生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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純愛と勝ち目なしフラグからの……か?


未来の為への清算
執念の猫姉妹


 その昔、少女は寧ろ人外が連れてきた自分と年の変わらない少年がイマイチ気に入らなかった。

 しかるに、人外と同じ素養を持ち、そして何れはそれを超越する存在へと覚醒するだろうという両親や兄達に迎えられてしまって以上は、無視する訳にもいかなかったので、初めの方の少女は仕方なしに自分の実家に住まわせる事になった少年につっけんど気味に触れる事にした。

 

 

「………」

 

「男の癖に彼女が居ないと何も出来ないんですか? 情けない……」

 

 

 聞けば全てに忘れられ、居場所を奪い取られたというある意味精神的に一番ダメージの大きい仕打ちを受けた結果、そこから引っ張りあげた人外以外には疑心暗鬼な態度を見せてしまうとの事だが、フェニックス家に居着いてからの少年の様子を見れば誰にでも察しがついた。

 

 だからこそフェニックス家の面々は歳の一番近いレイヴェルに触れさせる事でその疑心暗鬼を緩和させようと努めてみたのだが……。

 

 

「嫌です! あんな情けない男と一緒なんて絶対に嫌!」

 

「そういう事は言ってはなりませんよレイヴェル。

あの子にも事情があるのですから」

 

「そうだとしても嫌ですわ!」

 

 

 当初のレイヴェルは、今では考えられない程に少年――一誠が嫌いであり、父や母や兄達からの一誠絡みの頼みを全力で拒否する程だった。

 

 

「自分から心を開こうともしない男に何故こちらが気を使わなければなりませんの!? 私は何を仰られようともお断りです!」

 

「むぅ……」

 

「まあ確かに今の一誠くんは安心院さん以外には例え分身だろうと心を閉ざしているが……」

 

「一応俺達も話し掛けたりしてるが、中々上手くいかなかったぞ」

 

「俺に関しては顔見て逃げられたしな」

 

「難しいですよ、今の彼の心は」

 

 

 断固拒否のレイヴェルの言い分もわからなくも無いので、父や母や兄達は揃って難しい顔をしながら……何とか心を開かせる劇的なナニがないものかと思いつつ、平行して末っ子娘のレイヴェルにも頭を悩ませるのだったとか。

 

 そもそもレイヴェルが気に入らなかった理由は、当時の一誠の壁作りな性格もあったが、そうとなる原因である事件により皮肉な覚醒をしてしまったその力が、安心院なじみの分身として生きる自分以上に安心院なじみに近い事が気にくわなかったのだ。

 

 

「ふん、お父様とお母様とお兄様達からどうしてもと言われたから仕方無く一緒に居てやりますわ」

 

「………」

 

 

 要するに単純に嫉妬なのだが、その嫉妬の理由すら自分で認めたくないレイヴェルは、フェニックス家に連れてこられた時から何時でも浮かべる死んだ魚みたいな目をする――当時はまだ過負荷(マイナス)側面全開の一誠を実家の城の中庭に連れ出しては叩きのめしていた。

 

 

「……ぅ」

 

「これだけやられて反撃も出来ないですか?」

 

「………」

 

「悔しくないのですか!?」

 

「…………」

 

 

 同族達から変わり者だが異常な力を持つ一族として敬遠されているフェニックスの力を思いきりストレートに受け継いでいたレイヴェルは、幼い身でありながら既にその才を覚醒させており、まだまだスキルのスの字も覚醒させたばかりの一誠では到底太刀打ち出来るものでは無く、更に云えば本人のやる気の無さのせいで何時だって叩き潰されては、レイヴェルから挑発されるという公式になっていた。

 

 しかるに一誠はそんなレイヴェルの挑発には何時でと応じる事も無く、心底失望したという眼差しを向けてくるレイヴェルに対して何にも言い返す事もしなかった。

 

 

「この軟弱者! アナタなんかが安心院さんの後継者なんて認められますか!」

 

「…………。そんなのになった覚えはない。

師匠みたいになろうとも思ってない」

 

「ならそのまま朽ち果ててしまいなさい! チヤホヤと優しくして貰えると思ったら大間違いよ!」

 

「………」

 

 

 当時はまだ自分を拾い上げてくれた安心院なじみにしか心の拠り所が無かった一誠は、レイヴェルやフェニックス家をまるで信じられず、何を言われようと悔しさを覚える事も無かった。

 現実からただ逃げたい……精神の全てがそな一点に集中してしまっている当時の一誠には、レイヴェルの言葉はまるで届くことは無かったのだ。

 

 

「おう一誠。釣り行こうぜ釣り」

 

「ほら一誠、お口が汚れてますよ?」

 

「トランプでもするか一誠?」

 

「ゲームしようぜゲーム」

 

「チェスでもするかい?」

 

 

 しかし、レイヴェル以外のフェニックス家達はそんな一誠に対して逆に過保護に接しまくった。

 どんなに嫌がられても、寧ろウザいと思われるだろうレベルで接しまる事で味方であることを分かって貰う為に。

 

 それが項を奏したのか、住み着いてから約1年で一誠はフェニックス家に馴染み始めたのだが……。

 

 

「ふん、私はお父様達とは違いますから」

 

 

 レイヴェルだけは頑なに一誠を毛嫌いした。

 それは、結局の所チヤホヤとされたから心を開き始めたのでは無いかと軽蔑しているのもそうだったが、レイヴェル的にはそれ以上に一誠が弱いのが気に入らなかったのだ。

 

 

「やり返す気位を持った所で所詮はその程度。お話になりませんわね」

 

「……っ」

 

 

 だから一方的に一誠を叩きのめすのは変わらず、この日もレイヴェルは両親や兄達の前で一誠を地面に叩き伏せ、見下す様な言葉をぶつけた。

 

 自分は兄達や両親とは違うんだと明確に分からせるという意味合いもあるので、余計に一誠はボロボロだった。

 

 

「……。ありがと」

 

 

 しかし一誠は徐々に変わり始めていた。

 只叩きのめされるだけでは無く、やり返す事もし始めたし、去っていくレイヴェルに今日も付き合ってくれてありがとうと礼も口にし始めるようにもなった。

 

 

「……ふん」

 

 

 それが劇的な変化の第一歩となる事になるとは、この時誰もが知るよしも無かったが、此処から一誠は確かに前へと進み始めたのだ。

 

 そしてその一歩こそが、一誠の逃げ腰思考で埋め尽くしていた精神を変化させる事になることも……。

 

 

 

 

 

 

「…………ん」

 

 

 お城みたいな建物での一件。

 これがまさか大人の休憩施設とは思わなかった一誠とレイヴェルは、ちょっとした出来事を挟みつつも何とか自重した訳だけど、折角なんで取り敢えず『そういう意味』では無い本当の意味での小休憩をしようと二時間ほどスヤスヤと只眠ってみた。

 

 一糸纏わぬ姿をちょっとした手違いで見てしまい、危うく理性が飛んでしまいそうになったのを何とか押さえ込み、それを落ち着かせる様に眠った訳だが、まさか昔の夢を見る事になるとは……。

 

 

「すー……すー……」

 

「……。あの夢の頃からは思いもしない今だな」

 

 

 隣で眠る……かつて自分に活を入れてくれたツンツン少女の寝顔を見つめながら表情をゆる緩ませた一誠が一人小さく呟きながら、セットされていないレイヴェルの綺麗な金髪越しに頭を撫でる。

 

 

「ん……ぅ……」

 

 

 頭を撫でられたレイヴェルが気持ち良さそうに声を溢す。

 今でこそ好きだ好きよな事を言える仲だが、これが昔だったまず触れただけでビンタでもされかねない。

 先程まで見ていた懐かしい夢を思い返すとエライ進歩というか、レイヴェルに示せて心の底から良かったぜと思う一誠は、現在の時刻を確認しながらレイヴェルを優しく起こす。

 

 

「レイヴェル、起きろ。そろそろ帰ろう」

 

「みゅ……ん、んっ……ふぁ……い、いっせーさま……」

 

 

 レイヴェルの為に強く在り続ける。

 その想いに至れた事を一誠は忘れることはせず、ぽけーっとした眼差しのレイヴェルに笑い掛けるのだった。

 

 

 

「さてと、取り敢えず帰ってからみっちりとおっさんやねーさんや兄貴達に話を聞く必要があるな」

 

「街の住人方とグルだってのは疑いようがありませんものね」

 

「あぁ……まったく、まだそんな歳じゃないというのに」

 

 

 起きて身支度を整え終えた一誠とレイヴェルは、結局そういう意味での休憩には使わなかった部屋をもう一度見渡す。

 ボタン一つで浴槽まる見えな仕掛け。

 回転するベッド。

 そして妙にざわつかせる薄暗い照明。

 どう見ても大人のホテルですありがとうございますなこの場所には二度と来ることは無いと思うと、変に感慨深いものを感じる気がしないでもない――何もしてはいないものの。

 

 

「……。レイヴェル、ちょっと良いか?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

 

 レイヴェルの裸を見てしまってから飛びそうだった理性を押さえつけ、そのまま眠るだけという……誰かが聞いたらヘタレ扱いしてきそうなオチだった訳だが、一誠とて全部が全部それで良いと思っている訳では無く、ほんの少しは残念に思ってはいる。そういう意味で。

 

 

「出る前に一回だけ……」

 

 

 そう思うからこそ、もう来ないだろうこの場所でと一誠は、部屋を出ようと扉の前まで来ていた所で、名を呼ばれて返事をしたレイヴェルと手を繋ぎ、向かい合う様にして彼女を見つめながら繋いでいた手を組み換えて指を絡ませ合いながら反対の腕を腰に回す。

 

 

「あ……」

 

 

 その一誠からの行為が何を意味するか。

 抱き寄せられる様にして身体を密着させられたレイヴェルは、小さく声を洩らしながら先程の時と同じように身体を奥から熱くなっているのを感じながら徐々に顔が近づく一誠に期待するように目を細め……。

 

 

「んっ……」

 

 

 重ね合わせる唇に幸福を感じ、一誠に身も心もただ委ねていく。

 

 

「はっ……ん……!」

 

 

 重ねては一旦離れて見つめ合い、そしてまた重ねる。

 何度も何度も、それしか知らない子供の様に一誠からせがまれるキスを受け止め続けるレイヴェルは下腹部がじんわりと熱を帯びていくのを感じる。

 

 

「レイヴェル……レイヴェル……」

 

「も、ぅ……いっせーさまったら……。

うふふ、でも……レイヴェルは嬉しいですわ」

 

「よ、よくわかんないけど、もう少しだけ……」

 

「ええ、ええ……もっと沢山しましょう? もっともっと……」

 

 

 互いの額をくっつけてから言葉を交わし、また重ねる。

 恐らく此処でレイヴェルが追い込めば、既成事実だろが何だろうが成立可能なのだろうが、今だけはそんな不粋な真似はせず、ただただ求めてくる大好きとなった少年と続けるのだった。

 

 

 ちなみに、建物を出たのはそれから約1時間後だったらしいが、それでも一線を越える事の無かった話しは誰にも関係の無い事だった。

 

 

 

 

 

 先ず最初に一つだけいうと、帰ってくるなり出迎えててきた奴等は全員背負い投げしてやってからこう言ってやった。

 

『お望み通りになれなくてすまなかったな!』

 

 とな。

 レイヴェルも俺と一緒になってやってやった事であるからして、同じ気持ちだったので余計に背負い投げが捗ったぜ。

 

 

「知ってるって事は途中まで見られてたのか?」

 

「そうなりますわね……」

 

 

 しかしながら、あのニヤケ方からするに途中まで見られていたという事になる訳で……。

 全員背負い投げしてやった後部屋に戻った俺とレイヴェルは手持ち無沙汰な気分で何時も寝るベッドに腰掛けつつ、今更ながらめっちゃくちゃ恥ずかしくなってしまっていた。

 加えて、俺とレイヴェルが二人でコソコソしてた事に白音と黒歌が怪しんでる。

 

 

「二人でねぇ?」

 

「何処へ行っていたのやら」

 

 

 じとーっとした目を二人して向けられてしまってるに加えて、先程の事を思い出してしまってるせいで上手いこと言い逃れの言葉がでない。

 いや勿論、あんな場所に居ましたなんて口が裂けても言えないので黙ってるつもりだが、白音も黒歌も何時もなら不敵に言い返す筈のレイヴェルが妙に潮らしくなってるせいかますます怪しんでしまってる。

 

 

「べ、別に私が一誠様と何処でデートしてようが、アナタ方雌猫さん達には関係ありませんわ……」

 

 

 二人に問い詰められても上手く返せず、チラチラと頬を染めながら俺の方を見るレイヴェルがぶっちゃけ可愛くてしかたないのだが……俺、自分でも思うがよくあんな空間内で耐えられたなと思う。

 

 

「ま、まぁ……ほら、久々にレイヴェルと街を散策したくてさ……」

 

「ふーん……私たちはほったらかしで?」

 

「いいなー、レイヴェルは何時も何時もいいなー」

 

「ふ、ふん。雌猫共が入る余地が無いって意味ですよ、察しなさいな」

 

 

 何時もなら『最初からアナタ方がしゃしゃり出てこれる事なんてありえませんね!』とでも言って挑発仕返すレイヴェルなのに、今はただただ受け身でたじたじとしてる。

 

 

「すんすん……石鹸の良い香りがレイヴェルからするんだけど、何時お風呂なんて入ったの? それも外で」

 

「ぎく」

 

「入ってまだ半日も経ってませんが、おかしいですね」

 

 

 加えて鼻の良い二人の問い詰め方が嫌味な程核心めいてるせいで俺まで挙動不審になっちまう。

 ちくしょう、こんな時にアレだけど、あのホテルでの件からレイヴェルが直視出来ない。

 

 

「え、えぇいうるさいうるさい! 一誠様とデートしてたら、知らない建物があって、それが休憩施設と知らずに入っだだけです! 文句でもおありですの!?」

 

「あ、お、おい!」

 

 

 そうこうしている内に堪えられなくなったのか、逆ギレ気味にレイヴェルが食って掛かると、黒歌と白音の表情が面を喰らったかの様にポカンとなってしまう。

 俺も思わず声を出してしまうが、これこそ全てが後の祭りという奴だった。

 

 

「ふーん、休憩施設ね……」

 

「それってラブホ――」

 

「し、知らなかったんだ! 前まであの場所に無かったし……」

 

 

 逆ギレカミングアウトに対して段々と二人の放つ温度が下がっていくのを肌で感じた俺は、レイヴェルに代わって言い訳をしようとするが、白音と黒歌の表情を見るに、多分駄目なんだろうなと悟ってしまう。

 

 とはいえ開き直るには余りにも仲良くなりすぎてしまったし、そもそもそんな真似はしてないにしろ結構グレーゾーン入ってたし、二人は納得しないし……助け船の元士郎や祐斗も居ない。

 結局そのまま二人の機嫌を直す為に出された条件として、四人仲良く一つのお布団でスヤスヤする事になってしまった訳で……。

 

 

「ね、寝るだけだよな? 裸になる理由が不明なんだけどな?」

 

「私、寝るときは全裸派よ?」

 

「実は私も」

 

「ええぃ、一誠様に近寄りすぎですわ!」

 

 

 黒歌が全裸になり、白音が続いて、対抗意識燃やしたらレイヴェルまでも全裸になって一緒のお布団に入り込んだせいで、俺はある意味死にたくなる苦行を味合わされてしまった。

 

 

「こ、この際だから言うが……俺はレイヴェルの事が――あへぇぇぇ……!?」

 

「その先は聞きたくないよイッセー」

 

「もし言ったら、もう私も姉様も生きる意味が無くなりますし、例えそうだとしても……私達は死んでも引きません」

 

 

 抱き付く二人に動揺してしまう俺も……ちくしょう。

 

 

「ちくしょう、これじゃあ『兄貴様。』と変わらないじゃないか……」

 

「違います。彼の場合ならこの時点で私達の事を襲います」

 

「葛藤している時点で違うよ」

 

「ええ、あんな分かりやすいゲスな視線だけしか寄越してくるバカとは違います」

 

「うぅ……」

 

 

 

 

 イッセーがレイヴェルを一番好きなんて、私も白音も見てればわかる。

 けれど、それでも私達は諦めきれない。

 

 例えそれが偶々で、何かの次いでだったとしても助けてくれた事には変わり無いんだもん。

 

 

「あは、イッセーがこんなに近いせいでびしょびしょになりそうだにゃ」

 

「有り体に云えば、ここがムズムズします」

 

 

 私と姉様が諦めるとでも? レイヴェルさんが大好きな事なんてわかってるんですよ先輩。

 

 

「でもイッセーはダメって言うだろうし……」

 

「ええ、でもムズムズしますし……」

 

「……え?」

 

 

 分かってても諦められない。

 諦めきれない。

 はしたないと思われても……それでも離れたくないんです。

 

 

「ちょ、な、なにを……やんっ!?」

 

 

 好き。大好き。どうしようもない程に好きすぎる。

 それが私と姉様の一誠先輩への気持ち。

 それが叶わないものなのだとしたら、その元であるレイヴェルさんに妥協の心を持って貰う他無い。

 だからこそ、わざと全裸になって挑発して乗せてやったレイヴェルさんを私と姉様の二人掛かりで押さえ付けてやり、一誠先輩の目の前で……。

 

 

「ひゃん!? し、しろ……ね……さん! な、なにを……っ」

 

「ちゅーちゅー」

 

「あっは♪ レイヴェルってば顔真っ赤にして可愛いにゃん」

 

「あ、なたも、何を……して……ひぅっ!」

 

「っ!? な、な……!?」

 

 

 取り敢えずレイヴェルさんをひーひー言わしたら、先輩は我慢できますか?

 

 

「い、いっせーしゃま……た、たしゅけてぇ……!」

 

「あ、あわわ……! や、やめろ二人とも! な、何かもう俺はどうしたら良いんだよ!?」

 

「? そのまま私とレイヴェルと白音をセットで食べてしまえば良いと思うけど?」

 

「寧ろ是非お願いします」

 

「で、出来るかよ! そ、そんなの……俺に出来るわけ無いだろ!」

 

 

 なんて言ってますけど……ふふ、先輩の目が私達から離れてないのはお見通しですよ。

 

 

「あ、そ……なら三人で気持ちよくなっちゃうしか無いみたいよレイヴェル?」

 

「ふふ、そんな趣味は無いですけど、今のレイヴェルさんは可愛いです」

 

「あ、あうぅ……こ、こんな雌猫にぃ……」

 

「うぐ、ぐぐぐっ!」

 

 

 さぁ……さぁ!!

 

 

「せ、責任取れる様になってからじゃねーとダメだ!!」

 

 

 布団から飛び出して部屋の隅まで逃げた先輩は、自分に言い聞かせる様にしてそう叫ぶと、そのまま部屋を飛び出してしまった。

 

 

「……よし、効き目バッチリですよ姉様」

 

「どうせなら今すぐが良かったけどねー……」

 

「こ、この雌猫……お、覚えてなさい――あひ!?」

 

「ま、それなら今の内にレイヴェルをいじめてしまおっか?」

 

「ええ……仕方無いですよね、レイヴェルさん?」

 

「や、やめなさい! わ、私のを吸ってもで、出ない……ひぅぅ!」

 

 

 仕方無いのでレイヴェルさんを味方に引きずり込む事にしましょうか。

 

 

 

 

 と、こうしてドギマギする日は過ぎていった訳だが、全てに決着を着けるのは中々骨が折れる。

 

 

「来たか」

 

 

 しかしやはりケジメは付けなければならない。

 

 

 完全に。

 

 

「廃神モードを維持したまま、俺達はこれから兵藤誠八共との清算を行う。

全てを終わらせてスッキリする為にな」

 

 

 完全なる決別をする為。

 そして何よりも俺達に付いて回る遺恨を断ち切る為、歯車が狂った元凶とのケリを着ける。

 元士郎が暗黒騎士となった日から廃神モードを維持したままコントロールの訓練を続けモノにした今なら不可能では無い。

 

 だから俺は……いや、俺達はやる。

 元主、元仲間が堕ちた暗闇の穴倉に落ちた連中への清算を。

 

 

「さぁ……行くぞ。

準備はサーゼクス・ルシファーが済ませている」

 

『了解』

 

 

 因縁を終わらせる為に……な。

 

 

「準備完了だ。

後数分で彼等は穴倉から強制的に此方に転移される」

 

「うむ」

 

「また彼等を視界に入れる事になるとは……」

 

 

 廃神モードを維持――いや、|幻実逃否の効力と精度を更に上げる訓練を完了させてから数日。

 

 サーゼクス・ルシファーと交わし、先のシトリー夫婦の件により決意した完全なる決着――否、関わりの完璧なる断ち切りをする為、俺達はルシファー領土の都市にあるサーゼクス・ルシファー管轄の魔王城にやって来ている。

 

 

「この人だかりならぬ悪魔だかりは一体何だ?」

 

 

 理由は何度も述べた通り、最下層の穴倉送りにされた兵藤誠八とその信者共との関わりを完全に断ち切る為なのだが、どういう訳かこの状況をこの前の会合の際目にした悪魔達が大ホールの真ん中に居る俺達を高い席から見下ろしているのだ。

 エシルねーさんとシュラウドのおっさんならまだしも、何故彼等までもがこんな茶番を見ているのか……理解出来ずに首を傾げる俺に、サーゼクス・ルシファーは苦笑いを浮かべる。

 

 

「見てもらった方が何かと都合が良いと思って、勝手ながら僕が手配したんだよ」

 

 

 つまり見ている連中全てが今回の証人……という事らしく、よくよく周りを見渡してみるとセラフォルー・レヴィアタンに連れられて義手と義足を付けた車椅子姿のシトリー夫婦やら、共に鍛練をする様になったサイラオーグ・バアルやら……例の変態であるディオドラ・アスタロトの姿も見える。

 更には、 サーゼクス・ルシファーと同じ紅蓮の髪をした悪魔とグレモリー元三年に似た悪魔も……。

 

 

「これだけの面前だ。

彼等のした事が如何に馬鹿馬鹿しく、ふざけていたのかを理解してもらえるだろう?」

 

「………なるほどな」

 

 

 要するに公開処刑にするらしい。

 わざわざ晒し者にするのは趣味じゃないが、さっさと終わらせることが出来るのであればぶっちゃけ何でも構わん。

 

 

「久し振りだな兵藤誠八。貴様の人生をそっくりそのまま返しに来たぞ」

 

 

 清算が終わった後、奴等がどうなろうとも知った事では無いんだ。

 だろ?

 

 

「て、め……ぇ……!」

 

「ふっ、相変わらず俺に対して憎悪をたぎらせている様で安心だよ」

 

 

 兵藤誠八という名前すら嘘である、どこぞの誰かさん?




補足

レイヴェルたん、猫姉妹にぺろぺろされまくるのだったの巻

しかたないね、黒猫ねーさんチートやし、白猫妹ちゃんも進化したし、二人掛かりじゃヘロヘロよ。

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