ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~   作:畜生ペンギン

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今年も8月に突入し、つい最近までなんともなかったのに嘘みたいに暑くなりましたね。

皆さんも熱中症に気をつけ、夏をエンジョイしてください!

さて、今回の話の一人称視点はシノンでお送り致します!

ではどうぞ!


Part120 諦めない~託された想い~

キリト「はぁ!!!」

 

死銃「むっ・・・!」

 

バイクで逃走を図っていた私とキリトだったけど デスガンの操る馬にバイクを吹き飛ばされしまいバイクが使えなくなり逃走はほぼ不可能に。

 

そして、私自身もトラウマと死への恐怖からスナイパーだと言うのに引き金も引けない役立たずとなってしまった。GGOナンバーワンスナイパーがこれだなんて失笑ものね。私のGGOにおける強さは所詮泡沫のような脆さだったんだ。それなのにデスガンを倒してテツヤと戦おうなんて 私は酷い夢物語を描いていた。既に私の中の闘志は半分消え去り、ほぼ諦めかけていた。

 

けれど、キリトはテツヤを信じて戦い続けている。録に使い物にならない私を庇いながら 必死に。

 

もう良いよ 止めてキリト 貴方は逃げて 逃げたその先でテツヤと合流してよ。私なんて所詮昨日今日出会ったばかりの人間でしょ?なのに、なんでそこまでしようとするの?

 

キリト「はぁ・・・はぁ・・・!」

 

死銃「随分とバテバテじゃないか。ぬるま湯に浸かったような生活をしてればそうなるか。」

 

キリト「このくらいどうってことない・・・!!!シノンの苦しみに比べれば!!!」

 

死銃「死ねば全て楽になるものを・・・・・・言ったはずだ。俺に狙われたお前らの生存確率は0だと。」

 

キリト「それはお前の勝手な理屈だ!!!俺は死んだなんて1ミリも思っちゃいない!!!」

 

死銃「まぁ良い・・・直ぐにあの世で後悔することになるだろう・・・」

 

キリト「それはこっちのセリフだ!!!」

 

キリトは光剣とファイブセブンを巧みに操りデスガンに詰め寄り攻撃をしかける けれど キリトはデスガンの持つハンドガンに恐れて後一歩詰めれないという状況が続いていた。

 

いつもなら・・・本来なら私がキリトを援護出来てるのに・・・・・・でも・・・あの時の光景がチラつくと・・・入れようとした力が一瞬で抜けていく・・・・・・

 

テツヤを倒すことで強くなるなんて言ってたくせに・・・!昔の私から変わるって言ったくせに・・・!!あの銃1つでこんな状態になってたら結局何も変わらないじゃない・・・!!!

 

なんで・・・・・・なんで私は・・・・・・あの時引き金を引いてしまったの・・・・・・?

 

ただ撃たれそうだったお母さんを助けたかった・・・その一心で私は強盗犯に立ち向かったのに・・・何故あの時あの銃を拾い・・・私の指はトリガーを引いたの・・・・・・?

 

こんなことに・・・こんな目に合うなら・・・・・・あの時あんなことしなければ・・・・・・!!!

 

死銃「どうした?コイツが怖いか?キリト。」

 

死銃はそう言いながらキリトに向けて黒星54式を向けた キリトは光剣を構えながら身構えた。

 

キリト「くっ・・・」

 

死銃「それもそうだろうな。無闇矢鱈と近づけばお前は一瞬で死ぬ。怖いか?死ぬのは。」

 

キリト「黙れ!!!とうの昔に恐れなんて捨ててきた!!!今更脅しをかけたところで無駄だ!!!!!!」

 

死銃「ふんっ 強がりを。本当に怖くないというのなら何故お前は俺の懐にまで飛び込んでこない?」

 

キリト「っ・・・・・・それは・・・・・・」

 

死銃「そうだろう 怖いだろう 死ぬのは でも今更遅い もう貴様の行く末はあの世と決まっている。口ではどうとでも言える 怖くないとな。たがどうだ?実際問題貴様は先程から俺に1度もその剣で俺を捉えることは出来ていない。」

 

キリト「くっ・・・」

 

シノン「キリト・・・」

 

そんなの誰だって怖いに決まってる。デスガンに撃たれたら死ぬ これ以上単純明快で恐ろしい物もそうは見つからない。

 

そして、デスガンの次に放った言葉に私は酷く驚いた。

 

死銃「どうだキリト 死んで我らの仲間に償いでもするか?貴様が"殺した"2人にな。」

 

キリト「っ!!!」

 

シノン「なっ!?」

 

ど・・・どういうこと・・・キリトが・・・殺した・・・!?

 

死銃「正義を気取ってはいるが実際貴様は何をした?正義という偽善の元に行われた殺人だろう?」

 

キリト「黙れ!!!!!!いいか!!!!!貴様らはそれ以上に何百人もの罪無きプレイヤーを殺してきた!!!!!!その癖に仲間が殺されたら殺人鬼扱いだと!?ご都合主義もいい加減にしろ!!!!!」

 

死銃「ふんっ。人を殺したその瞬間にどんな奴であろうと殺人鬼と化す。そこに善悪などは関係は無い。ただ対等に与えられた命を奪ったという事実のみだ。」

 

キリト「勝手な理屈を!!!!!」

 

キリトはそうは言ってはいるが 先程までと比べて明らかに冷静ではない。少し興奮気味の状態だった。

 

やってない人ならただ否定するだけで終わるはず・・・・・・そうなると・・・・・・本当にキリトは人を・・・・・・?

 

死銃「キリト 正義の基に 正当防衛の基に殺しをした人間はどうなったと思う?」

 

キリト「そんなの俺が知るわけがないだろ!!!お前の戯言に突き合わせるな!!!」

 

死銃「まぁ聞け。例を挙げてやる 小学生高学年である少女はある日 母親と銀行に向かった先で強盗に出くわした。要するに銀行強盗だ。相手は拳銃を持った凶悪犯 そしてその銃口は少女の母親に向けられた。少女は母親を助けたいその一心で強盗に立ち向かった 結果助けられたは良いが 少女は自分の手を汚した 銃で相手を撃ち抜くことでな。銃は相手が落とした隙に拾い上げたもの 強盗犯が再度奪い返そうとした際に気づいた時には引き金を引いていたそうだが、これも立派な殺人。そうだろう?」

 

シノン「なっ・・・!?」

 

デスガンの言っているエピソードは 間違いなく私の過去の出来事だった。でもなんでコイツなんかが私の過去を・・・・・・?

 

デスガンは私のことを知っている・・・・・・!?

 

キリト「・・・・・・確かにな・・・・・・」

 

シノン「っ・・・」

 

そういったキリトの声は 今までに無く暗く、重いものであった。

 

・・・・・・やっぱりそうだよね・・・・・・殺しに・・・・・・正当も何も・・・・・・私の汚れた手が元に戻るなんて・・・・・・

 

・・・・・・貴方も言ってたもんね・・・・・・殺しに正当もクソもないって・・・・・・

 

キリト「確かにその子は人を殺めてしまったのかもしれない。でもその代わりにかけがえのないもの物を守れたのもまた事実だ。結果は殺してしまったかもしれないがそれで得るものがあったのなら その子の取った道は正しいんだ。」

 

死銃「ほぉう・・・」

 

キリト「いいかデスガン お前らの殺しはなんの生産性も無い純粋な悪の心で行ってきたものだ。だがな!!!その子も俺も!!!守りたいものの為に戦った結果だ!!!確かに人を殺したさ!!!でもそれに代わって俺もその子も大切な物を守れたんだ!!!!!守るものも無く無闇に殺しをした貴様らと一緒にするな!!!!!」

 

死銃「・・・・・・なら俺も貴様の言葉を使わせてもらおうじゃないか・・・・・・勝手な理屈を述べるなとな。」

 

キリト「何だと!?」

 

死銃「先程の少女の話の続きと行こう。殺しをした少女に待ってた現実はなんだと思う?良くやったという称賛の声か?」

 

キリト「・・・・・・それは分からない・・・・・・」

 

死銃「そうだろうな。その少女は人殺しのレッテルを貼られ、毎日毎日その事を言われ続けたそうだ。アイツは人を殺したから近づくな等とな。」

 

キリト「っ・・・・・・それは何も知らない第三者の言った言葉だ!!!その子にはなんのダメージも・・・・・・!!」

 

死銃「小学生高学年ともなれば強い自我も生まれる頃合いだ。かと言って色々なことの善悪がまだまだしっかりと掴めない年頃でもある。そんな子供達が母親にあの子には近づくな等と言われればその時をもって子供達にとってはその少女はただの人殺しと化す訳だ。」

 

なんで・・・・・・なんでコイツは私の全てを知ってるの・・・・・・!?本当に私の知り合い・・・・・・なの・・・・・・!?

 

シノン「いや・・・もう言わないで・・・!!!!!」

 

私は思わず耳を塞いだ。

 

キリト「し、シノン・・・?」

 

死銃「現在少女は高校1年生となった。地元を離れやっと普通の生活が送れると思った矢先 早速その少女の過去の出来事が何者かに暴露されてしまう 今度は小学生では無く高校生 口だけでなく行動による虐めも横行する。その少女のトラウマであるハンドガンをちらつかせることでカツアゲを行ったりとな。」

 

キリト「な、なんなんだお前は・・・何故赤の他人であるその少女の事を・・・・・・!!!!!」

 

死銃「ハンドガンを見せつけられた少女は怯え 酷いときでは嘔吐をしたりと醜い惨状となる。そう・・・・・・このようにな!!!!!!!!!!」

 

そう言ってデスガンは私に銃口を向けてきた。

 

その銃口を見た瞬間 あの日あの時あの瞬間が脳裏に浮かび上がり どんどん息苦しくなっていった。

 

シノン「いや!!!!!止めて!!!!!その銃を私に向けないで!!!!!!!!!!!!!!!」

 

私は視覚の情報を止めるために目を閉じた ずっと見ていたら今の私では再起出来なくなってしまう。

 

キリト「し、シノン・・・・・・っ・・・・・・!ま・・・・・・まさか・・・・・・その少女って・・・・・・!?」

 

死銃「察しの通りだ。 ここにいる皆1度は殺人を犯してる殺人鬼の集まりという訳だ。滑稽だな?人を殺してる俺を止めようとしてるのは 同じ人殺しだ。人殺しが何故人殺しを咎める?同じ人殺し同士仲良くしようじゃないか? 怯えてる女神様もその方が気が楽になるんじゃ無いか?」

 

シノン「もう止めて!!!!!!!!!!私の過去を掘り返さないで!!!!!!!!!!」

 

キリト「そう・・・・・・だったのか・・・・・・君も・・・・・・」

 

死銃「女神よ 1つ提案をくれてやろう 俺の仲間になれ。」

 

シノン「なっ・・・!?」

 

死銃「俺の仲間になればもうお前にコイツは向けないでやろう 俺の仲間となりここにいるキリト そしてテツヤを殺すんだ。お前の手でな。」

 

キリト「シノン!!!!!奴の話しを聞くな!!!!!騙されるな!!!!!」

 

死銃「どうする 仲間になるか ならないか 気にするな お前は既に1人殺してる。今更2人増えようが後の祭りだ。」

 

シノン「・・・・・・私は・・・・・・」

 

・・・・・・仲間になれば・・・・・・もう二度とあの銃が私に向けられることは無い・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・ごめんね・・・・・・キリト・・・・・・・・・

 

私はゆっくりとゆっくりとデスガンのいる方へ足を向けた。もう あんな思いしたくはない。あの恐怖を味合わないで済むなら なんだってする。

 

キリト「シノン!!!!!行くな!!!!!!!!!!止まれ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

私はキリトの静止を無視し、デスガンの目の前に立った。

 

死銃「どうやらこちらの方が利口のようだ。約束だ コイツは向けないでやろう。」

 

そう言ってデスガンは所持していた黒星54式をホルスターの中に入れた。

 

良かった これで これで私はあの恐怖から解放されるんだ。

 

シノン「キリト・・・・・・ごめんね・・・・・・」

 

キリト「シノン・・・・・・!!!!!」

 

死銃「・・・・・・精神が乱れた人間程扱いやすいものは無いな・・・・・・」

 

シノン「へ・・・・・・?」

 

デスガンはそう言うと私の脇腹を思い切り蹴飛ばした。

 

シノン「ぐっ・・・!?」

 

完全に無抵抗な状態で蹴りを食らってしまった私は受身も取れずそのまま倒れ込んだ。

 

キリト「シノン!!!貴様ァ!!!!!」

 

死銃「お前の手など借りずとも2人など俺が殺す。お役御免だ。」

 

デスガンはそう言うと もう向けないと言ったはずの黒星54式の銃口を私に向けてきた。

 

シノン「っ!?な・・・なんで・・・!?」

 

死銃「敵は信用するなという訳だ。さらばだ 女神よ。」

 

シノン「っ!!!!!」

 

迂闊だった 馬鹿だった 間抜けだった 普段の私だったらあんな提案間違いなく断っていたのに あの銃1つのせいでこんな事態に陥ってしまった。

 

・・・・・・あんなことだけでこんなことになる位なら・・・・・・もう私なんてここで死んだ方がましね・・・・・・

 

・・・・・・私も・・・・・・貴方みたいに変わりたかった・・・・・・強くなりたかった・・・・・・でも・・・・・・もう無理みたい・・・・・・

 

・・・・・・出来れば・・・・・・晴れ渡った世界を・・・・・・もう一度見てみたかったなぁ・・・・・・

 

撃たれた私はあの時のペイルライダーの様に胸が苦しめられた後に 死んでいくのだろう。私は少しでも苦しみを味合わないために 色々な思いを胸に閉じ込めながら 目を閉じた。

 

そして、その直後に私の耳に銃声音が鳴り響いた。これで私もあの時の強盗犯のように・・・・・・

 

最後にもう一度 雲におおわれたGGOの空を見ようと目を開けた。でも私の目には雲なんて映らずに 目に映ったのは私を守るように四つん這いになっていたキリトの姿だった。

 

キリト「シ・・・シノン・・・大丈夫かい・・・?」

 

シノン「っ・・・!?キ・・・リト・・・!?」

 

死銃「・・・仕留め損なったか・・・」

 

キリト「良かった・・・無事・・・だな・・・」

 

キリトはそう言うと 力を無くしたように横たわってしまった。

 

シノン「キリト!!!!!」

 

私は横たわるキリトを抱えた。でもなんで?なんで私なんかを?

 

キリト「し・・・シノン・・・すまない・・・俺はどうやらここまでのようだ・・・」

 

キリトは弾丸を食らったことでHPバーがイエローにまで落ちていた。それに加え体力ゲージが徐々にだけど減っていってる。奴の弾丸が体内に残りダメージを与えているのだと思う。

 

シノン「なんで・・・!?なんで私を・・・!!!私は貴方を裏切ったのよ・・・!?」

 

キリト「以前・・・俺は目の前で精神が弱った友人が傷付いて行くのを気づけずに助けられなかったんだ・・・俺はその時決めたんだ・・・もう二度と・・・弱った仲間のことは放っておかないって・・・」

 

シノン「だからって貴方が撃たれる必要は無かった!!!!!」

 

キリト「でも・・・結果的には君が助かったんだ・・・それならそれで構わないさ・・・」

 

キリトはそう言うと手に持っていた光剣を私に手渡してきた。

 

シノン「こ、これは・・・?」

 

キリト「良いかシノン・・・奴は今の君が1人で勝てる相手じゃない・・・!!!必ずテツヤと合流するんだ!!!!!これはきっとアイツを倒すための切り札になるはずだ!!!!!」

 

シノン「でも・・・!テツヤが生きてる保証も無いし今どこにいるのかすらも分からないのにどうやって・・・・・・!!!!!」

 

キリト「信じるんだ・・・!テツヤを・・・!そうすれば・・・必ずアイツは君を照らす光となってくれるはずだ・・・!」

 

シノン「キリト・・・・・・」

 

キリト「・・・・・・最後に・・・・・・テツヤに謝っといてくれ・・・・・・こんな所で死んで申し訳ないって・・・・・・」

 

そう言ってキリトは私の手を強く握ってきた。

 

キリト「安心しろシノン・・・・・・なんて言ったってテツヤは・・・・・・俺・・・・・・達の・・・・・・」

 

キリトは最後まで言葉を言い終えることが出来ずに、HPバーが尽きてしまった。

 

そして私を握っていた手は徐々に力を無くし あっという間にキリトの手は脱力してしまった。

 

そして、キリトの頭上に《Dead》の文字が現れた。それはキリトが本当に倒されてしまったことを表していた。

 

シノン「・・・・・・キリト・・・・・・」

 

死銃「順序が変わってしまったがまぁ良い。」

 

そう言ってデスガンは座り込んでいた私の頭に銃口を押し付けてきた。

 

死銃「こんどこそお別れだ。」

 

シノン「っ・・・!」

 

逃げなきゃ 逃げて 逃げてテツヤと合流しなきゃ。キリトの託した想いの全てが無駄に終わってしまう。

 

馬鹿な私何かのためにキリトが犠牲になってしまった。キリトの犠牲を無駄にしちゃいけない・・・・・・!!!

 

シノン「離れて!!!!!」

 

私は意を決してキリトの託した光剣で攻撃した。使ったことの無い武器だから攻撃が当たることは無かったけど デスガンは私の攻撃を避けるために私から離れた。この隙なら!

 

そう思い走り出そうとしたけど デスガンは逃がすことなく私の首根っこを掴み 私を投げ飛ばした。

 

今度は投げ飛ばされた時点で受身を取れたけど私の後ろにはビルがあり、目の前にはデスガンがいる。左右に逃げれば確実にあの銃の餌食に。まさに四面楚歌だ。

 

死銃「いい加減諦めたらどうだ?もうお前に残された道はない。ここで死ぬのが運命だ。」

 

シノン「・・・・・・さっきまでの私ならそう思ったかもしれない・・・・・・けれど今の私はキリトの想いを託されてる!!!!!託された想いを無下にはしたくない!!!!!」

 

死銃「無駄なことを。チェックメイトだ。」

 

そう言ってデスガンは銃口を私に向けてきた。

 

駄目だ 諦めちゃ キリトは諦めずに戦った。なら・・・なら私だって!

 

シノン「チェックメイトかどうかを勝手に決めないで!!!!!」

 

私はそう言いながらハンドガンの銃口をデスガンに向けた。

 

キリトの想いは絶対にテツヤに託す。絶対生き残るんだ。

 

死銃「ほぉう。戦う覚悟ができたのか。」

 

シノン「こんな所で死ねはしない!!!!」

 

私はそう言いながらスモークグレネードをデスガンの足元に向け投擲した。

 

スモークグレネードが作動すると同時に私は走り出した。いくらデスガンと言えど煙の中から私を的確に狙い撃つのは不可能のはず。今の隙に遠く離れるんだ。

 

そう思い走り、煙の外に出ると 私の目の前には既にデスガンがいた。

 

シノン「なっ!?読まれて!?」

 

死銃「この俺に浅知恵の作戦が通じると思うなよ。」

 

デスガンは私の頭を鷲掴みにすると、その場に叩きつけられた。

 

シノン「ぐっ・・・!!!!!」

 

死銃「今度こそ終わりだ 無駄な抵抗もな。」

 

私は頭を掴まれながら銃口を再度押し付けられた。

 

女の私が巨体のデスガンを弾き飛ばすことは出来ない。もう完全に詰みの状態だ。

 

シノン「ここまでなの・・・・・・!!!!!」

 

せっかく・・・・・・せっかくキリトが私に託してくれたのに・・・・・・もう駄目なの・・・・・・!?

 

死銃「さぁ 死の音色を奏でよう。」

 

どこからどう見てももう私に反撃できるチャンスも隙もない。

 

ごめん・・・キリト・・・託された想い・・・繋げられなくて・・・!

 

己の無力さが悔しくて 歯を食いしばりながら最後の時を待つと 聞き覚えのある大きな声が聞こえてきた。

 

「諦めんな!!!!!!!!!!!!!シノン!!!!!!!!!!」

 

シノン「っ!!!!」

 

死銃「っ・・・この声は・・・」

 

デスガンはその声に驚き 私から手を離した。私は直ぐに声のした方向を見た。

 

そこには 汽車の走るレールを滑りこちらに向かっているテツヤの姿があった。

 

シノン「あ、あれってグラインド・・・?」

 

グラインド。それはGGOにおける移動テクニックの1つ。橋やあぁいったレールの上を滑るという単純ではあるけど実際には相当に高い身体バランス能力が必要で出来るプレイヤーはほんの一握りの超高等テクニックの1つ。

 

ただ出来れば長距離の移動を乗り物を必要とせずとも可能となり、敵を撹乱したり 遠く離れた敵と近づくにはうってつけのテクニックだ。

 

死銃「やっと来たか・・・・・・死神・・・・・・!!」

 

テツヤ「お望み通り来てやったぜ殺人鬼野郎!!!!!」

 

テツヤはそう言いながらレールから飛び、私の目の前に着地した。

 

その後ろ姿は 背丈は小さくとも 今の私にはとても大きくて 頼りがいのある背中に見えた。

 

シノン「テツヤ・・・・・・来てくれたんだね・・・・・・!」

 

テツヤ「悪いなシノン。あんなこと言っといてお前を・・・・・・って・・・・・・キリトは・・・・・・?」

 

シノン「・・・・・・キリトは・・・・・・私を・・・・・・庇って・・・・・・」

 

テツヤ「っ・・・・・・そう・・・・・・か・・・・・・馬鹿野郎・・・・・・死ぬなって言っただろうが・・・・・・!!!」

 

そう言ったテツヤは拳を強く握り、わなわなと身を震わせていた。

 

キリトがあれだけテツヤを信用していたと同様に きっとテツヤだってキリトを深く信用していたんだと思う。そんなキリトが死んでしまって悔しさを表さない人間はいないと思う。

 

シノン「テツヤ・・・キリトから貴方に伝えて欲しいことがって・・・こんな所で死んでごめんって・・・・・・それと・・・・・・キリトがコレをテツヤにって・・・・・・」

 

テツヤ「俺に・・・・・・?」

 

私はテツヤにキリトが残した光剣を手渡した。

 

テツヤ「これは・・・・・・」

 

シノン「キリトはこうも言ってた・・・コレはきっとアイツを倒すための切り札になるって・・・・・・」

 

テツヤ「成程な・・・・・・キリト・・・・・・お前の無念・・・・・・俺が晴らしてやる・・・・・・!!!!!」

 

シノン「テツヤ・・・・・・ごめん・・・・・・私の・・・・・・私のせいでキリトが・・・・・・!!」

 

テツヤ「訳は後で聞く。それより今はアイツを撒こう。」

 

シノン「ま、撒くってどうやって・・・?」

 

テツヤ「本当はお前との決戦まで取っておくつもりだったけどこんな時だ。出し惜しみはしない。」

 

テツヤはそう言うと右ポケットに入っていたスラッシュエッジを左手で取り出し、右手で光剣を握った。

 

死銃「そんなもので何をする?近づけばお前もキリトの様に死ぬかもしれないぞ?」

 

テツヤ「殺れるもんならやってみな!!!!!」

 

テツヤはそう言うと即座にデスガンの懐に潜り込んだ。

 

死銃「っ!!」

 

テツヤはそのまま光剣で攻撃し、続けてスラッシュエッジを投擲するのではなく所持しながら攻撃した。続けざまに腹部に攻撃を受けたデスガンがその攻撃でよろめいた所でテツヤはバク転をした。

 

バク転でデスガンから距離を取ったテツヤはそこでスラッシュエッジをデスガンに向けて投擲。投擲したブーメランはデスガンのマントに突き刺さった為にデスガンへの直接的なダメージにはならなかった。

 

テツヤは空いた左手でコルトパイソンを持つと、その場で1発の弾丸を放った。

 

放った弾丸がデスガンに当たると その場で小規模の爆発が起きた。そしてテツヤは私の傍に着地をした。

 

シノン「なっ!?爆発・・・!?」

 

テツヤ「本戦前に全部のブーメランに少量の火薬を付着させたんだ。投擲し突き刺さったブーメランの火薬が付いた所を狙い撃てばああなるって寸法さ。さっきも言ったけど本来お前との決戦用だったんだけど キリトがやられた今四の五の言っていられない。」

 

シノン「そんな・・・あの状況でそれを狙って・・・?」

 

テツヤ「それと シノン コイツ受け取れ。」

 

そう言ってテツヤは何かを投げてきた。その何かとはバイクから振り下ろされた際に手放してしまったへカートだった。

 

私は投げられたへカートを両手でしっかりと抱え込むようにキャッチした。

 

シノン「へカート・・・・・・」

 

テツヤ「バク転して手を着いたその場に落ちてたんだ。もうお前の相棒を離すなよシノン さぁ!今はここから移動しよう!!!」

 

テツヤは私の手を引くと さっきまでのデスガンが乗っていた機械式の馬に乗った。

 

テツヤ「シノン!」

 

シノン「うん!」

 

テツヤは手を差し出してきてくれた 私はその手を掴み テツヤの後ろに跨った。

 

テツヤ「しっかり掴まっとけよ!!!!!」

 

そう言ってテツヤは馬を走らせ始めた。私はテツヤの腰に手を回して離れられないようにした。

 

デスガンが追ってくることもなく無事に街から脱出し、テツヤと私は荒野の道を進んで行った。

 

デスガンから一旦離れて 改めて考えては見たけど 何故デスガンは私のことを知っていたんだろうか。

 

それに、デスガンは私と初めて対面した時こうも言っていた。

 

『2人をおびき寄せるその為には・・・・・・犠牲を作らなくてはならない・・・・・・』

 

2人・・・・・・テツヤはともかくキリトがいたあの状況で何故デスガンはキリトより私を・・・・・・?

 

デスガン・・・・・・一体何が目的なの・・・・・・?




自分の弱さを利用され 罠にはめられてしまい危うくデスガンに撃たれかけたシノンだったが、キリトの体を張った行動のおかげで生き延びた。

だが、その代償は大きく キリトがデスガンに撃たれ、殺されてしまった。

キリトから託された想いを繋げるために反撃に出るシノンではあるがデスガンの前に倒されてしまう。

絶体絶命の状況で現れたテツヤのおかげでシノンは再び窮地を脱却したが、引き金を引けぬシノンはこの先どうするのか?

次回もお楽しみに!

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