ハイスクールD×D~アルギュロス・ディアボロス~   作:Mr.エメト

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第四話 英雄派のボス

翌日、鋼弥逹は京都駅から嵐山方面行きの電車に乗り、最寄り駅から徒歩で天龍寺に向う。

看板があるので迷う事なく到着。

大きな門を潜って境内を進み、受付で料金を払う

 

「おおっ、お主逹、来たようじゃな」

 

聞き覚えのある声がしたので振り返ると巫女装束姿の少女――――九重が立っていた

 

「九重ちゃん、待ってくれたんだ」

 

「うむ。約束通り、嵐山方面を観光案内してやろうと思うてな」

 

一般人もいるので獣耳と尻尾は隠れている。

松田と元浜は九重を見て驚いていた。

 

「可愛い女の子だな。なんだイッセー、お前現地でこんなちっこい子をナンパしてたのか?」

 

「失敬だな、このハゲ」

 

「・・・ちっこくて可愛いな・・・ハァハァ・・・」

 

「やめろ」

 

鋼弥は元浜の顔面に拳を打ち込み、気絶させる。

 

「こちらは九重。俺やアーシア逹のちょっとした知り合いなんだ」

 

「九重じゃ、よろしく頼むぞ」

 

「あ、グレモリー先輩繋がり?それなら分かるかも。

 あのホテルだって先輩の親御さんが経営している会社と関係あるって話だし」

 

「ま、まあ、そんなところだ」

 

(桐生は変に勘が鋭いから、厄介だな・・・)

 

九重の紹介が済み、一誠が九重に訊く

 

「それで九重。観光案内って、何をしてくれるんだ?」

 

「私が一緒に名所へついて回ってやるぞ!」

 

「おっ、よろしく頼んますぜ?」

 

「じゃあ、さっそくこの天龍寺を案内してくれよ」

 

「もちろんじゃ!」

 

◆◇◆◇

 

天龍寺で大方丈裏の庭園と雲龍図、釈迦如来像と阿弥陀如来像を祀った二尊院、

人力車に乗って竹林の道を通ったりと満喫した。

 

「ほら、ここの湯豆腐は絶品じゃ」

 

九重お薦めの湯豆腐屋での昼食<、湯豆腐を掬って器に入れ、出来立ての湯豆腐を食べる

 

「おう、お前ら、嵐山を堪能しているか?」

 

再び聞き覚えのある声、アザゼルが昼間から日本酒を飲んでいた

 

「先生!先生も来てたんですか?って、教師が昼酒はいかんでしょう」

 

一誠が非難すると、「その通りです」と対面の席に座る女性――――ロスヴァイセが同意した

 

「その人、私が何度言ってもお酒を止めないんです。

 生徒の手前、そういう態度は見せてはならないと再三言ってはいるのですが・・・

 あ!!鋼弥さん、日本酒を飲もうとしているんですか!?学生がお酒を飲んじゃいけません!」

 

ロスヴァイセの注意を聞かずに鋼弥は日本酒を飲む

 

「・・・なかなかの美酒だ。魔界でもこんな上等な物は味わったことはない」

 

「嵐山方面を調査した後でのちょっとした休憩だ。

 ちったぁ要領良くいかないとよ。そんなだから男の1人も出来ないんだぜ?」

 

バンッ!

 

アザゼルの一言にロスヴァイセは真っ赤になってテーブルを叩いた

 

「か、か、彼氏は関係ないでしょう!バカにしないでください!もう、あなた達が飲むぐらいなら私が!」

 

鋼弥の杯を奪い、ぐびぐびと飲み干すロスヴァイセ。

 

「ぷはー。だいたいれすね、あなたはふだんからたいどがダメなんれすよ……」

 

「い、一杯で酔っぱらったのか?」

 

「どうやら、酒に弱い方だったな・・・」

 

ロスヴァイセは再び酒を注いで飲み干す。

すると、飲み屋のオッサンの如くアザゼルに絡み始めた。

 

「わらしはよっぱらっていやしないのれすよ。

 だいたいれすね、わらしはおーでぃんのクソジジイのおつきをしてるころから、おさけにつきあっていたりしててれすね。

 だんだん、おもいだしてきた。あのジジイ、わらしがたっくさんくろうしてサポートしてあげたのに・・・

 やれおねえちゃんだ!やれさけだ!やれおっぱいだって!

 アホみたいなことをたびさきでいうんれすよ。もうろくしてんじゃないかってはなしれすよ!

 ヴァルハラのほかのぶしょのひとたちからはクソジジイのかいごヴァルキリーだなんていわれててれすね。

 やすいおきゅうきんでジジイのみのまわりのせわしてたんれすよ?

 そのせいれすよ!そのせいで・・・かれしはできないし、かれしはできないし、かれしはできないんれすよぉぉぉ!

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!」

 

ロスヴァイセ大号泣に鋼弥逹はどうしたら良いのか分からなかった

 

「あー分かった分かった。お前の愚痴に付き合ってやるから、話してみな」

 

「ほんとうれすか?アザゼルせんせー、いがいにいいところあるじゃないれすか。

 てんいんさーん、おさけじゅっぽんついかでー」

 

「まだ飲むのかよ!!?」

 

「一誠、ああいうタイプは絡まれたら、面倒だ。アザゼルに押し付けておこう」

 

「おいコラ。けどまぁ・・・俺のせいだしな、ここは俺が受け持つからよ」

 

全員が顔を見合わせてから昼食を速攻で平らげ、湯豆腐屋を出た

 

「ひゃくえんショップ、サイコーれすよー!アハハハハ!」

 

出る時に、背後からロスヴァイセの爆笑が聞こえた

 

◆◇◆◇

 

「きっと、ロスヴァイセちゃんも若いながらに苦労してんのよ。

 相手があのアザゼル先生じゃ、溜まったものをぶつけたくもなるわね」

 

「お主逹の眷属は大変なのが多いのか?」

 

「・・・ちょ、ちょっとな」

 

九重の問いに一誠はそう返すしかなかった

 

「知ってる?渡月橋って渡りきるまで後ろを振り返っちゃいけないらしいわよ」

 

「何でですか?」

 

「それはねアーシア。渡月橋を渡っている時に振り返ると授かった知恵が全て返ってしまうらしいのよ。

 エロ三人組は振り返ったら終わりね。真の救いようの無いバカになるわ」

 

「「「うるせえよ!」」」

 

一誠、松田、元浜が異口同音にキレる

 

「あと、もう1つ。振り返ると、男女が別れるって言い伝えもあるそうね。まあ、こちらはジンクスに近いって話だけど――――」

 

「絶対に振り返りませんから!」

 

桐生の説明を遮ったアーシアが涙目で一誠の腕にしがみつく

 

「だ、大丈夫だよアーシア。言い伝えだって」

 

「アーシアさんは、完全に鵜呑みにしていますね・・・」

 

「気にせんで良いと思うのじゃが、男女の話は噂に過ぎんのじゃ」

 

渡月橋を渡っていく、少し前方には祐斗の姿もあった

無事に渡りきって反対岸に到着した時、ぬるりと生暖かい感触が包み込んだ

周辺を見渡すと、いるのは鋼弥、リオ、一誠、アーシア、ゼノヴィア、イリナ、九重、祐斗しかいなかった

突然の現象に驚いていると、足下に霧みたいなものが立ち込めてくる

 

「この霧は・・・」

 

霧を見て驚くアーシア

 

「この感じ、間違いありません。私がディオドラさんに捕まった時、神殿の奥で私はこの霧に包まれてあの装置に囚われたんです」

 

「"絶霧"。神滅具の1つだった筈だよ。

 先生やディオドラ・アスタロトがそれについて話していただろう?

 おそらく、これが・・・」

 

祐斗が鋼弥逹の方に歩み寄りながら言う

空からと言う声が聞こえ、顔を上げるとアザゼルが黒い翼を羽ばたかせながらやって来た

 

「俺達以外の存在はこの周辺から綺麗さっぱり消えちまってる。

 俺達だけ別空間に強制的に転移させられて閉じ込められたと思って間違いないだろう。

 この様子だと、渡月橋周辺と全く同じ風景をトレースして作り出した別空間に転移させたのか?」

 

転移させられる前兆など微塵も無かった。

 

「ここを形作っているのは悪魔の作るゲームフィールドの空間と同じものですか?」

 

「ああ、三大勢力の技術は流れているだろうからな。

 これはゲームフィールドの作り方を応用したんだろう。

 霧の力でこのトレースフィールドに転移させたと言う訳だ。

 "絶霧"の霧は包み込んだものを他の場所に転移させる事が出来るからな。

 殆どアクション無しで俺とリアスの眷属を全員転移させるとは・・・神滅具はこれだから怖いもんだぜ」

 

この空間はレーティングゲームフィールドの応用らしい

横の九重が震える声で口を開いた

 

「・・・亡くなった母上の護衛が死ぬ間際に口にしておった。気づいた時には霧に包まれていた、と」

 

「ということは、敵が動き出したというわけか」

 

「はじめまして、アザゼル総督、銀流星、赤龍帝」

 

挨拶をくれたのは学生服の上から漢服を羽織った黒髪の青年だった

手には槍を持っており、不気味なオーラを漂わせていた

周りにいるのも若い男女ばかり、鋼弥逹と歳は殆ど変わらない

 

「お前が噂の英雄派を仕切ってる男か」

 

アザゼルの問いに中心の青年が肩に槍の柄をトントンしながら答えた

 

「曹操と名乗っている。三国志で有名な曹操の子孫だ。一応ね」

 

「曹操。魏、呉、蜀の三国が一つ。魏の王の曹孟徳か」

 

鋼弥がそういい、アザゼルは曹操、いや正確には持っている槍から視線を離さなかった

 

「全員、あの男の持つ槍には絶対に気を付けろ。

 あれが最強の神滅具―――"黄昏の聖槍"(トゥルー・ロンギヌス)だ。神をも貫く絶対の神器とされている。

 神滅具の代名詞になった原物。俺も見るのは久しぶりだが、よりにもよって現在の使い手がテロリストとはな」

 

「あれが天界のセラフの方々が恐れている聖槍・・・ッ!」

 

「私も幼い頃から教え込まれたよ。

 イエスを貫いた槍。イエスの血で濡れた槍。

 ――――神を貫ける絶対の槍ッ!」

 

イリナとゼノヴィアが立て続けにそう言う。

アーシアは虚ろな目で槍を見つめ、アザゼルが素早くアーシアの両目を手で隠した

 

「アーシア。信仰のある者はあの槍をあまり強く見つめるな。心を持っていかれるぞ。

 聖十字架、聖杯、聖釘((せいてい)と並ぶ聖遺物(レリック)の1つでもあるからな」

 

「神、魔王を屠る槍か・・・実物を見て、震えがくるよ」

 

鋼弥とリオもロンギヌスを見て武者震いをしている。

九重が憤怒の形相で曹操に叫んだ

 

「貴様!ひとつ訊くぞ!」

 

「これはこれは小さな姫君。何でしょう?この私ごときでよろしければ、何なりとお答えしましょう」

 

曹操は平然とした様子だが、明らかに何かを知っている口調だった

 

「母上をさらったのはお主逹か!」

 

「左様で。それと、ゾロアスターの者たちも手伝ったさ」

 

「やっぱり・・・ゾロアスターも関与していたのね」

 

「母上をどうするつもりじゃ!」

 

「お母上には我々の実験にお付き合いしていただくのですよ」

 

「実験?お主逹、何を考えておる!?」

 

「スポンサーの要望を叶えるため、と言うのが建前かな」

 

それを聞いた九重は歯を剥き出しにして激怒しているが、目にはうっすらと涙が溜まっていた

 

「スポンサー・・・。オーフィスかゾロアスターか?

 それで突然こちらに顔を見せたのはどういう事だ?」

 

「隠れる必要も無くなったもので実験の前に挨拶と共に少し手合わせをしておこうと思いましてね。

 俺もアザゼル総督と噂の赤龍帝と銀流星にお会いしたかったのですよ」

 

「いよいよ、俺たちを始末にかかってきたというわけか・・・」

 

鋼弥は構えだし、アザゼルが手元に光の槍を出現させる

 

「分かりやすくて結構。九尾の御大将を返してもらおうか。

 こちとら妖怪との協力提携を成功させたいんでね」

 

一誠は籠手を出して禁手のカウントを始め、アスカロンを出してゼノヴィアに渡す。

生憎、ゼノヴィアのデュランダルは教会の錬金術師に預けている。

 

「アザゼルさん、ロスヴァイセさんは?」

 

「店で酔い潰れて寝てる。一応強固な結界をあいつに張っておいたから早々酷い事にはならんだろう」

 

泥酔状態で参加しても足手まといにしかならないので、最良の選択だ。

構えていると、曹操の横に少年が並ぶ

 

「レオナルド、悪魔用のアンチモンスターを頼む」

 

曹操が言うと、少年無表情で小さく頷いた。

少年の足下に影が広がり、それが盛り上がって形を成していく。

腕、足、頭が形成され目玉と口が生まれる。その数は100を超える程の化け物が出でくる。

 

「まさかの"魔獣創造"(アナイアレイション・メーカー)か・・・!!」

 

"魔獣創造"(アナイアレイション・メーカー)?」

 

「ご名答。そう、その子が持つ神器は『神滅具』の1つ。

 俺が持つ"黄昏の聖槍"とは別の意味で危険視されし、最悪の神器だ」

 

「あの男児が持っている神器はお前やヴァーリ、曹操と同じ『神滅具』だ。

 神滅具は現時点で確認されているもので13。

 グリゴリにも神滅具の協力者がいるが・・・その神滅具の中でもあの神器の能力が――――。

 赤龍帝の籠手や白龍皇の光翼よりも凶悪なんだよ」

 

「俺のよりも強いということなんですか?」

 

「直接的な威力ならお前とヴァーリの神器の方が遥かに上だ。

 問題は能力だ。木場の"魔剣創造"、あれは如何なる魔剣も創り出せる能力だったろ?

"魔獣創造"は、それの魔獣バージョンだ。好きな怪物を好きなだけ創り出す事が出来る」

 

「使い手次第では一気に自分が想像した無敵の怪獣軍団を数百規模で創り出せる能力というわけか」

 

「そういうことだ。『絶霧』も同じだ。

 霧を国家規模に発生させて、国民全てを次元の狭間辺りに送り込めば一瞬で国1つ滅ぼせる」

 

「どっちも世界的にヤバい神器じゃないですか!」

 

「今のところ、どちらもそこまでの事件は前例が無いが何度か危ない時代はあったけどな。

 しかし、『黄昏の聖槍』、『絶霧』、『魔獣創造』。神滅具の上位クラス4つの内、3つも保有とはなぁ」

 

「それでも、弱点はあるはずだ。"魔獣創造"の使い手はまだ成長途中。

 本気ならば、各勢力に怪獣クラスが何体も送り込んでいるはず、そうだろ?」

 

鋼弥の鋭い指摘に曹操は口笛を鳴らす。

 

「あららら。神器を知らなさそうな君に『魔獣創造』を把握された感があるかな。

 その通りですよ。この子はまだそこまでの生産力と想像力は無い。

 ただ、1つの方面には大変優れてましてね。

 相手の弱点を突く魔物――――アンチモンスターを生み出す力に特化している。

 今出したモンスターは対悪魔用のアンチモンスターだ」

 

「ということは、天使が得意とする光系の攻撃を持っているのですね?」

 

「鋭いね、メガネのお嬢さん。

 各陣営の主要機関に兵隊、この子が創った魔物を送り込み、あれを通じて天使、堕天使、悪魔、ドラゴンと各神話の神々の攻撃を敢えて受け続けた。

 ザコ一掃のために強力な攻撃も食らったが、お陰でこの子の神器にとって有益な情報を得られた」

 

「あの黒い怪人でデータを収集していたのか!」

 

アザゼルが憎々しげに言い放つ

 

「後は禁手使いを増やしつつ、アンチモンスターの構築も行った。

 お陰で悪魔、天使、ドラゴンなど、メジャーな存在のアンチモンスターは創れるようになった。

 悪魔のアンチモンスターが最大で放てる光は中級天使の光力に匹敵する」

 

神器所有者の禁手使いの増加とアンチモンスター製造の為のデータ収集。

用意周到とはまさにこの事だった。

だが、さっきまで睨んでいたアザゼルは一転して笑みを作り出した

 

「だが、曹操。神殺しの魔物だけは創りだせていないようだな?」

 

曹操は反論しようとしなかった。

一誠が訊くとアザゼルはニヤケながら答える

 

「やれるならとっくにやってる。こうやって俺達に差し向けてくるぐらいはな。

 各陣営に同時攻撃が出来た連中がそれを試さない訳が無い。

 それに各神話の神が殺されたら、この世界に影響が出てもおかしくないものな。

 まだ、神殺しの魔物は生み出せていない。これが分かっただけでも収穫はデカい」

 

いくらアンチモンスターを創れても、神を殺すアンチモンスターはいない。

確かにこれは大きな情報となり得るが、曹操は槍の切っ先を鋼弥達に向けた

 

「―――神はこの槍で屠(ほふ)るさ」

 

「曹操、貴様に聞きたいことがある。ゾロアスターと手を組んで何をしようとしている?」

 

「彼らはこの地にあるものの封印を解くために一時的に手を組んでいるだけだ」

 

封印を解くため―――以前、オーフィスが言っていた言葉。

アンリ・マンユが再び蘇るという話。

この京都の地にアンリ・マンユに関するものがあるということか?

 

「いずれにしても、お前たちを野放しにせん。貴様たちの企み、撃ち砕く!!」


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