【勘違い物】性欲を抑えながら頑張るIS学園生活   作:シロガネ11号室

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第七話 この距離ならバリアは張れないな!

『更識簪、打鉄。シールドエネルギー0により戦闘続行不可能』

 

 そうアナウンスが流れて簪は損傷甚大な打鉄と共に地面へと落下していった

 

(シールドエネルギー残量は一撃ギリ耐える程度か。危ないところだったな……だが、それだけ収穫もあった!)

 

 ブレードを振り切った体制からゆっくりと姿勢を戻して、まだ打ち合っている箒と本音の方向を見る

 

(ああ、眼福眼福)

 

 彼の視線は戦う彼女らの胸に向けられている。収穫はそれかという突っ込みをするものは心の声だったために誰もいなかった。

 

(揺れるには揺れるが、人体に考慮して適度にスーツによって固定された胸、余計にエロスを増大させるな……ッ!)

「かんちゃん!」

 

 本音は思わず撃墜された簪を見てしまうが、箒の攻撃は止まらない。更にフリーになった大和が向かってくる

 

(おぉう、至近距離)

 

 二対一、本音は圧倒的に不利な状況に持ち込まれた。観客席では肉眼で視認出来ないくらいの高機動戦闘にどよめきが起こっていた

 

「あれがヤツの本気か……? ならなぜ最初から出さなかった」

 

 ラウラは大和の正確な戦闘能力の把握に苦心する。眼帯のついていた片目は外され、そこには金色の瞳が輝いていた

 

「あ、あなたその目」

「金色……」

 

 ヴォーダン・オージェ、擬似ハイパーセンサーとして移植されたそれはラウラの動体視力を常人のそれとかけ離れたものにするという物だ

 その目を使ってではないとあの戦闘は詳細に把握することも困難だったようだ

 

『試合終了。勝者、「篠ノ之箒、大和・ジパング」ペア』

 

 そして試合が終わりを告げるアナウンスが響いた

 勝敗が決まり、礼、そして選手は各々の控え室へと戻っていく

 

「はぁ……」

 

 考えるのは無駄だと思っていても簪は考えずにはいられない。最後の大和との打ち合い、打鉄弐式さえ完成していればまだまだ戦えたのに、と悔やまれる結果だったからだ

 

 でも、と考える。でも自分の姉ならば、と

 

(唯の打鉄でも勝てるに違いない……)

 

 自分よりも優秀な姉、どうしてもその存在が頭から離れない。どうしてもコンプレックスをいだいてしまう。敵わないと思ってしまう

 何か失敗をすれば、うまくいなかないことがあれば姉の影が頭によぎる

 

「残念だったねー」

「……うん」

 

 しかし本音はいつものペースを崩さない。負けたことが悔しくないのか、と聞かれれば彼女は悔しいとは答える。けれどもいつもと同じくのほほんとマイペースなのだった

 

「でも一組の人が決勝に出るって考えれば私は応援できるし、まあいいかなー」

「……」

 

 と、いきなり来訪者が現れる。カシュ、と音がしてスライドした扉の向こうには

 

「話がある、更識簪」

 

 銀髪に眼帯、ラウラ・ボーデヴィッヒがそこにいた

 

「あなた……ドイツの……」

「そうだ、ドイツの代表候補生だ。日本の代表候補生であることと先ほどの見事な試合を見込んで頼みがある」

「頼み……?」

 

 カツカツと音を鳴らせながらラウラは簪に近づいて

 

「私とペアを組んで、決勝戦に出ないか?」

 

 と言った

 

 

 

 

 

 勝ったッ! 準決勝完!

 今回の試合はとても楽しかったです(小並)

 

「残りは決勝戦か」

「ああ」

 

 ピットに戻るとそこには何故か織斑先生がいた。篠ノ之もびっくりしたような表情をしている

 

「何かあったのですか?」

「まずは決勝戦進出おめでとう、と言っておこう」

「……?」

 

 俺には先生がどこか言葉を選んでいるように見えた

 

「決勝戦だが……お前ら、準決勝を勝ち上がってきたペア、そしてラウラ・ボーデヴィッヒと準決勝敗退から一名で構成されるペアの三つ巴の戦いとなる」

「え?」

「はい?」

 

 時間が止まった。が、篠ノ之があまりにもびっくりしたのか少し声が大きくなって先生に質問をする

 

「ど、どういうことですか!」

「上の決定でな、そういう事になった」

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒとはあのロリ軍人だよな。オルコットと子供が戦って負けたロリ軍人だよな。それに加えて三つ巴って

 

「どうしてこうなった」

 

 本当に、どうしてこうなった

 ま、まあ嘆いていても仕方がないからこれは篠ノ之と作戦会議をするべきだろうか。というかそういう大事なことを何でトーナメント始まる前にしなかったのか

 

 先生が去って暫く呆然としていたが、どうしようもない

 

「乱戦の経験なんて私には無いぞ」

「俺も無いな」

 

 はぁ、と勝ち進んだのになんかテンションが下がってきた。こればかりは篠ノ之の乳を拝んでも上がるものじゃない。本職の軍人さんと戦えなんてなんてこったい

 

「実質2対4とも言えるか」

「数で劣勢だけど相手が仲間割れしてるって考えれば……どういうシチュエーションだろうか」

「知るか」

 

 バッサリと切り捨てられた。酷い

 でも、1つだけわかることはある

 

「ドイツのアレは俺と一夏を敵視している」

「一夏を敵視しているのは知っているが……お前もか?」

「ああ」

 

 でもどうして敵視されているのかなんて言えるわけない。だって相手は俺がいっつもムラムラを我慢しているのを知ってその事で部屋に詰めかけてきたんですよ、んなこと言えるか

 

 あと一夏が勝ち上がってきた場合、彼はロリ軍人にしか攻撃しないことは確定的に明らか。だって自分で言ってたもん、一回戦で当たったりすれば良いのになって。それくらいに敵視してた

 

「一夏のペアと共同戦線を組むとしても問題はあいつらがそれに乗ってくれるか、だ。一方的にそう思っていても後ろから攻撃される可能性だってある。それに代表候補生でもない私達が真っ先に狙われる可能性の方が高い」

 

 本格的に困ってきたぞ。と、悩んでいるうちに一夏たちの準決勝が始まってしまった。アリーナ上では二手に分かれて一気に攻勢に出ている二人が見えた

 

「でも現状勝ち筋は共同戦線でボーデヴィッヒと誰かのペアを倒して、一夏を先に潰し、デュノアに数の差で畳み掛けるくらいしか無いんだよな」

「まあ決まってしまった事は仕方がない、あとは私達の全力を出すだけだ」

 

 いっつも思うけど篠ノ之さんマジ男前、豪快ですね

 あーだこーだと作戦を練っているうちに一夏の試合が終わってしまった。なんという早さだ、早い男は駄目だゾ☆

 

『一年生、決勝戦は―――に開始しますので―――』

 

 すこし体を温めますかね。篠ノ之さんと二人で裸で温めあうっていうのもやってみたいですけど(ゲス顔)

 コキコキと首を鳴らしていく。聞いた話だとこれってあまり良くないらしい、が、やめられない止まらないのだ

 

 グッと前屈をする。この体めちゃくちゃ柔らかくてビビったのは結構前の話、床に手をつくのは余裕でそれ以上曲がる。自分で自分のブツを口で……やめよう。ちなみに股割りも余裕、流石はチートボデー

 

「気持ち悪いくらいに柔らかいなお前は。バレエでもやるつもりか?」

 

 フフッと笑いながら篠ノ之が話しかけてくる。そういう彼女も体は柔らかいほうだと思うけど

 と言うか僕的にはあまり仲良くない人には冷たく接する彼女がこう、柔らかい一面を見せてくれるのにキュンキュンするとです。友達になれてよかった、あと一夏爆ぜろ

 いつも暴力ばっかりじゃなくてこういう一面見せれば彼もコロッと堕ちるだろうに、恥ずかしがり屋なんでしょうかねぇ。夜の性活が思いやられますな、あと一夏爆ぜろ

 

「フフフフフ、決勝……フフッ」

 

 その笑い方怖いです(小並)

 

『まもなく、一年生の部決勝を始めます――』

 

 グダグダしてるともう時間になった。俺達はISを纏ってアリーナに出る

 

『一年生の部は、特別措置により一組のラウラ・ボーデヴィッヒと四組の更識簪のペアも加えた3ペアで試合を行います』

 

 ハイパーセンサーで捉えなくてもおそらく聞こえるであろうくらいのざわつきがアリーナに満ちる。まあ、そりゃ驚くよな常識的に考えて

 睨み合う三陣営、とは言っても何かプライベートチャンネルを通じで会話をしているのか一夏とロリ軍人が正面で睨み合っているが

 

 そして試合―――開始

 

「行くぞ、篠ノ之」

「ああ」

 

 俺と篠ノ之は真っ先に青髪眼鏡に向かって飛ぶ、360の視界では瞬間、こちらに銃口を向けながらあっけにとられたデュノアの表情が見えたが俺達の様子を見て瞬時に作戦を変えたらしく、その銃口はロリ軍人の方に向けられた

 

「最初の賭けには勝ったらしいな」

『そのようだ、集中だ大和!』

 

 俺達の予想は一夏がロリ軍人と戦い、デュノアが俺達と青髪眼鏡と戦うというものだったが、大体当たっていたようだ

 

「正面を切り抜けて」

『横!』

「照準」

『食らえ!』

 

 弾幕を張る青髪眼鏡に向けて俺が篠ノ之の盾となるように飛ぶ。俺が銃弾をブレード、または銀月で切り抜けて背後から篠ノ之が出る、というフォーメーション

 

 今度は篠ノ之が背後から手だけ出してフルオートで銃を乱射。剣ばかりで銃は苦手だと言っていたが牽制には使える

 

 青髪眼鏡が防御体制に移り、装甲に銃弾が掠る。うまく避けられたようだ

 

「分かれるぞ」

『了解』

 

 後ろから篠ノ之が飛び出してブレードで切りつける。対する相手もブレードで応戦するが俺が横から攻撃をするために中々うまくいかない

 

『警告! 敵機ロックオン確認、警告! 敵機――』

 

 背後に意識を集中させる、そこには大型レール砲を構えたロリ軍人と黒の機体、シュヴァルツェア・レーゲンがあった

 

『させん!』

 

 爆ぜる、放たれた砲弾はこちらに直線コース。世界がスローになる……そして俺の目の前の観客席に貼られたエネルギーシールドに当たって爆発した

 なんかハイパーセンサーで見える360度の視界でも【回避】のスキルは発動するらしい。なんというチート、ずるい

 

 というか一夏は何をやってる、ロリ軍人攻撃しろし。あ、AICに捕まってるのね

 AICというのは慣性制御することでありとあらゆる物の動きを止めたりできるズルい物。欠点は現行の第三世代型兵器と同じく集中力が必要とされること。同時に大量に使用は難しいらしい

 

 攻撃をかわした事で俺の攻撃がやみ、青髪眼鏡に距離を取られた

 

『彼らと……手を……組んだの……?』

 

 オープンチャンネルで目の前の青髪眼鏡から言葉が発せられる

 

『偶然だ』

「俺達は先に非専用機のお前を攻撃した……それだけ、だ!」

 

 言い切ると同時に加速する。ハンドガンを消してブレードを呼び出す、イグニッションブーストの早さと全力を込めた一撃、これで押す!

 

 金属音、それに続けて轟音。アリーナに貼られたシールドに青髪眼鏡を押し付けてブースト、ガガガガと装甲が削れていく

 何故本気かって? そりゃ見るものがないじゃん、篠ノ之以外。何を見るかって? 胸に決まってるよ

 

 

 

 

 

「シャルル!」

 

 AICに掴まれたが、一夏は1人でラウラと戦っているわけではない。ショットガンを連射してラウラの気を引かせた

 AICは停止する対象に集中する必要がある、そのために一夏は解除された

 

「これで!」

「させん!」

 

 雪片弐型を構え直して一夏は零落白夜を発動させようとするが、ラウラはワイヤーブレードを一斉射出、白色の装甲を大量に切り取っていく

 

「く、そおお!」

 

 腕を絡められて地面へと投げつけられる、その衝撃に体を震わせる間にラウラはロックオンを済ませた。だが、それをシャルルは黙って見過ごすわけがない

 近接用ブレードでワイヤーを操る手に攻撃を加える、が、察知されて防がれる。しかしそれを呼んで逆の手の銃器が火を噴く

 

 臨機応変、変幻自在。シャルルのそのような攻撃を可能としているのは『高速切替』、ラビットスイッチと呼ばれる高度な技術だ。気がつくと別の武器を持っている、侮れない

 

「大丈夫!?」

「助かった! これで決める!」

 

 再び一夏は雪片弐型を構える。必殺技とも呼べる『零落白夜』、それは大量にエネルギーを使用するために外すだけで相当その後がきつくなる。だから試合中に何度も使えない

 

 雪片弐型にエネルギーが溜まっていき、シャルルの攻撃によって体制を崩されたラウラに向けてイグニッションブーストを発動、爆発的な速度で向かう!

 

「馬鹿め!」

 

 だが、ラウラは何も持たない両手を突き出して一夏に意識を向ける。するととてつもない速度で飛んでいた白式がラウラの手前、もうすぐそこというところで完全にピタリと停止してしまった

 そして、シュウゥゥンと雪片弐型に集まっていたエネルギーは消えてしまい、もうエネルギー残量が全くない

 

「消えろ」

 

 手を振りかぶり、プラズマ手刀が振り下ろされ、一夏の白式は地に落ちた。だが、一夏を落としたラウラも半分ほどエネルギーを減らしてしまっていた

 

「でも――――終わりじゃない」

 

 ハッと目を向けたラウラが見たのはシャルルがイグニッションブーストを使って加速する姿だった

 

「なっ、データに……」

「だって今まで使ってなかったから……ね!」

「でもAICの前には無力!」

 

 手を向けられてシャルルは動きを止める―――事はなく、ラウラの懐に潜り込んだ。何故なら

 

「ナイスタイミングだよ、一夏!」

 

 一夏が背後から落下していたシャルルの銃を使ったからだった。それにより大きく集中を削がれたラウラはAICを使えなかった

 白式がギリギリラウラの攻撃を耐えたおかげだった

 

「僕たちの……勝ちだッ!」

「『盾殺し』……!?」

 

 ラウラの表情に焦りが生まれる。『盾殺し』、シールド・ピアースと呼ばれるシャルルのパイルバンカー『グレー・スケール』

 それは第二世代型武器と言えどもそのなかで最強とも呼ばれる攻撃力がある。それをシャルルはずっと持っていた盾の中に隠していたのだ

 

 ゼロ距離で強大な威力を持つそれはイグニッション・ブーストの加速も相まってとてつもない威力を叩きだす。そう、絶対防御を発動させるほどに。しかもそれは連射可能ときた

 

 3発、たったそれだけでラウラはくの字に折れ曲がり全てのシールドエネルギーを切らした

 しかし、その瞬間に異変が起きた。奇しくもそれは箒と大和のペアが箒を落とされつつも簪を倒したのと全く同じタイミングだった


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