出して巨大な一撃を防ぎ、軌道をずらした

 

「なるほど。赤龍帝の力があれば、

 "滅びの力"を持つリアス・グレモリーの力をここまで、引き上がるか。

 その上、悪魔へと変身できる人間・・・面白い!!これは酷く面白いぞ!!」

 

コカビエルは空中で笑う中、強い光が発された

見てみると、校庭の真ん中にある四本のエクスカリバーが重なり、一本に戻っていった

 

「エクスカリバーが一本になった光で、下の術式も完成した。

 あと20分もしない内にこの町は崩壊するだろう。

 解除するにはコカビエルを倒すしかない・・・」

 

この町が消滅する・・・?本当に最低な事をしてくれるよ。

 

「陣のエクスカリバーを使え。最後の余興だ。

 四本の力を得たエクスカリバーで戦ってみろ」

 

「へいへい。まーったく、俺のボスは人使いが荒くてさぁ。

 でもでも!チョー素敵仕様になったエクスなカリバーちゃんを使えるなんて光栄の極み、みたいな?

 ちょっくら、悪魔でもチョッパーしますかね!」

 

フリードは校庭のエクスカリバーを握り構える

 

「こうなってしまった以上、エクスカリバーを破壊するしかない。

 最悪、"欠片"を回収すれば何の問題もない筈だ。

 聖剣は使う者によって、場合も変わる。・・・あれは異形の剣だ」

 

ゼノヴィアは"エクスカリバーの破壊"を承認する。

祐斗はバルパーと向きあう。

 

「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残りだ。

 いや、正確にはあなたに殺された身だ。悪魔に転生した事で生き永らえている」

 

「ほう、あの計画の生き残りか、これは数奇なものだ。

 こんな極東の国で会う事になろうとは。縁を感じるな」

 

ニヤリッと笑う大司教は自分の過去を語りだす

 

「私はな。聖剣が好きなのだよ。それこそ夢にまで見る程に。

 幼少の頃、エクスカリバーの伝記に心を躍らせたからなのだろうな。

 だからこそ、自分に聖剣使いの適性が無いと知った時の絶望と言ったらなかった。

 自分では使えないからこそ、使える者に憧れを抱いた。

 その想いは高まり、聖剣を使える者を人工的に創り出す研究に没頭する様になったのだよ。

 そして完成した。君達のお陰だ」

 

「完成?僕達を失敗作だと断じて処分したじゃないか・・・」

 

バルパーの言葉にある事に気が付いた鋼弥はその答えを言う。

 

「そうか、あの聖剣計画の真の目的は"聖なる因子を被験者から抽出し、結晶を作り上げる"事だろう」

 

何故、そんな答えが解ったのか・・・。

それはレイナーレとアーシアの件だ。

かつて、レイナーレはアーシアの神器を奪い至高な存在になろうとした。

 

~他人の神器を抜き取り、自分の者とする~

 

レイナーレの言葉やあの時に調べた教会の装置を理解したからこそ辿り着いた答えだ。

すると、バルパーは懐から光っている水晶のようなものを取り出した。

それを見た祐斗は声を張り上げた。

 

「同志たちを殺して、聖剣の適性因子だけを取り除いたのか!?」

 

「そうだ、この球体はその時のものだ。三つほどフリードたちに使ったがね。これは最後の一つだ」

 

バルパーは結晶をかざしながらそう言っていたが祐斗は特大の殺気を出しながら再び口を開いた。

 

「・・・バルパー・ガリレイ。自分の研究、自分の欲望のために、どれだけの命を弄んだんだ・・・!!」

 

「ふん。それだけ言うのならば、この因子の結晶を貴様にくれてやる。

 環境が整えば、後で量産出来る段階まで研究はきている。まずはこの町をコカビエルと共に破壊しよう。

 後は世界の各地で保管されている伝説の聖剣をかき集めようか。

 そして聖剣使いを量産し、統合されたエクスカリバーを用いて、ミカエルとヴァチカンに戦争を仕掛けてくれる。

 私を断罪した愚かな天使どもと信徒どもに私の研究を見せ付けてやるのだよ」

 

バルパーは持っていた因子の結晶を放り投げた。

祐斗は足元に行き着きついた結晶を拾うと哀しそうに、愛しそうに、懐かしそうに撫でた。

そして祐斗の目から涙が流れる。

すると結晶が淡く光り始め、徐々に広がっていき、校庭を包み込んだ。

地面から光が浮いてきて形を成していった、祐斗を囲うように、光が人の形に形成されていった

 

「これは・・・一体?」

 

朱乃が分かったように口を開いた。

 

「きっと、この戦場に漂う様々な力が因子の球体から魂を解き放ったのです」

 

今この場には魔剣、聖剣、悪魔、堕天使、半人半魔と言った強力な力が集合している。

そして、形を成した光。聖剣計画の犠牲となった人達だと理解出来た。

 

「皆!僕は!僕は!!ずっと、ずっと思っていたんだ。

 僕が、僕だけが生きていて良いのかって。僕よりも夢を持った子がいた。

 僕よりも生きたかった子がいた。

 僕だけが平和な暮らしを過ごして良いのかって・・・」

 

霊魂の少年の1人が微笑みながら、祐斗に何かを伝える

 

「・・・〈自分達の事はもういい。キミだけでも生きてくれ〉。彼らはそう言ったのです」

 

霊魂の言葉が伝わったのか、祐斗の目から涙が溢れてくる

魂の少年少女達が口をリズミカルに同調させる。

 

「―――――聖歌」

 

アーシアが呟く。そう、彼らは聖歌を歌っている

祐斗も涙を溢れさせながら聖歌を口ずさみ出した。

少年少女達の魂が青白く輝き、祐斗を中心に眩しくなっていく

 

『僕らは1人ではダメだった――』

 

『私達は聖剣を扱える因子が足りなかった。けど――』

 

『皆が集まれば、きっと大丈夫――』

 

聞こえなかった声が聞こえてきた

本来、聖歌を聴けば悪魔は苦しむのだが、一誠達は一切苦しみを感じない

寧ろ友を、同志を想う温かさを感じた。

 

「想いが重なる時、奇跡が起こるか・・・」

 

鋼弥は心地いいのかフッと笑っていた。

 

『聖剣を受け入れるんだ――』

 

『怖くなんてない――』

 

『神がいなくても――』

 

『神が見ていなくても――』

 

『僕達の心はいつだって――』

 

『―――――ひとつだ』

 

魂が天に上り、ひとつの大きな光となって祐斗を包み込む

 

『――相棒』

 

その時、一誠の籠手に宿りし赤龍帝ドライグが一誠に語りかける。

 

『あの「騎士(ナイト)」は至った。

 神器は所有者の想いを糧に変化と進化をしながら強くなっていく。

 ・・・だが、それとは別の領域がある。

 所有者の想い、願い、この世界に漂う"流れ"に逆らう程の劇的な転じ方をした時、神器は至る』

 

ドライグから楽しそうな笑いを漏らしていた

 

『禁手(バランス・ブレイカー)だ』


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