ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~   作:畜生ペンギン

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すいません!話の構成をどうするかでちょっと迷って投稿するのに時間がかかりました!

それでは本編をどうぞ!




Part121 明かされる過去~君を護る誓い~

街を遠く離れた俺は咄嗟の判断ではあったが汽車が走るレールを滑り街に戻り何とかシノンとの合流は果たした。

 

だが、俺の立てた作戦で離れ離れになってしまったせいで大切な仲間であるキリトを失ってしまった。

 

あの時俺は誓ったのに絶対2人は守るって。

 

なのに・・・なのに俺はキリトを・・・・・・!!!!!

 

・・・・・・絶対・・・・・・絶対に仇は取ってやるからな・・・・・・!!!

 

~本戦フィールド・荒野~

 

荒野に来た俺達は身を潜めるためにサテライトスキャンから逃れられる洞窟に入っていた。

 

テツヤ「サンキューな 助けてくれて。」

 

俺はそう言ってあの場で咄嗟に乗った馬を撫でた。

 

機械式だから無反応かと思いきや 喜んだような声が出てきた。どうやらちゃんとこう言ったものにも感情を入れているらしい。

 

シノン「その馬を操作するのも相当に難しいはずなんだけど 何でそんな簡単に?まさかテツヤってリアルだと騎手?」

 

テツヤ「そんなんじゃないさ。前やってたゲームでちょっとな。」

 

俺はキリトのようにバイクの免許を持ってる訳では無いが、SAO時代に移動手段として馬を用いてた時もあった。だからこう言った物なら俺にだって扱える。

 

シノン「・・・・・・そう・・・・・・前の・・・・・・ね・・・・・・」

 

シノンはそう言うと へカートを大事そうに抱えながら座り込んだ。

 

テツヤ「さて・・・・・・シノン 俺がいない間に何があったのかを教えてくれ そしてキリトが何故 デスガンに殺されてしまったのかを。言えるかい?」

 

シノン「・・・・・・うん・・・・・・もしかしたら途中で言葉が途切れるかもしれないけど全部説明するから聞いて・・・・・・」

 

テツヤ「分かった。」

 

こうして俺はシノンから俺がいない間の話を聞いた。スタンバレットを撃ち込まれたかと思えば目の前からいきなりデスガンが現れたこと。今まで引けてたトリガーが急に引けなくなってしまったこと。そして逃げてる最中に乗っていたバイクを吹き飛ばされ キリトがデスガンと応戦したが シノンはデスガンの罠に嵌められ 殺されかけたがそこをキリトに助けてもらい 代わりにキリトが殺されてしまったこと。

 

テツヤ「・・・・・・そうか・・・・・・そんなことがあったんだな・・・・・・キリトらしいと言うか・・・・・・」

 

シノン「・・・・・・私のせいで・・・・・・私のせいで・・・・・・キリトは・・・・・・」

 

テツヤ「悔やむのは後にしろシノン 何もデスガンは完全に死んだ訳じゃねぇんだ。あくまであの爆破は小規模でありダメージも少ない。やれてあのマントを壊せたくらいだろう。」

 

シノン「じゃあ・・・・・・まだデスガンは・・・・・・」

 

テツヤ「そう。まだ終わっちゃいないんだ。終わるまでは犠牲になった人の話は控えるんだ 今は目の前の事に目を向けよう。」

 

シノン「・・・・・・そうね・・・・・・」

 

俺はシノンの座ってる目の前に座り 話しやすいように姿勢を取った。

 

シノン「ねぇテツヤ。キリトから聞いてはいるんだけどあの後貴方はどうやってあそこまで?」

 

テツヤ「じゃあ俺もその辺の説明をしなきゃだな。まずは俺達がデスガンだと思い込んだ銃士Xは女だった。それは聞いたと思う。」

 

シノン「うん。キリトの出番なく倒せたって。」

 

テツヤ「そっ。んでさ 銃士Xと戦う前に『銃士X覚悟!』って言ったら『私の名はマスケティアイクスだ!!!』って言われてよ。女であるし名前も全然違うしで俺らの予想は完全に外したって訳よ。んで マスケティアを速攻で倒した俺はキリトと合流。そしたらスタジアムから倒れてるお前が見えたから援護に向かおうとしたがそこで3人の敵が俺らを狙ってきてこっちまで危ない状況になった訳だ。」

 

シノン「その3人は貴方が引き受けたのよね?」

 

テツヤ「あぁ。キリトには俺が死んだマスケティアから拾った銃とスモークグレネードを渡しておいたんだがキリトは上手く使えてたか?」

 

シノン「だからあの時・・・」

 

テツヤ「その様子だと使えたようだな。まぁそうじゃなきゃシノンからデスガンを離すことなんか出来ねぇよな。」

 

シノン「・・・・・・そうね・・・・・・」

 

テツヤ「あのレーダーに映らねぇってことはデスガンは唐突に現れたんだよな?何か特殊な装備か?」

 

シノン「うん・・・・・・ミラーステルス機能の付いてるマントだと思う・・・・・・あれさえあれば消えることも現れることも自由自在だから・・・・・・あ、でもここの砂は深いし歩けば音が聞こえるはずだからさっきみたいなヘマはしないと思う・・・・・・」

 

テツヤ「そっか。んじゃあ耳をすませておかなきゃな!」

 

シノン「・・・・・・・・・」

 

シノンは無言のまま顔を俯いていた。

 

テツヤ「さて・・・・・・シノン お前はここにいて休んでろよ。」

 

俺は立ち上がり シノンの前を通り過ぎながらそう言った。

 

シノン「へ・・・?デスガンと1人で・・・?」

 

テツヤ「あぁ。今はシノンも引き金を引けない状況なんだろ?なら俺が1人でこの事件片付けてくるさ。それに・・・・・・お前まで殺させるわけにはいかない。」

 

シノン「怖くはないの・・・・・・?キリトは撃たれることを恐れて・・・・・・」

 

テツヤ「そりゃ俺だって怖いよ。死にたくないしね でもその恐れから1歩踏み出すことで俺達人間ってのは先に進めるんじゃないかな。」

 

シノン「・・・・・・あの状況でデスガンに立ち向かえるキリトも強いと思った・・・・・・でも・・・・・・貴方は頭1つ抜けてる・・・・・・あの場面でデスガンに恐れずに懐に踏み込んで攻撃を・・・・・・」

 

テツヤ「あの時はあの野郎が油断し切ってたからな おかげで上手く理想の攻撃を繰り出すことが出来たよ。」

 

シノン「・・・・・・ねぇ・・・・・・私も・・・・・・貴方についていきたい・・・・・・」

 

テツヤ「・・・・・・正気か・・・・・・?」

 

シノン「正気よ・・・・・・!あの時言ったでしょ・・・生半可な気持ちじゃ無いんだって・・・!!!」

 

テツヤ「・・・・・・・・・」

 

俺は1度シノンの前に立ち、肩に手を置きそのままシノンの目線に目を合わせるようにしゃがんだ。

 

テツヤ「心を鬼にして正直に言う。迷惑だ 引き金も引けねぇようなスナイパーが着いてきてなんになるんだ。マントを壊して安心してるのかもしれないがあれは悪魔で俺の仮説であって本当に壊れたかなんて分かりゃしねぇ。今のお前が俺に付いてきたところであの野郎に近づかれて今度こそ死ぬぞ。」

 

シノン「っ・・・・・・・・・」

 

俺だって本来仲間にまして女の子に対してこんなこと言いたくない。でもこうでも言って突き放さなきゃシノンは付いてくる。現状それだけは避けなければいけない。

 

テツヤ「分かったな。お前はここで大人しく・・・」

 

シノン「死んでもいい・・・・・・」

 

テツヤ「なっ!?何言ってんだよ!!!」

 

シノン「もう嫌なの!!!何もかもに恐れて何も出来ない自分が!!!」

 

テツヤ「っ・・・・・・シノン・・・・・・」

 

シノン「子供の頃より大きくなったのは図体だけで精神面ではちっとも強くなってない・・・・・・!!!!!もうそんなの懲り懲りなのよ・・・・・・!!!怖いからって悲鳴あげて助けを求めて・・・・・・銃口を向けないから仲間になれと言われてそれに素直に応じた結果・・・・・・キリトが・・・・・・!!!」

 

テツヤ「さっき言ったろ?俺だって怖いんだ。それだったら俺とお前は一緒だろ。別に怖がることに恥じることなんて・・・」

 

シノン「それが嫌なのよ・・・・・・!怖がって・・・・・・怯えてビクビクと過ごすなんて・・・・・・!!!!!疲れたのよ・・・・・・もう・・・・・・全てに・・・・・・だったらアイツと刺し違えてでも・・・・・・私は・・・・・・!!!」

 

そう言ってシノンは立ち上がりながらへカートを持った。俺はその手を掴みシノンのことを引き止めた。

 

テツヤ「犬死することが今のお前に出来る最善の手だってのか!?」

 

シノン「それが私の運命だったのよ。貴方に勝って あの人に強くなった私を見せたいだなんて夢物語描いてたのが馬鹿らしいわ。 テツヤ 離して。私アイツと・・・」

 

テツヤ「自暴自棄にでもなったか!?考え直せよシノン!!!お前が死んだその瞬間どうなると思うんだよ!?ただ死ぬんじゃない!お前の周りの人のお前という存在が死ぬんだ!!!そうなると心にでかい穴が開くんだよ!!!その穴は埋めようとも埋めようとも埋まりはしない穴だ!!!お前はそんな穴を皆に作りてぇのか!?」

 

シノン「私に周りの人なんていない!!!!!ずっとずっと孤独だった!!!!!だから関係ない!!!!!」

 

テツヤ「馬鹿野郎!!!!!だったら今の目の前にいる俺は何なんだ!?もう俺の心の中にもシノンっていう存在が組み込まれてんだよ!!!!!」

 

シノン「誰がアンタの心に私を組み込めって頼んだのよ!!!!!私は私を誰かに預けたことなんて・・・・・・!!!!!」

 

テツヤ「ふざけんなこの野郎!!!!!なら身体を張ってお前を守ったキリトの犠牲は一体なんなんだよ!!!!!!!!!!」

 

俺は思わずシノンの胸ぐらを掴みながらそう言ってしまった。

 

テツヤ「キリトがいてくれたからお前はここにいるんだろ!?そして俺もいるからお前はここにいる!!!!!既に2人の人間に自分のこと預けといて何言ってやがる!!!それに俺とお前はこうして関わってるじゃねぇかよ!!!!!お前と俺は既に互いに互いのことを預かってんだよ!!!!!」

 

シノン「なら・・・・・・なら・・・・・・!!!」

 

シノンはそう言うと俺の胸ぐらを掴み返してきた。

 

シノン「なら!!!貴方が私を一生護ってよ!!!!!」

 

そう言いったシノンの目から 涙が零れ落ちていた。

 

シノン「何もかも知らないくせに・・・・・・!!何も出来ないくせに・・・・・・!!!勝手なこと言わないでよ・・・・・・!!!!!これは私の・・・・・・私だけの戦いなのよ・・・・・・!!!!!負けて死のうが・・・・・・誰にも私を責める権利なんてない・・・・・・!!!!!」

 

テツヤ「シノン・・・・・・」

 

シノン「それとも貴方は背負ってくれるの・・・・・・!?この・・・・・・人殺しの・・・・・・手を・・・・・・!!!!!」

 

テツヤ「っ・・・・・・!?」

 

シノン「貴方は握ってくれるっていうの!?この汚れ切った手を!!!!!!!!!!」

 

人殺しの手をって・・・・・・シノン・・・・・・お前・・・・・・人を・・・・・・?

 

シノン「幼い頃からずっとそうだった・・・!こんな汚れた私を救おうとする人なんてまず現れない・・・・・・!!!ずっとずっと人殺しと言われ続けた・・・・・・!!!!!それは数年経った今だって同じ・・・・・・!!!!!なら貴方は私を支えられるの!?血に溢れ人を殺めたこの私を!!!!!」

 

テツヤ「・・・・・・そうか・・・・・・そんな過去があったんだな・・・・・・」

 

シノン「何も知らないくせに私を説教するな!!!この馬鹿テツヤ!!!!!」

 

シノンは泣きながら俺の肩付近を何度も何度も殴ってくる。数発殴り終えたところで シノンは俺の胸に顔を填め 本格的に泣き出した。

 

シノンのその涙は GGOナンバーワンスナイパーと言われてるとは思えないほどに か弱くて 何かを求めてるかのような物だった。

 

シノン「嫌いよ!!!!!大嫌い!!!!!アンタなんか!!!!!カッコつけて約束した癖に全然約束守れてないじゃない!!!!何が安心しろよ!!!!!何が危険な目には合わせはしないよ!!!!!!!!!!この男女!!!!!!!!!!」

 

俺は涙目で訴えてくるシノンに何も言えずに ただただシノンのことを見ることしか出来なかった。

 

シノンは泣き崩れ、俺の膝に手を付けながらただ泣き続けた。シノンの泣き声が小さな洞窟の中で何度も反響していた。

 

数分してシノンは泣き止んでくれた。互いに落ち着いて一旦座ることにした。

 

シノン「アンタのことは大嫌いよ・・・・・・でも・・・・・・今は休ませて・・・・・・」

 

そう言ってシノンは俺の膝の上に寝転がってきた。

 

俺は黙ってシノンことを見ていた。そしてシノンの口が開きこう言った。

 

シノン「テツヤ・・・・・・私ね・・・・・・人を殺したの・・・・・・」

 

テツヤ「・・・・・・そうか・・・・・・」

 

シノン「貴方は怖がらないの・・・?」

 

テツヤ「とにかく聞かせてくれ シノンの過去って奴を。」

 

シノン「うん・・・・・・5年前 東北の小さな街で起きた銀行強盗の事件があるの。報道では犯人の死因は銃の暴発と報じられた。でも実際は その場に居合わせた私が強盗の銃を奪って 撃ち殺したの。」

 

テツヤ「5年前って・・・」

 

シノン「11歳の時。私ね それ以来銃を見ると吐いたり倒れたりしちゃうの・・・・・・銃を見ると目の前に殺したあの時の男の顔が浮かんできて・・・・・・それがとてつもなく怖いの・・・・・・どうしようもなく・・・・・・」

 

テツヤ「ならなんでお前はGGOにいられるんだ?こんな世界シノンにとっちゃトラウマ製造機じゃないか。」

 

シノン「この世界なら何故か銃を見ようが触れようが平気だったの。だからこう思った この世界で1番強くなるんだって そしたらきっと現実での私も強くなれるって あの時のことを忘れられることが出来るって。でも デスガンに襲われた時 怖くて いつの間にかシノンでは無くて 現実の怯え続ける私に戻ってた。死ぬのは怖い。でも・・・それと同じくらい怯えたまま生きるのは嫌なの・・・・・・!デスガンと・・・・・・以前の記憶と戦わずに逃げたら・・・・・・シノンですら弱くなってしまう・・・・・・!!!だから・・・・・・だから・・・・・・!!!!!」

 

テツヤ「そうか・・・シノンも苦労してあの結論を出したんだな・・・」

 

シノン「誰からも支えてもらえないから私1人でどう強くなりどう変わろうかを考えてきた。でもね、そんな私にもようやく 私のことを理解してくれそうな人が現れたの。」

 

テツヤ「そうなのか?」

 

シノン「うん。その人とは完全なる偶然で出会ったんだけど その人も 私と同じように人を殺していたの。しかも 30人もの人をね。」

 

テツヤ「さ、30!?そりゃ結構な人数を・・・」

 

30か・・・・・・俺も35人を殺ってるから分かるけどきっとその人も内心では辛い日々を送ってるんだろうなぁ・・・・・・

 

シノン「その人はね 私の相談を聞いてくれた上に その人が人を殺したっていう秘密まで教えてくれたの。まだその人には私の秘密も言えてないから次に会えた時に言うんだ 私も人をって。」

 

テツヤ「そうか。聞いてくれるといいな。」

 

シノン「うん。それとね その人は私がこの先どう道を歩むべきかをも教えてくれた、私にとってはヒーローのような存在なの。それに 30人を殺しても私のように怯えてるのではなくて 普通に人生を謳歌していた。可愛らしい彼女もいたしね 私も 彼のようにそうなりたい。」

 

テツヤ「男だったのか その人ってのは。」

 

シノン「そうなの。言ってる言葉に重みがあって 私は彼のようになりたい。それでね 決めていたの 本戦で貴方を倒し 強いシノンを超えたもっと強いリアルの私で 彼に会うんだって。」

 

テツヤ「成程・・・じゃあ俺も超えなきゃいけない踏み台って訳だな。」

 

シノン「私の心の中はずっと曇に覆われている。二度と晴れることは無いと思った 彼と出会えたあの雨の日のように。そう言ったら彼は『雨はどんな時でも止む そして雨の次は晴れやかな晴天だ だからいつか君にも晴れが来るよ』ってね。」

 

テツヤ「そっか・・・・・・いい事言うな・・・・・・その人・・・・・・」

 

シノン「その時に彼から傘を貰えたの。私その傘を一生大事にするつもりなんだ その傘を彼だと思って持っておきたいの。」

 

・・・・・・あれ?彼と出会えた雨の日・・・・・・雨の次は晴れ・・・・・・彼から貰えた傘・・・・・・?

 

そ・・・その彼ってまさか・・・・・・?

 

シノン「それにね 彼は貴方と同じポリシーを持っていたの。」

 

テツヤ「へ?そ、そのポリシーって・・・?」

 

シノン「私を助けてくれた時こう言ったでしょ?『手の届く範囲の人はこの手で助けたい』って。彼も貴方と同じことを言ってたの 最初に聞いた時は驚いたわ。」

 

テツヤ「・・・・・・その彼・・・・・・SAOサバイバー・・・・・・か?」

 

シノン「え、えぇ。そうよ。良くわかったわね。」

 

テツヤ「な、なら彼の彼女の髪型は今の俺っぽくて紫色だったか?」

 

シノン「そうだったわね。それがどうかした?」

 

俺はシノンのその一言で確信した。雨の日に出会った彼 同じポリシー 彼から貰った傘 30人を殺したSAOサバイバーであり彼女はロングヘアーの紫色の髪色・・・・・・って・・・・・・

 

テツヤ「そうか・・・・・・世の中は広いようで狭いんだな・・・・・・」

 

シノン「へ?」

 

テツヤ「俺のあげた傘 そんなに大切にしてくれてるんだな シノン。」

 

シノン「へ?俺の傘・・・・・・ってまさか・・・・・・まさか貴方が・・・・・・!?」

 

テツヤ「あぁ。俺がお前の言う彼だよ。シノン。」

 

シノン「なっ・・・・・・!?」

 

このシノンの反応 思った通りだ。

 

シノンの言っている彼とは 俺の事だったようだ。

 

シノンは酷く驚いた表情でずっと俺の事を見つめていた。

 

シノン「じゃ・・・じゃあ・・・貴方は・・・ほんとにあの・・・・・・?」

 

テツヤ「あぁ。君の相談を受けた高校生だよ。」

 

シノンは俺の言葉を聞くと、横たわった状態から座り直し その状態で俺に抱きついてきた。

 

テツヤ「し、シノン?」

 

シノン「アンタなんか・・・・・・アンタなんか大嫌いなのに・・・・・・!!!でも貴方はあの彼であって・・・・・・!!!もう何なのよ・・・・・・!!!!!」

 

テツヤ「そ、そう言われても・・・ほ、ほら?奇跡の偶然ってのもありえる話じゃん?」

 

シノン「大嫌いよ・・・・・・でも・・・・・・今こうして貴方がここいてくれる事が・・・・・・何より心強い・・・・・・!!!!!」

 

シノンはそう言うとしがみつくように再度抱きついた。

 

テツヤ「シノン・・・・・・」

 

シノン「何も恐れずに立ち向かえる貴方の存在が嬉しい・・・・・・!でも・・・・・・私はそれに甘えてる・・・・・・!貴方のようになりたいのに・・・・・・このままじゃ私は一生おんぶされて生きていく弱い人間になる・・・・・・!」

 

シノンの身体は震えていた シノンの性格から察するに 己の弱さが悔しくて悔しくて仕方が無いんだろう。

 

テツヤ「さっき言ったよなシノン 俺だって怖いって。」

 

シノン「でも貴方には恐怖心に打ち勝つだけの心の強さがある・・・・・・私にそれは無い・・・・・・!!!」

 

テツヤ「・・・・・・俺ももう1つ隠し事があったんだ・・・・・・聞いてくれるかい?一度離れてくれると嬉しいな。」

 

シノン「わ、分かったわ・・・」

 

シノンは俺から離れ、俺の目の前に座った。

 

シノン「・・・どんな隠し事なの・・・?」

 

テツヤ「30人殺したのもそうだが 俺が本来殺めた人数は35人。30人以前に5人のプレイヤーを俺が殺していたんだ。」

 

シノン「さ、35人!?」

 

テツヤ「そう。デスガンのようなテロリスト達 SAO時代ではそいつらはラフィン・コフィンと言われてた人殺しの集団でな、 そいつらと闘った血の惨劇って呼ばれるSAO史上最悪の戦闘があった。その闘いには俺やキリトも参戦してた。その闘いはまさに悲惨な物でな 敵味方合わせてSAO史上最多の死者が出たんだ。そこで俺は5人を キリトは2人を殺した。」

 

シノン「キリト・・・・・・じゃあさっきデスガンが言ってたことは・・・・・・」

 

テツヤ「その様子だとデスガンのやつは言ったみたいだな キリトの過去のことを。だけどな?1つ違うのはアイツらの殺しはただ快楽のために行ったもの。俺とキリトの殺しは殺らなきゃ殺られてた 所謂正当防衛の物だったんだ。絶対にアイツらと一緒の殺しなんかじゃない。」

 

シノン「で、でも貴方はこう言ってたよね?殺しに正当もクソもって。」

 

テツヤ「あぁ。自分のやったことは正しいって思ってるくせに 夢に出るくらい未だに悔やんでた心の弱い男の逃げ道作りだ。」

 

シノン「心の・・・弱い・・・?」

 

テツヤ「そう。俺は君の前で偉そうに道を説いたように見えるが その実まだまだ精神面が貧弱な男なのさ。」

 

シノン「で、でもならなんでデスガンに立ち向かえるの?殺した相手の仲間なのよ?」

 

テツヤ「そいつは今日のログイン前に俺の中で考えが変わったからさ。まずそれを話す前にこれも言っとくか 俺はSAOサバイバーであり、SAOをゲームクリアに導いたプレイヤーなんだ。」

 

シノン「へっ!?あ、貴方が!?」

 

テツヤ「そう。生還した皆は俺の事を英雄と呼び始めた。俺もまたその声に応えようとした 俺の中で英雄とは不殺を貫き皆を導く物だと思っていた。だが俺は言った通り35人の人間を殺した人殺しだ 俺は理想の英雄像と自分を重ねていく内に 俺は英雄なんて名乗れないただゲームをクリアしたに過ぎない人殺しだって思った。」

 

シノン「そう・・・・・・なのね・・・・・・貴方も苦悩し続けていたのね・・・・・・」

 

テツヤ「そして英雄は孤高の存在だとも思った 孤高でいるからこそ 他の人の前では常に堂々と強くあらなきゃならないと。あの時シノンの目には平常心の俺が写ったかもしれないが 内心ではビクビクしていたんだ。俺が殺した奴らの仲間がってな。色々なことを考えた俺はこう結論付けた。 俺はただ祭り上げられてる似非の英雄とな。」

 

シノン「似非の・・・英雄・・・」

 

テツヤ「でも、シノンにとっての俺のように 俺もまた自分の考えを変えてくれる人がいてくれたんだ。それが昨日の夜と今日ログインする前の話さ。」

 

シノン「その人は貴方に何を?」

 

テツヤ「それぞれ別の人ではあるんだ。昨晩の人はSAO時代の仲間だったんだがその人には35人を殺した以上に何千人もの命を救えたんだから俺の行動に間違いはないって。そして今日の人はSAO時代の俺を知らなかったから全部打ち明けたんだ。俺の話全部聴いた上でその人はそんなクズ共に殺してしまったなんて善意を向ける必要は無いって言ってきた それと同時に英雄が手を汚すのは当たり前のことだとも言った。その2人の言葉で俺は気づかされたんだ 俺の進んだ道に1つも間違いはない 俺は正真正銘の英雄だと。」

 

シノン「じゃあもう貴方の中に恐怖や迷いは無いの?」

 

テツヤ「さっきも言ってたけど死ぬことはやっぱり怖いよ。でも、もう迷いはしない 俺は仲間の為に そして散ってしまったSAOプレイヤーの為に 剣を振るう。無論今俺の剣はお前の為に捧げるぜ シノン。」

 

シノン「テツヤ・・・・・・」

 

テツヤ「なぁシノン この頬の傷の意味がなんなのか知りたがってたよな。」

 

シノン「その頬の傷が貴方の力って言ってたわよね?どういう意味なの?」

 

テツヤ「この傷はな 俺の覚悟の象徴なんだ。もう二度と目の前で仲間は殺させないっていうな。」

 

シノン「覚悟・・・」

 

テツヤ「この傷を付けることで俺はあの地獄のような日々のことを思い出せる。だから今日この傷をあえて付けてきたんだ。だが、俺は今日・・・・・・キリトを・・・・・・」

 

シノン「それは貴方が悪いんじゃない・・・・・・私が・・・・・・」

 

テツヤ「・・・・・・この話は今はよそう・・・・・・話してく内に俺の中の何かが壊れちまいそうだ・・・・・・そしたらお前まで守れなくなる・・・・・・」

 

シノン「わ、分かったわ・・・」

 

テツヤ「シノン この傷にかけて 俺はお前を殺させやしない。絶対に守ってやる 約束だ。」

 

シノン「・・・・・・次は無いからね・・・・・・」

 

テツヤ「セカンドチャンスで充分だ。さぁ シノン 手を出して。」

 

シノン「へ?」

 

シノンは俺の言う通り手を差し出した。俺はその手をギュッと握った。

 

テツヤ「シノン お前1人の手くらい幾らでも背負ってやる 握ってやる。俺の手なんかはお前より遥かに血に汚れた汚い手かもしれないが それでも構わないか?」

 

シノン「っ・・・・・・テツヤ・・・・・・」

 

テツヤ「一生とは言えない 今この場面 俺にお前の命預けてくれないか?」

 

俺はそう言いながらシノンの頭に手を置いた。

 

テツヤ「それとも シノンより血に汚れた俺の手なんかじゃ助けられたくなかったかな?」

 

俺は笑いながらそう言った。俺の事を唖然としながら見つめていたシノンは、シノンの手を握っていた俺の手に涙を流し始めた。

 

シノン「こんなに・・・・・・こんなに手って温かいのね・・・・・・」

 

テツヤ「お前の小さな手くらい幾らでも握ってやるさ。俺のリードでよければ幾らでも支えてやるさ。だからもう俺の前で涙は流さないでくれないか?大切な仲間に涙は流させたくないからさ。」

 

俺はそう言って涙袋に溜まっていたシノンの涙を指で拭き取った。

 

シノン「じゃあ・・・・・・今の私を・・・・・・貴方に預けるね・・・・・・」

 

そう言ってシノンは俺に抱きついた。

 

テツヤ「うん。預からせてもらうな シノン。」

 

俺は抱きついたシノンを抱きしめ返した。先程で震えていた身体の震えはもう止まっていた。

 

シノン「温かい・・・・・・貴方の温もりを感じる・・・・・・人ってこんなに温かいんだね・・・・・・」

 

テツヤ「ずっとずっと寂しかったよな・・・・・・1人で・・・・・・でももう大丈夫・・・・・・お前には俺がいるからな・・・・・・」

 

シノン「女神が死神に助けられるなんて話・・・・・・聞いたことないわね・・・・・・」

 

テツヤ「確かにそうだな・・・・・・でもシノン 俺は普通の死神なんかじゃない。 俺は人を助ける為に降臨する神 正義の死神だ。」

 

シノン「正義の死神・・・?」

 

テツヤ「SAO時代の上司的存在に俺の殺しのことを言ったら 君の殺しは正義の為の殺しだって言われてな。そしてこう言われた 正義の死神とな。俺はその名に恥じぬ生き方をしたい 弱気を助け悪を滅ぼす死神になるんだ。」

 

シノン「そうなのね・・・・・・きっと貴方ならなれるわ。本物の正義の死神にね。」

 

テツヤ「ありがとな。女神に言われたら自信も出てきたよ♪」

 

シノン「全く お調子者ね貴方は。」

 

テツヤ「シノン 君だけは必ず護る 君に涙は流させない これは俺の誓いだ。」

 

シノン「今度こそ・・・絶対にこの約束は守ってね・・・・・・」

 

テツヤ「あぁ。互いに生き抜いて絶対にもう一度戦おう。そしてトラウマを乗り越えよう。」

 

シノン「うん。貴方と一緒ならもう怖くない それに私にはへカートがある。貴方とへカートと一緒にトラウマを乗り越えてみせるわ。」

 

テツヤ「その意気だ 今は英気を養って次のサテライトスキャンの時を

使って作戦を立てよう。」

 

シノン「了解。もう少しだけこうしてていい?」

 

テツヤ「構わねぇよ。自分は1人じゃないんだってことを味わっとけ。」

 

シノン「ありがとう テツヤ。」

 

そう言うとシノンは更に強く抱きついてきた。俺はシノンの頭を軽く撫でてやった。

 

次のサテライトスキャンは恐らくまだ大分先だろう。馬に乗ってる時に更新されたがその時は見れていないからな。ただその時間をこうして使えるのは今の俺達にとっては何よりのプラスだ。今のうちに恐怖心は全部取り除いて安心感に変えといてくれよな シノン。

 

そしてデスガン・・・・・・キリトを殺った貴様だけは何があろうと許さない・・・・・・俺がこの手で必ず倒す!!!!!




遂にテツヤはシノンの辛い過去を知ることとなった。誰からも手を差し伸べて貰えない辛い現実を。

そしてシノンはテツヤが2度相談に乗ってくれたあの高校生だということを知り、強い安堵感を得る。

テツヤはシノンと交わし守れなかった約束と キリトを護れなかった悔やんでも悔やみきれない想いを胸に 再度シノンに約束を交わす。

テツヤは無事にシノンを護り抜き、今度こそ誓いを果たすことが出来るのだろうか?

次回もお楽しみに!

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