ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第六話 =魔軍奮闘=

『ライザー・フェニックスさまの"兵士"三名、リタイヤ』

 

リタイヤを報告する校内アナウンス。

現在一誠は祐斗と共に体育用具を入れる小屋の物陰に隠れていた

 

「すまん、木場。小猫ちゃんは・・・」

 

「アナウンスを聞いているから僕も知っているよ。

 無念だったろうね。いつも何を考えているか分からない子だけど、今回は張り切っていたよ。

 森にトラップを作る時も一生懸命にしていたから・・・。」

 

「だったら、このゲーム、絶対に勝たないとな。」

 

「勿論だよ、イッセーくん。」

 

お互いに拳を当てあう。

行動する前に相手の様子を窺う祐斗、これからの行動を把握するためだ。

しかし、静かすぎる・・・。

 

「おかしい・・・。敵の駒がいる感じがしない。体育館が使い物にならない以上、配置は変える筈なのに・・・。」

 

「そうだよな。かえって不気味だし、鋼弥が無事かも解ら・・・」

 

そうだ、鋼弥だ。

おそらく、ライザー達が一番警戒し最優先に叩くとすれば・・・鋼弥かもしれない。

アイツは素のままでも強いうえに、"業魔化身"という能力だって備わっている。

だとすれば・・・

 

「やべぇぞ!!奴らの狙いは鋼弥かもしれない!!」

 

「何だって!?」

 

「俺たちの中で一番強いとすれば鋼弥だ!!だったら、真っ先に潰しにかかるかもしれない!!」

 

「確かに、涼刀くんを最優先に潰しにかかるかもしれないね・・・。」

 

「のんびりしてる場合じゃねぇ!急ぐぞ木場!」

 

「待ってよイッセーくん、闇雲に探しても危険すぎる。通信機を使って何処にいるのか聞かないと」

 

通信機を使うが、雑音だけが響く。

 

「・・・通信が出来ない。魔力で妨害されているのか?」

 

「だったら、虱潰しに探すしかないのか・・・。」

 

「危険だけど、そうするしかない様だね・・・。」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「やれやれ、たった一人相手にここまで用意するとね。」

 

一誠と合流しようとした矢先に、ライザーの眷属に囲まれていた。

『騎士』2人、『戦車』1人、『僧侶』2人、『兵士』2人と残りのメンバーが集結している。

 

「一つ聞きたいが、子猫を痛めつけたのは誰だ?」

 

「リアス・グレモリーさまの『戦車』を倒したのは私達ではなく、ユーベルーナですわ。」

 

「ユーベルーナ・・・、あの女魔導師か」

 

「ええ。"兵士"を犠牲(サクリファイス)にして、勝利させたところで狩る。

 獲物は何かをやり遂げた後が一番油断しやすく、狩りやすいですからね。

 "戦車"を最初に倒させてもらいましたわ、『キャスリング』がありますので。」

 

「そして、今度は俺を狩りにきたという訳だな。」

 

「ええ、ミラの一撃を止めてしまう貴方を脅威と感じた兄様は貴方を倒すと言う算段ですもの。」

 

ライザーの"僧侶"は後ろへ下がる。

 

「自分は高みの見物か・・・。余裕のつもりか?それとも臆病者か?」

 

「し、失礼な!あなたごとき相手に、わざわざ出る必要がないからですわ!」

 

「気にしないでくれ、魔界のハンター。あの子は特殊だから、今回の戦いも殆ど観戦しているだけだ。

 彼女は、あの方はレイヴェル・フェニックス。ライザー様の妹君だ

 特別な方法でライザー様の眷属悪魔とされているが、実の妹君だよ」

 

実の妹まで眷属悪魔にするとは、やはり、根性を叩き直した方がいいかも知れんな。

そう思っているうちに、ライザーの"騎士"の一人が前に出る。

 

「私はライザー様に仕える"騎士"カーラマイン!魔界の悪魔よ、いざ正々堂々と手合わせ願おう!」

 

「騎士道精神・・・。名乗られたから返すのが礼儀。俺の名は涼刀鋼弥だ」

 

スッと構えだす鋼弥。だが・・・今度は女性の声が響く。

 

(ちょっと待った。相手は剣を持っているんだよ?ここは私の出番じゃないのか?)

 

(・・・解った。けど、相手を本気で殺さない様にしてね)

 

(解っていますわよ、マスター)

 

「どうした、来ないのか?」

 

「・・・ああ、その前に準備がある」

 

召喚の陣を描き、ブツブツと呪文を唱えると眩い金色の粒子が溢れだす。

 

「――アシェラト」

 

鋼弥が大地に包まれ土塊が崩れる。

中から金色の長髪、豊満な体に黒のラインが入ったタトゥー、両手には青銅の斧剣を持った女性が現れた。

その姿になった途端、周りの空気が一変した

 

【我が名は地母神アシェラト。母なる大地を守護する者なり】

 

物腰が柔らかそうな感じはするが、そこから溢れだす凄まじき闘気。

ライザーの眷属たちは肌でビリビリと感じる

 

「なんという、重圧・・・!だが、我ら誇り高きフェニックス眷属は炎と風と命を司る!我が剣を受けてみよ!」

 

カーラマインが剣を抜き、炎を宿らせ、横薙ぎの構えから突進してくる。

アシェラトはその剣戟を青銅斧剣で受け止める。

 

「まだまだ!!」

 

カーラマインは距離を置いて連続の突きを放つが、アシェラトはその攻撃を全て防いでいる。

 

【ふふふ、私も久々に燃え上がって来たわ。今度はこちらの番よ!!】

 

横に薙ぎ払いカーラマインを弾き飛ばし、もう片方の斧剣を地面に突き刺して、魔力を送り込む。

 

【アースブレイク!!】

 

地響きが起こり次の瞬間、地の底からの突起波がカーラマインに向けて襲い掛かる。

 

「くっ!!」

 

右に避けて態勢を立て直そうとするが、アシェラトは既に斧剣を構えており、地面に振りかざす

 

【デスバウンド!!】

 

幾つ物の斬撃波が襲い掛かり激しい轟音と共にカーラマインの鎧が砕けた。

所々、服が千切れ飛んでおり肌が見えていた。

 

「こ、これほどとは・・・。」

 

身を起そうにもダメージが残ってて起き上れない、アシェラトはカーラマインへ近づく。

 

「さぁ、止めをさせ!"騎士"として全力を尽くした。それで敗れるなら本望だ・・・」

 

【潔いわね。でも、私もマスターも武器を破壊された者に対して攻撃はしないのよ】

 

そう言いながらアシェラトは金色の長髪をかきあげてから、カーラマインを安全な場所へと置き、鋼弥の姿へと戻る。

 

「何故、こんな事を・・・?」

 

「君を安全な場所へと避難させただけだ。不服か?」

 

「・・・いや、紳士的だな」

 

フッと笑い、先程の場所へと戻る。

 

「カーラマインを退けるとは・・・。

 やはりキミはリアス・グレモリーの眷属の中で一番危険な存在かもしれない。

 イルとネルとミラをあしらった狼といい、今度は女戦士といい、恐ろしい存在だよ。」

 

「・・・今度は、君が相手か?」

 

「ああ、私の名はイザベラ。役割は"戦車"だ。」

 

「それじゃあ、俺はコイツで勝負をするよ。――アンヴァル!!」

 

仲魔の名を呼び、アンヴァルへと転身する鋼弥。

 

【・・・どこからでも、かかって来なさい】

 

指をクイクイッと挑発する。

 

「久々に全力で出せる相手だな。全力でいかせてもらおう!」

 

イザベラがビュンッと駆け出し、アンヴァルに拳を放つがこれをギリギリの所を避ける。

更にスピードを上げて、人体の急所を狙ってくる拳を、回避していく

 

【確かに申し分は無いけど・・・"型"通りでは当てる事は出来ないよ】

 

「くっ!!ならば、これならどうだ!!」

 

右足で蹴りを放つが、アンヴァルは避けることなく、右腕でガードする

 

【蹴りを使うのは相手を一撃で倒す事に使え。でないと・・・大きな隙が出来る】

 

アンヴァルは左足を前蹴りを放ち、イザベラを吹き飛ばした。

咄嗟に両腕でガードしたが腕にシビレが残る。

そうしているうちに、アンヴァルの左足から光が収束する

 

【空燐脚(くうりんきゃく)!!】

 

右足を軸に左足を蹴り回すと三日月状の刃が放たれて、イザベラに直撃し爆発を起こす。

煙が晴れると、衣服がボロボロになったイザベラが地に伏せていた。

 

「ぐ・・・バ、バカな・・・。」

 

身を起そうにも、今の一撃が効いて、起き上る事が出来ない。

アンヴァルは姿を解いて、鋼弥の姿へ戻る。

残ったライザー眷属も目の前の男にただ、驚くばかりだ。

 

「な、なんて強さですの・・・」

 

「面倒だ、まとめて来い」

 

「シーリス!ニィ!リィ!3人がかりで攻めなさい!美南風(みはえ)は遠距離から攻撃して倒しなさい!」

 

「御意!」

 

「「にゃにゃ!!」」

 

「分かりました」

 

「最初から、全員で来れば勝機はあるかもしれないのにね。最も・・・勝たせてはあげないけどね。」

 

フッ笑い、構えだす。

 

「今度は変身せずに戦ってやる。さぁ・・・どこからでもこい!」

 

「その余裕、後悔させてやる!!」

 

シーリスが大剣を持って鋼弥に迫り、大振りな剣撃を振りかざすが鋼弥はヒョイヒョイと避ける

 

「単調過ぎる剣戟だな。これなら・・・カーラマインの方がまだ腕があるよ」

 

「なにを!!」

 

剣を突くが、シーリスの頭上を越えて彼女の背後へ着地する。

 

「私達がいる事を・・・」

 

「忘れないでよ!!」

 

ニィとリィが左右から同時に攻撃を仕掛けてくるが、これも避ける。

そこにシーリスが近付き剣を振り降ろしてきた。

"勝った"と確信するシーリスだが、予想もしない出来事が起きた。

鋼弥は素手で大剣を受け止めたのだ。

 

「なっ!?素手で受け止めただと!?」

 

「最後の最後まで油断はしない事だね・・・!」

 

グッと力を込めると大剣がバキィンと粉々に砕ける。

その隙に、シーリスの胸ぐらを掴みニィとリィに向けて投げ飛ばす。

三人がもつれた状態を狙い、鋼弥の右手から魔力弾を放ち、三人を撃墜する。

 

「残るは後、二人・・・」

 

視線の先には、美南風が両手を頭上に翳し、何十、何百、何千の矢が漂っている光景だった。

 

「喰らいなさい!!」

 

その言葉と共に、無数の矢が鋼弥に襲い掛かる。

だが、鋼弥の表情は涼しげだった。

その場から動かず襲い掛かってくる無数の矢を全て叩き落す芸当を見せたのだ。

 

「な、なんて奴だ・・・!」

 

「これで、お終いだ。」

 

シュン―っと、音とともに美南風に近づき、彼女の頭を掴みながら地面に叩き付けた。

容赦のない一撃で美南風は一撃でノックダウンした。

 

「あ、ううぅ・・・。」

 

「ぜ、全滅・・・!こんな事が!?」

 

「ま、まだだ!!まだ、私は戦える!!」

 

シーリスがよろめきながら、二本目の大剣を構える。

鋼弥は目をシーリスに忠告する

 

「・・・止めた方がいいよ」

 

「このまま引き下がれるか!」

 

忠告を無視して突っ込んでくるシーリス。

だが、鋼弥はシーリスの眼前に近づき、手を広げて寸止めをしていた。

 

「・・・これが、本当の戦いだったら君は死ぬ事になるよ」

 

負けた。実力だけではなく心までも完全に。

両膝をついてうなだれ悔し涙が出そうになるシーリス。

 

「だが・・・その諦めない精神と心は評価するよ。」

 

そこへ丁度、鋼弥を探し回っていた一誠と祐斗がやって来る

 

「ライザーの下僕悪魔達が全員倒されてる!!お前1人でやったのか!?」

 

「ああ、君たちを探していた所、出くわしてね。」

 

「流石は涼刀くん、僕らの出番が無くなっちゃったね」

 

「とにかく!これでこっちが有利になった!」

 

喜ぶ一誠。だが・・・

 

『リアス・グレモリーさまの「女王」一名、リタイヤ』

 

「「なっ!?」」

 

最強の駒、『女王』である朱乃のリタイヤ報告が流れた。

更に・・・

 

「・・・!一誠、祐斗!散れ!」

 

鋼弥がその場から離れ、続く様に別々に飛び退く2人。

 

ズドォォォオオオンッ!

 

次の瞬間、激しく振動し、大爆発が起きた。

 

『リアス・グレモリーさまの「騎士」一名、リタイヤ』

 

「木場っ!!」

 

「祐斗!」

 

嘲笑うかの様に、ライザーの"女王"は冷笑を浮かべていた


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