【勘違い物】性欲を抑えながら頑張るIS学園生活 作:シロガネ11号室
『あああああっ!!』
簪を落として安堵していた大和の耳に絶叫が響く。その声の方向ではシュヴァルツェア・レーゲンから現劇、火花が散り近くにいたシャルルがそれに吹き飛ばされている光景があった
「なんだ、あれ……」
シュヴァルツェア・レーゲンはその姿を変えていく、まるで粘土のように溶けていきそして全身装甲へと変わる。そして、その手には一夏の剣、雪片弐型に似た物――否、その前身となった雪片へと変わった
「っ、これは絶対マズい。篠ノ之! 打鉄を捨てて避難しろ!」
「わ、分かった。更識は任せた!」
「了解!」
既にエネルギーを使い果たして出口付近で試合を見守っていた箒は大和の言葉に返事をした後、すぐに批難をした。そして簪がいる地点に大和は急降下、そして抱える
「危ないから逃げとけ」
「……うん」
近くの出口に簪を運んで下ろす。そして大和の360度の視界は白式が強制解除されながらも生身でシュヴァルツェア・レーゲンだったものに向かっていく一夏を捉えた
「馬鹿が! 生身で兵器に向かうとは死にたいのか!」
「離せ大和! 俺は……俺は……ッ!」
「黙れこのアホ! 白式無しで近づけるとでも思ってるのか!」
大和は首根っこを掴んで一夏を止める。だが、それでも暴れようとするから怒鳴りつけた。無意識に発動したスキル【威圧】で有無も言えない圧力に一夏は何も口答えできなかった
少しは冷静になった一夏は理由をポツポツと話す
「許せないんだ。千冬姉を模倣した偽物、それに操られたラウラ、その両方にだ。だから俺が何とかする、俺以外の何物にも手出しはさせない、俺が、俺がやるんだ!」
「意味がわからない」
『非常事態により試合は中断、生徒来賓は避難するように。繰り返します――』
「白式が使えないこの状況でお前はこの事態をどうしようもできない。諦めろ」
「いや、そうでもないよ」
説得にかかろうとした大和の言葉をシャルルが遮る。どういうことだと視線で聞く
「要は白式が使えれば大和も文句言わないんでしょう? なら使えるようにすればいい」
「エネルギーはどこから……」
「僕のラファールから移せばいい。これはそれができる機体だから」
「本当か!? なら早速」
「でも!」
真宵の腕から乗り出した一夏に忠告するように人差し指で一夏の事をシャルルが指差し、念を押すように言う
「勝って、戻ってね。そうじゃなきゃ……ね?」
「え、何?」
「さて、エネルギーを移そうか」
「ちょ、シャルルさん、続きを! 嫌な予感しかしないんですけど!」
不吉なシャルルの言葉に一夏は怯えるも、それを無視してエネルギーを移す作業に移っていくシャルル。でも、そのおかげか一夏の緊張がいい意味でほぐれたように大和は見えた
「……完了、これで零落白夜を使えるはずだよ。装甲も出せるけど、一回だけね」
「充分だ」
「大和、僕の代わりに一夏をアレまで守ってあげて」
「仕方ない、引き受けた」
「ありがと」
一夏は白式を呼び出して雪片弐型を出現させ、零落白夜発動に備える
「相手の戦力が不明なため、全力で決める。頼むぞ」
「任された。しっかり捕まっとけよ!」
グン、と真宵が加速を始める。真宵の後ろを走る一夏は集中をする。その光景を見ていた人間からすればほんの数秒、だが本人たちからすれば引き伸ばされた長い時間の中で様々な変化が起きた
雪片弐型は実体剣からエネルギーで出来た日本刀の姿に、シュヴァルツェア・レーゲンだったものは刀を振り上げて、それを防御体制に入っていた『銀月』が大和の指令を受けて射撃モードに移行、迎撃する
「今だ!」
「応!」
一夏は背後から踊りでて無防備な相手に雪片弐型を一閃、同時にシュヴァルツェア・レーゲンだったものは崩れ落ちて沈黙した
「お見事、一夏」
「ま、これくらいで勘弁してやるか」
『ちょっと、そこの二人! 命令違反!』
目標を鎮圧するために送られた部隊の1人にそう言われて一夏と大和は顔を見合わせ、続けて聞こえてきた担任教師の怒鳴り声にしまったという表情を浮かべたのだった
「始末書物だな」
「俺、書類苦手なんだよな……大和」
「馬鹿か、俺の分もあるに決まってる」
「ですよねー」
これから迫ってくる地獄に二人はため息をついたのだった。とりあえず目の前の怒りながらも心配そうな表情の担任教師にどう言い訳するかに頭を悩ませる
「――運良く倒せたから良かったものの……おい、聞いているか?」
「はい」
「聞いてますよ」
千冬からの説教がそれから30分続き、とりあえず事情徴収をと真耶が止めに入るも無視され涙目になる(大和はもちろん脳内に保存)
まあまあと続けてやってきた教師に千冬は渋々引き下がりながらも事情徴収は夕飯前まで続くことになった。一日大会で疲れているのにこの仕打ちである、彼らは眠っては叩かれての繰り返しでようやく開放されたのだった
反省文提出という条件付きで
――お前は一体何者なんだ?
『俺は俺さ、ただの強くなりたい1人の男、織斑一夏だ』
――その強さはどこから来る
『根拠はない、ただ思ったことを実行しただけだ』
――根拠無くして強くなれるのか
『まだ俺は強くない、でも、強くなりたいって気持ちは誰にも負けない』
――それが、お前の強さか
『ああ』
何もない、けれどもどこか心地よい空間、そこにラウラはいた。聞こえてくる声は自身を助けだした男――織斑一夏のもの、憎んでいたはずなのに何故か心に染み渡る
――強くなって、何をする
『そうだな、何かを守りたい。強くなって皆を守りたい。だから……』
お前も、守ってやるよ
(ああ、この胸のときめきは……これが……)
そしてラウラは意識を覚醒させる
「目覚めたか」
「……ここは、私は?」
保健室のベッドの上、何が起きたのかを千冬はラウラに説明をする。原因はシュヴァルツェア・レーゲンに仕組まれたVTシステム、IS条約で禁止されていたそれだった。それは過去のモンド・グロッソと呼ばれるISの大会で部門優勝者の動きを完全模倣するものだ
「私が、望んだから」
「馬鹿め、私になれるとでも思っていたかラウラ・ボーデヴィッヒ? お前はお前だ。私とは違う女になれ」
目の前の女性に憧れてその人のようになりたいと、ラウラは強くなってきた。でも、今はそれだけが強さじゃないと知っている
今までとは違う新しい自分が自分に生まれたこと、それがどうしようもなくラウラは嬉しかった
「はい」
「分かったならよし、しっかり休めよ小娘」
「メシウマ」
「いきなりどうした大和」
もしゃもしゃとカレーについてきたレタスを食いながら始末書とかどうしたものかと一夏その他と雑談なう
『トーナメント決勝戦は事故により延期となりました。詳しい日程は追って――』
「中止じゃないのか」
「シャルルの予測が外れたな」
「残り決勝戦だけだしな、俺はありえると思っていたが」
でもこの学校イベント事にアクシデント起きすぎですね、親御さんに連れ戻される生徒もいるんじゃないかな?
「くそ、なんだあのドイツやっと勝てそうだったのに邪魔しやがってぶちころがすぞ……」
篠ノ之さんの暗黒化が進んでる件。どうしようかしらこの子、というか一夏が付き合っちゃえば問題なくなるんだよな
でも付き合ったら付き合ったでオルコット子供らへんがうるさそう
「あ、男子三人ここにいましたかぁ。ご苦労様でした」
「どうも、山田先生」
「ご苦労様です」
「何か用事ですか?」
一夏がそう質問をすると、山田先生はパッと顔を輝かせる
「そう、用事ですよ用事! なんと、今日から男子の大浴場使用解禁ですよ!」
なに、大浴場開放とな。女子が使用した後のお湯うふふ……くふふ
「今日は点検とかで元々使用できなかった日なんですよ、でも、どうせならって事で三人に使ってもらおうかなって」
なん・・・だと・・・
「ありがとうございます! 先生!」
俺が現実に打ちひしがれていると一夏はめちゃくちゃ瞳とかキラキラさせながら山田先生の手を握っていた。一夏さん不能疑惑浮上なう
いや、だって女子が使用済みの風呂とかまじペットボトルに入れて毎日ちょっとずつ飲むくらいするでしょ常識的に考えて(※お前だけ)
ん? 女子……? 女子……うっ、頭が
「あ」
「あ」
「あ」
「?」
そうか、山田先生は知らされてなかったのね、デュノアって実は女の子なのよ
「鍵は私が持っていますから脱衣所で待ってますね~」
まずい、まずいぞ。この状況でデュノアが1人だけ大浴場を使わないというのも怪しいし一緒に風呂に入ったら入ったで俺がタヒぬ、社会的に
さあどうする
「あ、きましたね。どうぞごゆっくり~」
どうにもならず脱衣所なう。いい案も無かった
「さて、ここに来たからには体が濡れていないと不自然です。脱衣所の外で待っている山田先生に気付かれないように何かいい案ありますか」
「いいえ」
「デュノアと同じ」
「ですよねー」
うーん、と三人で頭を悩ませること数分
「あ、そのうち、というか明日から僕女子として再転入してここ自由に使えるから二人で使っちゃってよ」
「初耳」
「一夏に同じく」
「そこの洗面所で髪の毛濡らしとけばバレないでしょ、山田先生だし」
「うん、山田先生だしバレないな」
「デュノアの案に賛成。感謝する」
「じゃあ僕は時間潰しとくね」
そして、俺は大浴場でお湯に浸かりながら思ったんだ。何か、イベントフラグを折ってしまった、と
でもデュノアが良い子で良かった
して、翌日
「はあああああああ……」
「せんせー、口から白いのが出てますよー」
ひy
というのは冗談で、山田先生の口から何か幽霊的なのが出ている。大丈夫なのだろうか。原因は思い当たる物が多すぎる
俺らの始末書とか俺らの始末書とか俺らの始末書とかデュノアが女子だったとか
風呂に入ってハイテンションだった俺らは消灯直前に書類を全部書き上げてしまったのだった。なんという力。日本人に風呂は欠かせない、そう思いました
「彼女は置いておき、今日は……まあ、色々あって、というかうん。転入生みたいなのを紹介する。入れデュノア」
でも織斑先生タフだなー、まるで仕事を全て山田先生に押し付けたように見えるほどタフだなー
「えーっと、シャルロット・デュノアです。実家が色々あって、まあ今日のニュースでわかると思いますけど、女です。みんな騙しててごめんね」
「はい、デュノア君はデュノアさんでした。なんで教えてくれなかったんですか早めに教えてくだされば寮の部屋割りに睡眠時間を削られなかったのに」
あ、最後の方絶対織斑先生への愚痴だ
「ん? 昨日男子って大浴場使ったよね……?」
「織斑君は同室だから知らないって事は無い……?」
「あ、これは明らかに有罪ですねありがとうございました」
やばい
「さらば」
「あ、ちょ、大和教室から逃げないで――」
「一夏ぁーー!」
子供の叫び声と轟音で揺れるIS学園校舎。一夏の叫び声は最後まで聞こえなかった、南無。とりあえず俺は教室から逃げることに決めた、厄介事が多すぎる。何か大事な場面とかを見逃す気もするけれど! するけど! しかし作戦はいのちをだいじに以外ありえない
「ジパングが逃げたぞー!」
「追え! 追うんだ!」
何、こっちに来るとは思わなかった。仕方がない逃げる!
とりあえず適当に階段とか全段飛び越えたりしまくって逃げてみた。課金と時間で作り上げたこの体は便利すぎて
と、気付く
「どこ、ここ」
迷子なう。というかIS学園が広すぎるのがいくない
ふと面妖な気配。気配を消しているのか、だが残念だな僕には【アンチ気配遮断lv5】があるのだ! 最高レベルです、4から5までに何m円かかったんだっけ。う、頭が
というかふざけている場合じゃない。これがクラスからの追手の場合面倒だ
「誰だ?」
「あら、気付いちゃった? お姉さんちょっとびっくり」
出てきたのはリボンの色からして2年でどっかで見たことのあるような青い髪……うーん、どこだっけ
「こんにちは、過去が何もない君。ちょっとお姉さんと話して行かない?」
そして感じる殺気
「二回も可愛い妹をいじめてくれたお返し、してあげないとね」
「妹……?」
目の前の女性は持っていた扇子を開く、そこに書かれていた文字は『仇討ち』
「私は更識楯無、この学園で最強の生徒会――」
「ごめんなさいいじめたつもりじゃなかったんです」
俺の聞いたところによると、生徒会長とはこの学園で最強、即ち誰も倒せない
曰く先代会長は気付いたら学園からいなくなっていた、曰く山で熊に遭遇したら熊が逃げる、曰く妹をいじめた相手を血祭りにあげていた、曰くetc…… byオルコッペディア
ああ、この人間じゃない化け物なら俺の心を読むくらい簡単だよな、だって篠ノ之とかオルコットとか子供とか一夏の心読めるもん。あなたの妹をひんぬーって馬鹿にしてごめんなさい、ツルペタって馬鹿にしてごめんなさい一時の気の迷いだったんです許してください命だけは……ッ!
魔境となった教室から逃げたら裏ボスに出会った件について。俺、教室に帰ったら一夏に謝るんだ
「あ、あれ? 冗談よじょーだん、おねーさんのジョーク」
ガタガタガタガタガタガタガタガタ
「もしもーし、大和くーん?」
ガタガタガタガタガタガタガタガタ
「えーっと、どうしよう」
ガタガタガタキリバッガタガタガタガ
「……」
本当に疲れたので暫く不定期。ネタ倉庫モチベ高いのでそっちが先に更新来るんじゃないかなーって
春に増える人に媚びてお気に入りを増やすために3月はちと頑張ろうと思います