ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第二話 竜姫の想い

第二話 竜姫の想い

 

 

依頼内容の納品の確認を終えて、学園の試験に向けて勉強している鋼弥。

成績もしっかりしていないとハンターは務まらない。

ドアが開かれる音がした、振り向くと白装束姿の小猫が猫耳と尻尾を出した猫又モードになっていた。

最近は不調で悪魔稼業も休んでいたのだが、風邪を引いた様子は無い。

 

「小猫、どうした?」

 

鋼弥は問いかけるが何も答えない小猫、

小猫は艶のあるような顔で近づいていくと、白装束の裾をたくし上げた。

 

「―――っ!?」

 

下着を身に着けていない小猫に鋼弥も驚きを隠せなかった。

荒く息づかいを行う小猫は白装束をはだけさせ、鋼弥に抱きつく。

小猫の心臓が鼓動し呼吸も乱れている。

 

「……先輩……切ないです」

 

そんな官能的な台詞の直後、鋼弥の手を取って自身の胸に当てる

小さいながらも確かな胸の柔らかさと体温が伝わり、小猫は甘い喘ぎ声を発する。

更に鋼弥の首筋を舐め、小猫は切なそうな瞳で告げてきた

 

「……先輩の……あ……赤ちゃんが欲しいです」

 

「!!?!!?」

 

小猫の発言に頭は訳が分からなく混乱状態になる。

 

「小猫、本当にどうし―――」

 

小猫の瞳を見ると少し陰りが見えた

鋼弥は猫又の出産について聞いた事がある

猫又の女性は成熟してない時に子供を宿すと、母子ともに死んでしまう恐れがある。

だが、今の小猫は未成熟。それなのに発情期を迎えるのは明らかにおかしい。

 

 

◆◇◆◇

 

 

他のメンバーから連絡を受けて駆けつけたアザゼルが事情を聞く。

専門医に診てもらうと、小猫は子孫を残したいと言う本能に駆られていると診断された

今はリオの睡眠魔法ドルミナーで眠らしている。

 

「猫又の女は子供を宿せるようになって暫くすると一定周期で発情期に入る。

 要は猫又の本能が働いて子孫を残すために子作りしたくなるんだよ。

 その辺は猫と同様だな。猫又の女の特性上、相手は気に入っている異種族の男ってわけだ。

 つまり……お前だ、鋼弥」

 

「俺が選ばれた」

 

「あぁ、小猫はレアな猫又――――ネコショウ。

 ありとあらゆる神魔に変生する魔人の子供なら万々歳だ。

 だが、ちょっと今回はな」

 

「未成熟で発情期を迎えたからか?」

 

「ネコショウの出産は心身共に成熟した状態でないと危険を伴う。

 人間界でも出産は母胎にとって大変な事だろう?小猫はまだ未成熟だ。

 今のままで子を宿したら出産の際に母子共に耐えられずに死ぬ可能性が高過ぎる。

 それらを含め、もう少し成長してからの方が良いだろう」

 

さっきの小猫はかなり無茶をしていた事になる

ネコショウの本能で子作りは出来ないと判断しても不思議ではないが、本人はその確認を怠った――――と言うより行わなかった

鋼弥は小猫が無茶をした理由を察する

 

「俺と朱乃の関係を見て無理に発情期を迎えてしまったかもしれん」

 

「え?どういう事なんだ?」

 

「つまり、鋼弥の影響で体の準備が整わないまま、発情期に入ってしまったと言う事よ」

 

疑問を発した一誠にリアスがそう呟く。鋼弥は小猫を大切にしている。

しかし、朱乃を初め、色々な女性がいるせいで彼女は焦りを感じたのだろう。

アザゼルが何とも言えない空気を察して頭をボリボリ掻く

 

「何はともあれ、発情期を無理矢理、抑え込んでもな。

 薬で抑制し続けても今度は成熟した後に本能が働かなくなる可能性も無い訳じゃない。

 一番良いのは、小猫の状態が完全に落ち着くまで鋼弥自身が耐える事だ。

 最も、一誠と違って節操無しじゃないから安心だがな」

 

「自慢ではないが、誘惑に耐える修行もしている。しかし……」

 

鋼弥は小猫の頭をやさしく撫でる。

 

「もっと早く小猫の異常に気づいていれば苦しい思いをさせなかったのに……」

 

「いや、気にすることはないって、完全に落ち着つけば大丈夫だからよ」

 

「その間に小猫は辛く苦しい思いをする……」

 

哀しむ顔になる鋼弥。

カナンは鋼弥の方に歩いて頭を叩く。

 

「そうやって、貴方が哀しんでも小猫ちゃんの体調が良くなるの?」

 

「……カナン。そうだな、すまない」

 

鋼弥は礼を言い、カナンはふんっと言う。

 

 

=涼刀事務所 カナンの私室=

 

 

(……なによ、鋼弥のバカ。私だって……)

 

カナンは心の中では朱乃、小猫、ゼノヴィアの事が羨ましかった。

どうして、素直になれない性格なんだろうと……。

どうして、もっと早く告白しなかったのだろうと……。

どうして、勇気を出せなかったんだろうと……。

 

だんだんと悲しくなり、涙が溢れる。

ドアがノックされて、カナンは涙を拭く。

 

「誰?」

 

「俺だが……入ってもいいか?」

 

鋼弥の声だ、カナンはドアを開けて部屋に入れる。

 

「先程はすまなかった。小猫に対してどうすればいいのか解らなくて……」

 

「わざわざ、それを言いに部屋に来たの?感謝されるようなことはしてないわよ」

 

鋼弥はフッとあることを思い出す

 

「カナンは覚えているかな?初めて、俺がシンディ師匠の修行場に着た時の出来事」

 

―――親を失い、兄も立ち去ったあの日は独りぼっちだった。

 

―――仲間たちと馴染めず、一人で黙々と修行していたがカナンが勝負を仕掛けて来た。

 

―――何度も戦って、お互いボロボロになって倒れた時、笑いあった。

 

「覚えているわよ。暗い顔して無表情に修行して、気に喰わないから勝負しかけたわ」

 

「けど、俺は感謝しているよ。

 あの出来事が無かったらカナンを初め、修行してきた仲間たちと友情を深めていなかった。

 こっちの世界で一誠たちと仲間になれたからさ」

 

「……それで、朱乃と恋仲になったのよね」

 

カナンの言葉に鋼弥は振り向いたが、次の瞬間、カナンは鋼弥をベッドに押し倒した。

 

「カナン……?」

 

「私ね……。貴方の事が好きなの……。親友としてじゃなく仲間としてじゃなく、恋人として……」

 

カナンの言葉に鋼弥は驚く。

 

「けど、私は告白する勇気が無い弱虫よ。

 竜姫と呼ばれているのに、情けないよね……。

 だから、貴方が朱乃と恋仲になって……後悔していた……」

 

ポツポツと鋼弥の顔を濡らしていく、カナンの涙。

大粒の雫は止め処なく流れていく。

 

「ごめんね……こんな事を言っても……迷惑だよね……。

 解っているの……貴方には朱乃がいて、私には入る場所は無い事も……」

 

鋼弥はカナンを思いっきり、抱きしめた。

ギュっとギャッと痛いほど、抱きしめた。

 

「痛い……痛いよ……鋼弥……」

 

「……すまなかった。俺は本当に"なってないな"。女に涙を流させるほど、酷い男だと」

 

「それは違うわ、これは私の……」

 

「俺は、お前の悲しみを受け止めてやる事しかできない」

 

「本当に、バカ……大バカなんだから……」

 

カナンは鋼弥の胸の中でただ、ただ泣く。

鋼弥はカナンが泣き止むまで、背中を軽く撫でる。




カナンの心情を書いてみましたが、ちょっとだけ作者の心が痛んだ話です。

リオの場合は解っているらしく、これかも鋼弥の親友としている感じです。

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