練火デース(ФωФ)
本棚を新しく買おうか悩む今日この頃(´・ω・`)
昼休みも終わり、日が傾きかけた時。吉井達は屋上にて精魂尽き果てていた。
「チケットが一枚も取れない」
そう、問題を解き。その座標で探したのに出てきたのは姫路の手作りクッキーと、チャイナ服とメイド服のみである。
「もう残り時間は五分もねぇか……後、しらみ潰しで行ってないのはここだけか…」
雄二の呟きに吉井は探し始めた。
「おい、吉井。これ以上はもう獲られてるだろ?」
「まだだ!まだ諦めるわけにはいかないッ!!」
吉井は四つん這いの状態で小さな跡も見逃さないように注意深く早く見る。
そして、見つけた!
タイルの端がヤスリで削れて、取ってのように引っかける部分があった。
(これだ!)
躊躇い無くそこに手を掛け、タイルをひっくり返した。
すると一枚のチケットが、タイルの下に隠されていた!
「あっ!あった!!ねぇ!雄………二……?」
「明久!!早くそれを持って逃げろ!!」
「急ぐのじゃ!!」
振り返ると、坂本と秀吉がどこかのチームと戦っていた。
(……あれは団体戦時に見た召喚獣……ってことは!!?)
吉井は坂本達の向こう側にいるチームを見て青ざめた。
「雄二……チケットは…貰う」【Aクラス、霧島翔子・世界史480点】
「やっぱり、歯応えが無いわね」【Aクラス、木下優子・世界史321点】
「でも、手加減はしないよ?僕達だってチケットが欲しいんだもん」【Aクラス、工藤愛子・世界史311点】
「Aクラス……」
(何でこんな時に……!)
歯噛みする吉井に
「明久!この勝負は戦って勝ち取るのが絶対条件じゃねぇ!!俺たちが抑えてる内に早くそれ持って逃げろ!」
【Fクラス、坂本雄二・世界史160点】
「雄二……」
「そうじゃ!勝利条件はチケットが奪われないことにある。ーーー後五分逃げればわし等の勝ちなんじゃ!!」
「秀吉……」
【Fクラス、木下秀吉・世界史99点】
自信満々に二人は叫び言う。
「ゴメン!後は任せた!!」
吉井は階段に向かって走り去った。それを何もせず見逃す霧島達。
雄二と秀吉は軽口を叩きながら構えを取る。
「……翔子…見逃すなんて、いったい何考えてやがる?……いや、なんとなくだが予想は出来た。だから、答えなくていい」
「チケットより……雄二を捕まえるのが先決………」
「答えなくていいって言っただろうが………」
「やはり、狙いはワシ等だったか」
「当たり前よ。私に勝ったのはアイツだけなのに……たかが、同じクラスなだけで調子にのってんじゃないわよFクラス?」
「三対二だと流石に後味悪いしね~。僕は吉井君を追いかける事にするよ」
お互いが話し合うなか、工藤は吉井の後を追い屋上を後にした。
それが合図かのように四人の召喚獣が動き始めた。
ザンッ!
「……雄二、大人しくして」
「断る!」
ドンッ!
ーーー
シュッ!ザッ!ダンッ!!
「ハアァァァッ!!!!」
ガンッ!ガンッ!!ドンッ!!!!
「国語の点数は良かったのに、何でこの教科は点数が低いのよ……バカ秀吉!!」
ガンッ!
最後の突きを防いだ瞬間、盾で薙刀を横に弾き、盾裏に隠れていた槍が
シュンッ!!
「終わりねーーーなっ!?」
だが、その槍は
「姉上よ。あまり弟を舐めるものじゃないぞ」
ドゴォッ!!
▼△▼△▼△▼△▼
坂本と秀吉は粘りに粘るが、地力である点数差が大きすぎた。
「雄二、降参して…この紙に判を……」
【Aクラス、霧島翔子・世界史399点】
懐から一枚の結婚用紙を取り出し霧島。しかも、夫の欄は坂本の名前、住所、生年月日が書かれている。
「駄目に決まってんだろうが………!!」
【Fクラス、坂本雄二・世界史79点】
冷や汗を流しつつ更に気を引き締めて、拳を握った。
「アンタもよ、敗けを認めたら愚弟?」
【Aクラス、木下優子・世界史283点】
何時ものように、侮蔑を交えて降伏を呼び掛ける優子に対し、秀吉はべーっと舌を見せると悪ガキのような笑みで答えた。
「武士は死ぬまで忠義を尽くすまでじゃ」
【Fクラス、木下秀吉・世界史36点】
坂本と秀吉はアイコンタクトで会話を交わす。
(秀吉、後何分だ?)
(多分後一分程じゃ)
(…マジかよ。もう五分以上は戦ってる感覚だぞ)
(して雄二よ、策はあるのか?)
(ああ、有るぜ)
その答えに秀吉は表情を出さずに驚いた。
(作戦名は当たって砕けろだ)
(……それは策とは呼ばんのじゃ)
ついさっきの驚きを返せと言わんばかりのため息を吐いた。
(だが、解りやすいだろ)
坂本の獰猛な笑みに、秀吉も苦笑で返す。
(それもそうじゃな)
二人の召喚獣は己の武器を構え直し
(さて)
(では)
「「やるとするか(のう)ッ!!!!」」
襲い掛かった!!
「雄二!援護を頼むぞ!」
ガギッ!
「任せとけッ!!」
「させない…!」
それを
「まずは初撃ーーーーー食らいやがれえぇぇぇッ!!!!」
ドゴンッ!!
それを逃さず、
▼△▼△▼△▼△▼
「ハアッ!!ハアッ……!」
逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる。
吉井は背後を振り向かず、全力ダッシュで逃げていた。
その理由は大体解るであろう。
「あははははっ♪!吉井君、止まってよ~♪」
後ろから笑顔で追ってきているAクラスの工藤がいるから
ーーーーーでは無く
『吉井~♪!!待てよ~~!♪』(バットを持ちながら)
『そうだぜ~♪、俺達は
『ただちょっと女性に笑顔で追いカケッコしてる事を知りたいだけなんダよ~~?♪』(松明とオイルを持ちながら)
『だカら、チょっとトマレヨー♪』(スタンガンをバチバチ言わせながら)
「その笑顔と手に持ってる物で誰でも逃げるよ!?!!!?」
それを叫びながら、時折飛んで来るカッターナイフを避けたり防ぐ吉井。
捕まれば間違いなく、いや、絶対にFクラスの異端審問による私刑と言う名の死刑が始まる事は絶対である。
吉井は階段を登り、Fクラス前に逃げようとすると。背後から
ズザザザザアアァァァッ!!
「えっ!?ちょっ!誰か助けーー」
吉井は驚きを助けを呼ぼうとするが、その口を塞がれ
そのままFクラスの向かいにある空き教室に連れ込まれた。
「吉井、声を上げるな」
その声に吉井は視線を後ろに回すと、榊がいた。
「さ!榊くーーーモゴッ」
「声を上げるなと言ったぞ」
榊の警告に吉井は頷き、黙っていると
『どこだ!!何処に消えた!!』
『探せッ!!!見つけて始末するんだッ!!』
『出てきやがれコノヤロウウゥゥヴヴヴヴーーッ!!!!!!!』
Fクラスの生徒達の叫び声が廊下から聞こえ、そして走り去っていった。
「あ、ありがとう榊君」
「こっちに来い」
榊は吉井の手を引くと、演劇等で使用されている小道具置き場でうつ伏せにさせると
「ここに横になってチャイムがなるまで動くなよ」
その上から、大きめのシーツを掛けて吉井を隠した。
『うーん、吉井君はどこかなぁ?』
廊下からそんな声が聞こえると、榊は足元に置かれてた箒をとり、掃除用具のロッカーに行く。
「ここかなぁ!」
工藤は空き教室のドアを開けると同時に、榊は掃除用具ロッカーを閉めた。
「あっ…」
工藤は榊を見て、なんとも言えない顔になったが直ぐ様無言で榊に近づき、閉めたばかりの掃除用具ロッカーを開いた。
工藤は中を見て、頬をピクピクさせながら
「…………これは…なんの真似かなぁ~?榊君?」
こちらに振り向き、掃除用具ロッカーの中を指した。
そこには箒や塵取り、そして、一枚の紙が貼ってあった。
『残念・不正解!!ザマァ(爆笑)!!』
それを見て、一言。
「出直せ!エロ仮面を被った純情乙女!って事じゃないのか?」
「へえぇ、ボクの何処が純情なのかなぁ~?」
笑顔で聞いてくる工藤。だが、その目は彼女を知るものがいたら、断然二度見するレベルの冷たさを纏っていた。
榊はそれを聞くと、懐から一枚の手帳を取り出し。
「工藤愛子・Aクラス」
「何かなぁ?ボクのスリーサイズでも書かれてるのかな?」
ウワァと言うような侮蔑を交えた表情で言ってくる工藤。
「貧相な体に興味無いな」
「……ふーん」
榊の発言に工藤は少しイラッとしながら続きを聞く。
「趣味はランニングーーーー」
「僕に何言っても意味無いけどね~」
「ーーーーもとい可愛いヌイグルミ探し、読書(少女マンガ)、休日はヌイグルミに包まれながら癒されており、某乙女ラジオにてそれなりの純情な投こ「うわわわわわわわわッ!!!!」」
顔を真っ青にした工藤がダッシュで榊にタックルした。
それは見事に当たり、手帳は小道具の下に落ちた。
「何でそこまで知ってるのさ!!ストーカー!!!???」
青から赤へと顔色を変える工藤。
「いや、なに。休日スーパーで買い物をしててな。目の前で
「こ……この……ッ!!!!」
工藤は歯ぎしりして、目の前でニヤニヤして眺めている榊を睨む。
『工藤さんって……おふろ上がりに鏡の前で落ち込むのって何で?』
そんな声に工藤はバッと顔を向けると、小道具の側で吉井が榊の手帳を読んでいたのだ。
「うわわああぁぁああぁぁッーー!!」
ダダダダッシュバッ‼
目にも止まらぬ速さで吉井に駆け寄り、その手に持っていた手帳を奪い取り
ビリイィッ‼と粉々に破り捨てた。
「ああ、勿体ない」
「なにがさっ!!」
榊の棒読みの発言に工藤は顔を真っ赤にしてうーっと唸り
「そのにやけ面を今すぐに止めてあげるッ!!!」
立ち上がり、召喚獣を出そうとするが
「
キーンコーンカーンコーン
ちょうど終了のチャイムが鳴り、召喚フィールドが消されていった。
「ーーーーーさて、どうやって止めるんだ?」
ニヤニヤしながら訊く榊に工藤は俯いてぷるぷると震えている。
「~~ッ!!!つ、次に会ったら絶対に潰してあげるから!!」
そう言い残し、空き教室から出ていった。
「榊君…結構外道だね……」
そんな吉井の呟きに頷く声は無かった。
△▼△▼△
吉井は空き教室を出ると、屋上へと向かった。
屋上に辿り着くと、手すりに寄りかかっている坂本と秀吉がいた。
二人は吉井に気付くと、立ち上がり。手を上げる。
吉井も手を上げて、
パァンッ!
ハイタッチを交わした。
その後、軽めに話し合い景品を交換して。吉井は朝の少女と約束した
「ゴメンね!待たしちゃっ…………て?どうしたのそのヌイグルミ?」
ブランコで少女が座っていたのを見たのだが、前から見ると一つの青いヌイグルミ、いや如月グランドパークのマスコットヌイグルミを抱いていた。
「これですかぁ!ついさっき、怖そうなお兄ちゃんが来て葉月にこれをくれたのですっ!」
嬉しそうに言う少女に吉井は懐から約束していた物を取り出し、屈みながら少女にプレゼントする。
「はいっ」
「あっ!お兄ちゃん本当にありがとうですっ!ーーーーーこれは葉月のお返しなのです」
吉井の頬に柔らかい何かが触れた。
少女はにひひっと笑うと手を振りながら去っていった。
それではまた次回でヤイサホー!!