ソードアート・オンライン~死神と呼ばれた剣士~   作:畜生ペンギン

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少し時間がかかり申し訳ございません!

今回は哲也が成長を遂げる回!一体哲也はどう成長するのか!

それてはどうぞ!


Part116 本戦前~正義の死神~

一昨日行われたBOB予選で見事シノンに勝った俺は予選一位という形でBOB本戦に出場を決めた。

 

昨日の夜に久しぶりに飛鳥に会って滅入ってた気分が大分楽になった俺は早く起きた為に木綿季が起きる前に朝食を作っていた。

 

~哲也自宅~

 

哲也「んで・・・?何でこんな朝っぱらからいるんだ姉ちゃんは・・・?」

 

渚「別にー?ただ木綿季ちゃんに会いたくなっただけだし~」

 

俺もだいぶ朝早く起きたけど、姉ちゃんもだいぶ早い時間に俺の家を訪れていた。まだ7時にもなってないのに・・・

 

哲也「少しは迷惑ってもんを考えねぇのかよ。いくら姉と言えど礼儀があんだろうが。」

 

渚「まぁ寝てたら寝てたで合鍵使うだけだしね♪この家はお姉ちゃんに掌握されてんのよ♪」

 

哲也「恐ろしい姉だ全く・・・朝飯食う?」

 

渚「うん!よろしく♪」

 

哲也「はいはい。」

 

こうして俺は朝食作りに取り掛かった。

 

哲也「本当に俺ん家に来たの木綿季に会いに来ただけなのか?」

 

渚「お姉ちゃんが弟の顔見るのに理由なんている?木綿季ちゃんに会いたくなったのは本当よ。」

 

哲也「そんなもんなのか?」

 

渚「哲也は私に会いたいとか思ったことは無いの?」

 

哲也「・・・・・・そりゃたまには・・・・・・」

 

渚「でしょ?そういうものよ姉弟ってものはね♪」

 

俺は時たま姉ちゃんのことが読めない時がある。怒ってる時の姉ちゃんは分かりやすいが突発的に行動してる時の姉ちゃんはあまり読めない。これも姉ちゃんの1つの魅力なんだろうか?

 

哲也「分かんねぇなぁ・・・すこぶる機嫌がいい時の姉ちゃんは・・・」

 

俺はそう呟きながら目玉焼きを焼いた。

 

数分して3人分の朝ごはんが出来上がり、寝ぼけてる木綿季を起こすと朝食に。

 

哲也「木綿季 しっかりしろ。」

 

木綿季「むぅ~・・・まだ寝てたいのにぃ・・・」

 

渚「あら、木綿季ちゃんにもこんな時があるのね。朝はスパッと起きて哲也に甘えるのが日常だと思ってたのに。」

 

哲也「たまーにこういう日があるんだよな木綿季にも。普段と違うのもまた可愛いけどさ。」

 

木綿季「哲也~だっこ~」

 

哲也「ご飯食べ終わったらね。」

 

木綿季「ぶぅぶぅ~!」

 

哲也「はぁ・・・ほら、おいで。」

 

俺は自分の膝を手で軽く叩くと木綿季はすぐさま俺の膝の上に座り俺に抱きついた。

 

木綿季「~♪哲也~♪」

 

渚「あいっかわらずラブラブね・・・羨ましいわ全く・・・」

 

哲也「こっちはこっちで結構大変な時があるんだからな?なぁ木綿季。」

 

俺は木綿季の顎をくすぐった。

 

木綿季「くすぐったいよ~♪」

 

哲也「ほら、もう良いだろ?ご飯食べようぜ。」

 

木綿季「うん!いっただきまーす!」

 

哲也「って俺の飯食うなよ!」

 

渚「た、確かに木綿季ちゃんを制御するのは少し大変かもね・・・」

 

何はともあれ朝食を食べ終え食器も洗い終えた後は3人でだらーんと過ごす。

 

と言っても木綿季は食後にまた寝てしまったけど。寝顔も可愛いなぁ。

 

木綿季「すぅ・・・むにゃむにゃ・・・」

 

哲也「よっぽど眠かったんだな。食べてすぐ寝るとはね。」

 

渚「幸せそうな寝顔ね 哲也 アンタ木綿季ちゃん不幸にさせたら許さないからね。」

 

哲也「分かってるよ。幸せにしてみせるよ。」

 

渚「哲也以外に幸せに出来る人はいないんだからね?それは忘れないこと。そう言えば哲也。アンタALO辞めた?」

 

哲也「え?な、なんで?」

 

渚「フレンドリストからアンタが消えてるからよ。そんくらいすぐ気づくっつうの。それと、面白いものを見つけたのよね~」

 

そう言って姉ちゃんは携帯の画面を見せてきた。そこにはBOB本戦出場者リストがありFブロックには俺とシノンの名があった。

 

渚「ここの名前哲也のアバターの名前そっくりよね~」

 

哲也「そ、そうだね~きっと俺と同じ名前なんだろうね~」

 

渚「ていうかこれアンタでしょうが!Gブロックに和人君の名前もあるし!」

 

哲也「うぐっ・・・」

 

渚「今回の件もまた菊岡さんのお願いって訳?」

 

哲也「そ、そうです・・・」

 

一応菊岡さんのことは大体の人達が知っている。だから俺に緊急の用事だとか何かあった時といえば大概が菊岡さんのせいだと言うことになっている。

 

渚「まぁそうだろうと思ったわ。それにしても何も言わずコンバートするのは酷いと思うな~」

 

哲也「わ、悪かったよ・・・あんまし気づかれたくなかったんだよ・・・」

 

渚「どうせ今度もバイト代入るんでしょ?」

 

哲也「・・・・・・わぁったよ。幾らか姉ちゃんに回すよ。」

 

渚「分かってるぅ♪買い物付き合ってもらうからね哲也♪」

 

哲也「はいはい・・・・・・」

 

木綿季以外には伝えて無かったのにまさかバレるとは・・・・・・BOB恐るべし・・・・・・

 

渚「それにしても、この哲也の下の名前にあるのって女の子の名前よね。女の子がこんなゲームやってるのね。」

 

哲也「ま、まぁそれは人それぞれだと思うぜ?」

 

俺がGGOだと女になってるって言ったら驚くんだろうなぁ・・・・・・口が裂けても言えないけど・・・・・・

 

哲也「な 木綿季。」

 

俺は寝てる木綿季の頬に手を置いた。ぷにぷにしてるほっぺは触り心地が抜群だ。

 

木綿季「うぅん・・・・・・てつやぁ・・・・・・」

 

哲也「さぁて!今日も頑張らなきゃな!」

 

BOB本戦でデスガンと遭遇する可能性がほぼ100%だろう。危険性はあるが実際に戦ってアイツの秘密の種を暴かなきゃならねぇ!

 

和人!2人であの野郎絶対とっちめるぞ!

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~詩乃 side ~

 

今日はいよいよBOB本戦。キリトに加え、テツヤを倒さなければ優勝するのは無理と言うBOBで稀にある出場プレイヤーの質が高い大会になってしまったのは少し計算外だったけど、諦めはしない。

 

私はテツヤを撃ち抜いて BOBで優勝して、今までの自分と別れを告げる。そして、変わった私を貴方に見て欲しい。まだ名前も分からない貴方だけど、私にとって貴方は荒れた道をどう進むかを教えてくれた英雄的存在。

 

だから恩返しをしたい。恩返しするには私が変わったってところを見せたい。だから今回のBOBは絶対負けられない。

 

詩乃「でも・・・・・・あの時テツヤの言ってた言葉・・・・・・」

 

テツヤ『手の届く範囲の人はこの手で助けたい。それが俺のポリシーさ。』

 

詩乃「・・・・・・全く同じだった・・・・・・あの人とポリシーが・・・・・・」

 

あの時は似たポリシーを持つ人くらいってことで特に何も聞きはしなかったけど・・・・・・あの後言ったあのセリフ・・・・・・

 

テツヤ『なぁシノン・・・・・・人間ってのは何で同じ人間を殺すことが出来るのかな・・・・・・』

 

あの時は何であんなことを言ったのかはさっぱり分からなかったけど・・・・・・もしテツヤとあの人が同じって考えれば多くの人を殺めたあの人の辛い過去のはず・・・・・・それがあの人の悩み・・・・・・

 

でも、私の仮説は3割の確率で当たってればいいくらいの物。世の中には何十億人も人がいてあの人と同じポリシーを持って、彼女がいて、深い悩みを持ってる人なんて恐らく探せば何百人と出てくるはず。

 

詩乃「・・・・・・考えすぎかな・・・・・・貴方とテツヤが一緒なんて・・・・・・」

 

でも、私はあの時確かに聞けた。あんなに強いテツヤにも深い悩みがあるってことを。

 

強いテツヤでも悩みを持ってる。でもテツヤがあんなに重苦しい雰囲気になったのはあの時だけで、それ以外はとても楽しそうに過ごしてた。私は良くいえばクールに過ごしていて、悪くいえば口を開かない女。でもテツヤは明るく 強気に振舞えていた。きっとそれはテツヤのメンタルが強い証拠なんだ。

 

私も、私だって強くなってみせる。テツヤ以上の強さは無理かもしれない。でも、今回のBOBでテツヤの強さの極意を知ることはできるはず。

 

詩乃「・・・・・・テツヤなら・・・・・・私のことを助けてくれるのかな・・・・・・」

 

私は常に暗闇の中で1人過ごしてきた。でも、テツヤなら 私の暗闇をかき消すくらいの光を灯してくれるかもしれない。

 

テツヤだけじゃない。あの人の示した道を進めば私はこの暗闇から抜け出せるのかもしれない。

 

ずっとずっと雨だった世界が 晴れに広がっていくかもしれない。

 

詩乃「・・・・・・晴れるといいな・・・・・・この心を覆ったままの雲が・・・・・・」

 

私は人を殺した殺人者。例え相手が銀行強盗で人を撃ち殺した相手であろうと私のやった事は事実。

 

でも、貴方も私とは違う方向性ではあるけど 同じ様に殺人を犯してその事でトラウマを抱えてる。私なんかに比べたらきっと貴方の方が何倍も辛いはず。それでも私より凄く強い精神力を持ってる。それは貴方にあって私に無いもの。

 

テツヤが人を殺したなんてことは分からないけど、テツヤも同じ様に悩んでて、貴方と同じくらい強い人。

 

私の目の前に現れた2人の男の人は これから私にどう影響してくるのかな。

 

詩乃「私も・・・・・・同じ道を歩みたい・・・・・・」

 

2人が晴れの道を歩いているんだから、きっと私だって晴れの道を進めるに決まってる。なら、私も歩みたい 彼らと同じ晴れの道を。

 

その為に、私は今日のBOBでテツヤに勝ってみせる。テツヤに勝って弱い自分とお別れするんだ。

 

それで、貴方に言いたい。『ありがとう』って。

 

詩乃「絶対・・・絶対勝つ・・・!」

 

私は強い決心を胸に、今回の大会を勝ち進むことを決めた。

 

強いシノンとしてではなくて、もっと強くなれた朝田詩乃としてもう一度貴方に会いたいから。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~哲也 side~

 

あれから時間も経ち、午後になっていた。

 

午後という訳で俺も家を出て病院に移動。電車を乗り継ぎ数十分、病院に着いた俺は一昨日と同じ病室で詩織さんを待っていた。

 

病室で待つこと数分程度で詩織さんは姿を現した。

 

詩織「よぉ哲也。今日は時間通りに来てたんだな。」

 

哲也「えぇ。自分から約束しといて遅れるなんてそれこそ詩織さんに殺されかねませんからね。」

 

詩織「良くわかってるな。偉いぞ哲也。」

 

詩織さんはそう言って昨日のように俺の頭を掴みくしゃくしゃと弄ってきた。でも、今はこんなことを楽しんでいる時間ではないんだ。

 

哲也「詩織さん 早速本題に入っていいですか?」

 

詩織「そう焦るな。とりあえず互いに座ろう。話はそれからだ。」

 

哲也「それもそうっすね・・・」

 

俺はベッドに座り、詩織さんは備え付けの椅子に座り、互いに向かい合う感じで座った。

 

詩織「さて・・・・・・お前とこうして面と向かって真剣に話すのも久しぶりだな。前は木綿季が木綿季がって大変だったからな。それじゃあお前の悩みってやつ聞かせてもらおうか?」

 

詩織さんは俺のSAOログアウト後のリハビリ担当医だと言ったが、それと同時に俺のメンタル面でのカウンセリングも受け持ってくれた。ログアウトしたての頃は死んだと思った木綿季のことが忘れられずにずっと苦しんでいたからそのことで何度も詩織さんに相談して、その度に俺が元気になれる言葉を話してくれた。詩織さんはログアウトしたての俺にとっての大切な存在だったんだ。

 

だからこそ、俺は詩織さんに今回の件の相談を頼んだんだ。下手な人にはこんなこと頼めないしね。

 

哲也「詩織さんに言いましたっけ、俺のSAO時代のこと。」

 

詩織「いや、全く。そこの所はお前らに秘匿の権利があったからな、お前が言わなけりゃ私も知る必要が無い。」

 

哲也「なら今ここで俺の全てを話します。SAO時代にあった全部を。聞いてください詩織さん。」

 

詩織「お前が言うって言うなら聞いてやるさ。良し、言ってみな。」

 

哲也「実は・・・」

 

俺は詩織さんにSAO時代の全てを明かした。木綿季との出会い。付き合い始めたこと。俺の異名のこと。殺されて行った仲間達。俺がゲームを終わらせたプレイヤーであること。それが理由で英雄と呼ばれていること。そして、ラフィン・コフィンのこと。これら全部を詩織さんに話した。

 

詩織「なるほどな・・・SAOにそんな奴らがな・・・・・・」

 

哲也「はい・・・・・・実は俺の悩みはそいつらが原因でもあるんです・・・・・・」

 

詩織「仲間がその犯罪者に殺されたことか?」

 

哲也「いえ・・・・・・寧ろ逆というか・・・・・・俺は木綿季を守りたい為に・・・・・・そして目の前で散った仲間の敵討ちのためにそいつらを殺した・・・・・・その数は・・・・・・35人・・・・・・」

 

詩織「っ・・・・・・」

 

哲也「俺はこの殺した奴らのことを忘れられないでいるんです・・・・・・夢にも出てくる始末で夢に見ると決まって過呼吸を起こす・・・・・・俺は未だにSAOに囚われ続けてるのかもしれません・・・・・・」

 

詩織「・・・・・・そうか・・・・・・」

 

哲也「俺が35人を殺したことでそいつらの再犯は二度と起こらなかったのは事実です・・・でもだからって35人を殺すなんて・・・この悩みを昨晩SAO時代の仲間に相談したんです・・・・・・そいつにはお前がそいつらを壊滅させたから被害も増えなかったんだと言われました・・・・・・俺も確かにそれは思います・・・・・・でも・・・・・・だからってそんな大人数を殺して俺は良かったのか・・・・・・?」

 

哲也「俺はゲームを終わらせた英雄・・・・・・でもそんな英雄と呼ばれる男の手が自身が殺した相手の返り血で染まってて・・・・・・・・・それで本当に皆を救った英雄なんて名乗れるのか・・・・・・!?」

 

俺はその血に濡れた手を強く握った。それこそ血が滲み出てくるほどに強く強く握った。

 

哲也「俺は木綿季だけじゃなくて皆を護りたかった・・・・・・だから斬月だって天鎖斬月だって手に入れた・・・・・・でもだからって大量殺人していい訳じゃない・・・・・・!」

 

詩織「・・・・・・1つだけ質問させろ。哲也。そのラフィン・コフィンって奴らは罪のない人間なのか?それともお前の仲間を殺した仇か?どっちだ。」

 

哲也「そ、そんなの仇に決まって・・・!」

 

詩織「なら決まりじゃないか。お前の取った行動に間違いなんてなかったんだよ。」

 

詩織さんはそう言って強く握り過ぎて本当に血が出てきた俺の拳を優しく両手で包み込んでくれた。

 

哲也「詩織さん・・・」

 

詩織「殺した相手の返り血に染った手だぁ?んなのお前の殺した相手は多くの罪もない人間の返り血に染ってんだぞ?それをそいつらは楽しんで行って来てたドクズ野郎どもじゃねぇか。お前は例え相手が犯罪者であろうと相手のことを忘れないでいられる心優しい人間なんだよ。だからこそ殺した相手のことを忘れられずにいるんだ。お前は大人数を殺してしまった。それはもう過ぎ去ってしまって変えられもしない過去だ。」

 

哲也「・・・・・・・・・」

 

詩織「でも、未来なら幾らでも変えられる。今は辛い思いをしてるかもしれないがきっと変えられるさ。絶望の未来を変えたから今お前はこうしてここにいる。そうだろ?」

 

哲也「・・・・・・確かにそうかもしれません・・・・・・」

 

詩織「仲間を助けるために人を殺すなんて口では言えても簡単にできる行動じゃない。お前は人殺しだなんて悩む必要は無いんだよ。若い哲也なら人を殺したらそりゃ悩むだろうさ。私だってきっとお前と同じ立場に立ったら悩むと思う。でも結果的に大切な人や仲間を守れたんなら良いじゃないか。立派なことをしたんだよお前は。」

 

詩織さんはそう言って俺の頭を優しく撫でてくれた。

 

詩織「良いか哲也。35人のことを今すぐ忘れるのは難しいとは思う。でも35人殺したことで掴み取ったのが今の暮らしと、多くの命なんだろ?」

 

哲也「それは・・・・・・そうですけど・・・・・・」

 

詩織「じゃあそのお前が殺した35人は罪もない人物を殺して何を得たんだ?皆の命か?大切な人か?いいや違う。お前の殺したヤツらが得られたのは一時の愉悦、快楽、快感だけだ。しかも1人にしかその殺したって喜びは味わえないから皆で殺すんだ。それが集団殺人の心理なんじゃないかと私は思う。それに比べたらお前が得たものはとても有意義な物じゃないか。皆の時間、笑顔、命。35人ものクズを殺した代わりにお前はそれを得たんだ。もうお前が相手のことを気にするに必要は一切無い。気にするんだったら殺されてしまった罪のない人達だ。お前がクズ共のことを気にする必要は無いんだよ。」

 

哲也「・・・・・・昨日言われたんです・・・・・・お前は優しすぎるって・・・・・・だから殺した奴らを忘れられずにいるんだって・・・・・・知らないところで俺は慈悲の心を見せてしまってるんでしょうか・・・」

 

詩織「そうだ。お前は優しすぎるんだよ。誰にでも善意を向ける人間がいるか馬鹿。犯罪者に慈悲はいらないんだよ哲也。だからいっそこう思ってみろ。『ざまぁみろ!』ってな。」

 

哲也「・・・・・・ざまぁみろ・・・・・・か・・・・・・」

 

・・・・・・確かに俺は下手に皆を助けるって意識が強すぎた・・・・・・だから殺した奴らのことを忘れられずにいたのかもしれない・・・・・・

 

・・・・・・そもそもアイツらは飛鳥を殺し、木綿季までも殺そうとしたんだ・・・・・・なんで俺はそんな奴らにまで善意を向けなけりゃいけないんだ・・・・・・?大切な仲間を殺され、殺されかけたから殺したのが35人なんじゃないのか・・・・・・?

 

哲也「そうだ・・・・・・俺はアイツらが憎くて殺したんだ・・・・・・そんな奴らに慈悲の心を向ける必要なんて無い・・・・・・!!!!」

 

詩織「そういうことさ。分かってくれたか?」

 

哲也「はい!!!!詩織さん!!!!俺はもう後悔なんてしません!!!!俺の殺したヤツらはそもそも俺の仲間を殺し、木綿季までも殺そうとした奴らだ!!!!そんな奴らに何が慈悲の心だ・・・・・・!俺は・・・・・・俺は"正義の死神"だ!!!!クズ達に引導を渡すのは俺の役目だ!!!!」

 

そう。俺はただの死神ではなかった。正義の死神だったんだ。正義の死神だからこそ、罪のない人を殺し、俺の仲間を殺し、飛鳥を殺し、俺の大切な彼女を殺そうとした奴らに引導を渡したんだ。

 

もっと早く気づけば良かった。俺の殺しはただの殺しじゃない。クズ達を冥界に送るための殺しだったんだ。殺した奴らに怯えすぎてこんなことにも気づけなかったんだ。俺もまだまだってことだな。

 

死神の名前はSAO時代のアカウントを消すと同時に捨てはしたが、この日を境にもう一度名乗ろう。

 

そう、《正義の死神》と。

 

詩織「ふっ。やっと答えが出たな。そう。それでいいんだよ哲也。英雄って呼ばれてる男がグチグチ言ってるんじゃねぇ。英雄なら英雄らしく大きく構えてろ。」

 

詩織さんはそう言って俺の事を抱きしめてくれた。

 

詩織「英雄が手を汚してしまうのは当たり前のことだろ?なんでもいい。考えてみろ。英雄と呼ばれた人物の中に1人でも人を殺さなかった人がいるか?」

 

哲也「い、いや・・・」

 

詩織「英雄が手を汚すのは当然だ。血に汚れた英雄だの皆を救えたと呼べないだのギャーギャーうるせぇんだよ。お前は何千人もの命を救った大英雄だよ哲也。それでまだ血に汚れたって思うなら現実世界でも人助けをすればいい。人助けをしていればお前の手はきっと元通りになるさ。それが未来を変えるってことなんじゃないかな?」

 

哲也「詩織さん・・・・・・」

 

詩織「分かったか哲也。大人数を殺そうが英雄は英雄。そしてお前の殺した奴らは漏れなく全員クズだ。そんなクズ共に慈悲なんて与えるな。『お前らは俺が殺したんだ。ざまぁみろ。』そう思っとけ。」

 

哲也「はい!!!!俺はもう過去のことで迷いません!!!!自分のとった行動にも後悔もしません!!!!だって・・・・・・俺は皆の英雄だから!!!!」

 

そう、俺は英雄と呼ばれる人間。偶然の重ね合わせだろうがあのゲームを終わらせたプレイヤーが俺だ。そして俺の殺した奴らのことなんかもう気にするもんか。俺は正義の死神だ。正義が悪を潰すのは当たり前のことなんだ。こんな簡単なことにやっと気づけたんだ。詩織さんと飛鳥には感謝してもしきれない。

 

俺の弱さはきっと誰にでも優しすぎる点なんだ。99%恨んでいようが残り1%は心のどこかで慈悲の心を見せてるのかもしれない。それがいけないんだ。

 

もしまた須郷のような奴らが現れた時にも優しさを見せるってのか・・・・・・?いいや違う。俺はこれから恨むべき相手はとことん恨み、優しくするべき相手にはとことん優しくする。そう言った人間になりたい。

 

誰にも優しいのが英雄ではない。正義を信じ悪を下すのが本物の英雄に違いない。俺がこれから目指すのはそんな人間だ。

 

ありがとう。詩織さん。飛鳥。2人のおかげで完全に悩みが吹っ切れたよ。

 

俺は正義の死神。これから俺の目の前に現れる悪意を持つ人物は・・・・・・俺がこの手で叩き潰す!!!!それが出来ないで何が英雄だ!!!!

 

今の俺では似非の英雄かもしれない。でも俺はこれから進化してなるんだ。本物の英雄ってやつに。

 

そして、これから始まるBOB本戦は今までの自分との決別の為に戦うんだ。SAO時代の悪夢と戦い勝って、完全に断ち切るんだ。過ぎ去った過去を。

詩織「よし、それが分かったらお姉さんに抱きしめられとけ。ログイン前に英気を養うのも英雄の仕事のうちだ。」

 

詩織さんはそう言うと抱きしめる力を強くしてきた。確かにこうしてると凄く癒される感はあるけども少し苦しい・・・・・・

 

哲也「し、詩織さん・・・少し苦しいです・・・」

 

詩織「お前の成長祝いだ♪ありがたーく受け取っておけ♪」

 

哲也「そういうことなら・・・・・・」

 

詩織「んじゃあ哲也。もう1つ祝いのプレゼントくれてやるよ。」

 

そう言うと詩織さんは俺の額にキスをした。

 

哲也「えっ!?」

 

詩織「まだまだ子供のお前には早すぎたか?お姉さんのキスは。」

 

哲也「お、俺をそんなに子供扱いしないでください!!!!立派な高校生です!!!!」

 

詩織「私からしたら高校生なんてガキンチョなんだよ。私のキスは高く付くぞ?」

 

哲也「う・・・ありがとうございます・・・詩織さん・・・・・・」

 

歳上の女の人ってのは姉ちゃん然り詩織さん然り読めないものだなぁ・・・・・・

 

詩織「良し、んじゃ哲也。お前のカウンセリングも無事に終わったんだ。そろそろまたログインするか?」

 

哲也「はい!そうさせていただきます!」

 

詩織「んじゃ昨日の通りに・・・」

 

俺はGGOにログインする為に昨日同様上半身の服を脱ごうとしたが、その前に病室が数回ノックされた。一体誰だ?

 

詩織「はーい?今この部屋は・・・」

 

「あ、あの!ボクです!木綿季です!哲也いる!?」

 

哲也「ゆ、木綿季!?」

 

どうやらノックをしていたのは木綿季のようだった。でも一体なんで木綿季がこんな所に・・・?

 

哲也「とりあえず入らせていいですか?」

 

詩織「まぁ構わんが・・・」

 

哲也「木綿季。入っておいで。」

 

俺がそう言うと木綿季は病室に入ってきた。

 

木綿季「おじゃましまー・・・って詩織さん!?」

 

詩織「おう。久しぶりだな木綿季。」

 

実を言うと木綿季のリハビリ担当医も詩織さん。これは詩織さんが俺の話を聞いてるうちに木綿季と関わってみたくなったらしく詩織さんの直談判でリハビリ担当になったとか。木綿季自身も詩織さんとの会話は楽しくて結構リハビリ期間は楽しかったとか。何より2人が険悪なムードな関係じゃなくて良かったよ。

 

木綿季「な、なんで詩織さんが!?」

 

詩織「なんでって、こいつの安全確保の為の見張りだよ。ていうかなんでってのはこっちの台詞だ。なんでお前がここに?」

 

木綿季「い、いやどうしても哲也に会いたくて・・・受付の人に聞いたら哲也ならここにいるって教えてくれて・・・」

 

詩織「ったく、どこまでもバカップルだなお前らは。」

 

木綿季「ち、違うんです!哲也とイチャイチャする為に来たんじゃないんです!」

 

哲也「へ?じゃあなんでここに?」

 

木綿季「あ、あのね・・・哲也が家を出てからずっと変な違和感があったの・・・・・・女の勘って言うのかな・・・・・・哲也が今受け持ってる任務で大ピンチに陥る・・・・・・みたいな・・・・・・」

 

木綿季は俺の元に近づくと、俺の着ていた服をギュッと握ってきた。

木綿季は不安になったり怖がったりすると良くこうして俺の服を掴んでくる。今の木綿季は不安になってる証拠だ。

 

木綿季「哲也言ってたでしょ・・・コンバートしたゲームで殺しが絡んでるって・・・・・・もし・・・・・・ボクのこの不安が的中しちゃったら・・・・・・もしかしたら哲也が・・・・・・またボクの前からいなくなっちゃうんじゃないかって・・・・・・」

 

詩織「そうか・・・哲也はこの病院で一度死亡確認されたんだっけ・・・木綿季の泣き声が病院中に響いてたのを今でも覚えてるよ・・・・・・」

 

木綿季「だから哲也!本当に・・・本当に気をつけて欲しいの!!!!ボクは信じたい・・・・・・ボクの大好きな哲也が負けるはずないって・・・・・・でも・・・・・・万が一がある・・・・・・だから哲也の負ける可能性を少しでも潰して欲しいの!!!!だから哲也・・・・・・今回だけでいい・・・・・・今回だけでいいからもう一度"死神"としてログインして欲しいの!」

 

哲也「っ・・・・・・木綿季・・・・・・」

 

木綿季「それで・・・・・・SAO時代を思い出して欲しいの・・・・・・あの死と隣り合わせだったあの時を・・・・・・きっとそうすれば哲也は負けるはずがない。だって哲也はボク達を助けてくれた英雄だから。」

 

哲也「・・・・・・ったく、お前の心配症は多分永遠に治らねぇんだろうな。」

 

俺はそう言って木綿季のことを優しく抱きしめた。

 

哲也「木綿季。お前のお願い受け取ったぜ。今回のログインに関してはあの時を思い出してログインする。楽しくて仕方がないALOとは違い、辛くて厳しくも楽しかったあの日を思い出してね。」

 

木綿季「うん!頑張ってね哲也!!!!」

 

哲也「それとだ木綿季。もし俺が死ぬ程のピンチに陥った場合。下手したら巻き込まれる人がいるかもしれない。そいつは女なんだが、その場合そいつのことを助けてもいいか?」

 

俺の言った女の子とはシノンのこと。BOB本戦で再戦するであろうシノンが俺とキリトを狙ってるデスガンについでで狙われる可能性はかなり高いだろう。

 

シノンが再戦したがってるのは俺。俺と戦ってる隙にデスガンの野郎がシノンを殺す可能性があるかもしれない・・・・・・殺しのネタが上がってない今VRMMOの世界でシノンが殺されるなんてことあっちゃならない・・・・・・

 

なら、危険なことに巻き込ませた俺がシノンを助けるんだ。俺の目の前で仲間は殺させはしない・・・!!!!

 

デスガンのしていることを暴いてみせる。そして本当にラフィン・コフィンが潰れたその時が悪夢と別れる時だ!!!!

 

木綿季「・・・・・・はぁ・・・・・・ほんとに哲也って人は・・・・・・良いよ。寧ろ助けてあげて。ボクの大好きな哲也は人を助ける優しい男の子だから。もう今回の件で浮気だなんだなんて怒りもしない。だから哲也。無事に戻ってきて!それで、もしもの時はその子のこと助けてあげてね!」

 

哲也「あぁ!任せとけ!!!!」

 

木綿季「哲也。本当に頑張ってね。」

 

哲也「うん。見守っててね木綿季。」

 

俺は抱きしめてる木綿季を見つめ、キスをした。心配症な木綿季を安心させたいならこれが一番だ。

 

数秒間キスをすると、木綿季は満足そうに笑みを浮かべ 俺の事を見つめていた。

 

木綿季「頑張れヒーロー♪」

 

哲也「あぁ!!!!よっしゃ!!!!詩織さん!!!!そろそろ行きます!!!!」

 

詩織「ったく人に見せびらかしてそれかよ・・・良し、んじゃ服脱げ。」

 

木綿季「えぇ!?」

 

詩織「こいつの安全の為だ。変なことはしないから安心しろ。」

 

木綿季「よ、良かった・・・」

 

俺は服を脱ぎ、一昨日のようにモニタリングの為の電極を貼られた。

 

詩織「よし、準備完了だ。いつでもいいぞ。」

 

哲也「あ、あのぉ詩織さん。ペンダントとか付けても構わないですか?」

 

詩織「ペンダント?別に構わないが?」

 

哲也「なら・・・・・・」

 

俺はポケットに入れていた1つのペンダントを身につけた。

 

そのペンダントとは、天国に行った時に飛鳥から貰ったペンダントだ。

 

何故これを持ってきたかと言うと、敵はSAO時代からの天敵。このペンダントはそんな敵の前で無念に散らせてしまった飛鳥の想いを貸して貰おうと持ってきた。

 

哲也「飛鳥。天国から見守っててくれ・・・」

 

俺は目を瞑り、無念の中で散った飛鳥のことを思いながら、胸にペンダントを当てた。

 

数秒間そうした後に、俺は目を開いた。

 

哲也「んじゃ木綿季。行ってきます。」

 

木綿季「行ってらっしゃい哲也!頑張って!」

 

詩織「行ってこい。英雄君。」

 

俺は詩織さんと最愛の木綿季からの応援を受けながら、GGOにログインした。

 

哲也「リンクスタート!」

 

飛鳥・・・・・・俺はもう二度と目の前で仲間を散らせはしない・・・・・・だから今だけ・・・・・・俺にお前の想い・・・・・・貸してくれ・・・・・・!!!

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

テツヤ「さてと・・・・・・ログイン完了だな・・・・・・」

 

前回ログアウトした宿内でログインした俺は身体を起こし、その場で軽い準備運動をした。

 

テツヤ「・・・・・・テツヤ・・・・・・お前から貰った傷・・・・・・もう1回貰うぜ・・・・・・」

 

俺はそう言いながらメインメニューを開き、フェイスパーツの画面を開き、あの時に貰った傷跡を頬に付けた。

 

この傷はSAO時代に二度と仲間を殺させやしないと誓った傷跡だ。SAO時代に戻るべき今、この傷跡は大切な俺の想いの象徴だった。

 

テツヤ「2人は守ってみせる・・・・・・例えこの身が朽ち果てようが・・・・・・!!」

 

俺はその誓いを胸に、宿屋を出て総督府に向かった。




詩織に言われた言葉に気付かされ、遂に迷いを捨てた哲也。

一度捨てた名を新たに名乗り、本戦への誓いを立てる彼の前に繰り広げられる戦いは一体どのようなものなのか。

次回で本戦突入!激動の後半戦を見逃すな!

次回もお楽しみに!

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