生徒会長イッセーと鳥さんと猫   作:超人類DX

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おい、聖剣壊しはどうしたんだよ。

という突っ込みを覚悟で駄弁り回にしました。

最後らへんは最早見苦しいぜ。


しかし、初めて1話で60近くの感想を貰えるなんて……嬉しくてバク転しちゃったよ!


初恋と失恋と……過負荷

 聖剣……つまりエクスカリバー……つまりRPGゲーム辺りによく目にする名称。

 うむ、正直俺は聖剣とやらをそんな認識しかしてない。

 というか、そもそも無神論者といっても過言じゃない。

 

 だから別に聖剣が壊されてしまおうがどうとも思わん。

 死んだ神の残した遺物程度なんだからな、あっても無くても問題ないだろ……無くて困ったことなんて一度もないし。

 

 

「で、聖剣というのはどんな剣なんだ? 光ってるのか?」

 

 

 友の仕返しに協力――という建前の所詮は自己満足でしか無い行為を決行する為、取り敢えず奴等――つまり教会のお使いと、その話を受けたらしいグレモリー3年達よりも早く一つでも良いから聖剣を確保しようと、匙同級生とレイヴェルとで外に出てった木場同級生と白音を探してる。

 

 聖剣計画の生き残り。

 それが木場同級生の過去らしく、正直聞いた話はかなり悲惨というか……神を信仰しとる連中も結局は狂気の面がちゃんとあることに俺は、一種のシラケを感じたもんだが、そのツケは木場同級生によって払わせるべきだ。

 

 そもそも、自分と自分の大切な人達の命を弄ばれ、あげくに用済みだから殺されただと?

  神を信仰してれば何でも許されるとでも思った馬鹿なのか……とにかく信仰心が無い無関係な俺でも平等的とは思えん。

 

 人の命を弄んだその報いは必ず返ってくる……俺はそう思っている。

 

 

「文献でしか見たことが無いので、何とも言えませんが、過去の大戦でエクスカリバーそのものは破壊されてます。

なので、今の聖剣というものはその破壊された聖剣の欠片を寄せ集め、錬金術で復元した『聖剣擬き』と言うべきですわね。

七本に分離してますし」

 

「ほほぅ……」

 

「俺達悪魔にとっては『毒』でしかない。

だから多分、近付いたら嫌悪感かなんかでサーチが出来そうな気がするぜ」

 

「なるほど……」

 

 

 無知ってのは恥ずかしいものだ。

 十年以上も純血悪魔であるフェニックス家の皆の世話になっておきながら、三大勢力の事情とは殆どわからん。

 

 言い訳してるつもりは無いが、俺にとっての悪魔はレイヴェル達フェニックス家であり、その他の悪魔は只の悪魔でしか無く、天界の連中だの堕天使の連中なぞにはまるで興味がなかった。

 なじみも……

 

 

『知って得する事なんてあんま無いな。

彼等が僕達の正体を知った所でどうこうする気もされるつもりもねーし』

 

 

 なんて俺が小さい時に言ってたので、俺も自然と彼等の事について知ろうとは思わなかった。

 知らないで損した事なんて一度も無かったからな。

 

 

「というかイッセーよ。お前、フェニックスさんと親しいのに全然『そこら辺』の事については知らねーよな?」

 

「あぁ、レイヴェルやフェニックスの人達以外の事を知らんでも損なんかしなかったからな。

ただ、今はその無知さに恥ずかしさを覚えているぞ」

 

「大丈夫ですわ。要するに木場さんの悲願のお手伝いをする……足りないところは私達がサポートする。

何時も生徒会でのお仕事と何ら変わりはありませんわ」

 

 

 木場同級生と白音を探しつつ、七本に別れた聖剣についての情報を頭に叩き込む。

 どうも聖なる力を放ってる……という以外は様々な形をしているとの事らしく、色々と鈍い俺にはその聖なる力とやらを感じられるのかが地味に不安なのだが、その聖剣の天敵ともいえるレイヴェルや匙同級生が居るので……まあ、言葉は悪いが『レーダー代わり』としてはこれ以上無いアレだというのは分かったので、取り敢えず今は木場同級生と白音と合流しようとテクテク歩く。

 

 

「おぅ、木場同級生に白音。

やはり聖剣を探そうとしていたか」

 

「あ、イッセーくん」

 

 

 結果、二人は直ぐに見つけられた。

 二人が居そうな訳がありそうなスポット=持ち込んだ聖剣が隠してありそうな場所を予想して先回りをしてみたら見事に当たった。

 

 こうして、俺を見るなり驚いた……様子は特に見られず、逆にちょっと笑ってる木場同級生と白音と無事に合流できた俺達は、取り敢えず先ずはと近くの喫茶店でこれからの事について話し合う事にした。

 

 

「で、グレモリー3年達の様子はどうだったんだ? それに、事務所で来賓手続きもせんで入り込んだ教会の使いとやらの事も……」

 

「うん、例の如くじゃないけど……どうもその二人いた教会の使いの人の片方が兵藤くんと幼馴染みだったらしく、話し合いそっちのけで取り合いのスタートが……」

 

「幼馴染み……?」

 

 

 個人営業の喫茶店故に、物凄い静かで落ち着ける良い場所に腰を下ろした俺達は、其々飲み物と軽食を片手に先ずはグレモリー3年のもとにやって来たとされる教会側の使いとの話で獲た情報について聞き出そうとしたのだが――

 

 

「はい……紫藤イリナと名乗ってましたが、先輩は覚えがありますか? かなり手遅れな――」

 

「っ!? 紫藤……イリナだと……!?」

 

 

 木場同級生に続くように、白音が口にした兄貴の幼馴染みの名前に、俺は一瞬頭が真っ黒になった。

 

 

「あ、どうしたイッセー? 聞き覚えがあるのか?」

 

「? そのようなお方のお名前……一誠様から聞いた覚えがありませんが……」

 

「………………………」

 

「イッセーくん?」

 

「一誠先輩?」

 

 

 紫藤イリナという名前を聞いた途端、変な汗と激しい動悸に苛まれる俺の様子があからさまなのか、全員が俺を見ている。

 

 紫藤イリナ……そうか、紫藤イリナ……か。

 俺が『逃げ出す』事を決心する事を決定付けた相手……。

 

 

「所詮、青かったガキの頃の昔話なんだが……」

 

『……………』

 

 

 まさか此処に来て忘れたい過去の思い出の名前を聞かされるとはな……とか、深呼吸して動悸を落ち着かせる。

 名前を聞いた途端、あからさまに顔に出してしまったせいで誤魔化せないし、コイツ等に隠し事はしたくはない。

 だから俺は……レイヴェルにも黙っていた忌まわしい記憶の一つである紫藤イリナについて――――

 

 

 

 

 

「……。…………。……………………………。まあ、アレだ……ガキの頃の初恋の人……みたいな?」

 

 

 暴露した。

 

 

「は、初恋?」

 

「お、おぉぅ……」

 

「な、何ですかそれは? き、聞いてないですわよ……!」

 

「あんなのがですか? 兵藤先輩にずっぷり浸かってた人が……。

なんですかこの負けた気分は……」

 

 

 まさかこんな事を言われるとは思ってなかったのか、木場と匙同級生は目を丸くしながら持ってたティーカップを落としそうになり、レイヴェルと白音は雷に撃たれた様な顔でショックを受けていた。

 

 

「昔の話だ……今はどうとも思ってない。『セーヤくんじゃないのに私に触らないで!!』と思いきりビンタされてフラれたからな………ふっ」

 

「「あ゛?」」

 

「あ、あらー……」

 

「う、うわぁ……前の俺より惨めじゃねーか」

 

 

 忘れたくても忘れられない大きな理由であり、今でもハッキリその時受けたビンタの痛みを思い出すかのように、右頬を擦りながら変に笑ってしまう俺に、聞いていたレイヴェルと白音が、女の子が出しちゃいけない様な怖い声と殺気を放ち、木場同級――――もう良いや、木場と匙は心底同情するような表情だ。

 特に匙に関してはデジャブでもあるんだろう……物凄い苦い表情だ……今飲んでるブラックコーヒーみたいにな。

 

 

「それまでは仲が良かったつもりだった。

男みたいな格好だったが、俺は不思議と彼女が女の子だと見抜けたし、彼女も嬉しそうに教えてくれた……と思うし思いたい。

けどまあ……アレだ、例の如く『兄貴』が出てきてからは全部変わった挙げ句、俺の目の前で………クククク!」

 

 

 聖剣情報についてが、いつの間にか俺の大失恋話に摩り変わってる。

 しかし誰もその事について言及せず、ただただ黙って俺の懺悔じみた告白を真剣に聞いている。

 面白くもねー話なのに。

 

 

「笑顔を見せた途端、紫藤イリナは最初の兄貴シンパと化した。

それが納得できなく、何とかしたいとフラフラと兄貴へ行こうとする彼女を引き留めようと手を掴んだ途端………バシーン!! ってね」

 

「ま、マジかよ? ひでぇ……」

 

「だからイッセーくんは家を?」

 

「あぁ……俺の人生の最初のトラウマだ。

その後の事は知らんが、まさか紫藤イリナが教会の使いとはな」

 

「「……」」

 

 

 ふへへへへ……とひっ叩かれた右頬の――無いはずの痛みを思い出しながら変な笑い声が勝手に出てしまう。

 両親の心すら虜にされたよりも辛かった思い出(トラウマ)だ。

 

 

「だから言ったろ? 一度でも兄貴の魅力に取り付かれた相手には何を言っても無駄なんだよ。

例え、俺がその現実を否定し『無かったことに』しようとも、訪れるのは心をぶち壊す大量の兄貴シンパさ」

 

『……………』

 

 

 

 俺のマイナス側のスキルが覚醒した理由がコレだ。

 

 兄貴の洗脳じみた魅力に取り込まれ、それを引き留められなかった自分の無力さと無能さを突き付けられ、そんな現実を否定したかったという強烈な想いから生まれてしまった俺の過負荷(マイナス)

 それが俺の――なじみの貸し出しでは無いオリジナルのスキル――

 

 

幻実逃否(リアリティーエスケープ)

現実を受け入れられず否定し、都合の良い幻想に書き換えて逃げることで心の痛みから逃れる……ってな」

 

「「「「……」」」」

 

 

 既に初めから俺を知ってる同類のレイヴェル以外にも、木場・匙・白音には神器とは別物の能力(スキル)について教えている。

 だから俺の言ってる事が理解できてる様で、まさか失恋が契機で発現しましたー! というカミングアウトにレイヴェル共々何とも言えん表情をしていた。

 フハ! 何でお前等まで辛そうな顔なんだっつーの。木場なんて、こんなしょうもない失恋より遥かに辛かった筈なのに……。

 

 

「ま、そういう事だ。

すまんな……聖剣をどうするかなのにしょうもない失恋話をして」

 

「いや……」

 

「『俺に似てるよ』って言ってた理由が今にして分かったわ」

 

「「…………」」

 

 

 店内を流れる静かなBGMがよーく聞こえるほどに静寂しきってしまった。

 もう過去の事だし、俺も何とも思っちゃ居ない…………と言えば嘘になるかもしれんが、それでも今の俺には肉親や初恋の人よりも大事な繋がりがある。

 それを大切にする……それが俺が持つ今の生きる意味なのだ。

 

 

「おいおい、俺から暴露しといて何だが、そんなシミったれた顔するなよ。

失恋って奴も人生勉強の一つだったと思えば悪かないさ」

 

 

 わざわざ俺のしょうもない過去に暗い顔なんてしてくれてよ。

 ホント、お前達のこと大好きだわ……それこそ初恋の苦い思い出なぞ『クソどうでも良くなる』くらいにな!

 

 

「さてと、俺の話は此処までにして、次は木場と小猫が部室で聞いた話を聞かせてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 一誠様が失恋……いや、それよりも驚いたのは初恋なんてしていた事だった。

 

 

「う、うん……取り敢えずリアス部長は教会の使いの人の要望通り、『聖剣奪還について不干渉』だって」

 

「ですが、兵藤先輩が例の紫藤イリナって人とかなり深い繋がりがありますので、多分何らかの形で関わるのでは無いかと私と祐斗先輩は予想してます」

 

「ふむ、だろうな」

 

 

 既に一誠様の失恋話は終わり、聖剣のお話に戻っているというのに、私は何時もの表情を見せている一誠様から目を離せない。

 そんな過去があったとお話にならなかったからショックだったという事はない。

 そもそも一誠様の過去を事細かに聞く権利なんて悪平等であっても無いのだ。

 ただ、私にとってショックとは別に痛むこの胸の理由は……。

 

 

「ん、どうしたレイヴェル? 何か言いたいことがあるのか?」

 

「いえ……特には……」

 

「……………。む、そうか……」

 

 

 一誠様が異性に積極的じゃない理由を知ってしまった事だ。

 忘れたと一誠様は仰っているが、それは嘘だと私に長く傍らに居たので分かってしまう。

 

 安心院さんと対を為す人外にご成長されたとはいえ、一誠様はまだ子供なのだ。

 その精神まではまだ完全に人外ではない。

 

 

「そういえば兵藤くんは、もう一人の使いの人……確かゼノヴィアって人を早速誘惑してたっけ」

 

「……。その言葉で兄貴好みの女の子だと分かるよ。

手の早いことで……」

 

「まあ、寸前で祐斗先輩が転んだらフリして阻止し、その後気を付けろと忠告はしときました」

 

「お、ナイスじゃん木場ァ! 性欲馬鹿の洗脳の弱点は奴に対して疑念を持たせることだからな!」

 

「それはあくまで俺達の予想だがな……。

だがその場で阻止出来たのは良いことだ」

 

 

 一誠様は少し……ほんの少しだが恐れているのだ。

 自分が大事に想っている人々が兵藤誠八に奪われることをまだ少しだけ恐れている。

 

 あんなカス程度の洗脳じゃあ、一誠様をお慕い申している私や、悔しいが本物の小猫さんには通用しないし、男性である木場さんと匙さんも同じだ。

 けれどそれでも過去のトラウマが一誠様を苦しめいる。

 

 それを取り除けない自分が悔しい。

 癒して差し上げる事が出来ない自分の未熟さが恥ずかしい。

 

 

「一番手っ取り早いのは、何やかんやで動くだろう兄貴達を泳がせて聖剣発見した所を横からかっさらうって所か?」

 

「お、良いじゃん。性欲馬鹿が変な理由付けて……そのゼノヴィアって奴を落とす為に建前で協力を取り付けようとするのは目に見えてるしな」

 

「で、でも、そんな事をしたら聖剣を破壊された天界側と身勝手に動かれた悪魔側から怒りを買って思いきり敵対されるんじゃあ……」

 

 

 恐らく小猫さんも同じ気持ちだろう。

 悔しいが彼女はどうも私に通じるものがあるし、今だってそれを押して話し合いをしている。

 

 

「なに、されてお尋ね者になっても俺は構わんよ。

友であるお前が過去を断ち切れるのであれば、犯罪者扱いなぞ痛くも痒くもない」

 

「同感。既に元・主様はどうでも良いしな。遅かれ早かれ俺は『はぐれ』だろうしねー」

 

「イザとなれば一誠先輩のスキルで『悪魔だった現実から逃げれば』良いですし、何なら破壊した後はその罪を兵藤先輩に押し付けてしまえば良い」

 

「おっと……塔城さんが何気にエグいぜ。めちゃくちゃ賛成だが」

 

 

 ほらやっぱり。

 表情こそ普通だが、小猫さんも悔しいのだろう。

 一誠様を癒せないことに……そして一誠様が異性に消極的になった理由である相手に怒りを覚えているのが分かる。

 

 

「良いですわね。たまには女性を貪るばかりじゃ無く、私達の役にくらい立たせる為に利用してしまうのは」

 

「でしょ?」

 

「わーぉ、フェニックスさんも黒いぜ。理由が分かるから反対する気なんて全く俺には無いがな」

 

「……。何か、微妙に顔が怖いぞ二人とも……」

 

 

 洗脳された紫藤イリナのことはどうでも良い。

 だが、一誠様にご成長を阻害するトラウマを植え付けた兵藤誠八……アナタは許さない。

 

 

「なにを言ってるんですか一誠先輩、私は普通ですよ? 決して女性に対して消極的な理由がまた兵藤先輩のくだらない女落としによるとか、そんな事はありませんので。

ね、レイヴェルさん?」

 

「ええ、いっそ八つ裂きにしてドブ川に捨ててしまいたいとか、貧相な下を焼き付くして使い物にならないようにしてあげましょうとか、そんな物騒な事は考えてませんわ。

ね、小猫さん?」

 

 

 どうでも良いカスから、消し墨にしてやりたくなる雑魚に昇格させてはあげますわ……。

 そう思いながら私は、ほぼ確実に同じ事を考えてるだろう小猫さんと共に微笑みながら……。

 

 

「「ねー♪」」

 

 

 初めて息が合った気がした。

 

 

 

 

オマケ

 

 

その頃の………。

 

 

 一通り満足した黒歌は、その過程で疼いて仕方なくなった身体のまま――

 

 

「「ねー♪」」

 

「……。様子が変だな……レイヴェルと小猫」

 

「お前な……。

ったく、最初は俺達に気を使ってたからだと思ってたが、案外鈍いんだなぁ」

 

「は?」

 

「確実に二人はイッセーくんを裏切らないってことさ。

あ、僕と匙くんもね」

 

 

 

 

 

 

(私もだにゃ~ん♪)

 

 

 ストーキングを再開していた。

 しかも、一誠達が座る喫茶店の席のテーブルの真下……更に言えば一誠の足元を悟られず器用に潜り込んでいた。

 その、いつの日か発現した『誰にも彼にも悟られない異常性』をフル活用して。

 

 

「結論としては、俺等が動くのは兄貴達が動いてから……という所か?」

 

「それで大丈夫だと思う。闇雲に動くべきじゃないと思うしね……聖剣破壊の為には我慢の時も必要だ」

 

 

(ふむふむ、イッセーは聖剣を壊したいと……)

 

 

 一誠やレイヴェルにすら悟られない異常性は、こうした情報収集、もしくは暗殺等に真価を発揮できるものであり使用用途はストーキングという残念さに目が行ってしまうが、かなり恐ろしいスキルであることは間違いなかった。

 それを裏付けるのが――

 

 

「よし、じゃあ明日から兄貴の動向に目をは――――あうぇ!?」

 

(はぁ……はぁ……♪)

 

 

 触れても見えない……という所だった。

 そしてそれを利用し、最近は一誠のストーキングですっかり盛り始め、尚且つ色々と限界だった黒歌による『悪戯』がとうとう一誠に直接来てしまった。

 

 

「ど、どうしました一誠様?」

 

「急に変な声出すなんてお前らしくねーの」

 

「い、いや……なんか急に――あへぇ!?」

 

 

 突如ビクンと打ち上げられた魚の様に身を跳ねながら、これまた変な声を出す一誠に全員が怪訝そうな表情を見せるも、一誠は若干頬を赤くさせながらテーブルの下を覗き込むだけで答える事はしなかった。

 

 

「…………」

 

(あ……イッセー……♪)

 

 

 突如自分の身を誰かに触れられてる感覚がした一誠の鋭い視線がテーブルの下……それもスキル発動中の黒歌に向けられる。

 しかし、どれだけ目を凝らしても一誠に見えず、更に言えば気配も感じない。

 

 

「…………………」

 

「? テーブルの下に何かあるのかい?」

 

「………。いや、無い……」

 

 

 ジーっとテーブルの下を見つめる一誠に祐斗が不思議そうに訪ねるも、何も見えない一誠はそう答えるしか出来ず、諦めるようはなテーブルの下から目を離す。

 しかし……。

 

 

「っ!?」

 

 

 再び何かに触れる感覚に襲われ、今度は咄嗟に口を手で塞いで声を殺し、其々雑談しているレイヴェル達に気付かれないように努める。

 本当なら先程から襲う不可解現象について皆に話したかった。

 が、それが一誠には出来い理由があった。

 それは――

 

 

(あぁん……イッセーの……イッセーの……)

 

「っ……! っぅ……!?!?」

 

(ほしーな……ほしーにゃぁ……♪)

 

「くぅ……! あぐ……!?」

 

「…………。一誠先輩?」

 

「……。やはり変ですわ一誠様……」

 

「な……にゃんでも――あひぃ!?」

 

 

 

 

(ハァ、ハァ……)

 

(ぜ、絶対誰かテーブルの下にいる……!

な、なじみ――は、違うと思うし、一体さっきから俺の…………俺の◯◯を気配も姿も掴ませず触ってるのは誰なんだ!?)

 

 

 悪戯されてる所が……色々と言えない所だった故に、逆痴漢されてるかの如く必死こいて一誠は手探りでテーブルの下に居るだろう何者かを掴まえようと戦っていたのだった。

 

終わり

 

 




補足

目の前で初恋の人を洗脳され、挙げ句ビンタされて大失恋。
両親を取られたより更にトラウマを刻まれ、それが原因で一誠は幻実逃否(リアリティーエスケープ)を覚醒させました。

効果は多分ご存じの通り……。

『嫌だと思った現実を否定し、都合の良い幻想に書き換える』という……まあ、早い話が――


『イザナギだ……』

であります。


『じゃあこれ使って兄貴シンパの洗脳を消せよ』という意見を感想で貰いましたが……。
 一誠自身はそれをしようとは思ってません。

 その洗脳で困った人がいれば助けるかもですが、洗脳されたとはいえ本人が幸せと思ってるなら、わざわざ洗脳なんて解いてその人を発狂させるなんて真似はしたくないというか…………

『レイヴェルや白音――俺の大事だと思ってる人達にちょっかいさえ出さなければ、後は誰を洗脳して大人のプロレスごっこしてようが知ったこっちゃない。
俺は、決して洗脳された人を見て正義感に燃え、その人を救うという考えは持たない――『自分本意』な人間だ』


 とまあ、こんな理由で無関心です。
 良くも悪くも一誠は安心院さんの弟子なんですよ。


その2

黒猫ねーさん、遂に直接お障りしまくりの巻。

…………。まあ、うん……所謂逆痴◯すな。

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