ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第四話 =銃士の死神=

全員はグラウンドに移動していた。

神を愚弄された事に怒りを露にするゼノヴィアとイリナ。

その二人と対峙するのは鋼弥だった。ここで、祐斗が鋼弥に話しかける。

 

「涼刀君、僕も手伝うよ」

 

祐斗も同様に怒っていたが、鋼弥は首を横に振る

 

「ここは、俺にまかせてくれ」

 

「どうしてだい?相手は二人だよ?」

 

「酷な事を言うが、今の祐斗では絶対に負ける」

 

「・・・どうして、そう言いきれる?」

 

「今のお前は復讐に囚われている、そんな状態では剣を振るって相手には勝つ事はできん」

 

祐斗は納得したのか結界を出て、観客へと戻る。鋼弥は改めて二人を見る。

 

「今度こそ、侮辱した罪を償ってもらうわ!!」

 

「二対一だからと言って卑怯とは言わせないぞ!!」

 

ゼノヴィアが自分の聖剣を地面に突き立てると轟音が轟き地面が抉れた。

グランドの周りには結界が張られており、音やその風景が外に漏れることは無い

 

「クレーターが・・・出来た!?」

 

「我が聖剣は破壊の権化。本気を出せば砕けぬ物はない!!」

 

「・・・真のエクスカリバーでなくともこの破壊力。七本全部を消滅させるのは修羅の道か・・・」

 

祐斗は苦虫を噛み締めるような表情を浮べていた。

鋼弥は臆することなく、相手を睨んでいた。

 

「だったら・・・俺もこの力を使うよ」

 

召喚の陣が描かれ、禍々しい黒いオーラが溢れだす。

今まで見てきた召喚陣とは違い、また新しい悪魔が出てくるのか?

 

「一つだけ忠告はしておく、死ぬ気でかかって来い。」

 

ガリッと親指を齧り、血の滴を召喚の陣へと落すと凄まじき魔力が溢れだす

 

「――アンクー」

 

名を告げると、黒く輝く柱が鋼弥を飲み込んだ。

黒い柱が晴れると大きな黒のつば広帽子、黒のローブを身に包んだガンマンが現れた。

ゼノヴィアとイリナはこれに驚く。

 

「す、姿が変わった!?」

 

「なんという、禍々しい気配だ・・・!」

 

二人は姿が変わった鋼弥の魔力と威圧感を肌で感じる。

 

【・・・私の名はアンクー、魂を刈り取るし者だ】

 

アンク―と名乗る者は口を重々しく開いた。

両手にはマグナムが握られていた。

 

【・・・この死の弾丸からお前たちは逃れる事はできない】

 

アンクーは二挺のマグナムを構えて交互に撃つ。

弾丸の雨が二人に襲い掛かるが、イリナとゼノヴィアはこれをかわす。

イリナは"擬態の聖剣"を発動させ、斬りかかってくる。

しかし、アンクーは淡々と避けるが、イリナは剣の形を変えてはアンクーを追い詰めようとする

 

【・・・自由自在に形や長さを変える剣か。使いようによっては厄介かもしれん】

 

「接近だと、貴方の武器は使えないわよ!!」

 

【・・・】

 

だが、アンクーはマグナムを鈍器の様に振りかざしイリナの剣戟を捌く。

これは銃の型(ガン=カタ)と呼ばれており超近接戦闘で使う戦闘技法なのだ。

 

「ウソでしょ!?きゃああ!!」

 

一瞬のすきを突かれ蹴り飛ばされるイリナだが直ぐに態勢を立て直す。

だが、目の前には死神が迫っており銃口をイリナの胸につける。

 

【・・・ゼロブレイク】

 

そう呟くと左手に持っているマグナムの引き金を引く。

 

―――ズドンッ!!

 

イリナは銃弾で吹き飛ばされて、地面へと叩きつけられた。

確かに胸で撃たれたのに、血を流さないどころか外傷が無かった。

これは"気"や"魔力"の弾丸が破裂した為、外傷は無く衝撃波で吹き飛ばされるだけだ。

だが、人間のイリナにとっては大ダメージであり、立ち上がる事がしばらく出来ない。

 

「貴様!!イリナを・・・!!」

 

【・・・残りはお前だけだ】

 

アンクーは冷静に挑発をする、それがゼノヴィアの怒りを買ったのだ。

 

「やはり、貴様は危険過ぎる・・・!我が破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)で倒れろ!はぁぁぁぁああああああああっ!!」

 

ゼノヴィアは猛スピードでアンクーの所へ向かう。

二挺マグナムでゼノヴィアを止めようとするが、聖剣で弾丸が斬られて行く。

射程範囲に到達し、ゼノヴィアの渾身の剣撃が、アンクーに向けて振り下ろされる。

 

ドッゴォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!

 

豪快な音と地響き、土煙をあげた。

その衝撃は結界の外まで響き渡り、一誠達は体勢を崩したのだ。

 

「こ、これじゃあ、何も見えない!!」

 

「朱乃!!結界を解いて!!」

 

「は、はい!!」

 

結界を解き、土煙が晴れるのを待つ。

だんだんと、晴れると・・・

其処には地面に伏せているイリナ、最大の力を振り切ったまま荒く呼吸をするゼノヴィア。

そして、アンクーが被っていた帽子だけが残っていた――。

 

「鋼弥ッ!」

 

「う、嘘でしょ!?」

 

「そ、そんな・・・」

 

「先輩!!」

 

「加減が出来なかった。勢い余って消滅させてしまったようだ。――アーメン」

 

聖剣を収めて深呼吸し、イリナを助けようと振り向くが、彼女が驚愕した表情をしている。

・・・まさかと思い、振り向くと。

其処には半分が髑髏の仮面を付けた銀髪の青年が立っていた。

 

【・・・気を抜くなよ。死神の鎌は常にお前の首を狙っている】

 

そう言うと、二挺マグナムから火が噴き、ゼノヴィアに向けて連射して撃ちまくる

外傷は無い物の四肢はを打ち貫かれた感覚がし、手足が動かない。

黒い死神が銃口をゼノヴィアの頭に押し付ける。

 

―――反撃が、出来ない。

 

身体全体に感じる、血が凍り付きそうになるほど身体が震える。

まさか、これが恐怖?私は死ぬ事に恐怖していると言うの?

イリナはすぐに助けようとしたが、あの死神の威圧感に怯んで動けなかった。

引き金を引こうとしている。

 

(や、やられる・・・!!)

 

ゼノヴィアは来るであろう死の恐怖に目をつぶる。

アンクーは銃の引き金を引いた。

 

ドンッ

 

音がしたが、痛みは来ない、生きている?

目を恐る恐る開けると、アンクーが撃ったのは地面だった。

マグナムを収めてゼノヴィアから離れ、帽子を拾って土埃を払い被る

 

「どうして攻撃しなかった?あの状況なら外す事は無かったぞ」

 

【・・・お前の眼に恐怖に対する涙が出ていた】

 

――――涙だと?

自分の目元を触ると、濡れていた。

まさか・・・私は泣いていたのか?

 

【・・・これで解っただろ?死を恐れる者は誰もいない。皆、死に対して恐れを抱いている】

 

「・・・・・・。」

 

【・・・命は1つしか持てない。それは悪魔、天使、人間、あらゆる生き物は同じだ】

 

ゼノヴィアは何も言い返す事は出来ず、聖剣を再び持つ気は無い。

勝負は完全に決まったようだ。

アンクーから鋼弥となり、一誠たちの元へと歩む。

 

「・・・待ってくれ」

 

「なんだ?」

 

「教えてくれ。お前は何者なんだ?」

 

ゼノヴィアの質問に対して、フッと不敵に笑う。

 

「前にも言った筈だ。俺は涼刀鋼弥、人と悪魔の間に生まれた"通りすがりのハンター"さ」


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