ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~ 作:Mr.エメト
第四話 昇級試験
試験当日。
転移魔法陣の前に集結した一行。
昇格試験センターに行くのは一誠、祐斗、朱乃、鋼弥とレイヴェルはサポートと一緒に同行する。
リアス、アザゼルなどの皆は近くのホテルで待機するようだ。
ただ、その中で―――。
「ギャスパーは見送りに来ていないのか」
「あいつなら、一足早く冥界に転移して、グリゴリの神器研究機関に行ったよ」
「あいつが一人で?」
驚く一誠だが、アザゼルは頷き説明した。
「バアル戦が終わって、あいつは泣きながら俺の所にきたんだよ」
"先輩たちの様に、強くなりたいです!!もう守られるだけじゃ嫌です!!
僕は、僕は……情けない姿だけはもう嫌なんです!!"
「それだけの決心をしてグリゴリの門を叩いたんだ。
生半可な決断じゃないだろう、研究員の指導のもと、神器と向き合い始めている」
ギャスパーもまた、強くなるために能力を深く向き合う覚悟をしている。
きっと、強くなって帰ってくるはずだ。
試験が終わったらサーゼクスのもとにオーフィスを連れていくつもりだ。
禍の団の打倒も早まるはずだし、ゾロアスターを集中的に叩けるはずだ。
いざ、試験会場に向かおうとしたが……リアスは一誠の頬にキスをする"おまじない"をした。
一誠のやる気は100%になり、いざ試験会場へ転移――――。
◆◆◆◆
=冥界・グラシャラボラス領 昇級試験センター=
たどり着いた四人はスタッフに案内される。
石造りの廊下を進み、会話をする。
「ここはグラシャラボラス領にある中級悪魔の昇格試験センターなんだよ」
「四魔王が一人、ファルビウム殿の御家でゼファードルの領地か」
「戦術家でもあるファルビウム・アスモデウス様に倣って、昇格試験センターを造ったそうです」
ファルビウムは"働いたら負け"というイメージが強いが、戦術・戦略に関しては冥界随一の実力者。
優秀な眷属悪魔を集めることにほぼ全力を費やし、仕事のほとんどは自身の眷属に丸投げしているが……。
「術式に精通したアジュカ・ベルゼブブ様のアスタロト家の領地に試験センターがあると思ったな」
一誠がそう言うと祐斗は返答する。
「アスタロトの領地にも試験センターはあるよ。本来ならアスタロトで行われる昇格試験だろうね。
上流階級の悪魔が通うほど名門と呼ばれる学校もあるほどさ。
部長もアスタロト領の学校か魔王領にある学校か迷ったそうだからね。
結局は魔王領にしたそうだけど」
「だが、グラシャラボラス領で試験を行う理由は……」
「ええ……ディオドラが起こした事件でアスタロト家は失墜してしまったから……」
朱乃の答えに鋼弥は"やはりか"という表情になった。
ディオドラ・アスタロトが禍の団やゾロアスターと組んでいた件で危機的状況になった。
次期魔王の輩出権利も失ったという事情も聞かされた。
そんな会話をしてて窓口が見えて来た。
「では、俺はここで待つとしよう。三人なら合格できると確信している。特に実技に関してはね」
一誠は首を傾げて"?"が浮かぶがその答えはもうすぐわかる。
◆◆◆◆
三人とも実技試験が終わって、鋼弥と合流したが……一誠は驚き戸惑っていた。
「どうだった?」
「実技試験の方だけど、俺だけじゃなく、木場も朱乃さんも問題ないというか……」
「圧倒的といいたいのだろう。一誠たち下級悪魔たちは異例の強さを誇る。
魔界でも騎士団に入っていきなり隊長クラスに就いてもいいほどの実力を持っている」
「知らなかった、俺たちそんなに強くなっていたのか……」
一誠は会場を少し壊してしまい、木場と朱乃は傷つけない程度で勝利を収めた。
「これまで俺たちは死闘を経験していた身だ。
ヴァーリチーム、狼王フェンリルと悪神ロキ、英雄派とそのボス、ゾロアスターの幹部。
更にマシンナリードライバーやサイラオーグと戦い生きて帰ってきた。
……少なくともグレモリー眷属は上級悪魔に匹敵する猛者ということだ」
様々な強敵たちと戦い、幾度も修羅場をくぐり過ぎて、一般的な中級悪魔の実力を大きく超えていた。
一誠は改めて実感したのだ、とんでもなく強くなっていることに。
だけど、今まで襲ってきた連中だって強いから、普通とかけ離れていた。
試験は無事に終わり、後は結果を待つだけ、ホテルでリアスたちと合流することに。
同行としてカナン、リオも来ているようだ。
◆◆◆◆
試験の報告をして、あれこれと話す。
アザゼルは一誠の弱点を指摘する。
「テクニックタイプもだが……トリアイナに真女王形態、それはスタミナだ。
どちらも使用にするには体力とオーラの消耗が激しすぎる。
真女王の使用時間はどれくらいだ?」
「正直に言えば、力が安定しなさ過ぎて、攻撃一回で状態が解除されることもあります。
トリアイナで慣れつつ同時に高めていくしかないか……。真女王は各駒の総括みたいなものだから」
「命を削らず、生命力の危険が無い分、体力とオーラが食うというわけか」
逆に考えれば命を削る覇龍よりは遥かに良いとも言える。
リオはある点を思い浮かぶ。
「そういえば、サイラオーグさんのレグルス、あれも"覇龍"みたいなこともできるのでしょうか?」
一誠と鋼弥は冥界の帰省してタンニーンと修行していた時の事。
強力な魔物やドラゴンが封印されている神器は覇龍みたいなことができると教わった
「システム上は可能だな。覇の獣と書いて"覇獣(ブレイクダウン・ザ・ビースト)"。
もっとも天龍の"覇龍"が強力だがな、使用可能と言っても生命力が吸われて死ぬ危険性はある」
「同盟したいま、発見され次第は三勢力のトップ陣に知らされることになっているはず。
つまり……バアル側は隠していたという事になるわね」
「ああ、サーゼクスすら知らなかったようだ。どうにも大王派の連中が隠すよう打診していたようだ。
サイラオーグは魔王たちに報告すべきだと訴えたが、徹底に隠すべきだと主張してきた。
流石にサイラオーグも我慢の限界だったらしく、使える場面……あの終盤戦で晒されたわけだ。
大王派は相当追及されているようだぜ?」
カナンの問いにアザゼルは吐いて答える。
リオは更にあることを思い出す。
「京都での戦い……あの時、曹操は"覇輝"という言葉が出ましたが、あれも何か封印されているものでしょうか?」
「あれに封印されているのは"聖書に記されし神"の意志みたいなものだ。
――"神"という存在を殺せる槍。始まりの神滅具。それを"聖書に記されし神"は現世に残した。
それが何なのかは意見が分かれているんだよ。侵略兵器、防衛兵器、単に偶然の産物と説は様々だ。
天界でも結論は出せないままだ」
だが、鋼弥はある一つの点が思い浮かぶ。
――"神殺し"
超常な存在である神と悪魔の争いでは完全に決着がつかず"封印"するに留まる。
だが……神や悪魔を完全に消滅させられることのできる"人間"はできる。
――それが唯一神が人間に与えた"観測の力"。
数多の自然の脅威、理不尽や災厄あるいは奇跡や救いを観測・認識できるようになったことで畏敬から信仰が形成され、神や悪魔が生まれた。
逆に、"神や悪魔が消滅したこと"を観測することによって存在消滅の事象を確定させる事もできる。
魔の力を持つが半分人間の血を引く鋼弥と嶺爾は"観測の力"を持ち"神殺し"の力が備わっている。
(だとすれば"黄昏の聖槍"は"観測の力"がない人間の為である"神殺し"の武器なのだろうか……?)
そう考えているうちに異様な気配が漂い始めた。
見た目は同じ風景なのにまったく、別の場所へと転移したかのようだ。
それは……京都修学旅行の時と同じ。
黒歌はいつも着ている着物になり、耳と尾を出す。
「ヴァーリが巻かれるなんて、本命がこちらに着ちゃうなんてね」
霧が周囲に立ちこめて、辺りを包み込んでいった―――。