ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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一誠VS曹操!!

ここで、一誠が原作とは違う能力を得る!!


第十二話 =極限対決Ⅳ=

「ウオオッ!!」

 

【ムンッ!!】

 

鋼弥とアンリ・マンユの拳がぶつかり、衝撃波が起きる。

蹴りを放つが、互いに拮抗しあい大気が震える。

鋼弥が退いて、両の拳が回転し―――。

 

「ダブル・ブロークン・ショット!!」

 

高速の弾丸はアンリ・マンユに向かうが、障壁を張り巡らせて防ぐ。

だが、鋼弥の姿がどこにもいない。

 

「ハアアアアアッ!!」

 

瞬時にアンリ・マンユの頭上に現れて、踵落としが炸裂。

障壁が破壊され拳の弾丸がアンリ・マンユに直撃、ビルに激突し、瓦礫の中へと沈んだ。

宙返りしてからの着地、両拳が戻ってきて、装着。

様子を見るが……黒い光が徐々に溢れ出し瓦礫が吹き飛ぶ。

その中から、ゆっくり現れる。

 

 

――完全な悪魔の姿となったアンリ・マンユだ。

 

――三日月の様な角、黒紫を基調とした強靭な肉体、背中から蛇を思わせる6本の触手と4枚の蟲翅。

 

――悪神と呼ぶに相応しい姿だ。

 

 

 

「……完全なる姿を出したか」

 

【教えてやろう。弱者は滅び、死に絶え、生きる資格はない事を!!】

 

「そんなこと、させない!!」

 

両者は再び、格闘による戦いが繰り広げられた。

一誠たちは加勢したいが、鋼弥から手出しは無用と言われている。

その時だった。

 

「強者を引き寄せる力か。

 首都リリスを壊滅させるモンスターという情景を見学しに来たら、

 まさか、グレートレッドと共に君が現れるなんてね」

 

第三者の声が聞こえてくる、振り向けばそこには曹操の姿。

探そうと思ったが行く手間が省けたようだ。

曹操は倒れている仲間を見て目を細めていた。

 

「僅かな間でここまでの成長を遂げたか。

 グレモリー眷属の成長率、ここまで来ると異常だな。

 異常進化したヘラクレス、"魔人化"を使用したジャンヌ、ジークフリートまでやられるとはね。

 ……ゲオルグもやられたのか?」

 

ゲオルグに関してはギャスパーが神器と違う"闇の力"で倒したようだ。

悪魔とも吸血鬼とも違う異質な力……、それが何かは知らないが、今はこの戦いを終わらせてからにしよう。

曹操の視線が一誠へと移る。

 

「旧魔王派から得た情報ではシャルバ・ベルゼブブはサマエルの血が塗られた矢を持っていたと聞いたのだが……」

 

「確かにやられたが、こうして復活したんでな」

 

「だとしても……信じられない。

 あの毒を受けたら、キミが助かる可能性なんてゼロだ。

 グレートレッドの力で体を再生させて、帰還してくるなど……っ!

 それどころかグレートレッドとの遭遇も偶然で済ませられるレベルではないんだぞ……っ!」

 

「――――それが"奇跡"を起こした赤龍帝の力だ」

 

第三の声―――、声の主を向くと、涼刀仁が立っていた。

 

「一誠、あの人は?」

 

「あの人は、俺と鋼弥、前にアーシアを助けてくれた涼刀仁さん。鋼弥と嶺爾の父親だ」

 

その言葉を聞いて、皆は驚愕したのだ。

死んだはずの者がこうして目の前に現れたのだから。

 

「あの人が鋼弥のお父さん……」

 

朱乃は仁を見る。

確かに普段見せる優しい雰囲気や表情が似ている事に納得した。

 

一誠は曹操と決着を付けようかと思いきや、不気味な波動が出現した。

装飾が施されたローブ、道化師のような仮面をした者が現れる。

最上級死神のプルートだ。

 

《―――先日ぶりですね、皆さま》

 

プルートの登場に曹操が嘆息する。

反応からして予定外の登場のようだ。

 

「プルート、なぜあなたが?」

 

《ハーデス様のご命令でして。もしオーフィスが出現したら、何がなんでも奪取してこいと》

 

プルートの視線がオーフィスに注がれる。

一誠はオーフィスの前に立ってプルートに鋭い視線をぶつけた。

 

「オーフィスは渡さない。

 おまえらに連れていかれたら、ろくでもないことになるのは目に見えているからな」

 

先にムカつく死神を倒そうかと考えていた一誠だが、

 

「お前の相手は俺がしよう。―――最上級死神プルート」

 

再びこの場の誰でもない者の声が聞こえてきた。

一誠達と曹操、プルートの間に光の翼と共に降りてきたのは、純白の鎧に身を包む男。

 

「ここで登場かよ。――――ヴァーリ」

 

「悪いな、兵藤一誠。こいつは俺達がもらうぞ」

 

「達……?」 

 

風が吹くと、ヴァーリの隣に参上したのは、涼刀嶺爾だ。

 

「嶺爾!?」

 

予想外すぎる登場に驚くが、嶺爾は一誠を見ずに口を開く。

 

「騒ぐな。俺が用事あるのは――――そこのふざけた死神を刈りに来た」

 

「ホテルの疑似空間でやられた分をどこかにぶつけたくてな。

 ハーデスか、英雄派か、悩んだんだが、ハーデスは美侯たちに任せた。

 英雄派は出てくるのを待っていたらグレモリー眷属がやってしまったんでな。

 こうなると俺の内にたまったものを吐きだせるのがお前だけになるんだよ、プルート」

 

「ハーデスはサーゼクスとアザゼルたちに押し付けた。

 神殿も半壊させたから、しばらく直接手出しはしないだろう。

 もう一つ理由があるのなら、ハーデスの関係者なら―――――殺す」

 

二人の語気に怒りの色が見えている。

プルートは鎌をくるくると回すとヴァーリと嶺爾にかまえた。

 

《ハーデス様のもとにフェンリルを送ったそうですね。

 先ほど、連絡が届きました。神をも殺せるあの牙は神にとって脅威です。

 ―――忌々しい牽制をいただきました》

 

「いざと言う時の為に得たフェンリルだからな」

 

《神との戦いを念頭に置いた危険な考え方です》

 

「あれぐらいの交渉道具が無いと神仏を正面から相手にする事が出来ないだろう?」

 

《まあ良いでしょう。

 真なる魔王ルシファーの血を受け継ぎ、尚且つ白龍皇と魔界の犯罪者の二人と対峙するとは……。

 長く生きると何が起こるか分からないものです。

 あなた方を倒せば私の魂は至高の頂きに達する事が出来そうです》

 

ヴァーリは兜をつけ直して言う。

 

「兵藤一誠は天龍の歴代所有者を説き伏せたようだが、俺は違う」

 

特大のオーラを纏い始めるヴァーリ

 

「歴代所有者の意識を完全に封じた"覇龍"のもう1つの姿を見せてやろう」

 

光翼が広がり、魔力を大量に放出させる

純白の鎧が神々しい光に包まれ、各部位にある宝玉から歴代白龍皇の所有者とおぼしき者達の意識が流れ込んでくる

 

「我、目覚めるは―――律の絶対を闇に落とす白龍皇なり―――」

 

各部位にある至宝から闘志を宿した声が響き渡る―――歴代の白龍皇の声。

 

『極めるは、天龍の高み!』

 

『往くは、白龍の覇道なりッ!』

 

『我らは、無限を制して夢幻をも喰らう!』

 

恨みも妬みも吐き出さない。

その代わりに圧倒的なまでの純粋な闘志に満ちていた。

 

「無限の破滅と黎明の夢を穿ちて覇道を往く―――我、無垢なる龍の皇帝と成りて―――」

 

ヴァーリの鎧が形状を少し変化させ、白銀の閃光を放ち始める。

 

「「「「「「汝を白銀の幻想と魔導の極致へと従えよう」」」」」」

 

 

『Juggernaut Over Drive!!!!!!』

 

 

そこに出現したのは、極大のオーラを放つ別次元の存在と化したヴァーリだった。

周囲の建物、乗用車も触れていないのにそのオーラに潰れていく

凄まじい力だというのに覇龍ほどの危険な雰囲気は感じない。

 

「―――"白銀の極覇龍"(エンピレオ・ジャガノート・オーバードライブ)』。

『覇龍』とは似ているようで違う、俺だけの強化形態。

 この力、とくとその身に刻めッ!」

 

嶺爾は左手で顔を覆う。

気が高まりだし、周りに罅が入る。

 

「―――"オーバードライブ"」

 

鋼弥がオーバードライブした時と同じく身体に幾つかの悪魔の文様が刻まれ赤く発光し、髪が刺々しく逆立っていた。

左手から顔を話すと、目が青く輝いている。

 

「まずは―――俺からだ」

 

嶺爾が一歩踏み出すと、瞬時に消えた。

 

 

―――ドゴッ!!!!

 

 

プルートの背中を蹴り、逆"く"の字に曲がり吹き飛ばす。

ヴァーリは右手の掌打でプルートの腹部を撃つ。

 

《ガハッ!!》

 

仮面から血が溢れ出す、吐血したようだ。

 

「楽に殺さん」

 

駆け出し、分身するかの如くプルートを袋叩きして、上に放り投げる。

 

「堕ちろ」

 

先に回り、慈悲の無い言葉をはいてから、

 

 

――グシャアッ!!!!

 

 

エルボーを振り下ろし、仮面が粉々に砕けて、プルートは叩き落とされるが――――。

 

「―――圧縮しろ」

 

『Compression Divider!!!!』

 

『DivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivide!!!!』

 

空中に放り投げだされたプルートの体が、縦に半分、その次に横に半分に圧縮、さらに縦、横と半分に―――。

プルートの体が瞬時に半分へ、また半分へと体積を減らしていく。

 

《こ、こんなことが……!このような力がぁぁぁ……ッ!》

 

プルート自身が信じられないように叫ぶが、ヴァーリは容赦なく言い放つ。

 

「―――滅べ」

 

目で捉えきれないほどにまで圧縮をされたプルートは、

空中で生まれた振動を最後に完全に消滅した。

 

それが伝説の死神のあっけない最期だった――――。

 

 

◇◇◇◇

 

 

白銀から通常の禁手姿に戻ったヴァーリは額に流れる汗を拭った。

消耗は激しいようだが、凄まじい。

鎧状態の先生と互角だったプルートを瞬殺した。

 

これがヴァーリの新たな力――――『覇龍』の答え。

 

「恐ろしいな、二天龍は……」

 

曹操がこちらに近づきながらにそう言う。

 

「ヴァーリ、あの空間でキミに"覇龍"を使わせなかったのは正解だったか」

 

曹操にそう賞賛されるヴァーリだが奴は息を吐く。

 

「"覇龍"は破壊という一点に優れているが、命の危険と暴走が隣合わせだ。

 いま見せたのはその危険性をなるべく省いたものだ。更に"覇龍"と違い伸びしろもある。

 曹操、仕留められる時に止めを刺さなかったのはお前の最大の失点だな」

 

ヴァーリの言葉に曹操は無言だった。

曹操は視線を俺とヴァーリの二人に向けた。

 

「赤龍帝の兵藤一誠、白龍皇のヴァーリ・ルシファーは覇龍を昇華させた。

 どちらも前代未聞の発展を遂げているようだ。

 今代の二天龍はやはり異常だよ。だが、そこが面白いところでもある」

 

そう言うと曹操はこちらへ聖槍の先端をこちらに向けた。

 

「さて、どうしようか。

 俺と遊んでくれるのは兵藤一誠、ヴァーリ、サイラオーグ、涼刀嶺爾か。

 はたまたは全員で来るか?いや、流石にそれは無理か」

 

挑発的な物言いをしてくれる。

前回はヴァーリとアザゼル、それからグレモリー眷属を相手に一人で手玉に取ってたみたいだが、さっきのヴァーリを見れば勝てる見込みを算出出来ないだろう。

 

……それでも、一誠は曹操と戦うのに譲らない意志がある。

 

「奴の七宝、4つまでは知っているな?」

 

「女の異能を封じる、武器破壊、攻撃転移、相手の位置も移動できるんだよな」

 

「他の3つは飛行能力を得るもの、木場祐斗が有する聖剣創造の禁手のように分身を多く生み出す能力、最後は破壊力重視の球体だ」

 

「そうか、礼は言っておくぜ」

 

「確認しておきたい。―――兵藤一誠、キミは何者だ?」

 

苦慮する一誠を前にして曹操は首を捻る

 

「やはり、どう考えてもおかしいんだよ。

 自力でここまで帰ってこられたキミは形容しがたい存在だ。

 もはや、天龍どころではなく、しかし、真竜、龍神に当てはまるわけでもない……。

 だからこそ、キミはいったい―――」

 

「じゃあ、おっぱいドラゴンで良いじゃねぇか」

 

面倒くさいのでそう断ずる一誠

曹操は一瞬間の抜けた表情を見せるが―――直ぐに苦笑して頷いた

 

「……なるほど、そうだな。分かりやすいね」

 

それだけ確認すると、曹操は聖槍の先端を向ける

 

「俺の相手は赤龍帝か。他はそれを察してまるで動かないときた」

 

曹操の言う通り、皆は一誠の曹操とのバトルを確認および容認してくれたようだ

 

「ああ、俺は借りを返さないと気が済まねぇんだ」

 

戦意を感じ取った曹操は肩を槍で軽く叩く

 

「あの時は弱点とサマエルの縛りで突いて差し込ませてもらったが、今度は全力のキミと戦おうじゃないか」

 

「勿論、そうさせてもらうさッ!いくぜ、ドライグ!」

 

『応ッ!相手は再び最強の神滅具!ここで倒さねば赤龍帝を名乗れんぞ、相棒ッ!』

 

「―――我、目覚めるは王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり!」

 

「無限の希望と不滅の夢を抱いて、王道を往く!我、紅き龍の帝王と成りて―――」

 

一誠の鎧の色が真紅と化し――。

 

「「「「「「汝なんじを真紅に光り輝く天道へ導こう―――ッ!」」」」」」

 

『CardinalCrimson FullDrive!!!!』

 

一誠の変化を確認した曹操は輪後光と7つの球体を出現させる

相変わらず静かで不気味な禁手化、

間合いを取り、両者に睨み合った後―――その場を駆け出していった

 

「象宝(ハッティラタナ)」

 

曹操は足下に球体を置くと宙に飛び出し、一誠も翼を広げて曹操を追う

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!』

 

高層ビルが建ち並ぶ空中で一誠はドラゴンショットを繰り出した

巨大な一撃を見舞うが、曹操は球体の1つを近付けさせる

球体の前方に渦が発生し、ドラゴンショットを吸い込む

攻撃を受け流す七宝―――そうなると、今度は何処かから攻撃が吐き出される。

警戒すると足元から渦が出現し、ドラゴンショットが吐きだされるが蹴りで粉砕。

 

「居士宝(ガハパティラタナ)!」

 

曹操が球体の1つを前方に移動させると、それが弾けて光り輝く人型の存在が複数出現する

自分の分身を多く生み出す七宝、それらは散弾式のドラゴンショットを受けて消滅していく。

 

分身を盾代わりにしたようだ、今の攻防に紛れて曹操の姿が消えており、気配を探っていると横合いから聖槍が伸びてくるが間一髪で避ける 

 

「てめえ!木場と同じ能力使いやがって!

 しかもお前がバカにした木場の能力とお前の能力、あんま差が無いように思えるぜ?

 そっちのもまだお前の技術とか反映できてないじゃないか!

 よくそれであいつをバカに出来たもんだな!」

 

「ハハハハ、そうかもしれないな。

 でも言っただろう?まだ調整が必要な能力で未完成だと。

 だからこそ、あの時……木場祐斗の能力に興味を抱いたのさ。

 まだ俺と同様の仕上がり具合だったから直ぐに興味が薄れたけどね!

 それに俺のは木場祐斗のと少し仕様が違う。まあ、それは今後次第かな」

 

「つまり、調整が進めば厄介になるって事か。

 アザゼル先生に勝ったお前の相手はキツいったらありゃしねぇ!」

 

「……アザゼル総督か。

 確かにこの間の戦闘では制させてもらったが、次にやったら恐らく易々とは勝てないだろうね」

 

「……何でだ?」

 

「あの総督を舐めるなんて事は出来やしない。

 ああいう研究者気質かたぎの戦士は次に戦う時に徹底的にこちらを研究してくる。

 俺のように強者の重い一撃を食らえばアウトなタイプはあの手の手合いとの戦いが1番怖い。

 だからこそ、1度めで総督の力量の知り、2度めで倒せた。

 ―――3度めはこちらが危険だ」

 

曹操の言う通り、アザゼルが黙ってやられ続けるわけがない

もし次に曹操と戦えば、対策だって練ってくるし接戦になりそうだ。

 

時間をかけていては、決着がつきそうにない。

ならば、と……一誠は"力"を解放しようとした。

 

 

◇◇◇◇

 

 

一誠の肉体が再生するまでの空いた時間の時の事。

 

「一誠くん、君ならばゾロアスターに対抗できる力となる。

 本来の赤龍帝として驚愕する進化を遂げているからね」

 

仁は右手を一誠の頭に乗せる。

すると、一誠とドライグは自身に力が溢れるような感じがする。

 

「魔界の龍の情報(ソース)を流し込んでみた。

 よりドラゴンらしく強靭かつダイナミックな戦法もできる様になる。

 後は、戦闘で慣らしてみてくれ」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「それと、君に頼みがある。―――――――」

 

仁の頼み事に驚く一誠。

オーフィスと話をしている鋼弥を見て、仁を見て悲しむ。

 

 

◇◇◇◇

 

 

(仁さん、俺は皆を護れる強さを得ます。これから先、何があっても!!)

 

一誠は深呼吸をして、気を落ち着かせる。

すると、徐々に青白い気が一誠を身に纏い始める。

 

「なんだ……?力の流れが変わっている?」

 

一誠は、曹操目掛けて―――クロスガードしつつ超突進する

 

「ドラゴン・ドライブ!!」

 

曹操は聖鎗を使い防御体勢をするが、押されており、弾かれた。

 

「な、なに!?」

 

「ドラゴン・クラッシュ!!」

 

宙に一回転してからの、踵落としを放つ。

曹操は本能的に危機を感じ、避けるが炸裂した気が巻き起こり吹き飛ばされた。

 

「急激に、強くなっただと!?それに……その力は赤龍帝とは違う!!」

 

「教えてやるよ。あそこにいる人から、魔界の龍の力を身に着けた。んで……実戦で肩慣らしだ」

 

"肩慣らし"

 

その言葉を聞いて、曹操は驚く。

あれほどの強力な力が、ただの肩慣らし程度……それはつまり……。

 

「それは……俺を、俺をそこまで弱いとみているのか!?赤龍帝!!兵藤一誠!!」

 

曹操は激昂し、槍を振りかざすが強化された一誠は遅く見える。

初めから使えば決着はついたかもしれない。

しかし、そうしなかったのは……鋼弥の加勢の時に使うためだ。

一誠は懐から銃弾を取り出し、曹操目掛けて投げる

 

「血迷ったのか!?」

 

曹操は軽々と聖槍で銃弾を弾いた。

弾かれた銃弾が四散して中から液体が現れ、それが曹操の顔面―――右眼にも飛び跳ねていった

不意打ちの液体をくらった曹操は右眼を擦る

 

「……何だ、この液体は……」

 

次の瞬間、身体が蝕まれていく感覚が襲い血を吐く。

 

「ま、まさか……!これは!?」

 

「―――サマエルの血だよ。シャルバが俺に使ったもんだ」

 

一誠の言葉を受けて曹操は目を全開に見開いていた。 

 

「体を再生する時にサマエルの血を抜いてもらったんだけどさ。

 それを処理する時、ふいに思い付いた。

 神さまがサマエルに与えた呪いはドラゴンと蛇に対する憎悪のものじゃなかったか?

 だから、万が一の為にとっておいたんだよ。お前のメドゥーサ対策に。

 ヴァーリや俺でも瀕死になる猛毒、英雄の子孫で最強の聖槍を持っているとはいえ、

 お前は―――人間だ。その呪いに人間のお前が耐えられるか?」

 

本当は自分の力で曹操に決着を付けたかったが、時間も惜しい、この手を使うしかなかった。

一気に勝負を決めるため、一誠は駆け出す。

 

「うおおおりゃああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

拳による――――ラッシュラッシュラッシュラッシュ!!!!

曹操の身体に龍の力が込められた拳が次々と刺さる。

 

「ジェェェェストォォォォォォォォォ!!!!」

 

最後に左ストレートで曹操の顔面に打ち込む。

きりもみに吹き飛ばされて、幾つもののビルに叩き付けられていく曹操。

 

―――この一撃に懸けた拳。

 

吹き飛ばされた曹操を追う一誠。

其処にいたのは槍を杖代わりにして、ボロボロになっていた曹操の姿だ。

最後の一撃でメドゥーサの目も潰されていた。

 

「まだだ……ならば"覇輝(トゥールス・イデア)"だ」

 

曹操の言葉に驚愕を受ける一誠。 

 

「君が奇跡を起こしたというならば、俺も奇跡を起こして見せよう」

 

曹操は震える手で槍を構えると、唱え出した。

 

「槍よ、神を射抜く真なる槍よ―――。

 我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの狭間を抉れ―――。

 汝よ、意思を語りて、輝きと化せ―――」

 

曹操の口にした呪文と共に聖槍の先端が大きく開ききり、そこから莫大な光が輝く。

以前、京都でその力を発動仕掛けようとしていた。

身構える一誠だが、徐々に槍の光が弱まっていく。……大きく開いた槍の先端も普通の状態に戻っていった。

曹操はそれを見て―――目を見開き、絶句している。

 

「発動しない?」

 

まさかの不発?

聖槍から感じられるプレッシャーが小さくなり、曹操の禁手さえ解かれてしまった。

 

「なるほど、それがあなたの『遺志』か。俺の野望よりも赤龍帝を選んだというわけだな」

 

「どういうことだ?」

 

曹操の言葉の意味が分からなかった一誠は怪訝な表情を浮かべながら尋ねた。

 

「……"覇輝"は聖書の『遺志』が関係する。

 亡き神の『遺志』はこの槍を持つ者の野望を吸い上げ、相対する者の存在の大きさに応じて多様な効果、奇跡を生み出す……。

 それは相手を打ち倒す圧倒的な破壊であったり……相手を祝福して心を得られるものでもあった。

 ―――だが、赤龍帝に対する"覇輝"の答えは静観だった。

つまり、この勝負は赤龍帝の勝ちであり、槍は俺よりも兵藤一誠の夢を見たいと言う事だ……。

……今後も俺の野望を見たいのなら、聖槍はここで俺を回復させるか、もしくは絶大な力を発動させただろうからね……」

 

「つまりは聖槍が俺の勝ちを認めたと?」

 

「そう言うことだ。

 今後も俺の野望を見たいのなら……聖槍は俺を回復させるか。

 もしくは絶大な力を発動させただろうからね・・・・・・」

 

動けるようになったヴァーリも現れて、先ほどの会話を聴いていたか笑みを見せた

 

「ここに来てその聖槍は曹操ではなく、兵藤一誠を選んだのか。

 だから言っただろう?手に負えなくなる内に俺と兵藤一誠を倒すべきだった、と。

 結果この様ざまだ。何とも言えない最後だな。

 やはり、真紅となった赤龍帝を倒せる権利を持つのは俺だけのようだ」

 

祐斗、サイラオーグも駆けつけて来た。

 

「……二天龍、獅子王、聖魔剣。

 さすがにこの状態では分が悪いか。と言うか、このままじゃ俺は死ぬな。

 レオナルドを失った時点で俺は詰んでいたのかもしれないな。

 いや、キミ達にちょっかいを出したのが運の尽きか……。

 やはり、サマエルの使用はオーフィスではなく……グレートレッドの方が良かったのかな……。

 ……まさか、京都でのグレモリー眷属との出会いと、選択が……俺達の負けフラグだったなんて……」

 

自嘲しつつ息も切れ切れになる曹操。

顔色も相当悪く、ヴァーリのように魔力でサマエルの呪いを抑える事も出来ない。

状態は悪化の一途を辿っていた。

その時、見覚えのある霧が覆い、霧の中から人影を視認する。

曹操のもとに現れたのは―――ボロボロのゲオルクだった。

しかし、片目と片腕を失っており、左足も黒く変色していた。

 

「ゲオルクか……」

 

「……曹操、俺達は……多少の計算違いはあれど、大きくは間違えてはいなかった。―――ただ」

 

曹操の手を取り、転移の魔法陣を展開するゲオルク

ヴァーリ以外の皆が一斉に取り押さえようとしたが―――聖槍がまばゆい光を発して一瞬だけ目と体が動かなくなる。

まだその程度の力は残っていたようだ。

 

「……二天龍に関わると、滅びる。シャルバ達のように……」

 

「……そうだな、ゲオルク……」

 

聖なるオーラに身を焦がしながら突き出したサイラオーグの拳が空振りに終わる

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

肝心なところで曹操とゲオルクに逃げられてしまった。

一誠は自分の詰めの甘さに閉口してしまうが、サイラオーグが一誠の頭を撫でる

 

「そう落ち込むな。お前達の勝ちだ。

 あの様子では両者共に当面戦う事も出来ないだろう。

 いや、障害を遺して以前のように戦えないかもしれんな」

 

サマエルの毒が何処まで曹操に効果を及ぼすか分からないが、ドラゴンで悪魔の一誠ですら肉体は容易く滅びた。

曹操にもまともな展開は待っていないだろう。

ヴァーリが一誠の方に視線を向ける。

 

「キミがグレートレッドと通じたと言うのなら、あの赤龍神帝に挑戦する前にキミと決着をつけないといけないようだ」

 

「ああ、来いよ。俺ももっと強くなって、お前をぶっ倒してやるさ」

 

「……だが、気を付けろ。

 キミを恐れる者が増える一方で、狙う者も今後増えるだろう。

 真龍と龍神と通じたと言うのはそう言う事だ」

 

「何が来ても俺は俺の目標の為に突き進むだけだ。

 上級悪魔になって、俺はハーレム王になる!

 レーティングゲームの王者にもなりたいしな!」

 

一誠の宣言を聞いて、ヴァーリは楽しそうに笑う。

 

「けど、その前に――――決着を付けなきゃいけないことがある。

 鋼弥と戦っているアンリ・マンユを倒さないと」

 

この冥界の騒動を引き起こしたもう一つの勢力ゾロアスターの首魁―――アンリ・マンユ。

今は鋼弥が一人で戦っている。

一誠たちは急いで、先ほどの場所へと戻る。


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