【勘違い物】性欲を抑えながら頑張るIS学園生活 作:シロガネ11号室
午前が終わり、一時の休息として昼休みが始まる。俺は一夏と共に屋上に来ていた。また、いつメンもいるしデュノアもいる
まあ、これだけを聞けばなんというか和やかなのだが……
「はい、皆さん。サンドイッチを作って参りました」
……どうやら今日は厄日のようだ。オルコットがそう言いながら開いたタッパーの中には見た目は良好なサンドイッチ。……そう、見た目だけ良好なのだ
「おい一夏、お前今度言うって言ってなかったか?」
「たはは、傷つかないように遠回しに言うのって苦手なんだよ」
前、同じようにオルコットが弁当を持ってきたことがある。一夏は喜んで、俺はその場の空気に流されて食べたんだが、そう、舌が味を認識するのを拒否するかのような痺れと痛みと苦味と辛さと甘さと酸っぱさとも違う感覚、そう、劇物だったんだ、こいつの作るものは
うん、これはどうしようか
一夏もこれから目をそらして子供が持ってきた酢豚に目を向け、箸を伸ばしながら最期の時(オルコットのサンドイッチを食べる瞬間)を少しでも後にしようと足掻くかのようにデュノアに話を振った
「な、なにかあれば俺に聞けよな、IS以外で」
「うん、ありがとう」
「アンタ少しはISの勉強しなさいよ」
「とは言ってもなあ、鈴。もうそれはからっきし、ほら、このメンバーで模擬戦しても最下位だし」
「少しは精進しろ馬鹿者」
うん、篠ノ之の言うとおりだ。少しは勉強したほうがいいぞ一夏
このメンバーで模擬戦だと俺と子供が同率で勝率一位、時点でオルコット、篠ノ之と続き最下位が一夏だ
専用機でもない篠ノ之に負けるとか情けないぞ
「そう言えば俺と大和、どっちと同室になるんだろうなシャルルは」
「……俺の可能性は低い」
何故かというと
「俺は監視されている。俺の記憶が戻った時、この世界で大切な男性操縦者を失う可能性があるからな」
「は? どういう意味だよ」
「一夏、馬鹿? もしかするとこいつの正体はどっかに何かの目的で作られた男性IS適格者って可能性もあるのよ。そりゃ貴重な他の素性がしっかりしている男と一緒に出来ないわ」
記憶喪失って設定のせいで俺には更に男性操縦者が増えたとしても同室の人が出来ないんだろうな、ああ悲しい
と、無駄話をしながらもどんどん食料は減っていき、そしてオルコットのサンドイッチが残ってしまった
……その後、一人の戦死者が出て無事に昼休みが終わった。その勇者の名前は織斑一夏と言う。2階級特進して彼も天国で微笑んでいるに違いない
無茶しやがって
そうそう、結局デュノアは一夏と同じ部屋になった。べ、別に寂しくなんか無いんだからね! 俺はいつも使っていない方の布団に荷物を置いてその上に毛布をかけてみた。なんかもっと悲しくなった
と馬鹿らしい事をやっていると部屋にノックの音が響く。誰だろうか、巨乳で美人な子ならウェルカムだぜ(震え声)
「誰だ」
「話がある、失礼するぞ大和・ジパング」
「ロ……ボーデヴィッヒか」
あぶねぇ、普通にロリ軍人って言いそうになったぜ
「良いが、もてなしは出来ないぞ」
だって誰かが俺の部屋に来るだなんて殆ど無いし。別に悲しくなんてないし
「構わない……本題に入ろう」
目の前のロリ軍人は鋭い目をこっちに向けて
「お前、何故このような学園で我慢出来る?」
とのたまった。何っ!? こいつ、俺が性欲を我慢して生活をしていることを知っているのか……もしや、どこかにあるかもしれない監視カメラの主か、それの手下か!
「知っているのか、俺のことを……ッ!」
「そう警戒するな。私に敵意はない、知っているのはデータ上でのことだ」
データ上、つまり俺の生活リズムから趣味嗜好、そして性癖に日々の排泄回数その他諸々を知っているということか!?
くっ、こんな小さなロリ軍人がいきなり転入してきたときに不自然に思ったが、俺への脅迫でもするつもりだったのか! それか何か要求して通らなかった場合俺が毎日女子に欲情しているとバラすかだ
「何が目的だ、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「だから聞いている。何故このような学園で我慢出来るか、と」
まずは軽いジャブか、クソッタレが。俺は自分を完全に自分で把握できていると自惚れちゃいない。他人からしか見えない『他人に晒すと社会的に死にかねない』何か、それを多分握られている
あくまで冷静に、冷静にならないとこのIS学園でこの先三年『うわっ、変態だ』って視線にさらされる可能性もある
しかし、相手はもう俺が性欲を持て余していることを把握して話している。多少は本音を混ぜれば嘘も通りやすくなるか
「それはもう、我慢はしている。周囲の女子共は皆そろって花盛りだからな」
「ふん、全くだ」
まるで軽蔑するかのようにロリ軍人は鼻を鳴らす。ああ、別のシチュエーションなら興奮できたのだろうけれど
「だが、我慢しなければならない理由がある」
「理由、だと? お前には守るべきものも何も無いではないか」
なんだと、俺は社会的に死んでも別に平然として生活できると思っているのかこいつは。俺の監視でそういう性格だと思っているのか? ふざけるな!
「言葉に気をつけろ、貴様……ッ! 俺に何もないだと?」
「ッ! すまない、言い過ぎた」
「……俺にも守るものがある、それは俺自身だ」
「お前自身、だと? それを守るのにこのような場所で我慢する必要があるのか?」
それくらい思いつかないのか? 俺を監視していたのにか?
「これから三年、俺は望むと望まざるともここで暮らすことが確定してしまっている。変な行動を起こしでもすれば、各国の代表としてここに来た奴らを穢すことになる。ならば、世界中から非難されるのは……当たり前だ」
「強き者が弱き者の上に立つ、それが世の理だ!」
ダン! とロリ軍人は机を叩いて立ち上がる
「……すまない、失礼する。また日を改めて来る」
「え、あ、おう」
ロリ軍人は部屋から出て行った
助かった、のか? つかあいつ今『強き者が弱き者の上に立つ、それが世の理だ!』って言ったよな、ならあいつを押し倒しても問題ないよな、俺の方が強ければ(ゲス顔)
なーんて、そう思考誘導させるつもりだったのだろうか。でも残念
そうやって完全に俺が性欲の権化であることを明確に示すような真似はしねーよ、どっかの誰かさん?
俺はまだまだ続く監視生活に気を引き締めるため、今日は早めに寝ることにした。特に関係ないとかそんな苦情は受け付けない
「強いな、この男」
とても初めての戦いであるようには見えない高機動でイギリスの代表候補生と戦う画面上の人物、大和・ジパングを見てこうラウラはつぶやいた
「いや、それとも相手が弱すぎるのか―――違うな。明らかに『見えている範囲の攻撃は全て避けている』」
次に、と部下のクラリッサ・ハルフォーフが示すデータが画面に現れる。二人目の男性操縦者、大和・ジパングは表向き日本人とされてはいるが、裏では記憶喪失であることが知られている
またその素性を知るものが全く居ないために彼の情報は無い無い尽くしと言えた
ならば、と監視カメラを大量に仕掛けることにより彼の情報を得ようとすることは当たり前といえば当たり前だった。複数の組織がそれぞれ監視カメラまたは生徒として内部の人間を派遣したりしてまで彼の情報を集めようとしている
「生身での実戦? 相手は」
「篠ノ之箒、日本の剣道の大会で優勝した者です、が、彼女の強さはその程度では量れません」
「確かにな、これほどの死闘を繰り広げるとは……一般人にしてはやるな。おそらく死線を越えた人間に手ほどきを受けている」
美しくも激しい大和と箒の戦闘、それを見てラウラはそう呟いた
「でも、これでも彼の本気は量れません。見てください、攻撃を受けるばかりで反撃に出ません」
「ふむ、遊んでいるのか?」
「おそらくは」
次々と彼に関するデータをラウラは閲覧していく
「身体能力は我々軍人と同等、それ以上。空間把握能力や射撃も同じ……戦うために生まれ、生きてきた私よりも強いかも知れんぞ、この男」
ラウラはそう言いながら思う
(なぜ、この男はISをファッション感覚で使う女子共と同じ学園でこうも肉体的、精神的レベル差を我慢して生活できるのか)
と
だから、知る必要がラウラにある。この戦いのためだけに生まれてきた男がこのふざけた場所で自分なら出来ない我慢している理由を
そのためにラウラは大和の部屋を尋ねた
「誰だ」
「話がある、失礼するぞ大和・ジパング」
「……ボーデヴィッヒか」
ラウラは部屋にはいることについて大和に了承を取り、そして本題に入る
「お前、何故このような学園で我慢出来る?」
(このようなISをファッションと考えている輩にどうしてこいつは付き合ってられるのだ?)
「知っているのか、俺のことを……ッ!」
「そう警戒するな。私に敵意はない、知っているのはデータ上でのことだ」
(この警戒の仕方、もしかして記憶喪失というのは嘘か? それとも断片的にでも記憶が戻っているのか)
目の前で警戒をする大和を尻目にラウラは勝手に部屋に備え付けの椅子に座る
「何が目的だ、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「だから聞いている。何故このような学園で我慢出来るか、と」
「それはもう、我慢はしている。周囲の女子共は皆そろって花盛りだからな」
なるほど、我慢はしているのかとラウラは彼に対する考察が当たっていることを確認して笑う
彼の言う花盛り、つまりそれはファッションなどという生温い考えでISを扱う女子共に対する皮肉だ
「だが、我慢しなければならない理由がある」
我慢をしなければならない理由、自分ならとラウラは考える
自分が我慢をせずに女子共へ当たったとする。となれば自分が守るべきドイツの権威を落とすこと、また所属するドイツ軍の名誉をも穢すこととなる
だが目の前の男はどうだ?
記憶もない、国籍も急造で後ろ盾や所属する組織もない。勝手に行動して批判が向くのは自分自身。それならば適当な気持ちでISと関わる女子共を打ちのめしても別に問題はないのではないか
つまり、こいつにはそういう『理由』が無い
「理由、だと? お前には守るべきものも何も無いではないか」
そう考えてラウラはそう言った、言ってしまった
その瞬間に今まで感じたことがないような―――そう、尊敬する教官『織斑千冬』に勝るとも劣らない殺気を目の前の男から感じた
決して模擬戦などで感じる『闘気』ではない。生死を分ける戦場で放つ『殺気』だった
「言葉に気をつけろ、貴様……ッ! 俺に何もないだと?」
「ッ! すまない、言い過ぎた」
殺される、そう思ってしまうほどに強烈な殺気は瞬時に収まる
「……俺にも守るものがある、それは俺自身だ」
「お前自身、だと? それを守るのにこのような場所で我慢する必要があるのか?」
この学園で自分自身へ向けられる敵意などどうと言うことでもない。軍でかつて軽蔑の視線で見られたことに比べれば、と、そうラウラ無意識のうちに思い口に出した
「これから三年、俺は望むと望まざるともここで暮らすことが確定してしまっている。変な行動を起こしでもすれば、各国の代表としてここに来た奴らを穢すことになる。ならば、世界中から非難されるのは……当たり前だ」
その程度の批難が嫌なのか、これほどまでに強い男が?
己の強さでその程度のこと正当化出来るはずなのに! 自分では立場で出来ない鬱憤を晴らすという行為を出来るのにやらない大和にラウラは苛立つ
「強き者が弱き者の上に立つ、それが世の理だ!」
思わずラウラは机を叩いて立ち上がる。頭に血が上ってしまった事を感じて冷静に話をすることなど不可能と判断した
「……すまない、失礼する。また日を改めて来る」
また、彼とは話す必要がある。そうラウラは思い部屋を後にした
自室に戻り、先に部下であるクラリッサ・ハルフォーフに連絡を取ることにした
「クラリッサ、大和・ジパングとの接触をした。そちらも見ていただろう?」
『え……? そんな、少しお待ちを。―――ありえない、隊長が彼の部屋に入っていく様子なんて映像にありません!』
「なんだと!?」
ラウラは感じる。リアルタイムで映像を改竄する事のできる技術力を持つ組織、それが彼の裏にはいる
(まさか、あらゆる方法で調べてもデータが出て来なかったのは奴の裏の存在が抹消したとでも言うのか!? ありとあらゆる戦闘を可能とするあの男を生み出す組織、そんなのがあっただなんて!)
ラウラはその日、眠りにつく事無く彼についてありとあらゆる可能性を部下とともに議論することとなった
「IS学園に仕掛けられた色んな組織のカメラ、その全てをハックして改竄……ふふふ、あの子もやるじゃない」
何枚ものモニターを同時に監視し続ける機械的なうさ耳をつけた女性は楽しそうにそうつぶやく
「ま、私が『創った』んだからそれくらい簡単に出来ないとつまらないよね。あの男がそれほど気に入ったのかな~?」
赤い塊、そちらの方に視線を向けながら彼女はコンソールを操作する
「そうだね、この子にはあの男の監視もお願いできるかな? いっくんは解剖したくないけどあの男なら……」
『紅椿』と名付けられたその塊は母に作られながら、持ち主へと渡るその瞬間を待ちわびていた
※ドイツ軍レポートより抜粋
○大和・ジパング
IS学園に拾われる以前のデータは全て不明、遺伝子データに該当する存在も無し
戦闘能力は戦闘用に生み出されたデザインベイビーをも凌駕すると推定される
シュヴァルツァ・ハーゼのラウラ・ボーデヴィッヒにより彼の背後に巨大な組織が控えている可能性が示唆されたが、それが亡国機業なのか不明である
記憶喪失とされており、本当ならば何故組織がそのような状態で放り出したのかは要検証。実験体とされていた所を逃げ出した可能性も有り得るが全て推測の域を出ない
これは酷い
亡国機業→紡績機?→『織』斑との関係がある?
どっかで見たこの予想はどこかワクワクする所があるけどちと強引