生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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うーんと……匙×カテレアって今更ながらなんでやんねんだよな。


地雷原でタップダンス

 

 赤い龍の妨害についてだが、確かにこのままでは宜しくない――いや、実際にマズイ。

 

 

「ごほっ……げほっ! お、思っていた以上だなコカビエル。今度は俺の負けか……ぐっ……」

 

 

 あの時はギリギリの果てに何とか勝ったコカビエルとの再戦にて、俺はまさしく『手も足も出せない』まま叩きのめされてしまったのだから、多少なりとも焦りもする。

 

 

「風の噂で聞いたが、赤い龍を望まなくして宿してしまってるみたいだな? しかも、それが枷になって力が満足に引き出せてすらいないと。

そんなお前を叩きのめした所で勝ったとは思わん」

 

「………」

 

 

 急に突然フラっと一人で現れ、誰も居ない空間にて始めた戦いに間違いなく敗れて膝を折る俺にコカビエルは静かに言う。

 

 

「早くその枷から抜け出して戦え……。

俺はあの時の貴様に勝たないと満足なぞせんぞ」

 

「ふっ……そう簡単にはいかんのさ」

 

 

 ボロボロとなって膝を付く俺にそう告げたコカビエルに、そのそのまま地面へと力尽きる様にして倒れて意識を手放した。

 それは久々になる完全な敗北だった……。

 

 

 

 

 

 

「――という事が実はあり、俺は昨日の晩コカビエルに叩きのめされた。

いやー……驚く程に進化してるぞあの男」

 

「ま、負けたってお前……」

 

 

 一人修行の最中にフラりと現れたコカビエルとの手合わせに敗けたと、軽いノリで話す一誠に、同生徒会のメンバーはコカビエルが普通に現れたという意味を含めて驚いている。

 

 

「帰ってくるのが遅いと思って探しに行ったら、近所の公園でボロボロになって倒れていましたのよ。私は気が狂いそうになりましたわ」

 

「まあ、先輩の回復力の高さで何とかなりましたけど……」

 

「心配で眠れなかったにゃん」

 

 

 レイヴェル……そして一誠と一応同棲という形になっている白音と黒歌が一誠を見ながらため息を吐いて昨晩の事を話す。

 一人でフラフラと修行しに行ったかと思えば、帰りが遅いわ、探しに行けば血塗れで倒れてて大騒ぎになるわで、寝ずに看病する事になったという意味では、この三人の方が大変だったらしく、思い切り目を逸らしながらヘッタクソな口笛で誤魔化そうとする一誠。

 

 

「コカビエルが来てたなんて……」

 

「確かに奴のあの性格なら一誠にリベンジするとは思うが、それにしたって妙なタイミングだな……」

 

「誰が吹聴したのか知らんが、赤い龍を宿してしまった俺の実力を確かめたかったらしい。

まぁ、宿してしまったせいで逆にこの様だから失望させてしまった様だ」

 

 

 その話した誰かの予想は何と無く察してたりする一誠だが、敢えて曖昧にしながら枷となってる赤い龍の弊害についてを改めて話す。

 

 

「レイヴェルには先に話したが、どうも今俺の中に入り込んでる赤い龍は、宿敵とやらとどうしても決着を着けたいようでな? なんでも自分を使わなければ使わざるを得ない様にするとの事らしいが、どうも只の脅しでは無さそうだ。最近自分の進化を感じ辛くなってる」

 

「……。ふざけてるのかよその赤い龍は?」

 

「宿主を脅すって……」

 

「他の神器とは少し勝手が違うとはいえ、随分とその龍は勝手だな……」

 

「ぼ、僕だったらまた引きこもりになっちゃうかも……」

 

 

 へらへらと笑って話す一誠に皆して憤慨する。

 元々赤い龍は例の男に宿っていた神器で、話によれば本来は一誠が宿主だったのを強制的に移された代物だった話は既に聞いていた。

 だからこそ多少は赤い龍に同情していたが、今の話を聞いてまえばそんな感情は直ぐにぶっ飛んでしまう。

 

 何せ一誠のアイデンティティを乗っ取ろうとしているのだから。

 

 

「考えた結果、アザゼル殿は神器の研究をしているとの事なので、彼に神器を抜き取る方法を聞いてみようと思う。師匠には………まあ、あまり頼るのは良くないので黙ってるつもりだけど」

 

「師匠? ………というと、確か安心院なじみさんだっけ?」

 

「あぁ、師匠なら多分間違いなくこの赤い龍を抜き取る事が出来ると思うけど、頼り過ぎるのは良くないし、何より師匠の事をもしグレモリー三年達が聞き付けたら、また面倒な事になりかねん」

 

 

 その代わり俺は楽になるけど……と小さく呟く一誠に、安心院なじみを知らないゼノヴィアとギャスパーが不思議そうに首を傾げる。

 

 

「そんなにその安心院なじみとやらは凄いのか? お前の師匠らしいから凄いのだろうが……」

 

「僕は見たことすら無いのでイマイチわからないです」

 

「凄いぞ。まず俺達全員が全力出して突撃噛ましても凸ピンで死ねるし、一番の強みは圧倒的過ぎる『引き出しの多さ』だな」

 

「我々が知るスキルを一京程お持ちですからね……だからこその人外ですわ」

 

 

 弟子として、人外の分身の一人として二人に安心院なじみのがどんな存在かを話す一誠とレイヴェルに、超大国の国家予算すら鼻で笑える桁を聞かされ、ゼノヴィアとギャスパーは絶句してしまう。

 

「例えるならそう……後出しじゃんけんがやり放題って感じだ」

 

 

 夢の中を含めても1000回以上は叩きのめされてるせいか、微妙に遠い目となる一誠に、未だ影すら見えない一誠の師匠とやらに声を出せずに居るのであった。

 

 

 

 

 それから暫く経ったある日の事、赤い龍の事もそうだが、それ以上にリアスとソーナの干渉にそろそろキレそうになっていた元士郎。

 

 一誠は殆ど相手にしてないし、実際問題彼女達の力では例え赤い龍に妨害されてたとしても、一誠に傷ひとつ負わす事はできないので、放っておけば良いという事にはなってて一応は従っては居るが……。

 

 

「匙、私の元へ戻ってる来るつもりはありませんか?」

 

「…………………。一人の時に出てきたかと思えば、頭沸いてんのか?」

 

 

 何をどう思ってその思考に辿り着いたのか頭の中を掻き出して覗いてみたいとすら思う元士郎個人に、わざわざ一人の時を狙いすませて現れたソーナ……とその他達から出て来た話に、『こんな頭悪かったっけ?』と思いながら、眷属に戻してやると言われていた。

 

 

「戻るつもりって何?」

 

「いやだから……もう色々終わったし、匙も……えっと、私の事が好きだし……」

 

「………………………」

 

 

 何を言ってるんだこの目の前の女は? と、元士郎は正気に戻ったせいで色々と払拭したいが為に思考回路がおかしくなってるソーナに、怒りが通り抜けて可哀想なものを見る目をしていた。

 

 

「好き? 俺が? アンタなんかを? なにそれ? 何のギャグ?」

 

「え、だってそもそもアナタって私に一目惚れして眷属になった筈でしょう?」

 

 

 確かに否定は出来ないし、当時はそうだったので元士郎も強くは否定しないが、今はミジンコよりも好きでは無くなってる――――いや無関心となっているので、今更になってそんな理由を付けて眷属に戻してやると言われても戻りたくなんて無かった。

 

 

「吐き気がするぜオイ。一誠達が説得できないからって今度は俺ってか? 冗談じゃない、死んでも戻りたくないね」

 

「………」

 

「あの、そう言わずに少しはソーナの事を……」

 

 

 横から口を挟んできたリアスまでも戻ってやれと言い出す始末。

 しかし仮に――それこそあり得ないけど、例えの話で戻ってみた所で、どうせ自分を介して一誠に接触するという考えが見え見えなのだ。

 

 それなのにどうして戻ろうと思うのか。元士郎としても『あり得ない』のだ。

 

 

「ホントいい加減にしろよアンタ等。

周りに注意されても尚変わるつもりもねーのか?」

 

『………』

 

 

 地に堕ちた名誉を回復しようという努力も無く、ひたすらに一誠に頼ろうとするその考えが一番気に入らないと元士郎は殺気を放って威圧する。

 

 最早ソーナとデキ婚したいという兵士だった匙元士郎とは別次元とも言うべき境地へと至った暗黒騎士としての匙元士郎の殺気に、ソーナ達は顔を真っ青にしながら声を出せない。

 

 

「何時までも被害者顔してんじゃねーぞボケが、俺はテメー等なんかに割く時間なんかねぇんだよ」

 

 

 全てを喰らって進化する黒狼。

 真に得た仲間と、真に想う人の為に振るうと誓った力をこの目の前の女共に使うつもりなぞ皆無。

 

 

「アンタの事はもう微塵も好意なんざ抱いてない。だから戻らない」

 

「………」

 

 

 そう言って堂々とソーナ達に背を向け、学園近くの住宅街の奥へと去っていく。

 今の元士郎は最早、ソーナでは決して届かない男となっているのだった。

 

 

 

 

 

「な、何よ……匙の癖に……」

 

「あ、あのソーナ。この作戦はもう無理な気が……」

 

「私もそう思います。匙君まで怒らせたら打つ手が……」

 

「小猫ちゃんとギャスパー君と祐斗君を説得した方が……」

 

 

 真正面から冷めた顔で消えろとまで言われた事に、以前の元士郎のイメージがまだ強いのか、生意気だと憤慨するソーナに、流石のリアスも無理じゃないかと言う。

 しかしソーナは元士郎が去っていった後の道を睨むと、早歩き気味に後を追い始める。

 

 

「ま、まだよ……! 匙の癖に生意気なのよ……!!」

 

「ちょ、ソーナ!」

 

 

 多かれ少なかれプライドを踏み潰されてしまって怒り出すソーナの後を追い掛ける三人。

 

 

「どうするのよ? 追いかけたら逆に反感を買うだけで……」

 

「私の事が好きじゃないと言ってる時点でやっぱり兵藤一誠に洗脳されてるのよ!

一発ひっぱたいたらもしかして正気に……」

 

「!? や、やめてくださいソーナ様! そんな事をしたら今度こそ見限られてしまいます!」

 

「そうですわ! もっと冷静に――」

 

「私は冷静よ!! 匙の分際で……匙の分際で……!!」

 

 

 冷静と喚くソーナだが、どう見ても冷静には見えず、何時しか走り出し始めていた。

 

 

「居た……!」

 

 

 そして程無くして普通に一人歩いていた元士郎の姿を発見したソーナは、沸き上がる感情の赴くままに大きく息を吸い込み――

 

 

「待ちなさい匙―――もが!?」

 

 

 元士郎を呼び止めようとしたのだが、その前にリアスが咄嗟に飛び付いてソーナの口を押さえた。

 

 

「待ってソーナ! 匙君が公園に入ったわ、ここは先ず様子を見てからにしないと」

 

「でも何故公園に? もしかして待ち合わせでしょうか?」

 

「もがもが……!!」

 

「お、落ち着いてくださいシトリーさん……」

 

 

 既に放課後で辺りも夕焼けに染まっている時刻に少し大きめの公園へと入っていく元士郎の行動が読めずに、後ろからひっそりと後をつけるリアスは、苦しそうにもがくソーナの口をそのまま離す。

 

 

「けほけほ! な、何をするのよリアス――」

 

「しーっ!! 匙君が子供達も家に帰る時間なのに公園に入っていったのよ? ここは刺激しないようにこっそり後をつけて様子を見ないと……」

「そんな悠長な事……! 匙の癖に生意気だったのを――」

 

「良いから黙ってください……!」

 

「そうですわ、もし今度こそ見限られたら私達はおしまいなんですよ……!?」

 

「っ………」

 

 

 どうしても匙に一言言いたいソーナを何とか宥め、渋々と黙る彼女と共にリアス、椿姫、朱乃の三人はテクテクと公園の中に入っていく元士郎の後を影に隠れながらつける。

 

 休日となると子連れファミリーで賑わう比較的大型な公園だが、時刻が時刻だけに中に居る人数はほぼ居ないに等しい。

 居ても犬の散歩をする人とか、散歩してる老夫婦がチラホラ程度だ。

 

 その中をひたすら尾行する四人が目にしたのは――

 

 

「すいません、遅れちゃって……」

 

「いえ、大丈夫ですよ元士郎」

 

 

 シックな黒ロングスカート肩フリルの薄いシャツを着た褐色の女性と待ち合わせをしていた元士郎の姿だった。

 しかもその女性というのが……。

 

 

「カ、カテレア・レヴィアタン……!?」

 

「フェ、フェニックス家に居る筈のあの女が何で……」

 

 

 リアスとソーナ達にとっても見覚えのある同族であり、現在旧魔王派の捕虜としてフェニックス家に居る筈の女が普通に元士郎と楽しそうにベンチでお喋りしている姿にただただ呆然としてしまう。

 

 

「学校はどうですか?」

 

「毎日楽しいっすよ。まあ、鬱陶しいのが居ますし、さっきも絡まれて……」

 

「あ、だから少し遅かったのね?」

 

「ええ……まったく、アレ等は魔王様や実家に言われてる筈なんですけどねー……」

 

 

 

 

「私達の事よね……」

 

「完全に邪魔扱いですわね……」

 

「しかしカテレア・レヴィアタンにかなりの自由を与えてるなんて、魔王様達はご存じなのでしょうか…………って、ソーナ様?」

 

「…………」

 

 

 

 鬱陶しい連中と一括りにされてると聞き、若干グサリと刺さるリアス、朱乃の二人と、世間的にクーデター未遂まで起こしたカテレアにここまでの自由を与えてるフェニックス家を魔王達は知ってるのかと思案する椿姫は、怒りの形相へと変わってるソーナに気付いて息を飲む。

 

 

「セラフォルーが邪魔しないこの時が一番アナタと一緒に居られるわ……」

 

「一々騒ぎますよねあの人……なんなんでしょう?」

 

「それは………まあ、騒ぐのも今なら私も分かる気がするから何とも言えないわね」

 

 

 

 

「な、ナチュラルに手を繋いでるわ……」

 

「というか、互いに照れあってるし……」

 

 

 しかしそれを知らんとばかりに元士郎は、カテレアと辿々しく互いに手をふれ合い、その内繋ぎながら楽しそうに話をしている。

 暗いという事で覗き見てる自分達以外の人の気配も消えてるせいか、手を繋いでたのがやがて……。

 

 

「人間界の昼間は熱いですけど、日が落ちると少し肌寒くなって来ましたね……」

 

「あ、はい……そ、そっすね」

 

「だからその……えっと……嫌だったら断って構わないのを覚悟で言いますけど、もう少しだけ近くに行っても良い?」

 

「そ、そそ、そりゃ断るなんて無いっす! はい!」

 

 

 お互いに緊張しながら肩と肩が触れ合うその距離を更に縮め、カテレアを抱き寄せる様な体勢になり始めた。

 

 

「こ、これって……」

 

「シトリーさん……これはもう流石に無理な気が……」

 

「何このムカムカする気分……何よこれ、あんな女が良くて何で私がダメなのか意味がわからない」

 

 

 カテレアの事になるとまるで祐斗とゼノヴィアみたいな事になる元士郎の心底嬉しそうな顔、そしてカテレアの幸せそうな表情を見て、別に元士郎をどうとも思ってないソーナがどす黒いオーラを放ちながらブツブツと言い始める。

 リアスと朱乃と椿姫は最早ソーナに対して持ってたらしい好意を利用する手は無理だと悟ったのだが、ソーナ本人は寧ろ理不尽に怒っていた。

 

 

「よく一誠がレイヴェルさんにして貰ってる奴ってわかります? こう、膝枕なんだけど抱き枕みたいな」

 

「あぁ、一度フェニックス家で見たことありましたね。というか前にゲームか何かで元士郎にしてあげた事もあったし……ふふ、もしかしてして欲しいの?」

 

「えっと……嫌じゃなければ」

 

 

 しかしそんなソーナなんぞ知るかとばかりに、どんどん独り身には辛い空気を出しまくる二人はといえば、遂に横に少し長いベンチだというのを利用して、膝枕にしてはアレな……よく一誠がレイヴェルにして貰ってるそれをやり始めていた。

 

 

「あ、ヤバイっすこれ。一誠がして貰いたがるのもわかりますわコレ」

 

「あの、私の膝って固くないですか?」

 

「いーや全然。

あ、やっばいっすコレ……果てしなく安心します」

 

「そ、そう……? でも少しだけ恥ずかしいかもしれない……」

 

「あ、すいません。やっぱりやめた方が……」

 

「いえ良いの……恥ずかしいけどアナタが満足ならそれで……」

 

 

 カテレアの腰にガッチリ腕を回し、そのままお腹の部分に顔を埋める元士郎は頭を撫でられてるのもあって安堵の表情だ。

 

 

「カテレアさんのお腹あったかいっす……。

それに良い匂いも……」

 

「私なんかで良かったら何時でも頼んで良いわ元士郎。

でもその……そこは私のお腹というよりは……えっと……は、恥ずかしい所だし」

 

「恥ずかしい所……?」

 

「ほ、ほらその、女性のデリケートな――うぅ、言わせないいでくださいよ……」

 

「……!? あ、あぁっ! す、すいません! わざとじゃないんです!」

 

「べ、別に良いんだけど……。こんな事されたのアナタが初めてだから……」

 

 

 

 それはもう……見てるだけで言い知れぬ敗北感に打ちのめされる様な光景だった。

 恥ずかしがるカテレアの下腹部に知らず知らずに顔を埋めてるというのもアレだった。

 

 

「か、帰りましょう。無理よ、あんな空気になられたらどうしようも無いわ」

 

「で、ですね……」

 

「やはり匙君を引き込むなんて無理だったんですよ……」

 

「あの女……裏切り者の癖に……」

 

 

 そんな光景に少なくともソーナ以外の三人は帰るしか無いと思い、また元士郎を引き込むのは無理だと理解したのだが……。

 

 

「匙!!」

 

「「「!?」」」

 

 

 ブツブツと独り言を言っていたソーナが突然茂みから飛び出し、ほんわかしていた元士郎とカテレアの前に怒り顔で突撃を噛ましたのだから、大変な事になってしまった。

 

 

「んぁ?」

 

「……? アナタは確かセラフォルーの妹の……何か?」

 

「何か? じゃ無いわ。アナタは旧魔王派で今はフェニックス家の監視下な筈でしょう? 私の兵士に何をしてるのかしら?」

 

 

 一応気配があることは知ってたが、敢えて無視してた元士郎の緩みきった顔と、そうさせてるカテレアとを睨みながら、然り気無く自分の兵士と宣うソーナ。

 

 

「え、元士郎の兵士って……。

アナタは確か元士郎とは切れてる筈でしょう?」

 

「そうっすよカテレアさん。この女の勝手な妄想っす」

 

「っ……!!」

 

 

 人をダメにする椅子がある様に、元士郎を無条件で大人しくさせる効果でもあるのか、カテレアに膝枕されたまんま、ソーナの眷属なんてとっくに辞めてると言い切る元士郎に、言い様の無い納得できない気持ちを爆発させる。

 

 

「ふざけないで匙! この女はクーデター未遂まで起こしたのよ!?」

 

「………。だから?」

 

 

 喚くソーナは元士郎の表情が一気に変化したことに気付かない。

 

 

「そんな女相手に今アナタは何をしてるの!?」

 

「膝枕だけど?」

 

「だからっ! アナタをそうやって色仕掛けして利用してるかもしれない女に現を抜かすなって私は――」

 

 

 そしてまたしても……いや、最早決定的過ぎる地雷を踏んでしまった。

 

 

「色仕掛け……少しばかり今のは否定できないかもしれませんけど、私は決して元士郎を――」

 

「黙ってて貰えますか、旧魔王派の裏切り者」

 

「―――――それも否定はしませんよセラフォルーの妹」

 

 

 噛みつくソーナに大人としての余裕の態度を崩さないカテレア。

 一応相手はセラフォルーの妹でシトリー家の次女なので下手な真似を控えてるのだが……。

 

 

「殺してやる……」

 

 

 完全に線が切れた元士郎の事を忘れてはいけないのだ。

 

 

「っ……な、何よ。アナタのせいで――ひっ!?」

 

『………』

 

 

 怒りの念がそうさせたのか、カテレアからして貰っていた膝枕から降りた元士郎の全身に禍々しい漆黒の鎧が纏われる。

 その威圧感や、魔王レベルに到達する程であるその手に握られた両刃の剣である『黒炎剣』を振りかぶる様に両手で持つと、剣を中心に血管を思わせる赤い光が展開する。

 

 

『カテレアさん、ちょっと待ってて貰えます? コイツ今から黙らせるんで』

 

 

 人体に内包される血管に流れる血の様に広がる無気味な赤い光がピークに達した時、元士郎はエコーの掛かった己の声を腰が抜けて動けないソーナに向かって宣言する。

 

 

『闇血邪剣』

 

 

 暗黒騎士として磨いて獲た奥義のひとつ。

 相手を刺し殺す紅蓮の閃光となり、剣を振り下ろしたと同時にソーナの身を壊そうと放たれ掛けた………その時だった。

 

 

「やめて元士郎。彼女の言ってる事は正論でもあるの。だからアナタが殺してしまったらアナタの立場が悪くなる……だからやめて……」

 

『……』

 

 

 カテレアがソーナと元士郎の間に入り、奥義を繰り出さんとした元士郎を止めた事で、ソーナの命は助かった。

 

 

「…………。でもコイツは許せないっすよ」

 

 

 カテレアに言われたら聞かない訳にはいかないと、即座に鎧を解除した元士郎は、カタカタと震えるソーナを嫌悪した眼差しで見下ろしながら、ハッキリと許せないと言うが、カテレアはそんな彼を優しく何時もの実は初な面も忘れて抱き締め、落ち着かせる。

 

 

「良いのよ。それを覚悟してアナタに付いていこうと決めたのだから。だから大丈夫……」

 

「………」

 

 

 ぎゅっとカテレアが抱く事で元士郎は落ち着きを取り戻す姿を目の前に、恐怖とショックで動けないソーナに急いでリアス達が駆け寄る。

 すると、これまで以上に……いや最早そこら辺に落ちてる小石を見るような目をした元士郎が四人に対して言った。

 

 

「正式にテメー等を黙らせてやるから覚悟しろ」

 

『………』

 

 

 正式に、悪魔のルールに乗っ取って四人を永久に黙らせてやる。そう宣言した元士郎はそのままカテレアの手を握って公園から去る。

 

 それはある意味、元士郎が与えるソーナ達への完全な詰みの前触れでもあった。

 

 

 

 

終わり。

 

 

 




補足

サンプルが一誠達なせいで、着々と真似し始める匙きゅん。
木場きゅんもそうだけど。


ソーナさん達は最早分かってるんだけど、切羽詰まってるせいで後先考えられなくなってます。



その2

地雷踏み踏み完了。

ぶっちゃけ匙きゅんだって言われなくてもわかってる上でカテレアさんに惚れ込んでるので、今更言ったってどうしようもない。


その3
『闇血邪剣』

暗黒騎士となる元士郎が修行の末に会得した奥義のひとつ。

元ネタは……まあ、わかる人はわかるしググれば動画――はムズいが画像は出る。

かっちょいい技。

しかし個人的に好きな技はやはり牙皇降臨。
ありゃ中二という概念をこれでもかと詰め込んでる。

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