【勘違い物】性欲を抑えながら頑張るIS学園生活 作:シロガネ11号室
どこかの研究室、銀色のうさ耳をつけた女性はモニターに映る『子供』を慈しむように見ていた
「駄々っ子だった46番があそこまで執着を見せるだなんて―――あの男、気になるね」
コンソールをいじり、ISコアネットワークと接続する
「あっちゃー、思った通りあの子は接続を切っちゃったか。これじゃああの男の情報が取れないよ」
むむむ、と彼女は眉を顰める。その眼の下には今まで消えたことのない隈がついている
「ま、いっか。いつだって接触の機会はあるわけだし」
鼻歌を歌いながらその女性はコンソールをまた弄り始める
「待っててね、大和・ジパング。無い無い尽くしの正体不明(ゴースト)さん♪」
朝、起きて日課となってる服の洗濯を済ませた俺は数少ない友である織斑一夏のいる1025号室へ向かった
「……」
「なあ、一夏。何で篠ノ之怒ってるんだ?」
「俺に女子の心なんて分からない」
「それは普通だ」
また何かやらかして彼女を怒らせでもしたのだろうか、一夏は女性を怒らせるのが得意すぎる
「なあ、一夏。何でお前の頬には季節外れの紅葉があるんだ?」
「俺に女子の心なんて分からない」
「答えになってない」
また何かやらかして叩かれたんだろうか、一夏は女性から殴られるのが得意すぎる
と、玄関前の廊下に大きく貼りだされている紙を見つけた。何々
「クラス対抗戦の日程表じゃあないか。一夏、初戦は誰だ?」
「初戦は―――鈴だ」
なんと! あの子供か!
「そう言えば、お前のISが届くのはいつなんだ?」
「予定では―――」
5月、クラス対抗戦の直前だ
「来ましたね、ジパング君のIS」
俺は搬入されるその日、何故か気になって夜しか眠れなかった! まあ普通だな!
「名前は『真宵(まよい)』、名前の通り黒いISでしたっけ」
そりゃそうだ、S○NYと言ったら黒だもんな! 黒ハードは負けるってゲーム業界では言われているけど!
「最初向こうが『PSIS』なんてどうでしょうとか言い出した時にはどうなるかと思ったが……まあ、なんとかなったようで良かったな」
しかし武装の一つの名前が『デュアルショック』となってしまったのはこちらの交渉能力の無さが原因だろうか
だってコミュ障だもん。どうしろってんだよ交渉なんて!
運ばれてきたISは艶消しの黒色で、無駄な装甲などないシャープな印象を俺に与えた。でも、これが真の姿ではない
「これが、大和のIS」
隣に立っているのはフォーマットとフィッティングをするための模擬戦相手として選ばれた一夏だ。俺ら男二人が対戦するとのことで一夏の『白式』を作った倉持技研と俺の『真宵』を制作したS○NYのIS研究部が数多くデータ収集のためにひかえている、らしい
そういえば俺が彼の会社を採用すると発表した途端に株価は上昇、世界中が歓喜と絶望の渦に巻き込まれたとか
そういえば、一夏に新しい腕時計がついてたけどどこからそういうお金がでたんだか
「さあ、ISに体を預けろ」
そして俺は真宵に体を預け、意識を失った
ピピッ! ピピピッ!
「一体何だ!?」
「『真宵』が一切の接続を拒絶しました!」
「何だって!?」
大和が真宵を身にまとった瞬間、全ての計器が振り切れ、計測不能を示す
「ジパング君! 聞こえる!? 早くそのISから離れなさい!」
「ダメです! 大和・ジパングの生体反応も観測できません!」
『何が起きた! ジパングが一切の反応をしないぞ!』
「何も分かりません!」
突然の事態に千冬も動揺する。真宵を装着した途端に無かったはずのバイザーが大和の顔全てを覆い尽くし、一切の反応を示さなくなってしまったのだ
「山田先生!」
「はい、直ぐに手配をします!」
「一夏、白式を展開しろ!」
「え、あ、分かった! 来い! 白式!」
あまりにも同様しすぎて千冬はそのまま一夏と呼んでしまったが、誰も咎めない
「いいか、何かあったら直ぐに零落白夜で斬り落とせ!」
「えっ……?」
「いいな?」
「わ、分かった」
外の世界はこうやってパニックに陥っていた
だが、大和は違う。今、彼は見慣れない景色の中にいた
辺り一帯全て薄暗闇、手足の感覚は全てある
(ここはどこだ? いや、おれはISを装着したはずじゃ……?)
そんな空間を漂っていると、何か歌が聞こえてくる
(誰だ?)
「ラ~♪ ラララ~♪ ……こんばんは。ようこそ私の世界へ。お待ちしていましたよ、ご主人様」
「ど、どういう……」
「初めてあなたを感知した時、何故か気になったのです。あなたの存在を、知りたい、どうしても知りたかった」
周囲の景色が切り替わる。そして現れたのは大和がISの適性試験を受けている場面だった
「俺……?」
「私達はお母さんの作ったネットワークでいつも繋がってる」
フッ、と正面にいたはずの少女は大和の背後に現れる
「これは、人で言う『一目惚れ』。私はあなたに」
―――使われるために、やってきました
そう言って、大和は背後からその少女に抱きつかれた
「さあ、始めましょう。私たちの初夜はこれから始まります!」
サァァァァと周囲が暗闇で満ちていく、満ちていく、満ちていく―――
そして、爆発した
急造の研究施設のメーターは一気に全て正常値を示し、グラフも元通りになる。だが、変わったことは一つ、真宵の装甲が変化していっている
「千冬姉! 俺は」
『計器、正常に作動を始めました! 真宵からのコンタクトも正常です!』
「大丈夫だ。……おそらく、な」
装甲が消え、そして現れては洗練されていく。更にシャープに、コンパクトに
申し訳程度の足の装甲と、胸部には滑らかな頑丈そうな鱗状の胸当て、最大の特徴はそのISを中心に衛星のように回る2つのビット
翼が開き、そしてバイザーが消失して大和の顔が現れる!
『ファ、ファーストシフト完了しています……ありえません、こんなこと! 一分以内でフィッティングも済むだなんて!』
『測定値、カタログスペックを大幅に上回っています!』
『各種装備、変化なし。但し真宵を中心に回る2つのビットの詳細データはUnknownとなってます』
全員が固唾を飲んで見守る中、大和は目を見開いた
「これが、俺の、真宵……」
第三世代を超越し、真宵を第四世代に等しい存在へと昇華した自動支援装備『銀月』。真宵を中心に回る2つのそれは外部接続ではその性能は秘匿されており、今現在、大和しかその性能を確認できない
「自動防御支援装備『銀月』、か」
真宵は翼を大きく広げて、光と共にエネルギーを噴出した
「IS操縦もようやくまともになってきたか」
クラス対抗戦直前、アリーナの調整とやらで今日が一夏のISを使った練習は最後となる
「ま、私が教導したのですから当然ですわ!」
「近接戦闘しか出来ない一夏に射撃しか能のないお前のアドバイスが役に立つか」
「そう言うならあなたはISを使った訓練など一切してないではないですか。全く、時間の無駄だですわ」
こう毎日カリカリしててストレスとか溜まんないんだろうか?
ええ、僕は溜まりっぱなしですよ、ふふ。下品な話ですけどねぇ、でもここ最近何か限界突破したかのように全身が無敵感に満ちている。俗に言うオナ禁による超サイヤ人化ってやつですな!
いやぁ、毎日睡眠時間三時間とかどうやって有意義に過ごせと! エロがないのに! エロがないのに! 大切だから二回言ったけど!
よし、こんど彼女らにはカルシウムの入った煮干しを与えよう! たしか胸も大きくなるし女子には素晴らしい一品だ! ま、これ以上篠ノ之の胸が大きくなったら事故だけどな! 俺の股間が
と、最近いつメン(死語)になった四人でアリーナに到着、とそこには先客がいた。子供である
「待ってたわよ一夏! 少しは反省したのかしら?」
「反省って、ちゃんと約束は覚えていたじゃねえか」
「呆れた! その約束の意味をちゃんと考えなさいよこの馬鹿!」
「な!? 今バカって言ったな! バカって言った奴が馬鹿なんだよバカ!」
「ならお前も馬鹿だよ一夏」
冷静にそうツッコミを入れた俺は間違っているだろうか?
「ちゃんと理解しなさいよ!」
「だから説明されれば謝るって!」
「説明したくないから考えなさいって言ってるのよ!」
説明なしに謝れとかお前は何様だよ、子供様か。体も子供なら頭も子供って事か、ふむふむ。でも胸が大人の篠ノ之もこの子供と同レベルだからその件については保留しておこう
オルコット? ……外人にしてはスレンダーだね、うん。すこし胸の肉篠ノ之に分けてもらえば良いんじゃないかな?
「もー! じゃあ、対抗戦で勝ったほうが負けた方に何でも一つ命令できるようにしましょう!」
「おう! 俺が勝ったら説明してもらうからな!」
何故こんなにもコミュ障は言葉足らずなのか(※違います)
人間、口があるんだからもっと会話という方法で対話をしてもらいたいものである。自分も人のことを言えないけれど
子供が去って、俺たちはISを展開する
「じゃあ、セシリア頼むぜ」
「はい」
「今日も鍛錬の相手、感謝するぞ大和」
「ああ」
本当は一夏の訓練だけのはずだったのだが、基本動作が出来ていないためにまずはそこから訓練することとなり、アリーナのスペースが開いたのである
せっかくスペースあるんだから、と俺と篠ノ之はISを用いて打ち合う事となった
俺のIS『真宵』は最初のエラー以降、正常に稼働しており一応使用できると判断された。待機状態は真ん丸い黒の宝石で、俺は首に紐を通してかけている
自動防御システム『銀月』は鍛錬の時だときちんと打ち合えないということで今は封印してある
ゲームで培った空中機動と剣術、射撃技術はイギリス代表候補生であるオルコットからもお墨付きを頂いており、こうして篠ノ之に色々と教えても問題ないのだ! 視線は揺れる胸だけど!
俺は近接戦闘用ブレードで打ち合いながら『訓練後の篠ノ之とオルコット、エロいから目の毒だなぁ』と思いつつ、猛る息子をどうやって抑えるのかを考えていた
ほぼ毎日の日課なのだが、未だに答えは出ない。マイサンは自己主張が激しい
そして試合当日、俺は一組の皆とともに一夏の応援をするべく席に座っていた
噂の新入生同士の対決ということでなんかいろんな学年、クラスから人が集まってきている。それが俺以外全て女子というからなんとまあ、匂いがすごいのですよ、匂いが
「ねえ、ジパング君。この前言ってた匂いのことだけど今日もする?」
と、新聞部の薫子先輩とやらもきにするほどに匂いが充満しているのだよ
「危険だな。この(オナ禁一ヶ月の俺の)状況は、最悪といってもいいほど強烈な匂いがする。何かが起きそうだ」
「そう、ありがとう。じゃあ私も(何か悪いことが起きないか)気にはしとくわね(何かあったらあったで記事になるし)」
「助かります」
先輩が匂いを気にしてくれるって! でも、どうするんだろう。ファ○リーズでも散布するんだろうか?
そう考えているうちに一夏と子供のISがアリーナに出てくる。子供のISは『甲龍(シェンロン)』、7つの玉を集めると願いを叶えてくれるっていうアレだ。嘘です
機体名を聞いた一夏は『なんかアレだから「こうりゅう」って呼ぶよ』って言ってた。懸命な判断である
『それでは両者、試合を開始してください』
試合が始まった。俺は体にピースできる飲み物とポテチを手に見守ることにした