(なんていう無茶な動き!?体で機体を動かしてるってよりも、機体が体を引っ張ってるって感じ!それにさっきからPICもスラスターも一度も使っていない!)
「なかなかやるじゃないか。ここまでとはな」
楯無の攻撃をバク転で避けつつ、剣を投擲する。その動きだけでも普通に見ただけでもどれほどの鍛練を積んで来たか、容易に想像ができる。さらには、その動きにはPICによる浮遊とスラスターによる加速が無いというのだ。
「ふっ!」
「くっ!?貴女こそやるじゃない!」
ニヤッと笑みを浮かべて余裕の振る舞いを見せるアーチャーと、それに反して焦燥を感じる表情の楯無。一見すれば、空中にいる楯無がかなり有利に見えるはずだが、今の状況は違う。有利に戦いを運んでいるのはアーチャーなのだ。
それもそのはずだ。この2人には、大差がある。スラスターをハンデとしても、アーチャーを楯無以上の強者たらしめるのはアーチャー自身の『経験値』だろう。
(それにしてもおかしいわ………!動きが良過ぎる!つい数分前までとは大違い!まるでこちらの敵意を読んで行動してるみたい!)
考えれば考えるほど、思考の泥沼に嵌っていく。ましてや、それは決して解明することの出来ないものである。きっと、そこなど無いかのように深く嵌っていくだろう。
そう、それが常人ならばの話だ。
しかし、更識楯無は常人にあらず。その地位は学園最強である生徒会長だ。常人と同じ思考では頂点に立つことは出来ないだろう。
「貴女、もっともっと気に入ったわ!全力を見せて頂戴!」
″面白い″と、″愉快″だと、逆境だろうと笑い飛ばして、前に進める者。それが強者の条件の1つなのだ。
「ふむ、残念だがそれは無理のようだな。どうやら
「戻ってきた?一体何を言ってるの?」
「なに、今変わるさ。さあ、派手に暴れてやれ!」
そう言うと、アーチャーは目を瞑る。
(アーチャー?私がデータ領域に行ってからどれくらい経った?)
恐らく、データ領域にいた時間はおおよそ6時間ほどだろう。現実でまだ戦闘が続いているということはそれほどの時間が過ぎているとは思えない。
(だいたい10分未満といったところだ。それで?収穫は?)
10分未満、それほどまでに時間の差があったのは少し驚きだ。
(貴方の言ってた英霊のデータを手に入れたよ。契約もしっかりと結んできた。それとアーチャー、脳の負担に関する問題については覚えておけよ?)
未だに根に持っていることは後回しだ。
(騙すようなことになったのは謝るが、仕方のないことだったんだ。その話は後だ。データを君の脳内から機体にインストールする。私は暫く引っ込んでいることになるが、あの男に任せておけば良かろう)
そういうと、私の体を包んでいる機体が光り始める。
「ッ!?今度はなに!?面白いなあ、もう!」
会長がまた目を輝かせてこちらを見ている。攻撃を仕掛けてこないということは、恐らく妨害をする気は無いのだろう。
そんな会長に一言、
「お待たせしました会長!これより始まりますは、
なんて事を呼びかけてみる。きっと彼女は余計に興味を持つだろう。だが、彼の力には会長が興味を持つだけの価値があるだろう。
(インストール完了。コア内部の人格構成の換装。アーチャー『無銘』からアサシン『エミヤ』へ。武装、装甲の換装完了。機体のアップデート終了。一時的三次移行完了)
機体が変化していく。赤い外套は消え金属の甲冑へと変わり、ボディスーツの脚部にも金属のブーツが装備される。腰のベルトから赤い腰布が伸び、頭には彼のトレードマークの赤いフードが被せられる。
「それが、貴女の新しい力?」
「はい。全力で行きますよ!(………………行けるね?エミヤ?)」
(ああ、不思議な感覚だがしっかりとアンタを援護しよう)
こちらの準備は整った。なら、もう遠慮はいらない。あとは勝つだけだ。
「さあ、ついてこれますか?」
「ええ、追いついて見せるわ!」
武装欄を開き、空中へ浮き上がる。展開可能の武装を見ると、そこには全く見たことの無い名前が記してあった。
・キャリコ M950
・ワルサーWa2000
・コンテンダー
・
(いや、どれがどれだよ!?)
こんな大量に意味のわかんない名前の羅列見せられてもわかるわけないじゃん!?
(なんだ?銃に関しては素人か?スティンガーがどんなものかは知ってるのに?)
いやいや、そんなわかりやすいものと比べないでよ…………
(まあ、いいさ。まずは小手調べにキャリコを取り出せ。所謂、サブマシンガンのようなものだ)
(り、了解)
言われたままにキャリコを展開する。イメージしたものとは全く違う独特な形状をした銃が現れる。
(なに………?これ………?)
(ヘリカルマガジンと言うタイプの
なるほど、だからこの形状か。
(銃は扱えるな?反動制御が出来なきゃ当たらないぞ?)
そんなこと言われても、私銃扱うの初めてなんだけど!?
「でも、やるしかないよね!」
会長にキャリコを向けて連射してみる。予想以上に射撃は難しく、かなりの弾数を外してしまう。
「あ、あれ?あんまり当たらない………」
「…………プッ!あははは!ちょ、ちょっと!笑わせないでよ!」
く、くそ!なんか腹立たしい!
(20点…………いや、15点だな)
(しょ、しょうがないでしょ!?初めて扱うんだから!)
(…………近接なら、出来るか?)
ふと、尋ねてくるその質問にはyesと答える。
(私は近接戦闘の方が得意だよ)
(ふむ…………なら、彼女に近づいて撃てば当たるんじゃないか?)
なるほど。接近して距離を詰めてから発射すれば嫌でも当たるか。しかしそうなると問題点が1つ出てくる。
(格闘用の装備は無いの?無いと不安で不用意に近づけないよ)
(
(どんな武器?)
恐らく名前からして、彼の宝具なのだろう。それならば、きっと何かしらの特殊な能力があるはずだ。
(ーーーーー起源というモノがある。知っているか?)
起源…………あまり聞き覚えはない。魔術的な要素なのだろうか?
(知らない。聞いたこともないかも)
(そうか。難しい話じゃない、言葉の通りさ。何から始まったのか。何から生まれたのか)
(それは、母親とかそういうことじゃなく?)
(母親?違う。もっと根源的な話だ。個人としてのソレじゃなく、存在としてのソレだ)
なるほど、『根源』ということはやはり魔術に関する話か。
(っと、攻撃が来るぞ。上手く避けきれよ)
その警告が来た直後、会長の手に持つ兵装が火を吹いた。
「白野ちゃ〜ん?せっかく新しい装備になったのに、ボーッと止まってるだけじゃつまらないじゃない!」
挑発だ。それも明らかな。誰があんなのに乗るっていうんだ?
「あっ、私か」
機体を加速させて突っ込んでいく。
まだキャリコのマガジンには弾が残っている。
「いいね!そうこなきゃ!」
距離は大体2mくらいまで接近できた。きっと、油断している。だが、この距離なら……!
引き金を引くのと同時に、弾丸が発射される。
「甘い!そんなんじゃ当たらないわよ!」
くそっ!やっぱり弾かれた!
(無闇矢鱈と突っ込むな。それに突っ込むにしてもリロードをしてからだ。いざという時に弾切れになるぞ)
(わかってる!)
(はあ………話を続けよう。例えば『剣』から生まれる奴もいる。『無価値』から生まれる奴もいるだろう)
なんだろう、『剣』が起源ってすごい身近にそれっぽい奴がいるんだけど。
(それで、貴方の起源は?)
(僕の起源?アンタも僕の記憶でもう見ているじゃないか)
記憶の中で?それってもしかして、ナタリアという女性が説明していたヤツか?
(ーーーーー切って、嗣ぐ。通常の攻撃にも用いるが、歴とした僕の第2宝具。
『切断』と『結合』。全くの真逆のその2つを同時に1つのモノとしてその内に内包しているということか。この男は。
(それを使えば接近しても戦える?)
(ただの剣で打ち込み続けるだけの数倍は有利に事が運べる自信はある)
そこまで言うのなら見せてもらおう。その宝具の力を!
「武装展開…………」
手の中には1本のサバイバルナイフが現れる。一見すると何の変哲も無いナイフだが、そこからは何かオーラのような物が流れ出ている。そして何よりも違うのは、その感触。
強く握れば壊れてしまいそうなほど脆く感じるのに事実は、握ってみると今まで触ったことのあるどんなものよりも硬く、固く、堅く感じる。そんな曖昧な感触。
「これが、投影品じゃない本物の宝具………!」
「そのナイフが本丸って感じかな?なら、全力で来なさい!射撃で迎え撃つなんて無粋なことはしないわ!学園最強の誇りにかけて!」
学園最強?上等!全力で打ち負かすだけ!
「はい!本当にお待たせしました!今度こそ本当の全力です!」
再び会長へ向けて加速する。その加速にはもう少しの迷いもない。
「ふっ!」
思い切りナイフを振るう。確かに感覚は普通のナイフと変わらない。だが、そこには圧倒的な力がある。
「へぇ!面白いナイフね………!一体どんな能力があるのかしら?」
「一発食らってみますか!?」
「うーん、出来れば直撃は避けたいかも!」
そういうと会長は槍の柄で私の手を叩き、右手に持った
「さあ、これで終わり?」
「まだまだ!」
もう片手にあったキャリコを至近距離で発車する。
「よっ!危ない危ない!」
避けられたのは驚愕したが、時間は稼げた。
弾かれた武器はただのナイフではない。あれは宝具。つまり、なんらかの神秘が具現化されたもの。物質化された奇跡そのものなのだ。それは、本来は
ならば、こんな芸当が容易く行えるのだ。
ナイフが手から離れた瞬間に、それを元の状態に戻す。そしてーーー、
(手の中で物質として再構築する!)
すると手には先ほど弾かれたはずのナイフが握られていた。
「よしっ!食らえ!」
ナイフをもう一度振り下ろす。
「な!?そのナイフは!?」
会長も対応しきれなかったようで、槍でなんとか受け止める。
「直撃しなかった!」
(充分だ。よし、射撃戦になんとか持ち込め)
(射撃戦?なんで?)
(いいからやるんだ)
渋々承諾し、私は会長との距離を離す。
「ふーん、ヒット&アウェイってこと?」
「次は射撃でどうです?」
「あら、いいの?射撃苦手でしょ?」
そう言われると存外に腹が立つ。ムッとした表情になってるかもしれないが構わない。射撃をさせることがエミヤの目的なのだろう。
「こっちから行きますよ!」
リロードをしてキャリコを再び連射する。
その弾丸を会長は全て弾き切り、射撃の体勢に入る。
(機体内全ての回路を把握、機体内部を結界化完了)
(ちょっ!?なにしてんの!?)
(彼女が射撃したらすぐにスラスターで接近して攻撃する用意をしろ。サーヴァントの戦闘を見てきたアンタなら恐らく
ついていける?何に?
「キャアッ!?」
(今だ!やれ!)
(え、あ、うん!)
言われた通り加速してみると、一瞬理解することが出来なかった。
遅い。遅い。あまりにも遅すぎる。全ての時間が遅く見える。
いや、違う。疾すぎるのだ。私が、私の機体が。
(これが、『固有時制御』だ。体内に結界を展開し、その内部の時間を急速に早めることによって筋肉などの動きを早めることが出来る)
(すごい!周りが止まって見える!)
会長が突然の槍の爆発で驚いて、身を屈めた瞬間にはもう私は彼女の目の前まで迫ることが出来た。
(槍の爆発は、さっき
そうだったのか。つまりはこのナイフはそんな使い方が出来るということか。
(そして僕が生前から使っていた魔術であり、衛宮一族の魔術研究の結晶とも言える固有時制御が宝具に昇華されたもの。それがこの宝具、
いける!これならあの会長を圧倒することだって出来る!
「行っけぇぇ!!」
入る。簡単に。こうも容易く会長にダメージを与えることが出来る。今まで出来なかったのに。こんな簡単に。そう。まるで
「あーあ、これ結構キツいのよねぇ………」
なんだ?何を言っている?この人は?一体何をする気なんだ?何かが不味い……!この状況、今の台詞……!考えうるのは1つ!
そう思った時にはもう遅かった。
「
そう会長が発した瞬間、私は謎の大爆発に巻き込まれた。
「うぅぅ!あああああぁぁぁぁ!!」
「ったたた………勝負ありってところね」
その会長の声を聞いたところで、私の意識は途絶えた。
今回、自分の作品の中じゃめちゃくちゃ文字数多かった気がするんですけど、でも実際のところ今回の投稿が遅れたのは普通にサボりだったんです!内容考えてメモするのに掛かったの12時間もなかったんです!本当にすみませんでした!次回からは遅れないようにしたいです!
さて、今回の水着イベントは皆さんどんな調子ですか?僕は、チャレクエ難しすぎるので少し萎え気味です。あとは、最近は『ららマジ』っていうスマホゲーに浮気してまして………気になった方はやってみてくださいね!フレンドになりますので!