ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~   作:畜生ペンギン

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Part118 覚悟の共闘~遊びじゃない~

~ALO内 テツヤ・ユウキ家~

 

~ユウキ side~

 

ボク達はテツヤとキリトの出場してるBOB本戦をALOで観戦していた。それにしても別のゲームの大会をこうして皆で見れるなんてVRMMOって本当に凄いんだなぁって思う。なんたってボクとテツヤが出会えたのもVRMMOだし!

 

試合開始後30分が経ったけど、未だにテツヤもキリトもカメラには映ってない状況だった。

 

ユウキ「全然テツヤが映らない~!」

 

ショウ「まぁまぁ、まだ始まって30分なんだ。テツヤもキリトもまだ倒されてないしそのうち出てくるよ。」

 

BOBに参戦してる30人のプレイヤーの名前が画面の右端に映し出されていて、既に負けてしまったプレイヤーは灰色の名前で映されてる。テツヤもキリトも以前白字で映されてるしやられてはないみたい。

 

クライン「そうそう。あの2人のことだ。美味い具合に生き延びてるに決まってる。」

 

カノン「そうじゃな。簡単にやられてもらってはインプの沽券に関わる。それにしてもこの酒なかなかいけるのう。」

 

クライン「俺のイチオシの酒っすから!結構持ってきたんでじゃんじゃん飲みましょう!」

 

ショウ「悔しいけどこいつの酒選びのセンスだけは認める・・・」

 

ショウとクライン、それとカノンはクラインの持ってきたと言うお酒を飲みながら試合を見ていた。未成年のショウでも酒を窘めるのもVRMMOのまた良いところだよね。テツヤにはあんまし飲ませたくないけど・・・

 

かく言うボク達もお酒のまがい物の様なものを飲みながら試合観戦をしていた。ちょっぴり背伸びの大人気分♪

 

フィリア「テツヤとキリトのことだから銃の世界だって言うのに剣を使ってバッタバッタと斬り捨ててたりしてね。」

 

リズ「充分有り得るわね。キリトなんて特に。テツヤに関しては斬月以外だったら特別剣にこだわりは持ってなさそうだし。」

 

ユイ「パパのことだから敵を後ろから不意打ちで倒しまくりです!」

 

アスナ「キリト君らしいといえばらしいね。」

 

ユキ「ふんだ!お父さんなんかそんな事しないでも真正面から近づいて倒しちゃうもんね!!!」

 

ユウキ「あの速さを持ったテツヤならではの戦法だからね。充分有り得るね。」

 

ユキ・ユイ「むむむ・・・!」

 

ユキとユイちゃんはフェアリー姿でいたからボクとアスナの肩の上から睨み合うとバチバチ火柱が飛んでいた。

 

ユウキ「喧嘩しないの。めっ!」

 

ユキ「はーい・・・」

 

アスナ「ユイちゃんも駄目だよ?仲良くしようね♪」

 

ユイ「はいです・・・」

 

カノン「ナビゲーションピクシーが2人とは・・・わらわも中々に見ない光景じゃ・・・・・・」

 

レイ「でも、あの2人は聞いた話によるとSAO時代からの付き合いだそうです。」

 

カノン「なるほど。あのゲーム内から引っ張ってきたということじゃな。」

 

皆はそれぞれ試合観戦と会話を楽しんでいた。ボクもアスナの隣でテツヤとキリトの話を交わしながらBOBを観戦してた。すると、リズが賞賛の声を上げながらモニターを指さした。

 

リズ「ひゅー。やるねぇあのプレイヤー。あんな機敏な動き中々出来ないわよ。」

 

ユウキ「この人の事?」

 

ボクはリズが指さしたカメラビジョンを拡大した。そのカメラには顔をマスクか何かで覆った白い装備をしたプレイヤーとテンガロンハットを被ったプレイヤーの戦いが映し出されていた。

 

リーファ「凄いアクロバティックな動きだね。あんな簡単に銃弾を避けるなんて。」

 

リナ「確かに綺麗ではあるけども速さで言っちゃうとやっぱりテツヤより目劣りしちゃうのよね~ スピードだけなら全プレイヤーの中で1番早いと思うしねアイツ。悔しいけど。」

 

シリカ「私もあれだけ動けてみたいです・・・」

 

ユウキ「ボクのテツヤのスピードに勝てる人なんていないもんね~♪」

 

ボクはちょっぴり鼻を高くしながら映像を見た。すると白装備のアクロバティックな動きをしていたプレイヤーがテンガロンハットのプレイヤーに近づくと そのまま反撃されることなく倒した。テンガロンハットの方はリロードって言うのかな?それの隙を付かれちゃったからもう少し早く行動出来てればまだ可能性もあったとは思うけどな。

 

フィリア「凄い強さだね。これは優勝候補なんじゃないかな?」

 

クライン「テツヤとキリトの敵って訳だな?さぁどうやって倒すんだテツヤ達は?」

 

あれだけの動きをするプレイヤーとなるとテツヤでも苦戦しそうだけどきっと大丈夫!今のテツヤは敵無しなんだから!

 

そう思ってると白装備のプレイヤーは何者かに襲われちゃったのかその場で倒れ込んだ。

 

ショウ「おーっと。こりゃ噂をすればってやつか?」

 

ユウキ「ということはテツヤ!?」

 

アスナ「いいやキリト君だよ!」

 

ワクワクしながら画面を見るボクとアスナ。でも次にカメラが捉えたのはテツヤでもキリトでもなく、髑髏のフェイスマスクを付けた不気味なプレイヤーだった。

 

ユウキ「なーんだ・・・」

 

アスナ「がっかり・・・」

 

レイ「でも、あのプレイヤーどこか不気味だね・・・」

 

フィリア「うん・・・嫌な寒気がする・・・」

 

髑髏フェイスのプレイヤーはゆっくりと白装備のプレイヤーに近づくと小さな銃。ハンドガンって言うのかな?それを手に取って何か変なポーズを取り始めた。それはまるで誰かに合図を送るかのように。

 

ユウキ「変なプレイヤーだなぁ・・・」

 

そう思っていると髑髏フェイスのプレイヤーに向かって凄い速度の弾丸が向かってきた。でもその髑髏フェイスのプレイヤーはその弾丸を難なく避けた。

 

カメラはその弾丸を撃ったプレイヤーを映し出した。そこには青い髪をした可愛らしい女の子と、黒髪長髪のちょっぴりボクに似ている女の子がいた。女の子でもこんなゲームやるんだなぁと少し感心したら、

 

すぐ様カメラは戻り、再度髑髏フェイスのプレイヤーにフォーカスを当てると既に白装備のプレイヤーは撃たれていて、それでもまだ生き残っていたから立ち上がって反撃に出ようとしたけど、直ぐにまた倒れて、苦しそうに胸を抑えたかと思うとそのプレイヤーは強制ログアウトで消えてしまった。

 

リーファ「き、消えちゃった・・・」

 

シリカ「一体何が・・・?」

 

カメラは変わらないまま髑髏フェイスのプレイヤーを映していた。すると、いきなり顔全体を映し出し始めて その恐ろしい顔付きにボクは少し恐怖を覚えた。それになんだろう・・・違和感を感じる・・・・・・まるでどこかであったことがあるみたいな・・・・・・

 

ユウキ「・・・・・・気のせいかな・・・・・・」

 

髑髏フェイスのプレイヤーはその場で手に取っていたハンドガンを高らかに上げると、こう宣言した。

 

『我が名、そしてこの銃の名は・・・・・・死銃(デスガン) 俺は貴様らの前に現れ、文字通り死を齎してやろう。俺にはその力があるんだ。忘れるなよ まだ何も終わってない。これは序曲にしか過ぎない。さぁ奏でよう 死のダンスを。IT'S SHOW TIME』

 

ユウキ「死を齎す・・・もしかして・・・」

 

今日GGOにログインする前にテツヤに会いに行って、ボクの不安と違和感を伝えたけど もしかしたらテツヤがこのプレイヤーに・・・・・・?

 

シリカ「うぅ・・・怖いです・・・」

 

リズ「何ビビってんのよ。あんなのブラフやブラフ。」

 

リズは怯えるシリカを励ますようにそう言って背中をさすっていた。けれど、ショウとクラインは手に持っていたグラスを落として割ってしまった。

 

ショウ「・・・まさか・・・アイツは・・・・・・!?」

 

クライン「い、いや!間違いねぇぞショウ!聞いた覚えがあるだろあの台詞!!!」

 

ショウ「やっぱりか・・・・・・とんでもねぇ奴がいたもんだな・・・・・・!!!」

 

2人はあのプレイヤーを知ってるみたいな口調で話す。でもその顔はどこか苦々しい顔をしていた。

 

リナ「な、なんなの?あの人のこと知ってるのショウ君?」

 

ショウ「ALOからやってた人やリズやシリカ、フィリアみたいに攻略組じゃなかった人じゃ分かるはずもない・・・でも何で・・・・・・!?」

 

ユウキ「ね、ねぇショウ、クライン?一体誰なの?あのプレイヤー。」

 

アスナ「私も検討が・・・・・・」

 

クライン「・・・・・・アイツは・・・・・・"ラフコフ"の野郎だよ・・・・・・!!」

 

ユウキ「っ!?ラフコフって・・・・・・まさかあの!?」

 

ショウ「そうだ・・・あのラフィン・コフィンだよ・・・!」

 

ラフィン・コフィン。それは攻略組であるボク達と常に因縁を争ってきたSAO時代の人殺しギルド。血の惨劇でのテツヤ達の活躍を持ってその因縁に幕は閉じてギルドもほぼ壊滅となった。SAO時代は牢獄にずっと入れられてたけどリアルでは何もしなければ確かに生きていられる・・・・・・それがまさかGGOに現れるなんて・・・・・・!

 

フィリア「ら、ラフィン・コフィンってSAO時代の人殺しギルドのことでしょ!?何でそんなプレイヤーがBOBに!?」

 

クライン「そんなの俺達が知る由もない・・・!とにかく現状でわかるのこのBOBはただの大会じゃねぇ!簡易的なデスゲーム状態だ!!」

 

カノン「何で2人はあのプレイヤーがそのラフィン・コフィンとやらのメンバーだと分かったんじゃ?」

 

ショウ「アイツらには決め台詞があったんです・・・・・・それはアイツが最後に発していた・・・・・・『IT'S SHOW TIME』。」

 

アスナ「っ!確かに言ってた・・・・・・!あの台詞はリーダーのPoHが好んで使ってたって言う・・・・・・!」

 

レイ「じゃ、じゃあ今彼らは・・・・・・」

 

ショウ「アイツの言ってたことが本当だとしたら・・・・・・下手したら・・・・・・死ぬぞ・・・・・・」

 

ユウキ「っ!!!!!!」

 

下手したら死ぬ・・・・・・確かにそうだ・・・・・・あのデスガンってプレイヤーの言うことが本当だったら・・・・・・もしテツヤがやられちゃったら・・・・・・またテツヤは・・・・・・

 

・・・・・・ううん。そんな訳ない。今のテツヤはまた死神の名を取り戻してログインしてるんだもん。ただの人殺しが死神なんかに負ける訳ない・・・・・・!!!

 

ユウキ「こんな時こそ応援しなきゃ!大丈夫!テツヤとキリトが時代遅れのプレイヤーなんかに負ける訳ないでしょ!!!」

 

ショウ「ユウキ・・・・・・確かにそうだ。今更あんな奴らにやられる程やわなプレイヤーな訳がないんだ。無事を祈って見守ろうぜ。皆。」

 

レイ「それは少し無責任なんじゃ・・・下手をすれば2人はあのプレイヤーに・・・」

 

ショウ「無責任なんかじゃない。信頼があっての祈りだよレイ。あの2人がこれで殺られたなら運の尽きって奴だよ。」

 

レイ「そ、そういうものなのか・・・」

 

ショウ「仲間ってのはそういうもんだよ。なぁユウキ。」

 

ユウキ「うん!だからレイも2人のことを応援してね!」

 

レイ「そういうことなら心得た。2人の無事を切に祈ろう。」

 

そうだ。血の惨劇の時だって死ななかったテツヤがこんな所でやられる訳ない。だからテツヤ。絶対絶対勝ってね!ボクが一生懸命応援するからね!!!

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

~GGO内・BOB本戦フィールド~

 

~テツヤ side~

 

髑髏マントの奇妙な演説を聞いた俺とシノンの2人は互いにあの髑髏野郎が俺の探し求めていたデスガン本人だってことが分かった。

 

どうやらシノンもデスガンのことは噂程度には耳にしていたらしい。プレッシャーに押されるタイプの女の子とは思えないがデスガンのせいでビビって正確な判断や動きが出来ないなんてことになるのが1番危うい。

 

俺は少しでもシノンを安心させるため、シノンの頭に手を置きニッコリとした笑みを見せた。

 

シノンは俺の顔をしばらくじっと見つめていた。そして照れくさくなったのか頬を少し赤くして身につけていたマフラーで口元を隠した。

 

シノン「き、期待してるわよ。死神様がどう人を助けるのかをね。」

 

テツヤ「任せとけ。人助けならお手の物さ。」

 

俺はシノンからデスガンに目を移すと、デスガンはあのおっさんのことは狙わずに、橋から遠ざかっていき 柱と丁度合わさったところでその存在は視認出来なくなった。

 

テツヤ「あの野郎今度はどこに・・・次の標的は誰だ・・・?」

 

シノン「ねぇテツヤ あのデスガンが例の?」

 

テツヤ「そう。俺とキリトにとっての今回の標的だ。アイツが如何にして人を現実でも殺してるかを見極めなきゃならん。」

 

シノン「で、でもVRMMO内で撃たれたら死ぬなんて有り得るの?」

 

テツヤ「さぁな。そのカラクリをさっさと見極めなきゃな。にしてもキリトの野郎はどこに・・・」

 

俺がそう言うと付近の草むらからガサガサと言った音が聞こえてきた。俺はすぐ様ホルスターからコルトパイソンを取り出して構えた。

 

テツヤ「動くな!!!」

 

「お、俺だよ!撃つな!」

 

そう言って草むらから出てきたのはお目当てのキリトだった。

 

テツヤ「んだよお前かよ・・・ビビらせやがって・・・」

 

シノン「な、なんでキリトまで・・・どうなってんのよサテライトスキャンは・・・」

 

キリト「あぁ、サテライトスキャンの時間なら確か・・・」

 

シノン「水中の中にいた。」

 

キリト「何っ!?なんで分かったんだ!?」

 

シノン「この女装趣味が同じことをして今ここにいるってことをさっき聞いたのよ。」

 

テツヤ「・・・・・・もう良いです・・・・・・女装趣味で・・・・・・ってんなこたぁどうでもいいんだよ!キリト!お前も見たか!?」

 

キリト「あぁ。この目でしっかりとな。途中狙撃された弾丸の方向に向いたら2人がいたから合流したって訳。」

 

シノン「とにかくあのデスガンっていうのはどうやって現れて・・・」

 

シノンの言葉を遮るようにサテライトスキャン端末が鳴り出した。15分経過の合図だ。

 

シノン「もうそんなに経ったのね。キリト。橋の方の見張りお願い。テツヤは私とアイツのことを確認するわよ。」

 

キリト「了解。」

 

テツヤ「おう。」

 

俺とシノンはほんの少しだけ移動してスキャンがよく見える位置に。そこでシノンが端末を開き俺とシノンはアイツの真のプレイヤーネームを確認した。

 

橋付近にはあのおっさんの名が。そしてその近くの岩場の3人は当然俺達。だが、問題のデスガンはそこまで遠くに行けてないはずなのに端末には映らずにいた。

 

シノン「となると2人のように水中の中とかって訳ね。なら絶好の好奇ね。」

 

テツヤ「好奇?一体どういう?」

 

シノン「テツヤ。貴方水の中に潜る時どうやって潜った?」

 

テツヤ「え?そりゃ、一旦武装全解除して全裸で・・・」

 

シノン「でしょうね。そうじゃないと幾ら女の子のボディとは言え武装が重くて潜れない。となるとアイツも同じ手を使ってくるはず。」

 

テツヤ「そりゃそうだが・・・・・・俺念の為にコルトパイソンを持ちながら泳いでたんだがアイツも同じことをやりそうじゃないか?」

 

シノン「貴方が1番良く分かるはずよ。ハンドガン程度の弾道予測線なんて・・・」

 

テツヤ「はいシノンちゃんアウトー」

 

俺はそう言いながらシノンの額を指で軽く押した。

 

シノン「ひゃっ!?何すんのよ!?」

 

テツヤ「さっき見たろ?デスガンの野郎がペイルライダーを強制ログアウトさせたの・・・あれで恐らくペイルライダーのアカウントを使ってたプレイヤーは死んだ。たった1発だけでだ。たかが1発。されど1発。お前だってこんな所で死にたくねぇだろ。」

 

シノンは俺の言葉を聞き、少し顔を逸らしてこう言った。

 

シノン「認めたくない・・・PKではなくて本当に人間を殺してるプレイヤーがいるなんてこと・・・・・・」

 

テツヤ「でも、実際にいるし お前は見たんだ。決定的な瞬間ってやつをな。」

 

シノン「もしかしたらペイルライダーの家がいきなり停電になったって線もありえるでしょ!?それがあの偶然と重なって・・・・・・」

 

テツヤ「認めたくねぇのは分かるさ・・・・・・でもなシノン。あの野郎は俺とキリトが昔やってたゲームで数多くの命を奪ってきたクズ共だ。死ぬんだってことがわかってたくせに多くの罪泣きプレイヤーを殺めてきた殺人犯・・・・・・」

 

俺は真剣な表情でシノンを見た。シノンは俺の表情から俺の言ってることに偽りはないと信じてくれた。

 

シノン「じゃあ・・・・・・本当に今・・・・・・GGOに殺人犯が・・・・・・」

 

テツヤ「そう。だからこそことは慎重に・・・・・・シノン?」

 

シノンを良く見てみると足元が震えていた。それに顔色も随分と悪い。

 

テツヤ「おいシノン?シノン!!!大丈夫か!?」

 

俺はシノンの肩を揺さぶった。するとシノンは我に返りシノンの肩に置いていた俺の手を握ってきた。

 

シノン「ごめん・・・ちょっとビックリして・・・」

 

テツヤ「そりゃ無理もない。いきなりこんな話されて平気でいられる方がおかしいさ。」

 

シノン「えぇ。話を聞いてビックリしたけど思い出したのよ。」

 

そう言ってシノンは俺の手を両手で握ってきた。

 

シノン「私には今敵だけど味方である神様がいるんだってね。」

 

そう言うとシノンは先程の俺のように笑ってきた。どうやら心配する必要はないらしい。

 

テツヤ「その通りさ。さぁ キリトにもこのこと説明しよう。戻るぞシノン。」

 

俺とシノンはキリトのいる場所に戻り、デスガンがサテライトスキャンでは見つからないことを伝えた。

 

キリト「なるほど・・・テツヤの言う通りだな。無闇やたらと近づいていいプレイヤーではないからな。」

 

シノン「とりあえず私達もここから動くわよ。3人で戦ってると思って近づいてきて漁夫の利を狙ってここまで来るはずよ。」

 

テツヤ「そっか。んじゃシノン。一旦ここでお別れだな。」

 

シノン「テツヤはこれからどうするのよ。」

 

テツヤ「俺か?俺はこれからキリトと一緒にデスガンの野郎を追うよ。お前は絶対に奴に近づくな。何があってもだ。」

 

シノン「で、でも・・・」

 

テツヤ「心配ご無用!女神様の加護があれば無敵ってね♪行くぞキリト!」

 

キリト「了解!」

 

シノン「ちょ、ちょっと!!!ストップ!!!」

 

俺とキリトはシノンに首根っこを掴まれた。俺とキリトは今まさにこの場から離れようと移動をしようとしていたところだったから首が締まる形になってしまった。

 

テツヤ「ちょっ・・・しの・・・ぐるじぃ・・・」

 

キリト「ぎ、ギブ・・・」

 

シノン「あ・・・ごめん・・・」

 

シノンは俺とキリトから手を離した。俺とキリトは呼吸を整え、落ち着いたところでシノンに話しかけた。

 

テツヤ「ど、どうしたんだ?何かあるのか?」

 

シノン「わ、私も一緒に行かせて。お願い。」

 

キリト「だ、だけどさっきも言ったように・・・」

 

テツヤ「まぁ待て。何で一緒に行きたいんだ?それを教えてくれ。」

 

シノン「デスガンって奴は相当に強い。そりゃテツヤだって私の中では今までで出会ったプレイヤーの中で既にナンバーワンの実力者だけど・・・テツヤよりデスガンが強くてテツヤがやられたんじゃ私はテツヤと戦えなくなる。ここは一時休戦と行きましょ。3人でアイツを片付けて改めて本戦の舞台で戦いましょう。」

 

テツヤ「・・・・・・覚悟はあるか?今からデスガンを追う間 この舞台はゲームであって遊びでは無くなるぞ。」

 

シノン「っ・・・・・・」

 

《ゲームであって遊びでは無い》。これはSAOにログインしたあの日 茅場が俺達に投げかけたフレーズ。推測でらあるがこの言葉の意味は当然ゲーム内であろうが死んだら最後 現実でも死ぬと言うデスゲームだということを深く植え付ける為だ。茅場が死んじまった今じゃ確かめようが無いがこう受け取るのが筋ってものだろう。

 

これは今回のデスガンの件に関しても言えること。アイツに撃たれたペイルライダーは恐らく既に・・・・・・

 

きっとシノンだって覚悟は決めてるはず。でも生半可な覚悟で俺達に着いてきて欲しくないからあえてこう言い放った。

 

シノン「・・・・・・上等じゃない。今この瞬間から私は死ぬ気の思いで戦う。そして3人でアイツを倒してみせる。第一私はGGOを遊び半分でやってるんじゃない。いつも決死の覚悟でプレイしてるのよ。それを今更遊びじゃないと言われたところでよ。」

 

そう言い放ったシノンの目は覚悟を抱き、目の前の敵に一点集中するかの如く鋭さを持っていた。この様子なら生半可な覚悟でもないし。強い思いもある。それを邪険にするのは俺も嫌だ。

 

テツヤ「分かった。この3人であの野郎とっちめるぞ。良いなキリト。」

 

キリト「了解だ。2人の決着の舞台を付けるためのお膳立てと行こう。」

 

シノン「ありがとう・・・私のわがままに付き合ってくれて・・・」

 

テツヤ「なぁに。女の子のわがままには慣れてるよ♪」

 

シノン「テツヤ・・・・・・」

 

テツヤ「さてと!そんじゃあこのチームでの初仕事と行こうか!!!」

 

俺はそう言いながらスラッシュエッジを草むらの方向に投擲した。

 

シノン「へ!?何してんのよ!?」

 

テツヤ「まぁ見てろって。」

 

スラッシュエッジの刃が草むらを刈ると、そこには1人の男のプレイヤーが。

 

シノン「なっ!?」

 

「ひぃ!?何で俺の事が!?」

 

テツヤ「音には敏感なもんでね!そらよ!」

 

俺はキャッチしたスラッシュエッジを続けざまに敵に向け投擲しながらコルトパイソンの引き金を引いた。

 

急速に近づいてくる弾丸とブーメランの前に為す術もなく、敵はその場で倒れた。

 

テツヤ「いっちょ上がり♪」

 

その場でガッツポーズをすると、今度は別の方向から銃声が。何連発も聴こえるから恐らくマシンガンタイプだな。

 

キリト「テツヤは殺らせないよ!!!」

 

そう言ってキリトは俺の目前に経つと俺に向けて放たれていたマシンガンの弾を光剣で全て弾いていた。早く、鋭い剣さばきは未だ衰えることの無いキリトのお得意技だ。

 

テツヤ「ひゅー。やるぅ。」

 

シノン「な・・・なんなの・・・この2人・・・」

 

キリトが敵の弾丸を全て弾き返すと、敵は酷く驚き急いでリロードをしようとマガジンを取り出そうとしていた。

 

キリト「テツヤ!バトンタッチ!」

 

テツヤ「任せとけ!シノン!このリロードした弾丸全部弾くからまた撃ち終わったら狙撃してくれ!期待してるぜ!」

 

シノン「あ・・・りょ、了解!」

 

俺はキリトが空中に投げた光剣をキャッチしながらそう言い、リロードが完了し再び放ってきた弾丸をキリトと同じく光剣で防いだ。かなり軽い剣だから天鎖斬月を振るう感覚で銃弾を防ぐことが出来た。

 

そして、再び弾切れを迎えるとシノンは敵の頭を的確に狙い撃ち、もう1人の敵も撃退。

 

感覚を研ぎ澄まして辺りを探索してみてももう周りには誰もいなくなっていた。

 

テツヤ「よし。2人共無事か?」

 

キリト「あぁ。」

 

シノン「え、えぇ・・・」

 

テツヤ「にしてもほんとに軽いなコレ。軽すぎでぶっ飛ばすんじゃないかと思ったよ。」

 

俺は光剣の刃を締まい、キリトに投げ渡した。

 

キリト「軽いからお前にはうってつけなんじゃないか?」

 

テツヤ「やめとくよ。俺の真の相棒は斬月だけだよ。」

 

キリト「それもそうだな。」

 

テツヤ「よし!んじゃこの調子で行くぞシノン!」

 

シノン「な、なんであんな咄嗟であそこまでのコンビネーションを・・・」

 

テツヤ「コンビネーションたってたかが剣の受け渡しだけだろ?」

 

シノン「だからそれが普通だったらあたふたしてできないって言ってるのよ!!!」

 

キリト「うーん・・・・・・まぁ、テツヤとどれだけ一緒に過ごして来たかってことがコンビネーションに繋がるのかな?」

 

テツヤ「2年近く一緒に戦ってりゃ嫌でも癖から何まで分かるようになるさ。そういうこったよシノン。」

 

シノン「・・・・・・動きが少し現実離れしてて理解が追いつけない・・・・・・」

 

テツヤ「まぁここ現実じゃねぇしな。VRMMOだし。」

 

・・・・・・数十秒の間静観が流れる。口火を切ったのはシノンだった。

 

シノン「・・・・・・貴方のさむーいギャグのおかげで頭も整理出来たわ。さぁ行きましょう2人共。デスガンは川沿いを北に向かったはずよ。」

 

キリト「あぁ。これ以上の被害は何としてでも抑えるんだ。」

 

テツヤ「過去1番扱いが酷い気がする・・・」

 

キリト「そんなどうでもいいことはさておき」

 

テツヤ「どうでもいいだぁ!?」

 

キリト「なんだよ!お前だってコンバート先のゲームで何か悩んでると必ずちょっかい出して来るじゃないか!!!ALOではバグってたアイテムを捨てるしGGOではBOBの申し込みの時に悩んでたところをすっ飛ばされるし・・・!」

 

テツヤ「バグってた奴はお前を思ってだ!!!BOB申し込みの時は俺を酷い目に合わせるからだ!!!」

 

シノン「くだらないことでいがみ合ってないでこの後どうするか決めるわよ。銃声嗅ぎつけてまた敵が来る可能性もあるし。」

 

テツヤ「うぐっ・・・確かにそうだ・・・」

 

キリト「決着はまた別のときだな・・・」

 

テツヤ「んじゃシノンに質問。アイツはスナイパーを持ってると言ってたが同じスナイパーであるシノンだったらどうするよ?この場に居座る?それとも隠れる場所がいっぱいありそうな街中にでも行くか?」

 

シノン「・・・・・・そうね・・・・・・私だったら街中に行くわね。こんな荒野じゃスナイパーは隠れられる場所も早々にないしかなり不利よ。行くなら街ね。」

 

テツヤ「了解!んじゃ街を目指してレッツラゴー!」

 

俺は拳を高く上げ、3人で街のフィールドへと向かい、歩き始めた。

 

待ってろよクズ野郎・・・必ず俺がこの世界での息の根を止めてやる!!!

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

場所は再び戻りALOのユウキ達のいる場所に。

 

先程までは試合観戦をしていた皆だったが、ラフィン・コフィンについて詳しく知らない1部の為にその説明をショウとクラインが受け持っていた。

 

ショウ「さてと、まずはSAOの破っちゃならない固い掟ってやつを説明しとく。SAOでやっちゃいけない そしてあってはならないのがHPの全損。ALOで言うリメインライト化になることだな。」

 

クライン「こっちじゃ有難くリメインライト化があるが、SAOじゃそんなもんじゃ済まされねぇ。全損したが最後二度と戻ってくるプレイヤーはいなかった。」

 

レイ「つまり・・・SAO内でHPが全損したプレイヤーは現実でも死んでしまったと言うことで間違いはないよね?」

 

ショウ「そうだ。けれど、ラフコフの野郎達はそれこそ何百人もの命を殺めてきた。それ以上の被害を抑えるため、最後は俺達に加え テツヤとキリトも加入していた攻略組がラフコフ鎮圧に動いた。討伐隊を動員して捕獲を試みたが、結局は双方に被害を出し 過去最悪のPK騒動となった。フィリア達も聞いた覚えはあるだろ?『血の惨劇』って奴は。」

 

フィリア「・・・・・・聞いたって言うか記事で見たって言うか・・・・・・確かその時にテツヤは・・・・・・」

 

ショウ「そう。テツヤはユウキを助けるために5人のプレイヤーを殺した。その時のテツヤは既に死神の名を付けられていたから、その異名は悪い方向性で更に知れ渡ったんだ。」

 

クライン「死神ってのはアイツの目にも止まらぬ速さで敵を仕留め、消えたり現れたりして敵の命を狩り取るその戦闘スタイルがそもそもの発端なんだが、何も知らない奴らにとっちゃテツヤの異名はただおっかない人殺しになったんだ。」

 

リナ「テツヤにそんな過去が・・・・・・」

 

レイ「カノン様・・・あの時のテツヤの言っていたことは・・・・・・」

 

カノン「どうやら、本当にその事で悩んでいてのことだったのじゃな・・・その事に気づけぬは・・・・・・」

 

アスナ「・・・・・・あの時のことは未だに鮮明に覚えてる・・・・・・私の目の前でも数人のプレイヤーが倒れて・・・・・・キリト君もやむを終えず2人のプレイヤーを・・・・・・」

 

リーファ「お兄ちゃん・・・・・・」

 

ユウキ「・・・・・・あのねショウ・・・・・・ボク今日遅れてきたでしょ・・・・・・」

 

ショウ「テツヤと会いに行ってたってやつだろ?それがどうしたんだ?」

 

ユウキ「テツヤに会いに行った理由は会いたかったからっていうのもあるけども・・・・・・それ以上に嫌な予感がしたのを伝えに行ったの・・・・・・この場で言っていいのか分からないけど・・・・・・テツヤがデスガンに殺られちゃうみたいな・・・・・・」

 

ユウキのその言葉を聞き、皆は固唾を呑んだ。そしてリーファがこう続けた。

 

リーファ「その・・・・・・お兄ちゃんの様子が昨日から少しおかしかったんです・・・・・・このことを知ってたっていうなら・・・・・・」

 

リズ「ちょっと待ちなさいよ!!!あの2人は単なるバイトだったんじゃ無かったの!?それがどうしてこんなことになってんのよ!!!」

 

シリカ「で、でも今回のバイトの成功条件があのデスガンに関することだったのなら・・・・・・」

 

皆はラフィン・コフィン そしてデスガンについてを知ってから気が動揺していた。下手をすればテツヤとキリトは帰らぬ人となるかもしれない。だが皆は何もすることが出来ない無力の状態にあった。

 

皆が動揺する中、ユウキは立ち上がった。

 

ユウキ「皆 ボク一旦落ちるね。」

 

フィリア「落ちるって、どうするつもりなのユウキ?」

 

ユウキ「まずは今回2人をあんな目に陥れたあの人に連絡を取る。前々からテツヤを良いように使ってたのが癪に障ってたけど今回ばかしは我慢出来ない!!!なんでこんな目に合わせたのか説明させる!!!」

 

ユウキは以前目の前で愛するテツヤの死に際を見た。その後はまるでファンタジーが如くテツヤは生き返ったがそんな奇跡2度も起こるわけがない。

 

もう二度と愛する人を亡くしたくない。その想いがユウキを動かしているのだ。

 

ユウキ「ユキ。ボクがいない間にGGO関連の情報を調べて欲しいの。出来るかな?」

 

ユキ「ユキにお任せあれ!!!お父さんのピンチなんだからいつも以上に働くよ!!!」

 

ユウキ「それじゃあお願いねユキ。後で美味しいご飯作ってあげるからね♪」

 

ユキ「わーい♪」

 

ユウキ「それじゃあ皆 一旦落ちてくるね!」

 

ユウキはそう言ってメインメニューを開き、ALOからログアウトした。

 

リズ「あぁもう何でいつもいつもあの2人は・・・!!!特にテツヤの奴なんて分かってて無茶する良い奴過ぎる馬鹿だってのに・・・!!!」

 

アスナ「キリト君・・・・・・大丈夫なのかな・・・・・・」

 

フィリア「・・・・・・テツヤ・・・・・・皆にとっても・・・・・・私にとっても・・・・・・テツヤはかけがえのない英雄なんだから・・・・・・負けないでね・・・・・・」

 

リナ「また死んだなんて言ったら化けて出てやるんだから・・・・・・帰ってきてまた私を馬鹿にしなさい・・・・・・テツヤ・・・・・・」

 

クライン「悪いな2人共・・・・・・お前らのピンチに何も出来ねぇで・・・・・・絶対に勝てよ!!!テツヤ!!!キリト!!!」

 

ショウ「キリトは状況判断が出来るやつだけど・・・・・・お前は馬鹿正直に突っ込んでく奴だからな・・・・・・余計な心配かもしれないが上手く立ち回れよテツヤ・・・・・・絶対に死ぬなよ・・・・・・!!!!!!」

 

ALO内での皆に出来ることはただ1つ。無事を祈ること。この場にいる皆はテツヤとキリトの無事をただ祈り続けるのであった。

 

───また、ここにいる皆で笑い合いたいから。───




デスガンを倒すことを目的に共闘することを選んだテツヤ キリト シノンの3人。

3人は無事にデスガン事件の真相にたどり着くことは出来るのだろうか?

そして、ALOにいる皆の祈りは2人に届くのだろうか。

次回もお楽しみに!

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