ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

143 / 174
久々の本編更新。

ココから、激化!!


第十一話 若手最強決定戦.5 決死の覚悟

=観客席側=

 

 

第四試合を見ていた魔界組、ギャスパーの意地と熱意に驚いていた。

 

「まさか、あのハーフ吸血鬼があそこまで頑張るとはな」

 

「仲間の為に勝利を掴み取る覚悟。見事なものだ」

 

ドルキーとアルスは素直な感想を述べる。

そして、第五試合で誰が出すのか予想をしている。

 

「残っているのは女王、兵士、そして王のサイラオーグよね。兵士って、あれ一人だけでしょ?」

 

「情報によるとサイラオーグが所持している兵士はあれだけだわ。

 でも、温存しすぎね、特に……第二試合の時に出してもいいはずだわ」

 

珠樹の疑問にリーザは応える。

 

(それとも……まだ出せない理由があるのかしら?)

 

ここまでの試合で兵士を出さなかったのはかえって不気味だ。

サイラオーグが切り札と言ってもいいが、それともあの兵士が戦況を変えてしまうほどのものなのか?

あれこれ疑問が尽きないが、第五試合が始まろうとしていた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

サイラオーグが出すのは"女王"のクイーシャ・アバドン。

番外悪魔のアバドン家。

プロのレーティングゲームでは第三位に君臨しており、相当の実力を持つ悪魔の一族。

もっとも、家自体は政府と距離を取り隅で暮らしているとのことだ。

 

「―――私が行きますわ」

 

朱乃が前に出てリアスに進言する。

 

「相手の女王はアバドンの者よ?記録映像を見る限り相当手練れだったわ」

 

そうアバドン家の特色――"穴(ホール)"を使って他社を圧倒したのだ。

"穴(ホール)"というものは厄介な代物であらゆるものを吸い込むという。

 

「俺が行きましょうか?」

 

一誠はそう言うが朱乃は首を横に振った。

 

「それはトリアイナを使ったものでしょう?まだ出してはダメ。

 終盤で出してこそですわ。それまで、私が相手の戦力を削るわ

 祐斗くん、ゼノヴィアちゃん、ロスヴァイセさん。

 そして、部長とイッセーくん、鋼弥が控えているからこそ……できる無茶なんです」

 

朱乃はニコニコ笑顔で言うが、鋼弥は不安がある。

アバドンは奈落の王で蝗害が神格化した黙示録に登場する大物悪魔だ。

敵もただ"穴(ホール)"を使って攻撃を防ぐだけというのは限らない。

 

「朱乃……」

 

「鋼弥、心配しないで……勝ってきますから」

 

いつもの調子で朱乃は良い残し、転送の魔法陣の向こうへ―――。

 

―――――――――

 

無数の巨大な石造りの塔が並ぶフィールドだ。

その一つの塔のてっぺんに朱乃と金髪ポーテールの女性――クイーシャ・アバドンが立っていた。

 

「やはり、貴女が来ましたか……"雷光の巫女"」

 

「不束者ですが、よろしくお願い致しますわ」

 

審判が現れて、第五試合が始まる。

両者は翼を羽ばたかせて―――魔力による壮絶な弾幕が始まる。

朱乃が炎で放てば、クイーシャは氷を、水を使えば風を使う。

互角の戦いが繰り広げられて、周囲の塔が崩壊していく

 

「これなら……どうですの!!」

 

大質量+幾重ものの雷光を走らせ周囲を一帯を襲う。

雷光乱舞がクイーシャに襲い掛かる、避ける場所がなく勝負は決まったこと思ったが―――。

クイーシャは穴(ホール)を広げ、複数出現させた。

 

「なっ……!?」

 

次々と雷光の乱舞が飲みこまれていく。

 

「私の"穴(ホール)"は広げる事も複数に出現させることもできます。

 更に吸い込んだ攻撃を分解して、吐き出すこともできます。

 このようにしてね……」

 

朱乃を囲むように無数の穴が出現し―――。

 

「雷だけを抜き―――光だけ。返しましょう」

 

ビィィィィィィィィッ!!

 

幾重の光の帯が放たれ直撃する。

朱乃は両膝を突き、光に包まれていく……。

 

―――――――――

 

「朱乃……」

 

「吸い込むだけではなく、あのようにカウンター技も使えるのか……」

 

朱乃が負けて鋼弥は身を震わし、佑斗は敵の技術を分析する

完全にアバドンの能力を甘く見過ぎたのが敗因だった。

 

「……気を取りましょう。終盤に差し掛かっているのだから、気は抜けないわ」

 

第六試合のダイスが降られ―――合計数字は12!!

 

『出ました!!この数字が意味することはサイラオーグ選手が出場できるということです!!』

 

実況の声に観客が大いに沸く。

サイラオーグは上着を脱ぎ捨てた戦闘に用意したのか黒い戦闘服を着こんでおり体格が浮き彫りとなる。

 

「イッセーくん、鋼弥くん。サイラオーグは僕とゼノヴィアとロスヴァイセで挑むよ」

 

「……そうか」

 

「……やるのか」

 

一誠と鋼弥は祐斗たちがこれからの事に察する。

リアスも"まさか"という表情になる。

 

「貴方たち、まさか……」

 

「僕単独ではサイラオーグ・バアルには勝てません。

 できるだけ相手の戦力を削ぐ、この身を投げ捨ててでも―――。

 ゼノヴィア、ロスヴァイセさん、付き合ってくれますか?」

 

「勿論だとも、イッセーと鋼弥、部長がうしろに控えているというだけで勇気が持てる」

 

「役目がハッキリしている分、解りやすくていいですね。

 できるだけ、長く相手を疲弊させましょう」

 

本当は……行かせたくない。

代わりに自分たちが出ればいい、一緒に戦えればいい。

けど、三人の覚悟を無駄にしてはいけない。

笑顔で送り出さなければ――――。

 

「それなら……イッセーか鋼弥を出して。騎士の二人といけば……」

 

「駄目です。イッセーくんと鋼弥くんを出すわけにはいきません。

 ルール状、連続で出すわけにはいきません。

 ですが、次の次の試合にアーシアさんを出してリザインする。

 そうすれば、後続の二人に繋げることができます」

 

「だからこそ、ここが正念場ね……サイラオーグを削るために

 ゴメンナサイ。心の中で覚悟を決めたばかりなのに、貴方たちに教えられてしまったわ。

 本当に甘くて、ダメな"王"ね」

 

「僕たちは部長と出会って、救われました。

 ここまで来られたのも、部長の愛があったこそです。

 あなたに勝利を必ずもたらします」

 

木場はそれだけを言い残し、ゼノヴィアとロスヴァイセと共に転移魔法陣へ向かっていく。

 

「後は頼むよ」

 

「任せろよ、ダチ公」

 

「気を付けろ」

 

一誠、鋼弥は祐斗たちに激励を送る。

 

 

―――――――――

 

 

試合場所は湖の湖畔。

腕組をして先に待機していたサイラオーグが立っていた。

 

「リアスの作戦か?」

 

木場たちは何も答えないが、サイラオーグは感心するように口の端を上げていた。

 

「リアスは一皮むけたようだな……。おまえたちでは俺に勝てん。いいんだな?」

 

「ただでは死にません。最高の状態であなたを赤龍帝と銀流星に送り届ける!!」

 

「いい台詞だ!お前たちは何処までも俺を高まらせてくれる!!」

 

審判の合図、第六試合が始まった。

同時にサイラオーグの四肢に奇妙な文様が浮かび上がる

 

「俺の体の縛りを負荷を与える枷だ。これを外し、全力でお前たちに応える!!」

 

紋様が消えると同時に――サイラオーグを中心に周囲が弾け、風圧が巻き起こり、足元が激しく抉れてクレーターとなった。

湖の水が大きく揺れて、並立っていた。

 

 

◆◇◇◆

 

 

観客席に座っていたドルキーたちもサイラオーグの様子に驚く。

 

「お、おいおい……闘気だけで、こんな風になるのか!?」

 

「鋼弥だって、本気で出しても、あんなに大きなクレーターはできない……!」

 

ドルキーとタオは驚きつつも感想を言い、ノアはサイラオーグの状態を説明する

 

「体術を鍛え抜き、その先に目覚めた―――いわば生命の根本とも言える力だな

 サイラオーグは活力と生命力が噴出し、可視できるほど極めたのだろう」

 

 

◆◇◇◆

 

 

サイラオーグは修行の果てに魔力とはまた違う、純粋なパワーの波動を身につけたのだ

その波動に三人の表情は険しくしていた。

 

「一切の油断はしない。取られてもいい覚悟で戦う。

 それこそが俺であり、相手への礼儀だ!!」

 

瞬間―――サイラオーグが立っていた地面が大きく削れ姿を消したのだ。

ロスヴァイセは縦横無尽に魔方陣を展開させてフルバーストを撃つ体勢に入る。

 

「ロスヴァイセさん、そっちです!!」

 

なんとか動きを捉えた木場は聖魔剣の切っ先を向けた。

フルバーストが撃ちこまれ、サイラオーグが出現した。

ゼノヴィアの聖剣の波動斬を撃ち、混ざるように乱れ飛んでいく。

だが―――サイラオーグは魔法の数々を拳で打ち返す芸当をしていた。

サイラオーグは高速で聖なる波動と魔法の雨を掻い潜り、ロスヴァイセの距離を詰め、鋭い一撃が腹部に入る。

ヴァルキリーの鎧が粉々に砕け、四散していき、湖の遥か彼方へ吹き飛ばされ、落ちていく。

 

「……まずは一人」

 

ゼノヴィアは真っ向から斬りにかかるが、消えたと思ったら背後に現れ蹴りを放つ。

身をよじって何とかかわすが、蹴りの勢いは空気を大きく震わせて、湖を真っ二つに割った。

 

「木場!!こいつはヤバいッ!!全力中の全力でなければ勝てない!!」

 

「解っているよ、余力を残すという考えだけではやられる……!それほどの相手だ!!」

 

サイラオーグは闘気を纏わせた拳で木場に殴りかかる。

聖魔剣を幾重に張り、壁を作るが――――。

 

バギィィィィィンッ!!!!

 

「聖魔剣が……!!」

 

「脆い。これでは俺の攻撃を止められはせん」

 

「ならば……!!デュランダル!!」

 

ゼノヴィアはデュランダルを振るい光の波動斬が生まれサイラオーグに襲い掛かる

サイラオーグは闘気を一層盛り上げてデュランダルの波動を真正面から受けた。

聖剣の波動斬は消えて、サイラオーグは無傷だった。

 

「真正面からあの攻撃を受けて無傷……。本物のバケモノだ」

 

「けど、退くわけにはいかない!!少しでも、イッセーくん、鋼弥くん、部長のためにも!!」

 

「まだ、楽しませてくれるのか……!!」

 

「ああ、楽しませてやるさ……!!」

 

ゼノヴィアがそう言うと、背後にロスヴァイセが出現した。

手には透明な刀身の剣だ。

 

「この距離なら……!!」

 

超近距離の魔法フルバーストを放つロスヴァイセ。

けたたましい炸裂音を鳴り響かせて、サイラオーグの体から煙が上がり、仰け反った。

そう、さっき倒されたのはエクス・デュランダルの能力、擬態と透明のおかげなのだ。

ゼノヴィアの合意があれば聖剣の因子が無くても短時間、能力の恩恵がだけは受けられるのだ。

 

しかし――――。

 

「見事な連携だ、お前たち……敬意を払うと共にこれを送りたい」

 

サイらオークの右拳に溢れんばかりの闘気が纏い、三人は距離を取るが―――。

 

ドォォオオオオオオオン!!!!

 

映像が激しく揺れ、前方の地面が遥か先まで大きく抉れていた。

 

『リアス・グレモリー選手の"戦車"一名、リタイア』

 

今の一撃でロスヴァイセがやられた。

ゼノヴィア、祐斗は同時に斬りかかった、狙うは―――右腕だ。

だが、闘気に阻まれて深くは斬り込めない。

それでも、尚、斬りに掛かろうとする二人、遂に―――。

 

ザシュ!!

 

サイラオーグの右腕を切断したのだ。

 

「右腕はくれてやろう。

 これで俺は否応なく涙を使わなければならない。

 万全の態勢で決戦に臨みたいからな」

 

サイラオーグは鋭い蹴りを放ちゼノヴィアを穿つ。

祐斗の腹部に深々と正拳突きが放たれた。

最早、これ以上の戦いは不可能、しかし……祐斗は笑っていた。

 

「僕たちの役目は……これで十分だ。

 後は、僕の主と僕の親友が貴方を屠る……

 必ず、勝ってください……」

 

「お前たちと戦えたことを感謝する……」

 

二人が光に包まれ、試合が終わった。

 

 

―――――――――

 

「祐斗……ゼノヴィア……ロスヴァイセさん……」

 

仲間が敗れていき、残るはリアス、一誠、鋼弥、アーシアとなった。

鋼弥は胸にチクチクと痛む感覚がしギュッと掴む

 

(なんだろう……苦しい。まるで、憎悪に押し潰されそうだ……)

 

あの時、四騎士の試練を乗り越えたというのに溢れてきそうだ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。