ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第五話 =結成!!聖剣破壊団=

ゼノヴィアとイリナとの戦いの後の休日。

鋼弥は都市に来て、歩いていた。

 

「白い龍(バニシング・ドラゴン)が動き出しているか・・・」

 

ゼノヴィアが言っていた単語。

白い龍と言えば、朝鮮神話の龍神ぺクヨンを思い浮かぶけど、関係無い筈だ。

となればだ・・・、一誠の神器に宿っている赤龍帝と関わりがあるドラゴンということだ。

 

(もしかしたら、ルシファー閣下が言っていた事はコレの事なのか?)

 

そう考えているうちに見覚えのある二つのローブが見えた

 

「え~、迷える子羊にお恵みを~」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私達にお慈悲をぉぉぉぉぉ!」

 

路頭で祈りを捧げる白ローブの女性二人、通り過ぎる人も奇異の視線を向けていた

あいつ等、こんな所で物乞いをやっているんだ・・・?

 

「なんてことだ・・・これが超先進国であり経済大国日本の現実か。

 これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

「毒づかないでゼノヴィア。

 路銀の尽きた私達はこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事も摂れないのよ?

 ああ・・・パン一つさえ買えない私達!!」

 

「こうなったのはイリナがその絵画を購入したからだろ!」

 

見れば2人のそばにはお世辞にも上手いとは言えない絵画があった。

 

「何を言うのよ!この絵には聖なるお方が描かれているのよ!展示会の関係者もそんな事を言っていたわ!」

 

「誰だか解るか?私には誰一人脳裏に浮かばない」

 

絵に描かれているのは頭の上に輪っかがあるだけの聖人っぽい人、背景には赤ちゃんの天使がラッパを持って宙を舞っているだけ。

どうみても、100%圧倒的に素人でも解るガラクタ絵だな・・・

 

(あのイリナ、意外とバカだ・・・)

 

「まったく、これだからプロテスタントは異教徒だと言うんだ!」

 

「何よ!カトリックの方が異教徒じゃない!」

 

今度はギャーギャーと喧嘩始める2人、面白そうだしもう少し見て見るか。

 

「・・・やめましょう。」

 

「・・・そうだな。」

 

喧嘩しても腹が膨れるわけでもないとわかったのか2人は喧嘩をやめる。

そして、イリナが何かを思いついたような顔をする。

 

「そうだ!異教徒を脅してお金を貰うってのはどうかな?異教徒相手なら主もお許しになると思うの」

 

「寺とやらを襲撃し賽銭箱を奪うのか?うーむ・・・」

 

今度は、物騒な事を言い出した。

本当にやりかねないので、ここで阻止するか。

 

「恐喝、窃盗、器物破損を行うと牢獄送りになるよ」

 

二人は声のする方を振り向くと、ババッと構える

 

「貴様は・・・涼刀鋼弥!!」

 

「私達が空腹時に狙いに来るなんて・・・卑怯よ!!」

 

「・・・そこまで、根性は曲がっていない。」

 

スッと懐中時計を取り出し、二人に見せる。

時計の針は間もなく昼の12時を指す

 

「よろしければ一緒にランチでも、どうかな?」

 

それからゼノヴィアとイリナを探していた一誠、子猫、匙とも合流した。

 

 

◇◆◇◆

 

 

ガツガツ、パクパク、モグモグ。

 

「うまい!日本の食事はうまいな!」

 

「うんうん!これよ!これが故郷の味なのよ!」

 

よほど、お腹が空いているのか二人はファミレスのメニューを全て頼み勢い良く食べている。

本当にキリスト教本部の使者なのか怪しくなったな・・・

 

「お前、悪魔なのに良いやつだな。これに免じて先の神への愚弄は許してやろう」

 

「それはどうも」

 

俺はコーヒーを飲んで一服をする。

砂糖、ミルク無しのブラックコーヒーだ。

コーヒーは精神を覚醒させる飲み物だから、好きなんでね

 

「はふぅー、ご馳走さまでした。ああ、主よ。心やさしき人間に祝福を」

 

胸で十字を切るイリナ。

 

『はうっ!!』

 

その瞬間、一誠、小猫、匙を頭痛が襲い、三人とも頭へ手を当てていた。

どうやら、悪魔は目の前で十字を切られると軽くダメージを受けるようだ。

 

「あー、ゴメンなさい。つい十字を切ってしまったわ」

 

テヘペロッするイリナ。

 

「それで、私達に接触した理由は?」

 

「単刀直入言えば、エクスカリバーの破壊に協力したい」

 

二人は目を丸くしていた。それもそうだよな。

悪魔が聖剣の破壊に協力したいなんて言わないからな。

 

「・・・そうだな、一本ぐらい任せてもいいだろう。

 だが、そちらの正体を知られないようにしてくれ。

 関わりを持っているのは上にも敵にも知られたくない」

 

「ゼノヴィア、相手はイッセーくんと涼刀くんとはいえ悪魔なのよ?」

 

「正直言って、私達だけでは聖剣三本とコカビエルの戦闘は辛い」

 

「それはわかるわ!!でも・・・」

 

どうも、イリナは協力はしたくない様な顔をしている

 

「最低でも私達は三本のエクスカリバーを破壊して逃げ帰ればいい。

 私達のエクスカリバーが奪われるぐらいなら、自らの手で破壊すればいい。

 奥の手を使ったとしても任務を終えて、無事帰れる確率は三割程度だ」

 

「それでも、高い確率だと私達は覚悟を決めてこの国に来たはずよ」

 

「上にも任務遂行して来いといわれた。自己犠牲に等しい」

 

「それこそ、信徒の本懐じゃないの」

 

「気が変わったのさ。私の信仰は柔軟でね、いつでもベストな形で動き出す」

 

「前から思っていたけど、信仰心が微妙におかしいわ!!」

 

「否定はしないよ。

 だが、任務を遂行して無事帰る事が本当の信仰と信じる。

 生きて、これからも主のために戦う。違うか?」

 

「違わないわ、でも・・・・」

 

「だからこそ、悪魔の力は借りない。

 代わりにドラゴンと通りすがりのハンターの力を借りる。

 上も"ドラゴンとハンター"の力を借りるなとは言っていない」

 

ドラゴンとハンターとなると・・・一誠と俺の事だな。

俺と一誠は顔を合わせて頷き、木場を呼び出す。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「・・・話は分かったよ。正直言うと、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だけどね」

 

祐斗は嘆息しながらコーヒーに口をつけた

 

「随分な言い様だね。そちらが『はぐれ』だったら、問答無用で斬り捨てているところだ」

 

共同戦線前なのに一触即発の空気になってしまうが、

 

「やはり、"聖剣計画"の事で恨みを持っているのね?エクスカリバーと教会に・・・」

 

「当然だよ」

 

「でもね、木場くん。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。

 だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応出来る使い手が誕生したの。」

 

「だからと言って、計画失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末するのが許されると思っているのか?」

 

祐斗はイリナに憎悪の眼差しを向ける。

神に仕える信徒が非道過ぎる"聖剣計画"にイリナが反応に困るのも無理なかった。

 

「その事件は、私達の間でも最大級に嫌悪されたものだ。

 処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。

 今では堕天使側の住人だ。」

 

「堕天使側に?その者の名は?」

 

「バルパー・ガリレイ。"皆殺しの大司教"と呼ばれた男だ」

 

仇敵の名前を聞いた祐斗の目に決意みたいな物が生まれた

聖剣計画の当事者、目標が分かっただけでも、祐斗にとっては大きな前進である

 

「僕も情報を提供した方が良いようだね。

 先日、エクスカリバーを持った者に襲撃されて、その際、神父を1人殺害していたよ。

 やられたのはそちらの者だろうね・・・」

 

まさか、祐斗が先に接触をしていたとは。

 

「フリード・セルゼン、この名に覚えは?」

 

確か、アーシアの件で完全に敵対している白髪神父だ。

あの時は二回蹴り飛ばしたけど、人間にしては頑丈だったな。

 

「フリード・セルゼン、元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。

 13歳でエクソシストとなった天才で悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

 

イリナがフリードの経歴を言うと、ゼノヴィアが続けて言う。

 

「だが奴はあまりにやり過ぎた。同胞すらも手にかけたのだからね。

 フリードには信仰心なんてものは最初から無かった。

 あったのはバケモノへの敵対意識と殺意、そして、異常なまでの戦闘執着。

 異端にかけられるのも時間の問題だった」

 

確かに、悪魔どころか人間や天使までも殺害してしまいそうな狂気神父。

悪魔等を異常なまでに殺すと言う執着心が見られる。

あの男は悪鬼羅刹か、バーサーカーそのものという感じだ

 

「フリードは奪った聖剣を使って同胞を手にかけていたのか。

 あの時、処理班が始末できなかったツケが私達が払うとはな・・・」

 

忌々しそうに言うゼノヴィア、

無理もない、戦う事で喜びを感じる様な男だからな・・・。

 

「とりあえず、エクスカリバー破壊の共同戦線といこう」

 

ゼノヴィアはペンを取り出して、メモ用紙に連絡先を書き記す

 

「何かあったらそこへ連絡をくれ」

 

「サンキュー。なら、俺達の携帯番号も教えておこう。常備しているからな」

 

「イッセーくんのケータイ番号はおばさまからいただいているわ」

 

「マジかよ、母さん!勝手な事を!」

 

昔馴染だから、教えて貰ったんだろう。

こうして、エクスカリバー破壊団が結成され二人はファミレスから出て行き準備をする。

しかし、下手すれば悪魔側と神側の戦争の火種になりかねないのに、思い切った行動をするなイッセー。

そういうのは、嫌いではない。

 

「イッセーくん、涼刀くん・・・どうしてこんな事を?」

 

「俺達は、同じ眷属で仲間だ。

 それにお前には助けられた事があったからな。

 今回はお前の力になろうと思ってさ。」

 

「俺の信条の一つ、"悩んでいる仲間がいたら一緒に解決する"。

 だから、俺はお前を助ける。嫌とは言わせないぞ」

 

「私は・・・先輩がいなくなるのは、悲しいです。お手伝いします・・・だから、いなくならないで」

 

「・・・・・・・・まいったね。

 小猫ちゃんにそんな事を言われたら、僕も無茶できないよ。

 わかった、今回は皆の好意に甘えさせてもらおうかな。

 みんなのおかげで真の敵もわかったしね。でも、やるからには絶対に壊す!」

 

いつもの、祐斗に戻ってきた感じだ。子猫も安堵したのか、小さく微笑んでいる。

 

「決まりだな。≪エクスカリバー破壊団≫結成だ!!

 奪われたエクスカリバーとフリードの野郎をぶっ飛ばそうぜ!!」

 

「・・・なぁ、俺もその破壊団に含まれているのか?」

 

ここまでの話について来れなかった匙が手を上げていた。

完全に蚊帳の外という感じだ。

 

「それで、木場とエクスカリバーが何の関係があるんだ?」

 

「・・・少し話そうか」

 

木場は自分の過去を語った。

カトリック教会が秘密裏に計画した"聖剣計画"。

集められたのは剣に関する才能と神器を所有した少年少女は来る日も来る日も非人道的な実験ばかり、

自由を奪われ、"人間"として扱われず、木場たちはの"生"すらも無い

彼らは、ただ生きて"神"に愛される事を信じていたのに、待っていたのが・・・"処分"という残酷な結末だった。

 

「僕は同志たちの無念を晴らす為に、彼らの死を無駄にしない為に、

 エクスカリバーよりも強いと言う事を証明しなくてはいけないんだ」

 

祐斗もまた、辛く悲しい過去を抱えていたのか・・・。

俺も人の事は言えないかもしれないが、復讐心だけで生きるのは辛いと思う。

リアスはお前の才能を聖剣に対する力以外に生かして貰いたくお前を仲間にしたんだろうと思う。

 

「そ、そんなことがあったのか・・・」

 

匙が号泣しておりボロボロと涙を流し、大泣きしていた

 

「木場!辛かっただろう!きつかっただろう!

 畜生!この世には神も仏もいないのかよぉぉぉ!

 俺はぁぁぁぁ、非常にお前に同情している!」

 

祐斗の手を取って、泣きながら、うんうんとうなずいている。

 

「俺はイケメンのお前や鋼弥が正直いけ好かなかった!

 だが、そういう話なら別だ!俺も協力しよう!

 ああ、やってやる! 会長のしごきをあえて受けよう!

 俺たちでエクスカリバーの撃破だ!俺もがんばるから、お前もがんばって生きろ!

 そして、救ってくれたリアス先輩を裏切るなよ!」

 

この匙も中々、熱い性格だな。

後から聞いたが、一誠は匙を無理矢理連れてきたらしいが・・・協力してくれるなら良い事だが

 

「よし、良い機会だ!!ちょっと俺の話を聞いてくれ!!

 俺にはある目標があるんだ!!

 それは・・・ソーナ会長とできちゃった結婚することだ!!」

 

自信満々に話し出す。

ただし、鋼弥、祐斗、小猫の視線が冷たくなった。

一誠は同志を見つけたのか、涙を流していた。

 

「匙!!聞け!!俺の目標は部長の乳を揉み、吸う事だ!!」

 

お前もお前で何を言い出すんだ。

 

「お、お前、解っているのか!?

 上級悪魔のご主人様のお乳に触れることが、どれほど大きな目標かということを!!?」

 

「いや、できる!!実際、俺は部長の胸を揉んだ事がある!!」

 

匙は驚愕の眼差しで、震えている一誠の手を見つめていた。

 

「な、なんだと!?そんな事が可能なのか!?嘘じゃないよな!?」

 

「嘘じゃない。確かに遠いが・・・追いつけないほどの距離じゃない!!」

 

「・・・吸う場所は乳首なんだよな?」

 

「ばっかやろう!!おっぱいで吸えるところといったら乳首だろうが!!

 匙、俺たちは確かにダメな"兵士(ポーン)"かもしれない。

 二人なら、何処までも飛べる!!何処までも戦える!!何処までもやれる!!

 いつか、デキちゃった結婚だってできるかもしれない!!!!」

 

「うん、うん!!」

 

今この二人の間に、同志、戦友、いやそれ以上に魂の繋がりを感じたんだろう。

だが、語っているのは・・・物凄く、最低な目標だけどな

 

「・・・あはは」

 

祐斗は乾いた笑い。

 

「・・・やっばり最低です」

 

小猫は侮蔑の眼差し。

 

「"類は友を呼ぶ"か・・・」

 

鋼弥はため息をつく

 

かくして、≪エクスカリバー破壊団≫がここに結成されたのだ。

しかし、本当に大丈夫なのか不安になってきたけど・・・。


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