神様から授かった能力 ~スタンド使いが幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
浄夜「にしても、お前もスタンド使いなのか?」
一輪「はぁ?そんなわけないじゃない。雲山は妖怪よ」
浄夜「ふッ……なるほど」
浄夜は鎌をかけた。浄夜は幻想郷では有名になったため、スタンドという言葉は知られるようになった。しかし、その性質はうやむやで、殆どの者が「スタンドとは変身することだ」と勘違いしている。
本来スタンドとは『そばに現れ立つ』というところからスタンドと呼ばれている。この意味を知っているのは、『自身がスタンド使い』或いは『身近にスタンド使いが居るか』だ。
雲山がスタンドじゃないのは何となく分かる。だからこそ聞いた。
普通なら「違う」とか「変身なんて出来ない」と言うだろう。しかし、彼女は「雲山は妖怪よ」と答えた。つまり彼女は浄夜が雲山をスタンドだと勘違いしていると認識している。この反応を示す答えは、彼女の身内にスタンド使いが居るということ。
何故そんな鎌をかけたかというと、今までの異変の経験上、必ずと言って良い程スタンド使いに出会ったのだ。
その為、今回も居ると睨んで鎌をかけたのだ。
一輪「何が可笑しいの?」
どうやらにやけていたらしい。しかし、にやけずにはいられない。これ程容易く聞き出せるとはね。
浄夜はそのまま目を瞑り、何でもないと答えた。
一輪「……いいわ。その余裕の態度、直ぐになくして見せるわ」
浄夜「余裕?別に余裕だから笑っていた訳ではないのだが……まぁ、別にピンチでもないし、どっちでもいっか」
小傘「ど、どうしよう……こんなクレイジーな人に拾われたなんて!!」
俺が持ち主じゃ不快か?
小傘「最高ね!!」
浄夜「お前も相当クレイジーだよ。あ~あ、嫌なもん拾ったな」
小傘「その割りには、嬉しそうね?」
一輪「冗談言い合えるほどには余裕があるのね」
まさか。冗談を言わないと余裕が出来ないんだよ。
……殺気?
浄夜「小傘、少し我慢しろよ」
小傘「え?」
浄夜は小傘を抱え、ジャンプした。そしてその場には大きな拳、雲山の拳があった。
それは床を貫き、破片が飛び散った。
小傘「キャア!?」
浄夜「『スタープラチナ』」
浄夜は飛び散った破片を掴み、ペヤリング弾のように雲山に飛ばした。
しかし、それは当たらなかった。否、当たりはしたが彼は雲だ。貫通し、全くダメージが入って居ないのだ。
浄夜「厄介なやつだ」
一輪「雲山は、その言葉をそっくりそのまま返すと言っているわ」
俺に直接言えよ。そう思いつつ、着地。
小傘「こ、怖いわ。心臓がバクバクいってる」
浄夜「お前は危険だから、安全なところに隠れてろ」
小傘は頷き、立ち上がった。浄夜は小傘が安心して隠れられるよう、『ジャスティス』になり霧を出現させた。
勿論、小傘が隠れる場所を見つけられるように、相手にバレない程度に彼女の周りを晴らした。
一輪「私には雲山が居るのよ?霧なんかに……」
浄夜「言うと思ったぜ?act2!!」
一輪と雲山の目の前に『スタープラチナ』が出現した。そして……
浄夜「思いっきり…息を吸うッ!!」
浄夜は自身の霧と雲山を両方吸いこみ、それらは浄夜の口の…いや、肺の中へと入っていった。
『ジャスティス』は自分自身なため、苦しむことはない。
晴れた霧から出てきたのは、一輪とスタープラチナの姿をした浄夜だ。
小傘の姿はない。
一輪「なッ!?……本当に厄介よ、貴方」
浄夜「………」
俺が最高で息を止められていた時間は二分。戦うために動くことを考慮すると、三十秒から一分間だけだろう。
その間に畳み掛ける。
浄夜「………」
一輪「クッ!!」
浄夜は息を止めたまま右腕を『ゴールドエクスペリエンス』、左腕を『ストーンフリー』、下半身を『ハイエロファントグリーン』にした。
スパイダーマンのように糸で一輪を追い、右手で攻撃。しかし、一輪は苦しくも避けて、その場からは慣れようとする。
しかし、避けたことにより右手は壁にぶつかり、そこから木が生えてきて、一輪を追うように急成長した。
それも避ける。それを三回ほど繰り返した。
埒があかない。そう思ったのか、彼は右腕を元の腕に戻し、『エンペラー』を出した。
一輪「ピストル!?」
しかも、ただのピストルではないだろう。きっとスタンドか何かだ。そう、彼女は認識した。
その読みは正解で、避けても避けても弾丸は空中でカーブし追ってくる。
しかし、彼の息は限界に到達しているはずだ。
浄夜「ウグッ………」
来た。漸く、雲山が解放され、私達のターンだ。
浄夜「ブハアァァァ………ハァ…ハァ…辛いな」
………え?いや、雲山が帰ってきたのは確かだ。しかし、霧がない。
雲山が居るから、どうせ意味がないと見越しての行動か?
一輪「……行きましょう、雲山。彼を倒して……どうしたの?雲山」
雲山は私を見て驚いている。……いや、違う?目線が私じゃあない。床?
私はゆっくりと床を見た。そして、私はそれに驚愕した。
浄夜「『ハイエロファントグリーン』で足を解れさせ、広げた。それは君に絡み付き、ほどけはしないだろう」
浄夜は上半身を『スタープラチナ』にし、こちらへ歩み寄る。
一輪「う、雲山!!私を守って!!」
雲山が浄夜に向かって拳を振るう。が…
浄夜「オラァ!!」
浄夜も拳を振るい、雲山の拳を止める。そんなことができる者は、今まで居なかった。
浄夜「成る程、拳は触れるのか。なら……」
浄夜は雲山にラッシュを与えた。
浄夜「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」
雲山は呆気なくも吹き飛び、私の後ろの壁に衝突した。
そして、浄夜は再び歩み寄る。
恐怖、それしかなかった。あのラッシュを見たら、その感情を押さえずにはいられない。
一輪「ハァ…ハァ…ハァ…」
息が荒くなっている。そして、心臓が激しく動いているのを感じる。
そして……
浄夜「フゥーッ………オラァッ!!!!」
私は意識を手放した。
バシッという音を聞いて、目の前は暗くなった。
浄夜「………お前の目、言いたいことが伝わったぜ」
雲山「…そうか」
喋れるのかよ、と思った。
今の状況を説明しよう。俺は彼女に拳を振るったが、余力を絞って雲山が拳を受け止めた。
浄夜「分かった。彼女に拳は振るわない。アンタの彼女への忠誠心に敬意を表する」
雲山「……君が戦いへの誇りを持っていることに感謝するよ」
浄夜「まぁ、彼女も気絶したし、元より殴る予定は無かったよ。卑怯な真似はしない」
雲山「本当に、良かった」
ふむ、彼女は守られている。それを自覚はしているだろうが、きっと彼女が思っているそれ以上。
浄夜「小傘、もう出てきていいぞ」
小傘「もう、お人好しね」
浄夜「そうかな?」
そして、浄夜達はその場から去っていった。この船の真相を知るため。