【勘違い物】性欲を抑えながら頑張るIS学園生活   作:シロガネ11号室

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第五話 計画通り

「別に助けなくてよかったのに」

「あのまま続けていたら勝っていましたわ」

 

 嘘つけ、ISのダメージレベルCまで行ってて何を言うかこの二人は

 ここは保健室、アリーナの一件から少しは時間がたって子供とオルコットは打撲その他諸々の治療を受けてベッドの上にいた

 

 アリーナでは

 ロリ軍人がオルコットと子供に喧嘩ふっかける→よろしい、ならば決闘だ→ロリ軍人無双→一夏参戦→先生介入→私闘を禁止させられる

 という流れだったらしい

 

「ま、そう軽口叩けるだけよかったな!」

 

 一夏はそう言って笑っている、脳天気だ

 と、色々話していると廊下からドドドドっという音が聞こえる。嫌な予感がした俺はベッドの下に退避した

 

「ちょ、大和さん!?」

「しっ、黙ってろ!」

【ピピッ! スキル『気配遮断』】

 

 そうオルコットに言うと同時にドアがはじけ飛ぶように開いた。……修繕費ってどれくらいなんだろうか

 

「織斑君!」

「デュノア君!」

「ジパ……はいない、よし、屋上に行くぞお前ら!」

「「「押忍!」」」

 

 雪崩れ込んできた軍団の一部は出て行った。あの流れだと俺の名前が呼ばれていたに違いない、ふっ、危なかったぜ

 いやぁ、このIS学園にいると色んな危機に遭遇するから直感が上がってきてるぜ!

 

 ベッドの下から覗いていると入ってきた女子たちは全員その場にいた一夏とデュノアに手を差し出していた

 

「な、な、な、なんなのぜ」

「い、一体何かな……」

 

 一夏とデュノアの二人は冷や汗っぽい物をダラダラと流している。もちろん、コミュ障の俺があの場にいたら恐ろしくて失神していたに違いない

 

「「「これ!」」」

 

 一夏たちに差し出された紙は俺の角度からは見えない、けれど一夏がご丁寧に読みあげてくれたから内容は理解できた

 

「なになに『学年別トーナメントではペアでの参加となる、期間内にペアが決まらなかった者は抽選でペアが決定される』」

「そう! だから!」

「私と組んで織斑君!」

「お願い! デュノア君!」

 

 あ、これアカンパターンや。ここでペアを組むということは行動を共にする、つまりデュノアの正体が露見する可能性が高くなるということだ

 

「あー、ごめん、俺シャルルと組むから」

 

 流石は俺の心の友一夏、素晴らしい判断能力だ!

 

「まあ、それなら」

「じゃあ残ったジパング君を狙おうかなぁ」

「男同士、訓練で芽生える友情を超えた……♂」

 

 おい最後二人、不吉なことを

 女子共はぶつぶつと口々に色んなことを言いながら保健室を出て行き、結果、さっきまでのいつメンだけが残った

 

「騒がしかったな」

「うわっ! 大和! いないと思ってたらベッドの下に!?」

「ああいうのは苦手だからな、一夏もだろう?」

「ま、まあ得意と言う訳じゃないけどさ」

 

 ベッドの下から出ると一様にビックリされた。ふっ、スキル【気配遮断lv5】は伊達じゃないぜ!

 と、ベッドから出てきた俺にオルコットと子供の視線が刺さる

 

「……何か?」

「大和さん、組んで優勝狙いませんこと?」

「大和! 優勝狙うから一緒に組まない?」

 

 ああ、これはアレか

 いつメン内で勝率が高い俺と組んで優勝→一夏と付きあおうって魂胆か

 駄菓子菓子、貴様等のその目論見は破綻している!

 

「ダメですよ、お二人のISのダメージレベルがCを超えている時点でトーナメント参加は認められません」

「ぐぬぬ・・・」

「ぐぬぬ・・・」

「残念だが、そういうことだ」

 

 フハハハハ、残念だったな!

 

 ん?

 

 俺コミュ障→誰も誘えない→即席のペア→気まずい

 

 不覚……ッ! 正に不覚……ッ!!

 世界はどうしてこうもコミュ障に厳しいのか!! 認めんぞ!! 絶対に認めんぞこんなこと!!

 

「大和、私と組まないか?」

「え?」

「どうだ?」

 

 篠ノ之さん、あなたは天使や……

 

「喜んで組ませてもらおう、よろしく頼むぞ!」

 

 もう誰にもモッピーなんて言わせねえかんな! 篠ノ之!

 

(計画通り、これで優勝は近付いたぞ一夏!)

 

 篠ノ之が某新世界の神のような黒い笑みを浮かべていたのに俺は気付かなかった

 

(オルコット、凰……私の勝ちだ! そして私は一夏と添い遂げる!)

 

 そして俺と篠ノ之は訓練に明け暮れ……そして六月の最終週に入り、トーナメントが始まる

 

「これは凄いな」

「ああ、各国のお偉いさん、研究者が集まってる」

 

 更衣室から見るモニターにはいかにも『私、偉いぞ』って風格をしたオッサンとか結構着ていた

 

「三年にスカウト、上位者に目をつけるためだろうね、それに『僕たち』男を見るためってのもあるんじゃないかな?」

「うへぇ、俺そういうの苦手なんだが」

「同感だ」

 

 はぁ、と俺と一夏がため息をつくなかデュノアはカラカラと笑う

 

「ま、じゃがいもだと思えばいいじゃない。でも、一夏の場合は試合になれば他に目を向ける時間なんて無いでしょ」

「それは、な」

「あのドイツ軍人が気になるか?」

「ああ。あいつとは決着をつけなくちゃなんねえ」

 

 どうやらロリ軍人との戦いだけが目的らしい

 

「しかし、お前らは以心伝心って感じだな。まるで『あれ』『それ』で分かる仲に見える」

「ま、同室だし」

「そりゃ、ね」

 

 いいなぁルームメイト

 でもデュノアみたいな女の子と一緒とか俺の溢れるアレやらコレやらがヤバイことになって押し倒しちゃいそうだZE☆

 一夏は大丈夫なのだろうか

 

「そろそろ対戦表が出るな」

「そうだね、一夏。でも大和達と当たるのは早くて準決勝戦だけかぁ」

「専用機持ちはサイドが分かれるらしいからな、まあそこらで会おう」

「望むところだぜ!」

 

 そして、対戦表が出る

 

「俺と篠ノ之は……第三試合か」

「俺とシャルルは……っと、ここか、大和達と戦えるとすれば決勝になるな。で、問題のアイツは」

「……アレ?」

 

「「「いない!?」」」

 

 と、まあ予想外な事があったけれど

 

「準備はいいか? 大和」

「万端だ。そちらこそどうだ?」

「大丈夫だ」

 

 控え室で俺と篠ノ之は共にモニターを見ながら言葉をかわす

 既にISスーツだからボディラインが出ててエロいですよ篠ノ之さん

 

「いつも相手にしている専用機持ちに比べれば練度はまだまだだ」

「しかし、油断は禁物だぞ篠ノ之」

「分かっている」

 

 ビーッと音がなって俺達の前の試合が終わったことを告げる

 

「前衛は任せた」

「サポート期待しているぞ、大和」

「了解!」

 

『次は第一回戦第三試合。『篠ノ之箒、大和・ジパング』対―――』

 

「真宵、大和・ジパング。出る!」

「篠ノ之箒、打鉄で行きます!」

 

 俺達はそれぞれのISを身に纏いアリーナに飛び出していった

 戦いの舞台となるアリーナから見える360度の景色は壮観で、人がひしめき合っているのが見える

 

「右の方に一夏達がいるぞ」

『む? ……本当だ。いつもいつも女を侍らせてあいつは』

 

 一夏は出撃してきた俺の右手の席に座っていて手を振っている。残念ながら周囲がうるさすぎて何を言っているのかハイパーセンサーでも拾いきれなかった

 

 対する相手はガチガチに緊張しているのが分かるくらいに固い動きでまだISの操縦に慣れていないように見えた

 

『開始と同時にイグニッションブーストで片を付ける』

「やめとけ、体を慣らす事もした方がいいぞ」

 

 俺の場合この人の視線が結構怖い。本当にハイパーセンサーのせいで変に緊張してしまう

 自己保身のために一応篠ノ之にこうは言ったが果たして

 

 そして、試合が始まった

 

 試合開始と同時に篠ノ之は爆発的加速で相手に詰め寄る、俺は相手が奇襲攻撃に驚いている隙に銃器を呼び出して構える

 

『こちらは私が引き受けた』

「オーライ、こっちは牽制しておく」

 

 ババババと実弾をフルオートで連射していく。ギリギリ相手が避けきれるラインを推測してそこに撃つ。実際ISに他の人より慣れているとは言っても代表候補生に比べればまだまだだ。少しでもこういう大観衆の前で戦うことに慣れないと

 

『そこっ!』

 

 少し生まれた隙に相手がこちらに接近してブレードで切りつけてくるでも

 

「惜しいな……オラッ!」

 

 紙一重でそれを避けてライフルで殴りつける

 

『おい大和、ライフルで殴るって』

「いいからそっち集中しとけ篠ノ之! 来いよ『デュアルショック』』!」

 

 呼び出した振動刃のナイフはある程度の金属を切り裂けるらしい。でも試したこと無い。同名のコントローラーがあるけど気にしない方向で。S○NYの陰謀だ

 

 篠ノ之は代表候補生とかと一緒に訓練していたおかげか一夏より打鉄でも強く、圧倒的に有利な状況で一対一に持ち込んでいた。でも装備の銃器は使わずに近接用ブレードのみでだ

 ……篠ノ之に白色与えたほうが有効に使えそうじゃね?

 

『ッ! 援護に』

「行かせない!」

 

 俺の正面の相手がライフルを篠ノ之に向けたのを見て瞬時にそれをナイフで妨害する。撃たれた弾丸はアリーナの障壁に阻まれて爆発した

 

『―――、エネルギーゼロ。戦闘不能』

 

 おっと、適当に牽制している間に篠ノ之が一人倒したか

 

「じゃあそろそろ決めますかね!」

 

 真宵の翼を広げて俺は一気に加速した。相手を中心に回転しながらライフルで銃弾を浴びせていく

 

「篠ノ之!」

『おおおおお―――!』

 

 そして試合終了、圧倒的な速さでこちらの勝ちが決まった

 

『援護感謝する、大和』

「まだ全力を見せるわけにはいかないからな、あいつらに当たるまでは」

『ふ、だな』

 

 俺達は互いの健闘をたたえながら一夏がいた方向を見た

 既に一夏とデュノアはそろそろ始まる自分の試合に向けて準備を始めたのだろう、そこにはいなかった

 

 俺達は控え室に戻り、上着を着て観戦席に移動する。そこにはオルコットと子供がいてこっちに手を振ってきた

 

「おーい、こっちこっち!」

「流石はお二人、あっさりと決めましたね」

「ふ、当然だ」

「応援感謝する二人共」

 

 二人が確保していてくれた席に座り俺は鞄から体にピースできる飲み物を取り出す

 

「……あんたそればっかり飲んでるわね」

「乳酸菌飲料は大事だ」

「はあ?」

 

『そーれそーれ乳酸菌飲料ー』的な意味で

 

「まあいいわ。そろそろ一夏たちの出番ね」

「流石に一夏さん達なら勝ち進むでしょう。専用機持ちも居ないことですし」

 

 そして試合開始

 

 始まると同時にデュノアがライフルを呼び出して牽制、そして一夏は雪片弐型を呼び出す

 

「零落白夜で一気に決めるつもり? あいつ、相手が可哀想ねぇ」

「ですけどそううまく行くか」

 

 いきました。結果、一夏たちの勝ち

 

「はー、つまんない」

「まあ初戦ですし、相手は訓練機でしたから」

「んなこと言ったらこいつらと当たるまで試合展開今のと全くおなじになるわ」

 

 そう言いながら子供は俺達を指さす

 

「くそ、あの戦いがなければ私の甲龍だって!」

「全力で整備しても間に合いませんでしたわ」

 

 はぁ、と二人がため息をついた、なんというか、ご愁傷様?

 

「全く一夏は一撃必殺と言うものを分かっていない、いざという時に使うからこそ一撃必殺になるというのに」

 

 こっちはこっちで愚痴愚痴言ってる、ああ本当に試合じゃない所で疲れるなぁ。それにここも女子の匂いがプンプンするし

 

「よ、大和、箒。さっきの試合観てたぜ」

「おつかれ~」

 

 む、二人が帰ってきたか

 

「こっちも見ていたぞ。ただし一夏、お前はこれから説教を受けることになる」

「え?」

 

 不思議そうな顔をした一夏にホレ、と手で女子三人を示す。そして彼の顔は明らかにゲッて感じになった

 

「ちょっと一夏! 何よあの試合全然つまらないじゃない!」

「そうですわ!」

「全くもって一夏は……」

 

 わいわいきゃいきゃい、本当に一夏は女難続きだな

 

「勝っても怒られ負ければ更に怒られる、一夏は本当に可哀想なやつだ」

「あははは……」

 

 と、そんな感じで俺たちは一回戦、二回戦とどんどんと勝ち進んでいき

 

「ようやく準決勝……」

「だいぶ日が傾いてきたな」

 

 見るからに一夏は疲れ果てている。何せ、トーナメントがあっているのは一年生だけではないのだ。そりゃ時間がかかる

 アリーナにいる人間は途中から減っていったがここにきて人数が増えた感がある。『負けたら決勝を見ればいい』とでも思っているのだろうか、ごもっとも

 

「何よIS学園って。うちらのなかで最弱の一夏でさえバンバン勝ち進めちゃうってどういうことよ」

「そうですわ、全く」

 

 何故友人が勝ち進んでいるのに喜んでいないのだろうかこのオルコットと子供は

 

「ふふふ……準決勝……剣道の時よりも高ぶってくるぞふふふ……フフフフフフフ」

 

 あ、これはアカン

 

「ねえ一夏、大丈夫かなあの三人?」

「さ、さあ」

 

 ほら、デュノアも引き気味だぞ

 と、俺の準決勝の相手は中々に手強い相手みたいだ。今までの対戦全てほぼ瞬殺という圧倒的力を持つコンビ

 

「更識簪、布仏本音……」

 

 さてさて、勝てるだろうかねぇ。銀月『二機だけ』で

 

 

 

 

 

『ペアが見つからないとは不幸でしたね、隊長』

「ふん、生徒数が奇数だったからだな。まあどうでもいい有象無象と戦うつもりなんて毛頭無かったから問題はない」

『しかし、大和・ジパングの能力の把握には大会に出たほうが……』

「ふっ、私がそれを怠っているとでも思うのか?」

 

 ラウラはモニターに向けて一枚の紙を振る

 

「特例措置だそうだ、流石は教官」

『特例措置……?』

 

 不思議そうな顔をする部下にラウラはデータを転送する

 

『「ラウラ・ボーデヴィッヒはその実力が保証されているため決勝戦に参加出来るとする。なお、ペアは準決勝敗退の中から一名選ぶこと」……しかし、隊長だったから良かったものの、一般生徒の場合どういう措置になったのだか』

「ふん、考えるだけ無駄だクラリッサ」

 

 自室でラウラは暗い笑みを浮かべる

 

(教官を穢した男、織斑一夏。有象無象より強いことは期待しているぞ?)

 


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