ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~   作:畜生ペンギン

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Part126 小さな英雄~命救ったヒーロー~

BOB決勝から数日 詩乃は夏休み最後の夏期講習を受けるために学校に来ていた。

 

蝉時雨が響く中詩乃はしっかりと自身のやるべき勉強をこなし、無事に夏期講習を終えた。

 

通常なら講習を終えた時点で家に帰ることになっているのだが、詩乃はある者に呼び出され学校の人目のつかない場所で待たされていた。

 

詩乃が言われた時刻から数分が経つと、以前詩乃からカツアゲを行おうとしていた遠藤とその取り巻き2人が現れた。

 

詩乃「呼び出しておいて待たせるってどういう気?」

 

「朝田 お前なんか最近イキってんじゃないの?」

 

「ほんと せっかく呼び出して上げたのにさ?」

 

遠藤「そんなこと構わないさ "友達"だもんな?友達なら私達が困ってる時助けてくれるよな?とりあえず2万だな 貸して。」

 

詩乃「はぁ・・・お金を貸す気はこれっぽっちもない。いい加減学習したら?」

 

詩乃は眼鏡を外し 少し強気な口調でそう言った。

 

遠藤「んだと・・・そうかいそうかい・・・ならその減らず口 兄貴から借りてきたコイツの前でも言ってみるんだな!!!!」

 

遠藤はそう言ってバッグの中からモデルガンを取りだし、詩乃に銃口を向けた。

 

詩乃「っ!?」

 

詩乃はその銃口を見た瞬間 体内の血液が急速に駆け巡っていくのを感じた。あの事件が終わったとは言え、過去のトラウマがそう簡単に治れば苦労はしない。

 

遠藤「まぁ人には向けんなって言われてっけど お前なら大丈夫だよな?慣れてるもんな?さぁ泣けよ!泣き喚け!!!!土下座して謝れ!!!!!」

 

詩乃の中で駆け巡る恐怖の過去。今までだったら 言われた通りに土下座をしていたかもしれないが 詩乃はそれと同じ程の輝かしい記憶が今はある。

 

『シノン。』

 

詩乃「っ・・・・・・」

 

遠藤「土下座しねぇってなら・・・くたばっちまえ!」

 

遠藤はそう言ってモデルガンのトリガーを引こうとした。だが、トリガーを引こうとしてもそのトリガーはビクともしなかった。

 

遠藤「はぁ?なんで撃てねぇんだよ!!!!壊れてんじゃねぇのか!?」

 

取り巻きの2人が困惑する中、詩乃は遠藤に近づきそのモデルガンを奪い取った。

 

遠藤「なっ!?」

 

詩乃「使い方も知らずに良く持ってこれたものね・・・良い?大抵の銃はセーフティを解除しないと撃てないの。」

 

詩乃はそう言うと、的になりそうな缶のゴミがあった為 それに狙いを定めてトリガーを引いた。BB弾は見事缶のゴミにヒットし倒れた。

 

遠藤「っ・・・・・・」

 

詩乃「人には向けないのが正解ね。こんなので撃たれたら下手したら抉れるわ。」

 

詩乃はしっかりとセーフティを戻し 遠藤の手にそのモデルガンを戻した。

 

詩乃「それじゃあね モデルガンの扱いには気をつけなさい。」

 

詩乃がそう言ってその場を離れると、遠藤は腰が抜けたように座り込んだ。

 

遠藤「なんなんだよ・・・・・・アイツ・・・・・・」

 

この時、詩乃は初めてあのような状況を自分1人で打破することに成功した。だが、詩乃の緊張感も強くあの場から離れた場所で過呼吸とまでは言わないが呼吸を荒くしていた。

 

詩乃「はぁ・・・はぁ・・・!大丈夫・・・これが・・・初めの1歩なんだから・・・!」

 

詩乃は深呼吸をして 呼吸が整ったのを感じてから 改めて1歩踏み出した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

遠藤の呼び出しも無事に終わり 帰宅しようとしていた詩乃。正門に向かうと何故かそこには人集りが。

 

詩乃「何かあったのかしら・・・」

 

「あ!朝田さん!朝田さんのこと呼んでる人がいるよ!正門前で待ってるよ!」

 

詩乃「へ?私を?」

 

「そう!しかも男の人で結構整ったの顔してるの!もしかして彼氏!?」

 

男の人が呼んでる。詩乃はその時脳裏には哲也の顔を浮かべていた。最もそれは色恋とか関係無く哲也との待ち合わせがあったからでもある。

 

詩乃「か、彼氏とかそんなんじゃ・・・!も、もう!アンタなんでこんな所に・・・」

 

詩乃はそう言って正門を出てその姿を確認しようとした。だがそこにお目当ての哲也はおらず、バイクの近くで暑そうにしていた哲也と年齢の近い男が立っていた。

 

「おっ やっと来たな。えっと君が朝田詩乃で間違いないかな?」

 

詩乃「へ?え、えぇ・・・あ、貴方誰・・・?」

 

「そっか こっちで会うのは初めてだったね。俺の名前は桐々谷和人 GGOではキリトとしてログインしていた者だ。」

 

詩乃「っ!?き、キリトって・・・じゃ、じゃあ貴方やっぱり生きて・・・!」

 

和人「お、おいおい。勝手に人を殺さないでくれよ・・・そりゃ確かに俺も死を覚悟がはしたが・・・」

 

詩乃「ごめんなさい!!!!私の勝手な行動のせいで貴方を危険な目に合わせて・・・・・・!!!!」

 

和人「気にしないでいいよ。無事に今回の件が終わって何よりだ。おっとその前に 君は本来哲也と待ち合わせをしていたんだよね?」

 

詩乃「え、えぇ。今回の件で話したいことがあるとかなんとかって・・・」

 

和人「その通り。その通りなんだけど哲也にはバイクだとかそういった物が無くて 話したい人が少し時間が押してるそうなんだ。だからバイクを持ってる俺が君を迎えに来たって訳。」

 

詩乃「そ、そうなのね・・・」

 

和人「哲也の方が良かったかな?」

 

詩乃「い!いや!別にそんなわけでは・・・!」

 

和人「それなら良かった。それじゃあこのヘルメット被って。安全運転で行くから安心して。」

 

和人は詩乃にヘルメットを渡し、自身もヘルメットを被りバイクのエンジンを付けた。詩乃もバイクに乗り和人はバイクを走らせた。

 

「彼氏さんと仲良くね~♪」

 

「事故には気をつけて~!」

 

詩乃「だからそんなんじゃないってば!!!!!!!!」

 

和人「ははは・・・っとその前に BOB優勝おめでとう シノン。」

 

詩乃「あ、ありがと・・・と言っても哲也と一緒って形になっちゃったけどね・・・」

 

和人「それでも立派なもんだよ。俺も出来れば優勝争いに加わりたかったなぁ・・・って君のことを責めてるわけじゃないんだよ!?」

 

詩乃「ううん・・・私は貴方に酷いことをした・・・それくらい言われても仕方がない位に・・・なんて言って謝れば良いのか・・・」

 

和人「俺は別に良いんだ 君が無事で哲也も無事。事件も無事に解決してミッションコンプリートって訳さ。」

 

詩乃「でも、私の気が済まないからまた別の機会に謝罪をさせて。良い?」

 

和人「そこまで言われたら素直に受け取るよ。いつでも構わないからね。」

 

詩乃「うん。待っててね キリト。」

 

こうして2人は話し合いの場である銀座まで向かった。バイクを停めて和人は以前菊岡と話したカフェまで詩乃を連れていった。

 

和人「ここだよ 多分中に哲也もいるはずなんだけど・・・」

 

店内に入り2人を探すと 菊岡と哲也が向かい合って座っていた。

 

哲也「おーい!こっち!」

 

和人「待たせて悪いな。」

 

哲也「こっちこそ詩乃の出迎え頼んで悪いな 詩乃 学校はどうだった?」

 

詩乃「あ、あの・・・えっとその・・・べ、別になんにもなかった・・・かな?」

 

哲也「そっか 呼び出して悪かったな この目の前にいる人がどうしても話すんだって聞かなくってよ・・・なあ 今日この後用事あんだろ?別に今日話さなくても・・・」

 

菊岡「いやぁ僕にも色々な予定がこの先てんこ盛りでね♪今日じゃないとスケジュールがしばらく無いのさ まぁ念の為に時間は開けてるから心配はご無用だよ♪」

 

哲也「別に心配なんざしてねぇけどよ・・・」

 

和人 哲也 詩乃がそれぞれ座り菊岡も3人の対面に座りいよいよ本題に突入。

 

まず、本命であったデスガンこと新川昌一とその弟 恭二は逮捕された。そして昌一の発言により第3の協力者である金本敦と言う人物が明るみに出た。だが、現在逃亡中であり行方不明 だが逮捕も時間の問題と菊岡は言った。

 

デスガンが産まれた理由 それは昌一がリアルマネー取引の際 透明化できるマント・・・所謂ミラーステルスマントを手にしたことが始まりだった。マントと双眼鏡を使い 昌一はプレイヤーのリアルの情報を手にすることに熱中した。

 

弟の恭二はキャラクターの育成に行き詰まっていた時であり アジリティ型で育成をしたシュピーゲルは以前アジリティ型最強と謳っていながら自身はその後育成方針を大幅に変えたゼクシードに強い恨みを抱いていた。

 

その話を聞いた昌一はゼクシードの住所や名前等の情報を恭二に教え どのような方法で粛清しようかを話し合った。最初は本気では無かったが何度も何度も話して行くうちに 計画は現実味を帯び、遂に2人は父親の経営する病院にある電子キーを解錠するマスターキー帯び 劇薬を盗み出すことに成功した。

 

2人は念入りの下調べを行い 標的は一人暮らしで尚且つ セキュリティーが弱い人物の元に潜り込んだ。昌一はまず最初にゼクシードこと茂村保の家へマスターキーを使用して侵入。計画の時間通りに茂村を殺害し 恭二は兄のステルベンでログイン デスガンを名乗り銃撃した。

 

2人目の薄塩たらこも同上の手口で反抗が行われた。だが、2人の犠牲者が出ようともGGOのプレイヤーはデスガンの存在を否定し、デマ扱いをした。業を煮やした2人はBOB本戦で一気に3人を殺害する手立てに出た。

 

標的は反抗を行いやすいプレイヤーを選んだ それがペイルライダー ギャレット そしてシノンの3名だった。

 

哲也「成程な でも その3人をって算段は奴らにも無茶が生じたみてぇだな。」

 

菊岡「その通り。犯行を行うにしても1人で3人の家を回るのは短時間じゃとても厳しい。」

 

和人「そこで 金本が加わったと・・・」

 

菊岡「金本は昔からの古き友人・・・と言えば聞こえはいいが SAO時代のギルドメンバーだったそうだ。キャラクターネームは《ジョニーブラック》。聞き覚えは?」

 

哲也「確か・・・デスガンじゃねぇや ザザの野郎とコンビを組んでた毒ナイフの使い手だな。」

 

菊岡「金本は自宅が近いペイルライダー そしてギャレットの犯行を実行。恭二はシノンを引き受けた。今までの実行役は昌一だった訳だが 今回に限っては恭二が実行役に固執したそうだ。」

 

哲也「あんなの見たらそりゃ固執したわけだって思うわ・・・」

 

詩乃「あの・・・その事は恭二君が・・・?」

 

菊岡「いや、これらは全て兄の供述による話です。恭二本人は黙秘を続けている。」

 

詩乃「・・・・・・そうですか・・・・・・」

 

菊岡「ちなみに 昌一と言う人物は幼い頃から病気がちでね 父親はそんな兄を早々に捨て 弟を病院の跡継ぎに決めたそうだ。でも兄弟仲は悪くないどころか大変素晴らしいと言わざるを得ないね。そんな兄の昌一はMMORPGにのめりこんだ。そして ソードアート・オンラインへとログインをし 虜囚となった。そしてログアウト後は弟にだけ伝えたそうだ 自分がゲーム内でどれだけ恐れられたか 真の殺人者であったかを。恭二にとっての兄は英雄に見えたそうだ。」

 

哲也「なにが英雄だあの野郎・・・・・・!!!もっぺん殴ってやろうか・・・!!!!」

 

菊岡「まぁまぁ、さて 昌一だが今回の1件 デスガンとしての行動を含め 全てはゲームだったと話している。SAOで情報収取を重ね 装備を整え 殺したのと何ら違いは無い・・・とね。」

 

和人「VRMMOのダークサイドを味わった身からしたらそうだろうな 現実が薄味になっていき過激さを求める 奴らにとっての殺人は麻薬と言っても良い。」

 

哲也「嫌だねそんな劇薬・・・」

 

哲也は紅茶を呑んでから溜め息を吐いた。

 

菊岡「君達2人はどうなんだい?君らの現実とは?」

 

哲也「うーん・・・まぁあっちに置いてきたものも多いさ でも こっちで学んだことだって多い。」

 

和人「そうだな 失ったものもあれば得た物だってある。それが俺達人間の生きていく上で必然になるんじゃないのかな。」

 

菊岡「ふむ・・・では 2人はその失ったものを取りに『戻りたい』とは思うかい?」

 

哲也「戻らん戻らん!誰が好き好んでまたあんな世界に!死にたくねぇし!」

 

和人「全くだ・・・悪趣味がすぎるぜ・・・」

 

菊岡「いやぁごめんごめん♪お兄さんのとんでもない所を露わにしてしまったよ♪」

 

哲也「あんた女子高生の前でよくそんなこと言えんな・・・」

 

菊岡「これくらい言えなきゃ世渡りは出来ないのさ哲也君 さて、少し脱線したが以上が僕が現状知ってる全てだ。御三方 何か質問は?」

 

詩乃「あ、あの・・・恭二君はこれから一体・・・」

 

菊岡「ふむ・・・彼らの言動を見る限りでは 医療少年院への週間の可能性が高いと見ている。何せ2人とも現実という区別がついていないしね。」

 

詩乃「私はそうじゃないと思います。」

 

菊岡「と言うと?」

 

詩乃「お兄さんのことは私にはわからないです。でも 恭二君にとっての現実はGGOの中にあったんです。私達の現実を全て捨ててでも 彼はGGOで生きた。GGOの中こそ 彼にとっての全てだと 彼は決めてたんだと思います。頂点を目指して 何日も何日も面倒で辛い経験値稼ぎをして そのストレスはきっと私達じゃ計り知れない物・・・」

 

菊岡「げ、ゲームでストレス?本来ストレスを発散するためにあるゲームでストレスを貯めてたら本末転倒じゃ・・・」

 

詩乃「きっと彼は文字通り転倒させたんです こちらの世界とあちらの世界を。」

 

菊岡「それは何故?」

 

詩乃「それは・・・私にも分かりません・・・ねぇ 貴方なら分かる?哲也。」

 

哲也「俺に振るのかよ・・・まぁそんなの強くなりてぇって思いの一筋だろうな。誰しも強く強くありたいと思うもんだ。」

 

詩乃「うん、私もその思いだった。あの世界に行けば誰もがそう思うのかもしれない・・・強くなりたいと・・・菊岡さん 私恭二君に会いに行きます 私が感じたこれまでの全てを 彼に話したい。」

 

菊岡「うん。貴女は強い方だ 是非そうしてください。面会可能になったらメールでご連絡をします それまでお待ちください。」

 

詩乃「はい。ありがとうございます。」

 

菊岡「それとだ 哲也君宛に昌一から伝言が届いているよ。」

 

そう言って菊岡は胸ポケットから手紙を取り出した。

 

哲也「伝言だァ?」

 

菊岡「うん。当然君は聞く権利を破棄することが出来る訳だが どうする?」

 

哲也「おもしれぇ 聞いてやろうじゃねぇか。」

 

菊岡「では・・・『これで終わったと思うな お前に全てを終わらす力など無い 直ぐにそのことに気づくだろう その時が来るのを怯えて待っているんだな It’s show time』だそうだ。」

 

哲也「けっ!俺に負けた野郎が偉そうにしやがって!!!!いつでもかかって来やがれ!!!!」

 

菊岡「哲也君らしいね それとだ それとこれとは大きく変わるが哲也君 BOBシノンとの同時優勝おめでとう♪僕のケーキ食べていいよ♪」

 

そう言って菊岡は自身のケーキを哲也に差し出した。

 

哲也「さ、サンキューな・・・」

 

菊岡「それと、聞きたいことがあるんだけど 何故君はあの局面アロンダイトを使えたんだい?」

 

和人「あ、アロンダイトってまさか天鎖斬月のことか!?何でそんなもんGGOで使ってるんだよ!!!!」

 

哲也「あぁ、なんかGGOの非公式サポートだとか言う人がいてさ その人が俺の女体化のバグの補填で天鎖斬月を送ってくれたんだよ。おかげでデスガンを倒して詩乃は無事にここにいるってわけさ・・・・・・って待てよ?なんであんた俺が天鎖斬月使ったこと知ってんだよ?」

 

菊岡「あぁ、それは僕がALOにログインしていたクライン氏達と君の活躍を見ていたからなんだよ♪それとだ、君 GGO非公式サポートと言ったね?」

 

哲也「ん?言ったけどそれが?」

 

菊岡「いやね、噂には聞いていんだがどんな人か知りたくってね?ちょっと電話かけて貰えないかな。話がしたいんだ。」

 

哲也「そんな事ならおやすい御用だが・・・ちょっと待てよ・・・」

 

俺は菊岡さんの言う通りGGOの非公式サポートへと電話をかけた。

 

哲也「出てくれっかな・・・」

 

俺が電話をかけたその数秒後 菊岡の携帯が鳴った。

 

菊岡「おっと、気にしないでくれたまえ・・・」

 

そう言って菊岡さんは後ろを向いて携帯を耳に当てた。

 

それとほぼ同時にGGO非公式サポートの人も電話を出てくれた。

 

哲也「あ、もしもし?」

 

『はい!こちらGGOサポートっス!非公式も非公式っス!』

 

以前と変わらぬ声でその声は出た・・・・・・菊岡の口から。

 

哲也「・・・・・・・・・は?」

 

菊岡『は?とはなんの事っスか?』

 

和人「ちょ、ちょっと待て!!!!ま、まさか哲也の言う非公式サポートって・・・・・・」

 

詩乃「・・・・・・菊岡・・・・・・さん・・・・・・?」

 

菊岡『はい!その通りっス!凄いでしょ僕の携帯のボイスチェンジャー♪』

 

そう、哲也が今まで連絡していたのはまさかまさかの菊岡だったのだ。

 

哲也「待て待て待て!!!!俺あんたの携帯番号知ってんだぞ!?なんで番号2つあんだよ!?」

 

菊岡『偉い人になると2台持ちが普通っス♪』

 

和人「そ、そうなると俺達は・・・・・・」

 

詩乃「菊岡さんに救われてたって訳・・・・・・?」

 

菊岡『もう事件もあらかた片付いたし種明かしっス♪驚いたっスか?』

 

哲也「ちょっと待った!!!!アンタが俺のサポートをしてくれたのは分かった!!!!だったらあんたはどうして俺を女体化させた!!!!

 

菊岡『それはっスね~』

 

哲也「普通に喋りやがれ!!!!」

 

菊岡「わ、分かったよ・・・まぁ所謂ちょっとした細工さ。」

 

哲也「さ、細工?」

 

菊岡「あの女体化バグは割とあらゆるゲームに存在してね それも起こす方法がほぼ同じなんだ。」

 

詩乃「その方法は?」

 

菊岡「事前にその端末で女性がログインしていること。そうすると次にログインするのが新規プレイヤーだと何故か女性になっているのさ もうすぐこのバグも修正されるけどね。」

 

哲也「じゃ、じゃあまさか詩織さんにログインを・・・?」

 

菊岡「ご名答♪その事は黙ってたみたいだね♪流石は哲也君の先生だ♪君が女体化してゲームにログインした方が何かと序盤は融通が聞くと思ってね♪」

 

詩乃「確かに私も哲也が女の子だとは思ったけど・・・」

 

和人「じゃあ天鎖斬月を持ち込めたのも・・・」

 

菊岡「当然僕さ!あれくらいゲームシステムいじればちょちょいのちょいさ♪まぁハッキングがバレたら僕もヤバいけど哲也君のサポートの為ならそれくらいのリスクは当然さ♪」

 

哲也「俺の中での疑問が溶けたよ・・・よくよく考えれば今天鎖斬月は木綿季が持ってるのに何で俺のアイテム欄から持ってこれたんだって・・・」

 

菊岡「おっと安心してくれたまえ!君の天鎖斬月はちゃんとALOでも存在しているからその点は問題ナッシング♪」

 

哲也「じゃ、じゃあ俺に電話番号を教えてくれた2人は!?」

 

菊岡「あれは僕の課のメンバーだよ 思わずログアウト後はテツヤ君の必死な姿に大爆笑だったそうだ♪」

 

詩乃「なんというかご愁傷さまね・・・」

 

哲也「・・・・・・ちょっと待てや。」

 

哲也は半分切れたような声でそう言った。

 

菊岡「な、なんだい?」

 

哲也「アンタが俺をサポートしてくれたのはよーく分かった・・・・・・だがそうなると気になるのは1つ・・・本当はいつから男に戻せたんだ?」

 

菊岡「あぁ、実はそんなのいつでも・・・あっ!?」

 

菊岡は口を滑らせたのか口を自らの手で押さえ込んだ。

 

詩乃「い、いつでも!?て、哲也はいつ頃元に戻してもらうって言ってたの!?」

 

哲也「アンタいつ戻せるか聞いたらこう言ったよな・・・『BOBの本戦終戦間際』って・・・・・・」

 

菊岡「あ、あぁ・・・言ったね・・・」

 

哲也「そうなるとだよ・・・・・・俺があの局面女体化でデスガンと戦う必要皆無だったんじゃねぇのか!?」

 

菊岡「い、いやぁ・・・それはそのだね・・・」

 

哲也「説明しやがれ!!!!」

 

菊岡「い、いやね?もうちょっとピンチの場面で戻した方がドラマティックかなぁと・・・・・・」

 

和人「はぁ!?」

 

哲也「その為にあんたは俺がわざわざ死にかけたところで男に戻したってのか・・・・・・!?」

 

菊岡「い、いやさ!?結果的には君もかっこよく男の姿に戻れた訳であつて・・・・・・」

 

哲也「下手したら詩乃が死ぬとこだったんだぞ・・・・・・!!!!」

 

菊岡「それは・・・・・・結果論と言うか・・・・・・」

 

菊岡は汗をダラダラと流しながら哲也にそう説明した、そして遂に哲也の堪忍袋の緒が切れた。

 

哲也「てめぇこの野郎!!!!!!!!俺達を殺しかけといて結果論だぁ!?舐めてんのか!!!!!!!!」

 

哲也は菊岡に殴りかかろうとしたが和人と詩乃が必死にそれを止めた。

 

和人「や、やめるんだ哲也!!!!」

 

詩乃「そ、そうよ!菊岡さん殴ったってなにも産まれないわよ!?」

 

哲也「離せ!!!!こいつ殴って捕まって収監先であの兄弟もぶっ飛ばしてやる!!!!!!!!」

 

菊岡「ま!待って!僕が悪かった!この通りです!!!!許してください!!!!」

 

菊岡はそう言って哲也に土下座をして謝った。

 

哲也「詩乃が死んでたらどうしてた!!!!!!!!和人が死んでたらどうしてた!!!!!!!!俺が男になってれば解決してた場面がどれだけあったと思ってんだこの野郎!!!!!!!!やっぱり殴る!!!!!!!!」

 

菊岡「お願い許して!!!!君のお願いなんでも聞くから!!!!3回まわってワンって鳴くから!!!!」

 

詩乃「哲也!私からもお願い!許してあげて!?」

 

哲也「お前はこいつに殺されかけてんだぞ!?なんで許せるんだよ!?」

 

詩乃「そ、それは・・・・・・かっこいい・・・・・・貴方が見れたから・・・・・・/////」

 

哲也「へ?」

 

詩乃「っ!とにかく許しなさい!!!!許さなきゃ私がアンタを殴るわよ!!!!!!!!」

 

哲也「・・・・・・詩乃がそこまで言うのなら・・・・・・」

 

菊岡「ほっ・・・・・・」

 

哲也「ただし!覚えとけよ!!!!俺の願いはなんでも聞いてもらうからな!!!!!」

 

菊岡「も、もちろん!!!!ただし何かお高いものの予約とかは1回限りで・・・」

 

哲也「ったく!とんでもねぇ野郎だ!!!!」

 

和人「とにかく一件落着・・・・・・なのかな?」

 

詩乃「多分・・・・・・」

 

哲也「俺の願い1つでも断ったら今後あんたの仕事は一切受けねぇからな!!!!!!!!」

 

菊岡「はい・・・ごめんなさい・・・」

 

こうして、一波乱あったこの事件の結末も 一旦は無事に終わりを迎えた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

菊岡「そ、それじゃあね 3人とも気をつけて。」

 

哲也「はいはい んじゃあな。」

 

カフェの中での一騒動も収まり、菊岡さんは次の仕事の為にタクシーに乗って帰っていった。

 

和人「さてと、漸く一段落ってとこかな。」

 

哲也「そいつがまだなんだ。詩乃 この後空いてっか?」

 

詩乃「一応空いてるけど・・・」

 

哲也「そいじゃあちょいと俺とデートだ。付き合ってもらうぜ詩乃。」

 

詩乃「で!?ででででデート!?/////」

 

哲也「なんだ?そんな顔赤くして。」

 

詩乃「あ!当たり前でしょ!!!!こ、心の準備が全然整って・・・/////」

 

和人「それじゃあこの先は2人に任せる。申し訳ないが俺はこの後別件で用事があるからこれで。」

 

哲也「おう 安全運転で帰れよな。」

 

詩乃「さ、さよなら・・・」

 

和人「うん また会おう。」

 

和人はそう言って手を振りながら自身のバイクのある場所へと向かっていった。

 

哲也「さてと、詩乃 これから一緒に御徒町に行こう。そこで話したいことがある。」

 

詩乃「う、うん・・・分かった・・・/////」

 

哲也「どうしたんだ?さっきからちじこまって詩乃らしくない・・・あ、もしかしてさっきデートって言ったから?」

 

詩乃「それは・・・その・・・そうと言えばそうだけどそうでは無いといえば・・・」

 

哲也「わ、悪い さっきのはちょっとジョーク交じりにどこかに行こうって暗示だったんだ・・・期待してたのなら悪いな?」

 

詩乃「っ!?別に期待なんてしてないわよ!!!!馬鹿哲也!!!!さっさと行くわよ!!!!」

 

詩乃は俺の手を引いて駅の方面まで歩きだした。

 

哲也「ちょおい詩乃!?」

 

詩乃は大分怒ってたけど俺達は御徒町へと向かった。

 

銀座から御徒町は電車で30分とかからない。俺は道中詩乃と他愛の無い話をしながら目的地へと向かった。

 

詩乃「ねぇ 一体どこに行くの?」

 

哲也「俺のダチがやってるカフェさ。ちょっと詩乃に合わせたい人がいてね 別に悪友じゃないから変なことにはならないから安心して。」

 

詩乃「別に貴方のこと疑ってはいないけど・・・合わせたい人ってどんな人?」

 

哲也「まぁそれは会ってからのお楽しみさ♪さぁ!着いたぞ!」

 

俺は詩乃を連れてエギルが開いているダイシーカフェまでやってきた。

 

詩乃「貴方の友達でこんな立派なお店開いてる人がいるだなんて・・・」

 

哲也「ダチと言っても割と歳の差があるダチだけどよ んじゃ入るよ。」

 

俺はそう言ってカフェの入口を開けた カフェの中では木綿季 琴音 エギルの3人がカウンターで会話を弾ませていた。

 

琴音「待ってたよ哲也!暑い中ご苦労さま♪」

 

哲也「あぁ こっちこそ待たせて悪いな。」

 

木綿季「あれ?その人って前どこかで会ったような・・・?」

 

哲也「紹介する こいつの名前は朝田詩乃 今回の一件通して親しくなった俺の大切な仲間だ。」

 

詩乃「ど、どうも・・・」

 

哲也「んでだ 詩乃から見て右側にいるオレンジの髪がチャームポイントの娘が竹宮琴音。」

 

琴音「よろしくね♪」

 

哲也「左が前にも1度会ってるけど 俺の彼女でもある紺野木綿季だ。2人とも良いやつだから直ぐに馴染めると思う。」

 

木綿季「よろしく!」

 

詩乃「よ、よろしくお願いします。」

 

詩乃はそう言って頭を下げた。

 

哲也「えっと 一応奥のでかいのがこの店の店主 アンドリュー・ギルバート・ミルズ。俺達はエギルって呼んでるんだ。ちょいとごつくて見た目はおっかないけど根はめちゃくちゃに良い奴だから恐れずに話して見てほしい」

 

エギル「デカくてごつくて悪かったな。何はともあれよろしく。」

 

詩乃「は、はい。」

 

哲也「さて、とりあえず立ち話もあれだし一旦座ろっか。」

 

俺達は4人でテーブル席に座り、色々なことを話し出した。

 

詩乃「そっか・・・ステルベンって病院用語で死を表していたのね・・・何でそんな名前を・・・」

 

木綿季「やっぱり名前負けしない為とか?デスガンを名乗っておいて名前がラッキーとかハッピーとかだったら笑えちゃうもん!」

 

琴音「言えてるかも!」

 

詩乃「確かにそうね。」

 

詩乃はそう言ってくすりと笑った。

 

琴音「でもこうしてリアルで同じくVRMMOをやってる人と知り合えると嬉しいね♪」

 

木綿季「だね!朝田さんと出会えて嬉しいよ!少しずつでいいから仲良くなろうね♪」

 

詩乃「っ・・・・・・」

 

木綿季のその発言を聞いて詩乃は少し顔を逸らした。今回の一件で色々なことを味わってしまったことを考えると詩乃が初めてあった他者をあまり信用出来ないのも納得がいく。

 

哲也「まぁ無理もないさ・・・・・・木綿季。」

 

木綿季「うん。もう大丈夫だよ あのね朝田さん 今日哲也に貴女を連れてきてもらったのにはボク達と合わせたいとかではなくてちゃんとした理由があるの。」

 

詩乃「ちゃんとした理由・・・?」

 

哲也「まずは俺から話させてくれ・・・詩乃 申し訳ないけどお前が以前したこと・・・・・・勝手ながら俺はこの2人に話しをした」

 

俺はそう言って詩乃に謝罪の意を込めて深々と礼をした。

 

詩乃「へ・・・・・・?」

 

木綿季「哲也に言われてボク達は以前貴女が住んでる街に行ってきたの。」

 

詩乃「な・・・なんでよ・・・!?なんでそんなこと!?」

 

詩乃は恐怖の表情を浮かべながら椅子から立ち上がろうとしたが、俺は詩乃の手を握りそれを阻止した。

 

哲也「俺が勝手にこんなことしたのは本当に悪いと思ってる!!でも お前は会わなきゃいけない人に聞かなきゃいけない言葉があるんだ!!!後で今回のことを詫びる・・・・・・だから頼む詩乃!!!!話を聞いて欲しい!!!!!」

 

詩乃「会うべき人に・・・聞かなきゃいけない言葉・・・?」

 

哲也「そう・・・お前が以前俺と出会い話を聞いたから俺を目標にしたように・・・・・・琴音。」

 

琴音「うん。」

 

琴音はカフェのプライベートルームへ進む扉を開いた。そこから母娘の親子が1組出てきた。

 

木綿季と琴音は立ち上がりその親子に席を譲った。2人は詩乃の前に座った。

 

母親は座り次第詩乃にお辞儀をした。子供である女の子も母娘に続いてお辞儀をした。

 

詩乃「あの・・・貴女は一体・・・」

 

「初めまして 朝田詩乃さんですね?私 この子が産まれるまでは銀行で働いていたんです。」

 

詩乃「銀行・・・・・・っ!?ま、まさかあの時の従業員の・・・・・・!?」

 

「ごめんなさい詩乃さん・・・・・・私はもっと早く貴女に会わなければならなかった・・・・・・謝罪も・・・・・・お礼も何も言わずに・・・・・・!」

 

母親は流れた涙を拭うと、お子さんの頭を撫で始めた。

 

「あの時の事件 私のお腹にこの子がいたんです。だから詩乃さんは私だけでなく この子の命も救ってくれたの。言葉だけではこの感謝は伝えられない・・・・・・本当にありがとう・・・・・・!!!」

 

詩乃「私が・・・・・・命を・・・・・・?」

 

哲也「詩乃 お前はずっと自分のやった行動を後悔し続けてきた。自分に罰を与えようとしていた。それが間違いだなんて俺には言えない でもよ 話聞いたろ?お前は自分のやった行動によって守れた命があったんだ。守れた命の代償は?銀行強盗しようとしていた犯罪者だろ?んなもん銀行強盗に哀れみをくれるやつなんざいない。寧ろ小さな命を救ったお前は感謝されなきゃいけないんだ。今回みたいにな。」

 

俺がそう言い終えると 女の子は立ち上がり詩乃に1枚の絵を渡した。

 

その絵には親子3人が仲良く暮らしている様子が書かれたものだった。

 

「しのおねえさん!ママと私を守ってくれてありがとうございました!」

 

詩乃「っ・・・・・・!!!!」

 

詩乃はその絵を受け取り、女の子からの言葉を受け取ると涙を流し始めた。

 

哲也「なぁ詩乃 俺の話覚えてるか?」

 

詩乃「・・・・・・うん・・・・・・話を聞いてから忘れたことなんて無い・・・・・・」

 

哲也「それは良かった 俺も今までは自分のやった行いが間違いだと思ってきた でも守れた命の代償は前にも言ったがクズの集団だ。人数違えど詩乃は俺と同じことをやったんだ お前がもう今までのことで悔やみ悩む必要は金輪際無いんだ。」

 

詩乃「哲也・・・・・・」

 

哲也「それと、俺は英雄と呼ばれてるが 俺が思う英雄像ってのは 大小限らず その人が心からその行いに感謝したら それはその人にとっての英雄なんだって思うんだ。」

 

俺は少し自分の言ってることに照れくさくなり頭を掻きながら続けた。

 

哲也「俺はSAOを救ったからSAOプレイヤーからは英雄と呼ばれてる。だけど詩乃 お前はそんな俺より遥か先に大きな命と小さな命を救ってるんだ。何が言いたいかって言うとだ お前は俺より先に"英雄になった"んだぜ 詩乃。」

 

詩乃「私が・・・哲也より先に英雄に・・・?」

 

哲也「そう。お前も立派な英雄さ 詩乃。」

 

「えいゆうってなぁに?」

 

お子さんが俺の腕を引っ張り質問してきた。

 

哲也「英雄って言うのはね ヒーローと同じような意味なんだよ。ヒーローは分かる?」

 

「わぁ!ひーろーと同じなんだね!しのさんはえいゆうー!」

 

お子さんはそう言って詩乃の手を握りにっこりと笑った。詩乃もその手を取り笑い返した。

 

詩乃「ありがとう哲也・・・本当に貴方は私にとって永遠に変わらないヒーロー・・・・・・真の英雄よ・・・・・・!!!!」

 

詩乃は涙を浮かべながらも俺に微笑んでくれた。その表情は先程の恐怖を浮かべた顔とは180度違っていた。

 

哲也「先輩にそう言って貰えて嬉しいよ♪」

 

詩乃「本当に・・・・・・本当にありがとう・・・!!!!」

 

詩乃は笑いながらも涙を流していた 俺はその表情を見てもう詩乃はシノンという強い仮面を付けずとも 朝田詩乃という一人物としてやって行けるだろうと確信をした。

 

そしてそれは、女神と呼ばれたシノンが 強くあり続ける為に握り続けた へカートをその手から離した瞬間でもあった。




自身の行った過去を悔やみ続け罰し続けた詩乃。
だが彼女は本来悔やむのでは無く感謝される人物であり蔑まされる理由など一切無いのだ。

そう、彼女は小さな命を救った"英雄"なのだから。

原作では今回でGGO編は終わりますがこの作品では次の話をもちましてGGO編を終わらせて頂こうと思います。

GGO編最終話もお楽しみに!

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