ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第七話 計画

第七話 計画

 

「鋼弥さんがさらわれたって、どういう事なんですか!?

 アザゼル先生!おうげえぇぇぇぇぇぇ・・・・!」

 

「ぎゃー!吐くか喋るか、どっちかにしろー!」

 

就寝時間間近、一誠の部屋にグレモリー眷属+イリナ、シトリー眷属、リオ、アザゼル、セラフォルーが集まっていた

ロスヴァイセはあの後、酔い覚ましの薬を調合して飲んだのだが、未だに体調は良くならず何度もエチケット袋に吐いていた。

しかし、体調が優れない状態でも鋼弥を心配し身体に鞭うっている。

ロスヴァイセだけではなく、皆、不安に駆られている。

アザゼルが皆を見回した後、部屋の中心に京都の全体図を敷く

 

「作戦を伝えるぞ。現在、二条城と京都駅を中心に非常警戒態勢を敷いた。

 京都を中心に動いていた悪魔、堕天使の関係者を総動員して怪しい輩を探っている。

 京都に住む妖怪逹も協力してくれているところだ。

 未だ英雄派とゾロアスターは動きを見せないが、京都の各地から不穏な気の流れが二条城を中心に集まっているのは計測出来ている。

 古来から陰陽道、風水に基づいて創られた大規模な術式都市、各所にパワースポットを持つ。

 それらの気の流れが乱れて、二条城の方にパワーを流し始めているんだよ」

 

「ど、どうなるんですか?」

 

匙が生唾を飲みながら訊く

 

「そこまでは分からんが、ロクでもない事は確かだ。

 奴らはこの都市の気脈を司っていた九尾の御大将を使って"実験"とやらを開始しようとしているんだからな」

 

「それが、アンリ・マンユが目覚めるのと関係があるというわけか・・・」

 

すると、リオのCOMPからアラームが鳴り響く。

何かと思い、開くとディスプレイにフィーナが映った。

 

《皆さん、大事な話があるのですがよろしいでしょうか?》

 

「フィーナ姫、どうかされたんですか?」

 

《ゾロアスターと裏で取引していた悪魔たちから得た情報ですが、大変な事が解りました》

 

「大変なこと?」

 

《彼らは京都に封印されている国一つを滅ぼす悪魔たちを蘇らせようとしているのです》

 

 

◇◆◇◆

 

 

「・・・ここが、貴様たちの根城か」

 

「そう、我々とゾロアスターの拠点地――二条城だ」

 

曹操とジークフリートは鋼弥を連れて歩く。

タローマティとアカ・マナフは最終準備を行うため席を外している。

 

「お帰り~。その人が噂の銀流星君?」

 

見た感じ異国の剣士の風貌をした金髪の女性だ。

 

「・・・その女性も英雄派か?」

 

「彼女はジャンヌ。もっと詳しく言えば、ジャンヌ・ダルクの意志と魂を受け継ぐ者だ」

 

「・・・見た感じ、軽そうな性格をしているね」

 

「ハッ!力が使えないクズが調子に乗ってんなよ?」

 

今度は2メートルは有りそうな巨漢が鼻で笑っていた。

 

「・・・その男は?」

 

「こちらはヘラクレス。ギリシャの英雄ヘラクレスの意志と魂を受け継ぐ者だ」

 

曹操が説明すると、ヘラクレスと呼ばれた巨漢は鋼弥の前に立つ

 

「こいつが有名な銀流星かよ。今は力を封具を付けられてっから、こうなるとただの弱い人間だな」

 

「ただの弱い人間だからと言って、甘く見ると痛い目を見るよ」

 

「ほー、そこまで言うなら、腕の一本圧し折ってやるぜ!!」

 

ヘラクレスは殴りかかるが、鋼弥はヘラクレスの顎目掛けて二連サマーソルトを決める。

 

「ぐがっ!?」

 

二、三歩後ずさりするヘラクレス。

すると、口が切れて血がタラリッと流れる

 

「魔の力を封じられても、人の力は残っているよ。

 だが・・・曹操相手には通用しないけどね」

 

「なるほど、封じられているとはいえヘラクレスに後ずさりさせるとは」

 

クククッと笑う曹操。

ヘラクレスはキッと睨むがジークフリートが止めに入る。

 

「・・・曹操。八坂姫は無事なのか?」

 

「それを聞いてどうする気だい?九尾の姫を連れて逃げようとでも?」

 

「何の策も無しに逃げようと考えてない。会って九重が無事である事を伝えるだけだ」

 

「君は肝が座っているね。敵地でそんな余裕を振る舞っていられるなんて」

 

「・・・返答は?」

 

「どのみち、お前も九尾の姫と同じ牢屋に閉じ込めておくからね」

 

部下たちに牢屋まで連行される。

牢獄に囚われていたのは、巫女の服を着ている金色の長髪の女性だ。

絵で見たが、彼女が九重の母であり九尾の御大将の八坂姫だ。

両手首と首に力を封じる封具がつけられている。

 

「・・・何者じゃ?」

 

「はーい、九尾のお姉さん、お話し相手を連れてきたわよ?銀流星よん」

 

ジャンヌは鋼弥を牢獄へと押し込んで、鍵をかけてその場を去る。

 

「銀流星?半人半魔で多くの悪魔と契約している者かえ?」

 

「まぁね。連中のせいで今は力を封じられているけど・・・」

 

両手首と首の封具を見せて、八坂はガッカリしていた。

 

「けど、貴女の娘と俺の仲間が必ず助けに来てくれる」

 

「九重は無事だということか?よかった・・・」

 

「しかし、連中がいう実験というのは・・・?」

 

「どうも、この地に眠る悪魔たちを復活させようとしているのじゃ。

 確か、必殺ノ霊的国防兵器とか言っておったが・・・」

 

八坂の言葉に鋼弥は驚愕する

 

「必殺ノ霊的国防兵器!?まさか、この京都に眠っていたのか!?」

 

「・・・お主は知っておるのか?」

 

「必殺ノ霊的国防兵器というのは―――」

 

 

◇◇◇◇

 

 

《かつて、地上世界の第二次世界大戦中で語られなかった裏側の戦争――悪魔使い同士の戦争がありました。

 日本帝国陸軍は強大な悪魔たちを呼び出し日本の防衛兵器として使われていました。

 しかし、日本は敗戦。霊的国防兵器は悪用されないように最高神アフラ・マズダ、大天使スラオシャ、六大天使の封印で眠りにつきました》

 

「なーるほど、最も霊的で古の都である京都に封印していたわけか。

 ・・・これで、連中の目的がハッキリと解った。

 封印されている必殺ノ霊的国防兵器を再び顕現させることか」

 

「しかし、霊的国防兵器が施された封印は簡単に解けるものではありません。

 それこそ、アフラ・マズダかアンリ・マンユでなければ破壊することは不可能なはずです」

 

リオがそう言うが、フィーナは暗い表情で報せる

 

《ゾロアスターは火山の国の奥にあった"常闇の珠"を使って封印を破壊するつもりです。

 光のエネルギーを闇のエネルギーに変換させて、アンリ・マンユの復活に使うつもりです》

 

「・・・そこまで、用意してたわけか。お前ら、ここからが正念場だ。

 各自、作戦事項を伝えるからしっかり頭に入れておけ」

 

グレモリー眷属とイリナは実験場である二条城に向かい、鋼弥と八坂の救出

アザゼルは助っ人を呼んだらしく、その人物が加われば奪還の可能性が上がる

回復アイテムのフェニックスの涙は3つしか支給されないと言う悪い報せを受けるが、それでもやらなければならない

匙はグレモリー眷属に加わってのサポート役、ヴリトラの力が重要とアザゼルに言われる

 

《それから、我々魔界にも助っ人を呼びました。あの二人がそちらへ向かっています》

 

「あの二人と言いますと・・・レイハさんとミランダさんが救援に。

 でも、シンディさんは来られないのですか?」

 

《それが・・・冥界で起きた暴動とゾロアスターの攻撃にあっているそうです

 シンディさんとドルキーさんたちはその件を片付けるために向かいました》

 

その言葉を聞いて、一誠はリアスたちの身を心配する

 

「ぶ、部長たちは大丈夫なんですか!?」

 

「その心配はないわ。

 グレイフィアさんとヴェネラナさんも対処しているという報告もあったわ。

 亜麻髪の絶滅淑女(マダム・ザ・エクスティンクト)銀髪の殲滅女王(クイーン・オブ・デイバウア)紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)の三人。

 更にシンディちゃんも来ているから、問題はないわね♪」

 

セラフォルーが説明しているが、アザゼルは若干体を震わせていた。

だが、リアスたちが救援に来られないとすれば司令塔がない。

祐斗が一誠の肩に手を置く

 

「部長不在の今、仮としての僕達の"王"はイッセーくんだ」

 

「マ、マジかよ!俺が"王"!?良いのかそれで!?」

 

一誠は自分を指差しながら問い返す

 

「何を言っているんだい。

 キミは将来部長のもとを離れて"王"になろうとしている。

 それならこのような場面で眷属に指示を送るのは当然となるんだよ?」

 

「そ、それはそうかもしれないが・・・」

 

果たしてリアスの代わりに"王"が務まるのか?

一誠に祐斗は更に昼間の事を言った

 

「昼間の渡月橋での一戦、キミは土壇場とはいえ、僕達に指示を出した。

 それが最善だったか、良案だったかは分からないけれど、僕達は無事に今ここにいる。

 だから、僕は少なくとも良い指示だったと思える。

 ――――今夜の一戦、僕達の指示をキミに任せようと思うんだ」

 

「そうだな。私やイリナ、アーシアは指示を仰いだ方が動ける」

 

「うんうん。けど、イッセーくんは無茶して飛び出し過ぎるのはダメよ?」

 

「そうです。無理は禁物です」

 

「このチームに入って間も無い身なので、チームの先輩であるイッセーくんに任せます」

 

昼間の一誠を祐斗は評価し、ゼノヴィア、イリナ、アーシア、ロスヴァイセも続く。

すると、ゼノヴィアの手に魔術文字が刻まれている布に包まれた得物を持っている

 

「ゼノヴィア、それは・・・?」

 

「これか。教会から届いた改良デュランダルだ。

 いきなりの実戦投入だが、私とデュランダルには丁度いいものだ」

 

凶悪な力を制御出来る様に、教会に所属する錬金術師が改良を加えていたのだ。

一誠、アーシア、祐斗、イリナ、ゼノヴィア、ロスヴァイセ、匙、リオのメンバーで二条城へ向かう―――

 

 

◇◆◇◆

 

 

一誠達はホテルを出て、京都駅のバス停に赴いていた

ここからバスに乗って二条城まで行くつもりだった

バスで待つメンバーだが、すると一誠の肩に誰かが乗る

 

「赤龍帝!私も行くぞ!」

 

「お、おい、九重。どうしてここに?」

 

一誠の肩に肩車の格好で座る九重は、一誠の額をペチペチ叩きながら言う

 

「私も母上を救う!」

 

「危ないから待機しているよう、うちの魔王少女さまや堕天使の総督に言われたろ?」

 

「言われた。じゃが!母上は私が、私が救いたいのじゃ!

 それに銀流星は私のせいで捕まってしまった・・・。

 だから、頼む!私も連れていってくれ!お願いじゃ!」

 

一誠は断る事など出来ず、八坂姫を助ける切っ掛けになるかもしれないと責任を持って九重の意志を尊重しようとした

そこへ一誠達の足下に薄い霧が出でくる・・・

それは、昼間と同じ"絶霧"の霧だ。把握した時には、霧は一誠達の全身を覆っていた

 

 

◇◆◇◆

 

 

気づくと、そこは京都駅の地下ホーム。

一誠、九重、リオしかいない、他のメンバーはバラバラにされてしまったようだ。

 

「・・・こ、ここは地下のホームか?」

 

「ああ、どうやら昼間の現象をまた食らったようだ」

 

「じゃ、じゃあ、ここも別の空間に創られた疑似京都なのか?」

 

「・・・上位の神滅具の力がここまでのものなんて・・・」

 

突然、一誠の携帯が鳴り響いた。

 

「携帯は通じるのかよ!もしもし、木場か?今何処だ?この奇妙な空間に転移してるんだよな?」

 

『うん。こちらは京都御所。ロスヴァイセさんと匙くんも一緒だよ。そちらは?』

 

「リオさんと九重と一緒で、京都駅の地下ホームだ。ちょっと待て、今地図を出す」

 

一誠は九重を肩から降ろし、地図をホームの床に広げる

 

「このフィールド、まさか広大か?ちょうどこの二条城中心にした地図が範囲じゃないか?」

 

『そうだね。二条城を中心に京都の町を広大に再現しているんだと思う。

 ゲームフィールドでもこのぐらい広いのがあるから不思議じゃないけど、

 やはりレーティングゲームのフィールド空間を徹底的に研究しているようだ』

 

一誠は祐斗に二条城で合流する事を伝え、アーシア達にも連絡を取る

向こうはゼノヴィアとイリナを含めた教会トリオで集まっており、そっちにも二条城での合流を伝えた

祐斗からもう一度連絡が届き、内部同士の連絡は可能だが、外部との連絡は出来ない事を告げられる

兎にも角にも、一誠、リオ、九重は二条城へ向かう。

京都駅から線路沿いに進めば地下から二条城前の地下鉄駅に行ける

移動の都合がついたところで、一誠は籠手を出して禁手化する

 

「うむ。昼にも見たが天龍の鎧は赤く美しいな。これが伝説の龍なのだな」

 

九重は一誠の赤い鎧をペチペチ叩く

 

「九重、俺たちがお前のお袋さんを何とか救うからさ。離れちゃダメだぞ?九重の事は守るからさ」

 

「う、うむ!よきに計らえじゃ!」

 

顔を赤くする九重、微笑ましい光景が見れて少し緊張が緩和したような気がする

敵意を向けている誰かの気配を察知する。

ホームの先に視線を送ると、英雄派の制服を着た男が近づいてきた。

 

「こんばんは、赤龍帝殿。俺の事は覚えてくれているかな?」

 

「一誠さん、お知り合いでしょうか?」

 

「いや・・・うーん?」

 

「まあ、そうだろう。

 あんたらにとってみれば俺なんて記憶にも残らない程の雑魚なんだろうさ。

 ――――けどな、あの時に得た力によって俺はあんたと戦えるようになった」

 

男の影が意志を持ったかの様にうごめき始める。

それを見て一誠とリオは思い出した。

 

「思い出した。俺の町を襲撃してきた影使いの神器所有者・・・!!」

 

「ご名答。俺はあの時、あんた達にボコボコにされちまった。でも、今は違う!!

 あんた達にやられた悔しさ、怖さ、自分への不甲斐なさが俺を次の領域に至らせてくれた!!

 ――――禁手化」

 

周囲にある影が男のもとに集まって全身を包み込んでいき、徐々に鎧のような形になった

 

「あんた達にやられた時、俺はより強い防御のイメージを浮かべた。

 あんたみたいな鎧が欲しいと感じたよ。それだけ赤龍帝の攻撃力は恐ろしく、力強く、感動的だった。

 "闇夜の大盾(ナイト・リフレクション)"の禁手状態、"闇夜の獣皮(ナイト・リフレクション・デス・クロス)"。

 さあ、赤龍帝。あの時の反撃をさせてもらうぜ?」

 

影の鎧の各部が生物の様に蠢く。一見すればモンスターに近い風貌だった

 

「まさか、再び影使いの神器所有者と戦うことになるなんて・・・」

 

「ああ、あいつの能力は攻撃を別の影から転移させられるんだ。

 それで痛い目に遭ったけど、今更退くわけにはいかねぇ」

 

「魔界の魔法使い、お前の相手はこいつだ」

 

影使いの男は紙を取り出し、投げると発光する。

現れたのは赤く膨張した無数の顔を持つ幽鬼レギオン×4、インディアン衣装の装飾を身に纏ったベイコク×2、大きな鎌を持った道化師マカーブルだ。

 

「ゾロアスターが持ち込んだ悪魔ですね。一誠さんは影使いの男をお願いします」

 

「解った!!」

 

一誠と九重は影使いの男と対峙し、リオはレギオン×4、ベイコク×2、マカーブル対峙する

 

(・・・レギオンやベイコクよりも、一番の問題はマカーブルですね)

 

頭が働かない様な奴らで壁役となり、後ろで砲撃という感じだ。

特に高位ネクロマンサーのネビロスや魔法使いや僧侶が自らアンデッド化したリッチもそれにあたる。

 

(先にレギオンたちを仕留めないと・・・!!)

 

先に呪殺魔法を食らわないように、防御魔法を唱える

 

「テトラジャ!!」

 

六角形のシールドがリオの前方に張り巡らせる。

破魔・呪殺を10分間無効できる魔法。

これなら、マカーブルの呪殺魔法を封じたようなものだ。

 

【ヴルィィィィィィィィィィィッ!!】

 

レギオンたちは一斉にリオに襲い掛かる。

四体とも"暴れまくり"を使い、リオを叩く。

 

「くっ・・・!!」

 

体力が多いものならそれほど脅威ではないが、魔法タイプのリオにとってはキツイ。

二体のベイコクは接近して、剣を振りかざすがリオは杖で剣を防いで、押し返し横薙ぎで叩く

 

【ヒョオオオオオッ!!】

 

マカーブルはムドオンを放つが、先ほど張ったテトラジャの効果でかき消された。

鎌を水平に構えて、振るうと紫色の刃"ベノンザッパー"が放たれる。

後方に飛び退いて攻撃を回避する。

杖を前に回して魔法を唱える。

 

「マハラギダイン!!」

 

上級火炎魔法を唱えて、レギオンたちを灰燼に帰す――。

 

「マハンマオン!!」

 

無数の白い御符がベイコク×2とマカーブルに全体を貼り付ける。

眩い光が放たれて、幽鬼たちは悲鳴を上げて成仏した。

一方の一誠&九重VS影使いの男。

影使いの男は影を自在に操り鋭い刃と化して襲うが、一誠はアスカロンを呼び出して切り払う

 

「流石は赤龍帝。けど、そちらの攻撃は俺には効かない。持久戦になれば俺の勝ちだ!」

 

一誠の禁手には時間制限が存在するので、時間が経てば鎧は強制的に解除されてしまう

更に相手はテクニカルな攻撃と防御を合わせ持っている。

パワータイプの一誠にとって最悪の相性だった

 

「えいっ!」

 

一誠の脇に抱えられていた九重が手を前に突き出し、影使いの男に火の球を繰り出す

男は避けようとせず、火の球を手で掴んで握り潰した

 

「これは小さな狐の姫様。狐火ですかな?

 この程度の熱量では、俺には無駄ですぞ?熱さが足りない」

 

「お、おのれ!」

 

男は嘲笑い、九重は悔しそうにしていた

一誠がふと何かを思い付いた様な表情をする

 

「・・・熱さが足りない?あの鎧を装着していても熱は感じるって事なのか?」

 

一誠は九重を背中に乗せて、翼で覆い尽くす。

スゥーと息を大きく吸い込み、腹の中で火種を作り出す。

 

「リオさん!!貴女は魔法で障壁を作ってください!!」

 

「わ、解りました!!」

 

リオは一誠の指示に従い、魔法障壁を張り巡らせる

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

力を溜めて―――。

 

≪Transfer!!≫

 

譲渡する。一誠の口から大火力の炎を一気に噴き出す

火炎はホーム内を埋め尽くした。

 

「な、なに・・・!?」

 

「九重がヒントをくれたんだ。

 この炎なら、影で転移しても逃げられない。

 ダメージがなくとも中身の方は熱が伝わるだろ?」

 

「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

影使いの男は熱でのたうち回る。

炎が収まり辺りが黒焦げになった。

疑似空間なのが幸いだった。

影使いの男は倒れ伏しており、鎧も解除されており火傷を負っていた。

 

「・・・強い、禁手になっても、倒せないというのか・・・」

 

「それ以上、戦ったら死んでしまいます!!いますぐにやめなさい!!」

 

「死んだって構わない・・・曹操の下で死ねるなら本望だ・・・」

 

「お前まさか・・・洗脳されているわけじゃないのか?」

 

「ああ、そうだよ。俺は俺の意志で曹操に付き従っている・・・何故かって?」

 

男が苦しそうに息をあげながら話を始めた

 

「神器を得た者の悲劇を知らない訳じゃないだろう?

 持って生まれた者は誰しもその力によって良い人生を送れた訳じゃない。

 俺のように影を自在に動かす子供が身内にいたらどうなると思う・・・?

 気味悪がられ、迫害されるに決まってるだろう。

 俺はこの力のせいでまともな生き方が出来なかったよ。

 ・・・でもな、この力を素晴らしいと言ってくれた男がいた。

 曹操だ。この力を持って生まれた俺を才能に溢れた貴重な存在だと言ってくれた!!

 今までの人生を全て薙ぎ払うかのような言葉を貰ったらどうなると思う?

 そいつのために生きたいと思っちまっても仕方ないじゃないか!」

 

絞り出すように男は独白する

 

「それで、いいのですか?利用されて用が無くなったら捨てられるかもしれませんよ?」

 

リオの言葉に影使いの男は笑う

 

「それのどこが悪い?曹操は俺の生き方を、力の使いどころを教えてくれたんだぞ?

 それだけで充分じゃないかッ!それだけで俺は生きられるんだッ!

 クソのような人生がやっと実を得たんだぞッ!それのどこが悪いってんだよぉぉぉぉぉっ!!

 悪魔、天使、堕天使、ドラゴン、神々を倒す術に繋がるんだ・・・。

 それを倒すのは人間としての使命だ!!悪魔とドラゴンの赤龍帝と魔界の魔女の貴様らは脅威でしかない!!」

 

一誠は影使いの男にパンチを食らわす。

男はホームの柱に背中を打ち、気を失った。

 

「・・・あんたのやってる事で泣く奴がいる。どんな理由でも俺はそれを殴り飛ばすだけだ」

 

「・・・それでも、誰かを傷つけてもいいという事は私は絶対に許しません」

 

三人は先へと進んだ―――。


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