※色々と手を加えました
所謂お尋ね者コカビエルが三大勢力会談の場に来た理由は、その場に出席していた一誠とその仲間達に対して『俺はこの通りもう復活したんだぞ』とアピールする為と、サーゼクス・アザゼル・ミカエルから敵認定して貰う為だった。
元々コカビエルの目的である戦争そのものというのはブラフであり、戦争をする事で今も何処かで気儘にフラフラしてるだろう安心院なじみを引きずり出すのが本来の目的だ。
しかし、その安心院なじみを引きずり出す確率が最も高い人間……一誠との出会いと戦いが戦争という考えを変化させたのは云うまでも無く、兵藤一誠に勝つ――若しくは殺せば安心院なじみは必ず現れる。
だが自分の予想を遥かに越えた次元の強さを人間ながらに体得していた一誠に膝を付かせるのは容易ではないのも事実だからこそ、今のコカビエルは三大勢力のトップ達との殺し合いを経て更なる次元への進化を望んでいた。
が、しかし……。
「コカビエル! はっはっはっ、中々隅に置けないじゃないかコカビエル! 良いじゃないか良いじゃないか! 堕天使と天使の仲を取り持てる絶好のチャンスだよ! 僕はキミとガブリエルの仲を応援するぜ!」
「…………。何だお前、性格が変だぞ」
「急に満面の笑みを浮かべて気味が悪いな。悪魔にとっちゃ危機感を覚える組み合わせのはずなのに」
特に……特に! サーゼクス・ルシファーが妙に嬉しそうな顔で自分とガブリエルがどうのこうのと宣ってる事に違和感を感じてやまない。
更に言えば自分という裏切り者および犯罪者がこうして姿を見せれば、てっきり殺しに来るのかと思っていたアザゼルとミカエルも生ぬるい視線を向けてくるだけでなにもしてこない。
殺るか殺られるか、闘争と安心院なじみ越えが生き甲斐ともいえるコカビエルにしてみれば、さっきから顔を真っ赤にしつつ表情がコロコロと変化するガブリエルを含めて訳が分からなかった。
「おい、今になって言うのもアレだが、俺が居るんだぞ? 殺そうとは思わんのか?」
「あ? 無茶言ってんじゃねーよ。お前を取っ捕まえてやりたいのは山々だが、それが無理な事ぐらい日和見主義の俺でも解ってるっつーの。
第一オメーだって闘うつもりで来た訳じゃねーだろ?」
「ぬ……」
ひらひらと手を振りながらいい加減な口調で答えるアザゼルにコカビエルは言葉に詰まった。
確かに挨拶のつもりで来たと言った言葉に嘘は無かったからだ。
「フッ」
「む、何を笑ってる兵藤一誠?」
「ふふ、いや別に?」
戦意を見せないアザゼル達にちょっとヤキモキした気分になるコカビエルに一誠もまたクスクスと笑っているだけ。
微妙に居たたまれない気分にコカビエルはなるのだった。
「コカビエルが来たのは驚きましたが、寧ろ探す手間な省けました」
そんはコカビエルに、部下の気持ちを間近で見せつけられ続けていたミカエルはテンパってて訳が解らなくなっているガブリエルを流し目で見ながらコカビエルに生ぬるい笑みを見せる。
「随分昔にガブリエルへちょっかいを掛けたせいで、ガブリエルがこんな事になってます。故にさっさと責任を取って貰いたい」
「…………は?」
「み、ミカエルさま!?」
そして小細工無しにテンパったガブリエルの代わりにぶっちゃけた。
「責任だと? 確かに前にこの女とは戦ったが……それが何だというの――――ん!?」
ミカエルの変な目にちょっとだけ居心地の悪い気分になるコカビエルは、チラチラと此方を見てくるガブリエルへ視線を移すと、何かに気付いた様に鼻をヒクつかせた。
「む……むっ!」
それは一種の驚愕――というべきなのか。
チラチラと自分を見てくるガブリエルと微妙に距離が近いままだったお陰とも云うべきなのか……。
とにかくコカビエルはその気付きが本当なのかという確証を得る為に、一切の下心を抜きにしての行動を取ったのだ。
「ちょっとお前……まさか……む……」
思えば気付いたのは兵藤一誠との戦闘と敗北を経て更なる覚醒を遂げた時からだったか。
ある時から隠れ家でまったりしている度に感じる視線と、眠りから覚めたときに感じた知らない匂い。
香水とは違う――なんというか不愉快では無い心を落ち着かせる甘ったるい匂い。
「ふぇ!?」
その匂いが今日は一段と強くする。
今になってそれに気付かされたのと同時に、その匂いがさっきから自分を見ている天使の女から強く感じる。
だからそれを確かめる為に、下心なぞは一切無しにガブリエルの肩を掴んでから首筋に顔を近付けたコカビエルは、下心が無いゆえに三大勢力トップや一誠達がポカンと口を半開きにしながら見ている中を大胆に確かめたのだ。
「すんすん……。っ、や、やはり貴様だったのか!? こ、この匂い……最近になって感じるようになったこれの元はお前だったのか!」
ガブリエルの匂いと自分が最近感じるようになった匂いがリンクするかを……モロに大胆に。
「にゃ、にゃにを!?」
肩を掴まれた時点で、全身に電撃が走った様な衝撃を感じてしまったガブリエルが呂律の回らない舌ですんすんやってるコカビエルに声を張り上げた。
だがコカビエルはそんな事なぞ知らんとばかりに驚きに目を見開いてガブリエルを見つめると、やがてその表情を悪人顔全開に歪めて大笑いし始めた。
「くっ、クハハハハハ!! やはり俺の予想は大当たりだったぞガブリエル! 貴様は俺を殺そうとは思えば何時でも殺せたんだな!? 良いぞ……素晴らしい! 貴様はやはり良い女で間違いなかったぁ!!」
「………………え?」
『………………』
気配すら悟られずに自分の寝首を何時でも掻ける。
それはつまりそれだけ実力があるという事であると、戦闘バカらしい判断を下したコカビエルは、ポカンとしているガブリエルに笑いながら続ける。
「貴様とも戦いたい……。俺を殺す領域まで上り詰めたともなればさぞ素晴らしい戦いになるだろう……クックックッ!」
単にストーカーされていただけだった……とは何と無く言い出しにくくなってしまった空気にミカエルは『この男は……』と額に手を置き、アザゼルは『やっぱバカだ……』と呆れる。
サーゼクスは舌打ちを、セラフォルーと黒歌は……
「あれ? 魔王もそうだけど、あの天使も何と無く同類の匂いがするにゃん」
「キミもそう思った?
実は私もガブリエルちゃんに同じ空気を感じたんだ。いやー流石私のライバルだね!」
ガブリエルから自分と同じ匂いを嗅ぎ付けた。
それはつまりストーカーの加害者的な意味合いというべきか……。
「…………。まさかとは思うが、あの天使はコカビエルの私物を盗んでるのか?」
「それとも盗撮してるのか? おいおいおいおい、天使じゃねーだろそれ」
主な被害者はコカビエルに対して微妙に同情してしまったのは多分仕方の無い話なのかもしれない。
「て、天使様がス、ストーカー……う、うーん……」
「あぁっ!? し、しっかりしてゼノヴィアさん!!」
特に常識人にしてみればショックの事この上ない話であり気絶してしまうのもまた仕方の無い話なのかもしれない。
まさかガブリエルちゃんがあのコカビエルとねー? いやーうん分かんないものだね世の中って。
あ、でも私もガブリエルちゃんの事は言えないし、今度どうやったら上手いこと近くで見つめてられるか教えて貰おうかな?
……………。というのは今は無しにしよう。
コカビエルが来たせいで忘れがちになりつつあるけど、さやっと兵藤誠八に正式な罰を下せた事について――その、元士郎くんが一緒に罰を受けたソーナちゃんに複雑な気持ちを持ってるのは殆ど確実なんだもんね。
「あ、兵藤誠八? ………………あぁ、セラフォルー・レヴィアタンとサーゼクス・ルシファーの妹とその下僕どもと宜しくやってたあの赤龍帝か。
なんだ、結局抗う事も出来ずに終わったのというのか――最後までしょうもない餓鬼だ」
コカビエルは皮肉っぽく笑いながら元凶の男を嘲笑っていた。
そういえばコカビエル達があの赤龍帝の男を捻り潰したんだっけ……。
「兄貴様について―――いや正確には兄貴様の取り巻きについてだが、後日個人的に言っておきたい事がある。
サーゼクス・ルシファーよ、時間を取ってくれるだろうか?」
「? 別に構わないけど、何を言うつもりだい? 十中八九恨み言を言われるだけだと思うけど……」
「それを承知でだ……。会うのはこれで最後にするつもりだし、最後に一言だけ……な」
コカビエルを倒した一誠って子が元士郎くんを一瞬見ながら意味深に物を言っている。
何を言うつもりなんだろう? ソーナちゃんは今でも私にとって変わることの無い妹だけど、同時に救えない所まで浸かっちゃってるのが見て解るから、何を言ってもあの子達はあの男にこだわり続けるだろう。
「まあ、キミがそうしたないのなら別に良いけど……」
「感謝する」
「……」
元士郎くんも小さく『へ、二度とツラ見ずに済みそうだぜ』なんて清々したって言い方をしてるけど、本音はまだ少し複雑だと思う。
「元士郎くん……」
「……。なんすか?」
私に出来ることは限られてる。コカビエルが来たゴタゴタを利用してちゃっかり元士郎くんの隣に座った私は、こうしてコカビエル混じりで続く話し合いの最中、小声で話し掛けるしかできない。
それがまた悔しい。
ソーナちゃんを想ってくれていた子のまだ残る傷を前に私は無力。
それで何が魔王なのだろうか……。
それで何がソーナちゃんの姉なのだろうか。
「元士郎くんの事……本気で好きになったって言ったら――怒る?」
「は?」
でも放っておけない。
私に対して遠慮しないで物が言える元士郎くんが放っておけない。
最初はソーナちゃんの事で引け目を感じてたけど、今は嫌な女かもしれないけど、元士郎くんが――
「元士郎くんの事を考えると、想うと、写真を見てるとお腹がきゅんきゅんして凄い事になっちゃうの。だからその、私の事をめちゃめちゃに――」
「台無しじゃねーか!?
ちょっとシリアスだった空気を返せ!!」
好き。
これは本気の本気だよ。
「お、おいどうした元士郎?」
「っ――あ、い、いやっ……!」
「あ、何でもないよ。ちょっと元士郎くんにめちゃめちゃにして欲しいって頼んで――」
「シャラァァァップ!!!」
ソーナちゃん。
ソーナちゃんは兵藤誠八に溺れた――それはもう否定しないよ。
だってお姉ちゃんも……ふふ。
「ガブリエルちゃんじゃないけど、子供は沢山ほしーな♪」
「るせっ!!」
元士郎くんに溺れちゃったもん。
だからさ、誰にも邪魔はさせないし、邪魔をするなら――
「っ?」
「む?」
「この感覚……」
「っ!? 今のはギャスパーの! それに急に外から凄い数の気配が……!」
誰だろうと戦って……勝ち取る。
時間を止めようとも、どこかの誰かが無粋に現れようとも……。
「失礼……三大勢力トップの皆さん」
「カテレア・レヴィアタン?」
私は走るだけ。
正直……しょーじきな所、私は貧乏くじを引かされたと後悔だらけだ。
「旧レヴィアタンが何か用かい? 見ての通り僕達は忙しいんだ。遊んで欲しいなら後にしてくれ」
「あ、カテレアちゃんだ」
「旧魔王派ってか? 何だ、とっくに滅んでると思ってたんだがな」
「我々には何の関係の無い話ですね」
「ギャスパーを助けないと! アイツまだコミュ障だし……」
「落ち着け元士郎!
まずは落ち着いてウラディ1年に電話をしてだな……」
私は自殺願望者等では無い。
けれど私が身を置いている立場がそれを許さず、こんな魑魅魍魎だらけの化物が集まるど真中へ逝かなければならず、仕方無く鏡で散々練習した前口上と不敵な笑みを浮かべながら堂々と登場したのに……。
「……ぐ」
誰もが私を無視してる。
悪魔の域を完全に逸脱している化物、サーゼクス。
私から実力という名のパワーでレヴィアタンを奪った憎きセラフォルー
堕天使総督に天使のトップ―――そして居て欲しくなかった最強最悪の堕天使・コカビエル。
誰も彼も……セラフォルーですら『あ、居たんだ?』みたいないい加減すぎる反応で、泣きそうになる。
「わ、我々旧魔王派は
だけど私はレヴィアタン。
真にその名を受け継ぐ悪魔。
だからめげずに、負けずにこの余裕だらけで腹の立つお馬鹿さん達に我々旧魔王派が、世界最強と吟われる龍が組織した
ふふん、こうすれば流石のサーゼクスやセラフォルーも顔色を――
「ふーん、あっそ精々頑張ってね」
「無限の龍神かぁ……何だか凄そうだけどカテレアちゃんなら大丈夫だよきっと!」
変えず。
二人して私の予想を激しく裏切るような軽い反応だった。
「おいおいサーゼクス。オメーん所の不始末なのにそんないい加減な反応すんなよ。禍の団の戦力増えたじゃねーか」
「あー大丈夫、何かあったら今度は慈悲無しで捻り潰すから。
元々この後ろでスカしてる女を人質として寄越して来たから消さずに居ただけだし」
「……。グレイフィアの事を言ってるのか……? お前等喧嘩でもしたのか?」
「いえいえアザゼル殿。私と彼の仲はもうそれはそれは……ふふ、昨晩も双子の子が欲しくて激しく――」
「妄言だアザゼル、真に受けるなよ?」
「お、おう……」
「う……」
私は……というより旧魔王派は、あらゆる意味で現魔王達を苦手としている。
どういう訳かここ数百年で数は減ってるのに、個々の戦力が神話クラスにまでになっている三大勢力と関わりたくは無かったというべきなのか。
でもやらなければならない。
この世界を再構築するには邪魔な存在なのだから……。
でも……。
「そんな事よりもだ、僕としては和平の意味でコカビエルとガブリエルの仲を推奨したいね……いや推すね!」
「お前はさっきから何なんだ?
ガブリエル程の女が俺と仲良くなる訳が無いだろ……なぁ?」
「そ、そんなことは……。い、いえ……どうしてもというなら、元気な男の子と女の子を一人ずつ産むで妥協して差し上げますよ!」
「いやそれゴールだろ。
何だお前……俺の事好きなのか?」
「なっ!? そ、そんなことにゃい!! う、うにゅぼれないでくだちゃい!!」
「呂律が回ってませんよガブリエル……」
皆が私を無視してる。
「うぅ……きゅ、急に変な人達が沢山現れて……あ、ありがとうございます皆さん……。怖かったです元士郎せんぱい……」
「うむ、良かったよ。フリード・セルゼンと見知らぬ少女がはりきって変な集団を薙ぎ倒してたお陰ですんなり救出完了だ」
「まったくだぜ……待たせて悪かったなギャスパー」
「ねぇねぇ、元士郎くんに抱き着いてる意味をおねーさんに教えてほしーな? 羨ましいなぁ~?」
セラフォルーも、よく解らない子供集団ですら私を見ない。
「む、無視しないでください……! わ、私がかの有名なレヴィアタンの血族者のカテレア・レヴィアタンです! だから無視をしない……で……グスッ……ふぇぇぇ……!」
真なるレヴィアタンで私を無視するなんて……こんなの、こんなことって……うー!
「つーかオイ! そんな事よりそこの人が言ったことについてもっと何かあんだろ!?」
うー………うー?
「急に何ですか匙先輩?」
「いや、あそこのお偉方が完全にあの人をシカトしてるから……つい」
でもそんな状況の中、セラフォルーにベタベタされている子供集団の中の一人の男子が、私にかなり同情的な目をしており、もう一人茶髪の男子もコクコクと頷いていた。
「確かにな……。旧魔王派というのはよく解らんが、変な集団を連れて現れたのだから無視は出来んよな―――フリード・セルゼンと謎の少女になぎ倒されてはいたが」
「あれ、前に話しませんでした? 現魔王様が魔王になる前に君臨していた先代魔王の生き残りの集団ですよ」
「ほう」
よく見たら一人だけ只の人間の少年に……う、フェニックスの令嬢が我等の事を話している。
フェニックス……魔王では無いが先代魔王達が君臨していた頃から『変な一族』で有名で、現当主夫婦もまたサーゼクスと平行した化物。
いや、そんな事はどうでも良い……。
「ウチのフリードとルフェイから連絡だ。『襲撃者は滞り無く全滅させた』とよ。
どうやら途中で白龍皇の小僧と組んでやったらしい……」
「白夜騎士ってのになった小僧とヴァーリが?
あの野郎、会談の前にどっか行ったと思ったら遊んでやがったのか……」
「白龍皇……。
思い出しましたが、アザゼルは白龍皇を抱えてましたね」
「単なる研究目的と……ま、色々あってな」
「じゃあ取り敢えずカテレア達は僕達に反逆するんだね……ってカテレア?」
完全に嘗められてた私を普通に認識していたばかりか、あの化物トップ共に私の事をちゃんと注目しろと怯えること無く言ったこの少年には感謝して……。
「なにカテレアちゃん? 私と戦う――」
「邪魔」
感謝して……。
「な、何だよ?」
感謝して……。
「お、俺を殺すつもりか!? よ、よーし……俺だって強くなったんだ、簡単には――」
「好きーっ!!!!」
「わぷっ!?」
「うわ」
「わーぉ……」
「だいたーんだにゃん」
感極まってしまった私は悪くないです。
「おい、カテレア・レヴィアタンが転生悪魔の小僧に思っくそ抱き着いてるんだが」
「ほう、セラフォルー・レヴィアタンの時もそうだったが、あの小僧……女魔王に好かれる体質でも持ってるのか?」
後ろでサーゼクス達が変な目で見てる気がするけど、散々無視をしてくれた連中なんて知ったことではない。
「な、な、なんだ!? うぶぶぶ!?」
「好き、好き! 好きー!!」
「あわわわ、元士郎先輩がぁ……!」
「………………。うん、カテレアちゃんを潰そう」
この少年に感謝してあげてる最中なのだから。
「ちょ、ちょっとアンタ!? な、何なんだよ!? す、すげー良い匂いが――じゃなくて!」
「っ……い、いや……そ、その……ほ、本物のレヴィアタンである私からの施しを……」
「は、はぁ?」
「う、うるさい! べ、別に誰も彼もが私を無視してるのに、アナタだけが無視しないでくれた事が嬉しかった訳じゃありませんからねっ!?」
「じゃあ離れなよカテレアちゃん。元士郎くんが困ってるんだけど?」
「ふ、ふん! 私からレヴィアタンを奪った貴女の指図なんて嫌だわ! 感謝してる邪魔をしないでちょうだい」
セラフォルーとハーフ吸血鬼が変な目で見てきてるけど、私は指図なんて受けないとばかりに少年をより強く抱き締めておく。
転生悪魔とはいえ、中々デキた少年なのだ……戦力保持という意味で此方側に引き込むのも悪くない。
「うー……。(む、むにゅむにゅしてる……良い匂いがする……。何が何だが訳がわからねぇよ)」
補足
コカビーさん、若干ズレてるけどやっと気付く。
その際、ガブリーさんを引き寄せてくんかくんかしたけどな。
その2
セラフォルーさんはセラフォルーさんで覚悟注入。
けど変態指数もインフレ必至。
その3
現魔王(サーゼクス)一人の戦力をかつて思い知らされた故にちょっと引け腰なカテレアさん。
そして何処かぽんこつ臭がするのはご愛敬。
が、これはカテレアさんが旧魔王血族でその派閥に所属しているからであり、殆ど生け贄に捧げられる形で嫌々やらされてるだけです。
まあ、他の旧魔王派はやる気満々な為に割りを食わされた訳で……。
そんな訳で言われた通り襲撃したけど、三大勢力のトップ陣にはシカトされ続け、戦力は外を徘徊してた少年少女に全滅させられて泣きそうになっていた所を匙きゅんにフォローされたお陰であんな事に……。
オマケ
襲撃者の末路。
旧魔王派……いや禍の団の構成員は結構な後悔をしていた。
『ヒャハー!!! ルフェイたんのアイデアと協力でゲッツした新戦力、その名も魔導馬・疾風!!
その試運転の餌食になりそうなバカばっかで捗るぜぇぇっ!!』
「えへへ、フリード様のお役に立てて嬉しいです……。
そ、それに一緒に乗せて貰えてこんなに近くに……あぁ、身体が熱くて変な気持ちに……あっは♪」
純白の鎧を装備した変な奴が、純白装甲に覆われた巨馬を乗りこなしながら次々と自分達を巨大な槍で薙ぎ倒しているのだから……堪ったものではなかった。
「アイツ……俺と色が被ってるし強い。クックックッ……やはり面白い!」
終わり