生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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えーっと、お久しブリーフ。

色々と怖くて更新できなかったの……


もっと強く

「正式に連中を黙らせたい」

 

 

 帰ってくるなり、不機嫌そうに事情を説明する元士郎。

 

 

「周囲のお墨付きの上で黙らせるとなれば、ゲームでも仕掛ければわかりやすいか?」

 

「そうなりますわね。ならば早速フェニックス家から両家にゲームについての書状を送らせましょう」

 

 

 洗脳が消えた途端、洗脳された現実からある程度逃げさせてもらえた事も忘れてしつこく下僕に戻れと言ってきたソーナに完全に堪忍袋が破裂した元士郎の意思を否定せず両者に対してゲームを仕掛ける事に賛成する。

 

 

「戻る気が無いのがお前の意思ならば、俺達は友達として応援するさ」

 

「悪いな……」

 

 

 何でもいきなり現れたコカビエルに赤い龍の寄生の影響で弱体化して負けてしまったらしい。

 痛々しい傷を消毒されて時おり痛みで身体を揺さぶりながらも笑って背中を押す仲間達に元士郎は感謝の気持ちと共に決意を固める。

 

 

「必ず勝ってやる」

 

 

 しつこい連中からカテレアを自由にする……その決意を。

 

 

 

 それから二日後にはレーティングゲーム開始の知らせの書状がソーナに届いた。

 上級悪魔昇格によりカテレア・レヴィアタンが正式に元士郎の女王となり、その初のお披露目目的のレクリエーションとの事……と書かれている。

 

 

「正式に潰すとはこういう事だとは思っていたけど……」

 

「……………」

 

 

 レクリエーションとは名ばかりで、本当の所は完全にソーナと元士郎の眷属としての繋がりを公衆の面前で絶ち切らせる。

 書面に書かれる開始日とゲーム勝利者に与えられる特権を読みながらリアスは怒りに震えるソーナを横目にため息を吐く。

 

 

「何故、何でこうなるのよ……!」

 

「向こうがそれだけ本気だって事だと思うわ」

 

「だからって! 何故負けたら私が匙の独立に了承しなければならないの!? しかも金輪際眷属として召集させることも禁止だなんて!」

 

 

 ソーナは未だ納得できてないと怒りのまま喚く。

 只でさえ忌々しい男に無理矢理関係を持たされたというのに、その癖旧魔王派の女に匙が走ったせいでイライラが止まらないというのに、魔王直々に今回のゲームの条件を飲まされたのだ。

 やっと自由になれたかと思ったら裏切られたなどプライドが許さなかった。

 

 

「あの女のせいね……あの女が匙を……!」

 

 

 ブツブツと爪を噛みながら、自分が洗脳されている間に眷属を奪ったと思っているカテレアに憎しみを募らせるソーナ。

 

 

「許せないわ、あの女といい、兵藤一誠といい……! 私から眷属を奪って……!」

 

「……。私には彼が自分の意思で動いてる様にしか見えないのだけど……」

 

「違う! きっと私達がそうだったようにどちらかが匙を洗脳したのよ!!」

 

「……………」

 

 

 そう思わないとやってられないと言わんばかりの怒声にリアスは流石に擁護できそうに無かった。

 確かに自分達は洗脳されて、一誠に付いていった者達を蔑ろにしてしまっていたが、だからといって彼が洗脳を施したとは思いにくい。

 ましてやカテレアに関しては完全に元士郎自身の意思による好意にしか見えないのだが、ソーナはそれがありえないと連呼するだけで聞こうともしない。

 

 

「そもそもあの子は私に好意を持ってるのよ……! なのにカテレア・レヴィアタンとだなんてあり得ないわ……!」

 

「…………」

 

 洗脳されてる間に愛想が尽きたとは考えないのかしら……と、こだわりすぎて更に視野の狭い考えに陥ってる幼馴染みを見ながら、幾分か冷静なリアスは考える。

 

 

「相手は匙君と女王のカテレア・レヴィアタンの二人だけだけど、匙君の力は確かに上級悪魔に相応しいレベルになってるわ。

だからいくら人数が有利だとしても油断は……」

 

「勝つに決まってるわ。匙をたぶらかした他の連中が居ないのなら勝てる。

勝って匙にはよーく言って聞かせ、カテレア・レヴィアタンから奪い返す……!」

 

 

 いや、もしかしなくても今の匙には勝てないのかもしれない……リアスは思うが口には出さない。

 何せあの旧魔王の血族者を眷属に出来てるのだ……。

 その器は既に計り知れない領域に進化していると見ても良い。

 

 

「匙……匙……!」

 

 

 その事に気付けなくなっているくらい周りが見えなくなっているのか……。

 

 

(こんな事ならいっそ洗脳されたままの方が良かったのかもしれないわ。残酷よ貴方は……)

 

 

 正気に戻って以降、日増しに周囲から白い目で見られて肩身が狭い思いをするリアスは、洗脳男の全てを暴いた一誠に対して複雑な思いを抱くのだった。

 

 

 

 

 正式にゲーム開催が決まり、尚且つ元士郎にとってはあらゆる意味でのデビュー戦……そして今までの清算と新たなスタートの為に、これまで以上の激しい鍛練に身を費やしていた。

 

 

「きょ、今日はここまでにしようか……」

 

「さ、さんきゅー……ぜぇ、ぜぇ……」

 

 

 恐らくは祐斗やフリードと同じ方向性に覚醒した暗黒の鎧を纏っての修行。

 ならば同じ力を覚醒させた者同士で修行し合えば色々と掴めるかもしれないという一誠の提案は大当たりであり、祐斗と元士郎は日増しに鎧の練度を上げていった。

 

 

「お疲れ様だ祐斗」

 

「元士郎も」

 

「ん、ありがとう。そっちも終わったのかい?」

 

「ええ、久々にまともな鍛練でした」

 

 

 互いにボロボロになる程の苛烈な鍛練。

 それは別の場所で修行をしていたゼノヴィアとカテレアも同じであり、ある時から鍛える事をしなくなっていたカテレアは特にその力を進化させていた。

 

 

「イッセーは?」

 

「赤い龍に入られてかなり四苦八苦してる様だ。通常の千分の一にまで力が落ちてしまっているらしい」

 

「今別の場所で赤い龍と対話中との事です」

 

「大変だなイッセーくんも。折角過去の清算が済んだと思ったのに」

 

 

 反対にイッセーは赤い龍に無神臓の邪魔をされてしまっており、その力を封じられているせいで著しい弱体化に見舞われており、現在その力を何とか取り戻すために赤い龍と対話しているらしい。

 鍛練により火照った身体を風で冷ましながら水を飲む祐斗の同情した声に元士郎は頷いた。

 

 

「邪魔をして欲しくなければ自分を使って白龍皇に勝てだったか? 随分と勝手な話だぜ」

 

「明確な意思を持つ神器の厄介な所だね。コカビエルに再戦で負けたのもその邪魔によるものらしいし」

 

「元々は兵藤誠八のなんだろう? もしかしたら宿主だった男の仇のつもりかもしれんな」

 

「だとすればどうにかして彼から赤い龍を引き剥がすべきですね。大きな戦いに巻き込まれた時に邪魔をされたら命に関わりますから」

 

 

 カテレアの言う通り、戦いの度に邪魔をされて力が上手く引き出せないとなれば命に関わる。

 とはいえ、過程はどうであれ誠八が使った力を使う気にはなれないし、何より命令するような言い方をする赤い龍は気に入らない。

 対話をした所で難航するのは予想しやすい事だった。

 

 

「取り敢えずイッセーの事は今後俺達でフォローできる所をフォローする様にして、今は連中とのゲームに勝って今度こそ完全に縁を切る事を考えないとな」

 

 

 だから、今度は自分達がこれまでの恩を返す。

 その為に迫り来る小さな障害は叩き潰してみせる。

 

 

「こんな小石に躓く訳にはいかねぇんだ」

 

 

 元士郎の決意はより強くなっていく。

 

 

 

 フェニックス家監視という状況だけど、比較的監視の目は緩い。

 いや、寧ろ殆ど監視なんてされてないに等しい。

 

 その気になれば今すぐにでも逃げ出せるだろう……別に逃げないけど。

 

 

「今日も修行したなぁ、でも、本当に強くなっていってるのかな俺って?」

 

 

 その理由は言わずもながら、この少年にある。

 良い歳してまさかこんな年下の子に心奪われるだなんて思わなかったけど、受け入れてしまえばなんてことは無い。

 寧ろ心地良いし安心できる。

 

 

「大丈夫よ、今のアナタならセラフォルーの妹程度に遅れを取ることはない。だからもっと自信をもって」

 

「うっす」

 

 

 切っ掛けはしょうもない事なのかもしれない。

 けど間違いなく私は彼に惹かれている。シトリー家の連中に拐われた時に助け出してくれた時から更に強く。

 

 

「そ……そろそろ戻りますか?」

 

「そ、そうね……」

 

 

 だから緊張してしまう。上手く踏み込めない。

 今も二人で夜空を見上げながら、手すら触れられずに部屋に戻る事に同意してしまう自分がちょっと情けない。

 元士郎も緊張してくれてる様だから少しは嬉しいけど、これでは小うるさいセラフォルーに横入りされて取られてしまう……。

 だから少しだけ、ほんの少しだけ勇気を出して部屋に戻ろうと先を歩く元士郎の服を掴んで止めた私は、恥ずかしくてまともに顔を直視できずに-俯きながら言った。

 

 

「そ、その……もう少しだけお話したい……」

 

 

 情けない。捻り出した言葉がこんなものである自分の勇気の無さを呪いたい。

 でも元士郎はそんな私に対しても優しくて……?

 

 

「お、俺も……そう、思ってました……」

 

 

 少し緊張した声色でそう言ってくれた。

 

 

「元士郎……」

 

 

 その言葉に少しだけ勇気が沸いた。

 すこし前の私なら何をバカなと思っていただろう。

 けど、やはり私は元士郎に惹かれてしまっている。

 レヴィアタンという血も関係なく私を私と見てくれる彼に。

 

 

「カテレアさんの手……あったかいっす」

 

「アナタの手も暖かいわ」

 

 

 自然とお互いに触れた手を繋ぎながら、今度はさっきよりも距離を縮め、身を寄せ合いながら空を見る?

 元士郎の体温が手を介して私に伝わる。鼓動が……呼吸が……。

 

 

「俺、絶対に勝ちますから。そしてカテレアさんを自由に……」

 

「そんなに私の為にならなくて良いわ。

わ、私はその……アナタさえ居てくれたらそれで……」

 

「カテレアさん……」

 

「元士郎……」

 

 

 自分の為にそこまでしなくても良い。ただ一緒に居れれば監視される人生であろうと構わない。

 其ほどまでに彼に惹かれた私は、お互いに目を合わせ見つめ合う内にもっと距離が縮まり……。

 

 

「「………」」

 

 

 この一瞬は永遠に忘れることはないだろう時間を過ごした。

 

 

「ふふ、少しは年上らしくできたかしら?」

 

「は、はいそりゃもう…」

 

「嘘よ。実はさっきから心臓がドキドキし過ぎて大変なのよ私……フフッ」

 

 

 良かった……アナタに出会えて心を奪われて。




補足

いやー……ホント何で匙とカテレアなの? って感じやね。

しかも一番青春しとるし。


その2
洗脳が解けた反動で錯乱してると思えば、彼女達も可哀想なものですホントに

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