ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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約三か月ぶりの投稿、遅くなって、もうしわけありません。


第五話 ドラゴン・イーター

ホテルのレストランを飛び出す一行。

臨戦態勢をしつつ、見回ると誰もいなくなっている。

京都で二度も体験した、"霧"である。

 

「これって、まさか……!!」

 

「ああ、こんなことができるのはただ一人……」

 

禍の団――英雄派の参謀である霧使いの男。

ロビーのソファーに座る二人の男性がいた刹那―――火炎が飛んできた。

狙いはアーシアとイリナに飛んでくるが、オーフィスが二人の前に立ち掻き消したのだ。

 

「あ、ありがとうございます」

 

アーシアのお礼にオーフィスは無反応だが……。

 

「やあ、久しいな赤龍帝、銀流星、アザゼル総督、京都以来だ。

 いきなりの不意打ち攻撃はデュランダルのお返しだよ」

 

「曹操!!」

 

最強の神滅具を持つ聖槍使い、英雄派のボス―――曹操。

 

「バアル戦、いい試合だったよ二人とも。

 赤龍帝は紅の鎧に。銀流星は完全なる修羅に。

 戦闘好きな者からすれば、聞いただけで達してしまいそうな戦いだ。

 改めて賛辞の言葉を贈ろう、グレモリー眷属。若手悪魔ナンバーワン、おめでとう」

 

「テロリストの幹部に褒めてもらえるなんて、光栄なのかしら?複雑な所ね」

 

「さて、オーフィス。ヴァーリと共に何処へと行ったのかと思ったら、そちらにいるとは虚をつかれたよ」

 

「こっちも驚いたにゃ。てっきりヴァーリの方へと向かったと思ったんだけどね」

 

「それについては、別同隊とゾロアスターが向かったからね」

 

今の会話の流れからして、ヴァーリ側と曹操側が袂をしているようだ。

ルフェイが咳払いをして喜々として説明をしだす。

 

「事の発端は二つありました。

 一つ目、オーフィス様が赤龍帝と銀流星に興味を持ち、ヴァーリ様が独自のルートで出会いの場を提供しました。

 二つ目、オーフィス様をつけ狙う方がいるという情報を得たので、確証を得るためにいぶりだすことにしたのです。

 ……つまり、オーフィス様を動かせば英雄派が動き出し、一気にお片付けしようとしうとしました。

 美候様が変化して偽オーフィスとなりヴァーリと共に行動、本物はこちらにお連れしたのです」

 

ルフェイの言葉に驚くが、鋼弥、リオ、カナンは薄々気づいていた。

"禍の団"のトップを動かせば敵はどう行動を起こすのかだ。

ヴァーリチームが何も考え無しでオーフィスを連れ出すような真似はしないし、準備をしていたのだろう。

ヴァーリから事情を聞いてたアザゼルは驚いている素振りはしなかった。

 

「曹操、我を狙う?」

 

「ああ、オーフィスは必要だが、"今"のあなたは必要ではないと判断した。

 だが、あなたはあまりにも強すぎる。

 正面から戦えばどうなるのか、やってみるか」

 

曹操は聖槍を器用に振り回す。

鎗の先端が開き、眩い光が現れて光の刃が現れる。

曹操の姿が消えて、次に現れた時、オーフィスの腹部を深々と貫いた。

悪魔ならば必殺の一撃、更に手に力を込めて叫ぶ。

 

「輝け、神を滅ぼす鎗よっ!!」

 

膨大な閃光が溢れ出していく。

鋼弥はヒジリとなり、リオと共にテトラジャの二重張りをする。

暗い霧の中でも眩い閃光が迸る、テトラジャを張らなければ確実にダメージは確実に受ける。

光が止むと、オーフィスの腹部に深々と貫かれているが鮮血が溢れることなく顔は苦痛に歪まなかった。

曹操はゆっくりと槍を抜くと、ポッカリと空いた腹部が塞がっていく。

 

【オーフィス―――ウロボロスは"無限"を司る龍。

 必殺の一撃を放っても瞬時に元通りに再生する】

 

「そのとおりだ。最強の神滅具でも致命傷を負わすことができない。

 ダメージは通るが、"無限の存在"を削るにはこの槍を持ってしても届かない。

 反撃をしてこないのは簡単だ。いつでも俺を殺せるからだ。グレードレッド以外、興味が無いという事だよ」

 

曹操は説明する。

だとしたら、オーフィスをどうしようというのか?

すると、フェンリルが消えて入れ替わるように現れたのは―――白龍皇ヴァーリ・ルシファー。

 

「ご苦労だった、黒歌、ルフェイ。こうして面と向かって合うのは久しいな曹操」

 

「これは驚きの召喚だ」

 

「フェンリルちゃんとの入れ替わりによる転移法でヴァーリさまを呼び寄せました」

 

「フェンリルは美猴たちと共に別動隊と戦って貰う事にした。

 お前と決着を付けようか。……ゲオルグと二人だけで挑むとは剛胆だな」

 

「だからこそだよ。俺とゲオルグだけで十分と踏んだだけだよ。

 現存する"龍喰者(ドラゴン・イーター)"を使ってね。

 ……ゲオルグ、地獄の窯の蓋を開ける時が来た」

 

「了解だ。無限を喰らうときが来たか」

 

ゲオルグが後方―――広いロビーに巨大な魔方陣を出現させた。

どす黒く恐ろしい気配が漂い始めた。

 

『これは……ドラゴンにだけ向けられた圧倒的なまでの憎悪……!』

 

ドライグは感じたが、声が震えていた。

鋼弥と契約しているドラゴネルとコウリュウも気配を感じているようだ。

魔法陣から出現したのは十字架に磔にされ、身体には拘束具、目にも拘束具が付けられており血の涙を流している。

下半身は東洋の龍の様な細長く、上半身は堕天使。

両手、尾、全身のあらゆるところに無数の釘が打ちこまれていた。

 

「こいつは……なんてものを……。コキュートスの封印を解いたんだ……!」

 

「"神の毒"、"神の悪意"。エデンのアダムとイヴに知恵の実を食わせた禁忌なる存在。

 "ドラゴン・イーター"のサマエル。蛇とドラゴンを嫌った神の呪いを一身に受けた堕天使であるドラゴン。

 ―――存在を抹消されたドラゴンだ」

 

【サマエル……!】

 

魔界においては、無数の翼を持つ赤い蛇の姿をしている強力な邪神。

だが、謎の多い悪魔でもあり守護天使という面がみられることもあるらしい。

そして、目の前の磔にされた存在―――サマエルは怨恨の声をあげる。

おそらくあれが曹操が言っていた"究極の龍殺し"。

アザゼルは憤怒の顔になり怒号する

 

「冥府を司るハーデスは何を考えて……?―――ッ!まさか!?」

 

「そうハーデスと交渉してね、何重もの制限を設けたうえで召喚を許可したのさ」

 

「ゼウスが各勢力との協力体制に入ったのがそんなに気に喰わなかったのかよ!!」

 

つまり、ハーデスはテロリストである英雄派に力を貸したという事になる。

どう考えても自殺行為、勢力に混乱をもたらすことになる。

 

「それを使ってどうするつもりだ!?ドラゴンを絶滅させる気なのか!?……いや、まさか!?」

 

アザゼルの問いに曹操は口の端を愉快そうに釣り上げて、指を鳴らした。

 

その時―――バグンッ!!

 

何かか横を通り過ぎ、オーフィスがいた場所に黒い塊が生まれていた。

それはサマエルの口元……舌でオーフィスを飲みこんだようだ。

とんでもない事態になっているのは明らかだ。

 

「祐斗!あれを斬って!」

 

聖魔剣を創り、斬りにかかるが……手ごたえが無い。

それどころか、半分以上刀身を失っていた。

 

「……この黒い塊は攻撃をそのまま消し去るのか?」

 

ならばと思い、サマエルの舌を斬りにかかるが――――黒い塊を斬ったのと同じ結果となった。

 

【スターソーディアン!!】

 

ヒジリは指で星の陣を描くと、8つの光剣が出現し、黒い塊に突き刺すが―――光剣が四散した。

 

「【マハンマオン!!】」

 

リオとヒジリによる破魔の最上級を撃ちこむが……これも効果が無く札が消滅した。

 

【これも無効化されるなんて……!!】

 

リオの属性魔法、ヴァーリの半減の力、リアスの消滅魔力を放つが……全く通用しなかった。

一誠は禁手化して、殴りに掛かろうとするがアザゼルが制止する。

 

「イッセー!!絶対に相手にするな!!おまえにとっても究極の天敵だ!!

 あれは……おまえらドラゴンを簡単に屠れる力を持っているはずだ!!

 オーフィスが脱出できない時点で相当ヤバい状況になってんだよ!!」

 

「オーフィスが奴らに捕らえられたら、大変な事になるんでしょ!?」

 

ヴァーリが前に立ち、鎧姿となる。

 

「相手はサマエル、上位神滅具所有者が二人……不足は無い」

 

黒歌とルフェイも戦闘態勢に入り、他のメンバーも臨戦態勢をとる。

 

【レイヴェルさん、貴女は後方に下がっててください】

 

レイヴェルは頷き、後方に下がる。

曹操は狂喜に彩られた笑みを浮かべる。

 

「このメンツだと流石に俺も力を出さなければ危ないか……。

 ゲオルグ、サマエルの制御を頼む。俺はこいつらを相手にしよう」

 

「一人で、相手にできるのか?」

 

「やってみるよ。

 これぐらい出来なければこの槍を持つ資格なんて無いに等しい。

 ――――禁手化」

 

発言直後、曹操の体に変化が開始される

神々しく輝く光の輪が背後に現れ、曹操を囲むようにボウリングの球ぐらいの大きさを持つ7つの球体が宙に浮かんで出現した

 

―――静か且つシンプルな禁手化。

 

曹操が一歩前に出ると、囲んでいる7つの球体も連なる様に移動した

 

「これが俺の『黄昏の聖槍』の禁手――。

 

 "極夜なる天輪聖王の輝廻槍(ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルティン)"。

 

 まだ未完成だけどね」

 

禁手状態の曹操を見たアザゼルが驚愕の叫びを上げる

 

「まさか……亜種か!

 "黄昏の聖槍"の今までの所有者が発現した禁手は"真冥白夜の聖槍(トゥルー・ロンギヌス・ゲッターデメルング)"だった!

 名称から察するに自分は転輪聖王とでも言いたいのか!?」

 

「俺の場合は転輪聖王の『転』を敢えて『天』として発現させた。そっちの方がカッコイイだろう?」

 

最強の神滅具が亜種の禁手を発現となると、どの様な能力を発揮するか分からない

ヴァーリが一誠とヒジリの隣に並んで言う。

 

「気を付けろよ、2人とも。

 あの禁手は『七宝(しっぽう)』と呼ばれる力を有していて、神器としての能力が7つある。

 つまり、あの球体1つ1つに能力が付加されている訳だ」

 

【7つ!?7つ全てが神器というのですか!?】

 

「ああ、7つだ。それのどれもが凶悪だ。俺が知っているのは3つだけだが。

 だから称される訳だ、最強の神滅具と。紛れも無く、奴は純粋な人間の中で一番強い男だ。

 ――――――そう、人間の中で」

 

「最強の神滅具の亜種禁手とか、マジかよ。京都で戦った時は通常状態でも手こずったってのにッ!」

 

曹操が左手を前に突き出すと、球体の1つが呼応して手の前に出ていく

 

「七宝が1つ。――――輪宝(チャツカラタナ)」

 

―――ガシャンッ!!

 

手の前に位置した球体が消え去った刹那、突然何かが派手に壊れる音が響く

音の方角に視線を向けると、ゼノヴィアのエクス・デュランダルが破壊されていた

 

「エクス・デュランダルが……ッ!」

 

「何だ!?今何が起こった!?」

 

「まずは1つ。輪宝(チャツカラタナ)の能力は武器破壊。これに逆らえるのは相当な手練れのみだ」

 

曹操が不敵に一言漏らした次の瞬間、ゼノヴィアが片膝をつく

七宝の1つは一瞬の内にエクス・デュランダルを破壊した上、彼女の腹部が―――貫かれていた。

 

「ぐ………っ!!」

 

口からも血を吐き出し、その場に崩れ落ちるゼノヴィア。

彼女に付けられた傷は一目で致命傷と認識出来る。

 

「ついでに輪宝を槍状に形態変化させたよ。

 それで傷を負うなら俺には勝てないな――――デュランダル使い」

 

「アーシア!!ゼノヴィアの回復を急いで!!」

 

「ゼノヴィアさん!!しっかりしてください!!」

 

アーシアは泣きながら、回復を決める

他の仲間たちもゼノヴィアに怒り、一誠と祐斗は同時に早々に攻撃を仕掛ける。

曹操は聖槍で軽くさばき、また一つの球体を寄せて……

 

「女宝(イツテイイラタナ)」

 

リアス、朱乃、リオ、カナンの元に飛び瞬間、輝きを発し包み込んだ。

 

「くっ……!」

 

「こんなもので……!」

 

反撃に出るが――――何も起きない。

四人は何度も手をかざすが、魔力が出てこない。

 

「女宝は異能を持つ女性の力を一定時間、完全に封じる。これも相当な手練れでもない限り無効化できない」

 

つまり、アーシアの回復能力までも封印されたら……ゼノヴィアは確実に死ぬ。

ヒジリの姿を解除した鋼弥はコウの姿になる。

サマエルがいてはコウリュウやドラゴネルを出すことはできない。

あの"女宝"ではスィームルグ、ヒジリ、アリスの力が封じられる。

イシュタル、アマテラス、ハリハラ、フツヌシ、アンクー、ルーグは聖なる槍に貫かれたら大ダメージは確実。

安全性に行けるとなれば、コウとアンヴァルに絞られる。

 

(曹操の奴は業魔化身の対策もできているというわけか……!!)

 

ここで痛い所を突かれてしまい、苦虫を噛み潰した表情になる

 

「サマエルとゲオルグを死守しながら、俺一人で突破する!!なんとも最高難度のミッションだ!だが――――」

 

黒歌とルフェイは防御が薄いゲオルグとサマエルに攻撃を仕掛けるが―――。

 

「馬宝(アツサラタナ)……任意の相手を転移させる」

 

なんと、二人が転移をされた場所は回復させるアーシアと負傷したゼノヴィアに向けられていた。

攻撃は急に止めることはできない。

 

【ヌオオオオオオオオオオオオッ!!】

 

「間にあえええええええええ!!」

 

一誠とコウは神速の如く、走りアーシアとゼノヴィアの前に立ちはだかり壁となる。

 

―――チュドドドドドドドドン!!!!

 

轟音が響き渡り、魔法攻撃が容赦なく襲う。

 

【ぐぅ……ぬぅ……とっさにラクカジャをかけてよかった……】

 

一誠とコウはなんとか耐えきり、体勢を保つ。

ヴァーリとアザゼルが同時に攻撃を仕掛けに入る。

だが、曹操は三人の攻撃を既でで避けていく。

 

「鎧装着型の禁手はオーラが迸り過ぎて、どこから攻撃が来るのか容易に把握しやすい」

 

曹操は鎧装着型の弱点を告げ手、彼の右目が金色に輝く。

 

「京都で赤龍帝にやられ失ったものを補った……俺の新しい眼だ!!」

 

曹操は視線を下げると、アザゼルの足元が石化していく。

 

「メデューサの眼か!!」

 

見た者を石化にしてしまう蛇のモンスター。

禁手化して七つの能力を持ち石化の邪視、恐ろしいほどの強さを持つ曹操。

 

―――ドズンッ!!

 

鈍い音と共にアザゼルの腹部に聖槍が突き刺さり、鮮血が迸る。

黄金の鎧が砕かれて、膝をつく

 

「なんだ……こいつのバカげた強さは……!」

 

「貴方とは一度戦いましたから対処はできましたよ」

 

「おのれ、曹操!!」

 

アザゼルがやられたことに激昂するヴァーリは極大の魔力の塊を放つが―――

 

「珠宝(マニラタナ)。その能力は攻撃を他者に受け流す。

 確かにキミの魔力は強大だが……受け流す術ならある」

 

黒い渦に吸い込まれて、小猫の前方に新たな渦が発生した。

駆け出そうにも間に合わない。

 

「なんで、避けないのよ!!白音!!」

 

黒歌が前に立ち、小猫の盾となり―――。

 

ゴバァァァァァンッ!!

 

爆音がロビーに響き渡り、小猫の目の前で受けてしまった。

黒歌は倒れるが小猫は抱き留めた。

 

「……ね、姉さま!!」

 

「曹操……俺の手で、俺の仲間をやってくれたな!!」

 

「ヴァーリ、君は仲間想い過ぎる。そこの赤龍帝のようだ。天龍はいつそんなにやわくなった?

 それと、俺の七宝は全て知ったようだな。

 今回出したのは、見せたことの無い攻撃しているからな」

 

「では、こちらも見せようか!!」

 

ヴァーリは"覇龍"の呪文を唱えるが―――。

 

「させるか!!サマエル!!」

 

ゲオルグが魔方陣を操作すると、サマエルはの右手の拘束具が解かれ――

 

『オオオオオオオォォォォォォォォン』

 

不気味な声を発しながら、サマエルの右手はヴァーリに狙いを定め、ヴァーリは黒い塊に包まれた。

 

『オオオオオオォォォォォォォォォォォォォ』

 

サマエルが吼えると同時に黒い塊が勢いよく弾けると、ヴァーリの体中から血が飛び散っていく。

ヴァーリが為す術もなく、屠られた。

 

「弱っちい人間風情だから……弱点で倒させてもらう。悪いなヴァーリ。

 さて、残る脅威は……君がいたね。――――銀流星」

 

コウの姿から解いて、構える鋼弥。

その眼には仲間たちがやられても冷静で保っている"青い炎"が宿っている

 

「そういえば、君には新たな力―――オーバードライブを持っているんだろ?それを見せてくれよ」

 

「―――使わん。貴様にはこれで、倒す」

 

いつもの"真覇流"の構えではなく、全身に妖気が溢れだす。

四騎士の試練の先に発現させたワザを繰り出すつもりだ。

 

「ジャべリン・レイン!!」

 

回し蹴りをすると脚から光槍が雨の様に降り注がれる。

曹操は槍を構えて、降り注がれる光槍を叩き落す。

眼前に迫り、右手から、光の弾丸を生み出し―――

 

「破邪光滅弾!!」

 

至近距離から放たれるが、曹操は槍を構えて弾道を反らす。

確実に頭を狙ったのに、動体視力も半端ではなかったようだ。

 

「危ない、危ない。京都では見せたことの無い技だね。だが……」

 

曹操の周りに七宝が漂い始める。

 

「これ以上攻撃したら、君も仲間たちも危ないだろう?」

 

鋼弥は一誠たちと合流し、すぐさま離れる

七宝によるカウンターや攻撃封じ、曹操の身体能力と聖槍、邪視。

更には研究し尽くしてきた知識と知恵もある、かつてない強敵だ。

 

「……どれだけ取れた?」

 

「四分の三。大半と言える。これ以上はサマエルを現世に繋止められない」

 

ゲオルグの言葉通り、サマエルを出現させる魔法陣の輝きが失われつつある。

 

「上出来だよ」

 

オーフィスを包んでいた黒い塊が四散。

役目を終えたのか、サマエルは魔方陣の仲へと沈もうとしていた―――。

 

―――バチバチッ

 

他の者たちに気が付かないが、鋼弥はサマエルが召喚されていた魔法陣が一瞬、変わったような感じがした。

オーフィスは曹操に視線を向ける。

 

「我の力、奪われた」

 

「その通り。貴女の力を奪い"新たなウロボロス"を創り出す。俺たちは考え方を変えたのさ」

 

「……そういうことか!サマエルを使って手に入れた分を使って生み出すわけか」

 

「その通りですよ。我々は自分たちに都合の良いウロボロスを欲したわけだ。

 グレードレッドは正直、俺たちにとってそこまで重要な存在でもなくてね。

 ご機嫌取りをするのにもうんざりしたのがこの計画の発端です。

 ………ゲオルグ、サマエルが奪ったオーフィスの力は何処に転送される?」

 

「本部の施設に流すよう術式にを組んでいたよ」

 

「そうか……。なら、俺は一足早く帰還するよ」

 

曹操の言葉に驚愕する。

勝利を目の前にして、全滅させようとはしない。

いや、相手は亜種の禁手に慣れていない感じだ、だから……この戦いは曹操にとっては"慣らし"みたいなものだ。

 

「ゲオルグ、死神の一行様をお呼びしてくれ。ハーデスは搾りかすのオーフィスをご所望だからね。

 それと、ジークフリートと入替転移をやってみてくれ」

 

「任せてくれ」

 

ゲオルグが魔方陣を展開させて、何処かえと消え去った。

 

「さて、ハーデスの命令を受けて死神一行が到着する。

 そこにジークフリートが参加する。

 君たちが無事にここから脱出するのがゲームのキモだ。

 オーフィスを死守しながら、ここを抜け出せるか、挑戦してみてくれ。

 襲い来る脅威を乗り越えてこそ、戦う相手に相応しいと思うよ」

 

それだけを言い残し、曹操は完全に去っていた。

どこまでも舐め切った態度に怒りの感情が止まらなかった。


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