ハクノン紅茶とIS世界で頑張るのん!   作:是・射殺す百頭

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少し理由がこじつけかもしれない所が複数あるのですが……どうかそこは生暖かい目で見守って下さるとありがたいです。


別れの時

ここは恐らく夢の中だ。理由は特に無いが、前にアンリマユに出会った時に似ている。

 

そんな事を考えていると、闇が形を作り人になる。

 

「よぉ、仕事は終わったぜ」

 

「そう。わかった。お疲れ様」

 

「いやいや、労いの言葉なんぞいらねえっての。感謝されたくてやった訳じゃないからな」

 

「え?じゃあ一体なんの為に………」

 

そうだ。感謝や労いがいらないのなら彼は一体何故、私なんかに力を貸したのか?見当もつかない。

 

「ははっ!意味わかんないって顔だな。ん〜そうだなぁ。強いて言うならそれが俺の、いや英雄(おれら)の仕事だからだよ」

 

「そういうものなの?」

 

「ああ、そんなもんさ。まあ俺は反英雄ですら無いけどな」

 

「ふふ。それもそうだね。″常世全ての悪″だもんね」

 

二人で笑い合う。恐らくは二人ともこれから起こる事がなんとなくわかっているのだろう。

 

 

『バグの修正(デリート)』

 

そう。見つかった不具合(バグ)は、必ず消される運命にある。

 

そして、アンリマユはアーチャーというISの中に存在する、バグの様なものだ。必ずそれは修正される。

 

つまり、もう二度と会えない。

 

「ふう、それじゃあそろそろ私は行くね。さようなら」

 

本来なら彼には消えないで欲しいが、生憎そうも行かない。彼はIS特有の修復機能によって、『傷』の一つとして埋められるのだろう。

 

しかし、あの怪物にはワン・オフ・アビリティを使わなければ勝てない。

彼は、自らを犠牲にしてまで助けてくれたのだ。

 

「ああ、それじゃあな。もう二度と会うことは無いだろうがよ」

 

そこまで言うと、彼は″ああ、そうだ″

となにかに気づいた様につぶやき、私を呼び止める。

 

「なあ、嬢ちゃん。いや、岸波白野」

 

「ん?なに?急に改まって」

 

そして、彼は別れの言葉を紡ぐ。

 

「お前の人生には、これからも苦難が降りかかることだろう。それにその

苦難(にもつ)は誰も持ってやることはできない。自分で抱えるしかない。人間に支え合う事が出来るのは苦難(にもつ)じゃなく、苦難(にもつ)の重さで倒れそうな体だけだ」

 

ゆっくりと語り、子供をなだめる様に優しく声をかける。

 

「だがな、どんな事態に陥ったとしても、どんな苦難を抱えたとしても生きている限り世界は続いている。

瀕死寸前であろうが断末魔にのたうちまわろうが、『生きている』ことに変わりはない。

それをーーーーーー、」

 

そして最後にゆっくりゆっくりと、深呼吸をして満面の、人懐っこく優しい純真な少年の笑みを浮かべて告げる。

 

「それを希望がないと、笑う事だけはしないでくれ」

 

その別れの言葉に一度だけ頷き、返事をする。

 

「ありがとう。でも大丈夫だよ。決して諦めたり、希望がないと笑ったりはしない」

 

そう、絶対にそんな事はしない。出来る訳がない。何故ならその苦難だってこの世界にある物なのだから。

 

そして私は、世界にある物に諦めをつけたり笑ったりはしない。

 

だって私はーーーーーーーー、

 

「だって私は、この世界の全てに『恋』をしているから」

 

そう、世界の全てを愛している。

 

彼(アーチャー)の救おうとした人間という生き物を、それを生み出したこの地球という土地を、心から愛しているから。

 

「ぷっ!あはは!やっぱり面白いわ!嬢ちゃんは!」

 

それを聞いたアンリマユは吹き出して笑い始める。

 

「それじゃ、今度こそ本当にお別れだ。そろそろ体も保てなくなってきたし、嬢ちゃんの目も覚める頃だ」

 

「うん、そうだね。それじゃあお別れ」

 

最後に一言。

 

ありがとう。

 

 

その私の言葉はきっと彼に届いただろう。彼は、微笑みなら消えていった。

 

そして、それを見届けた所で私の目も覚めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん………ああ、夢……か」

 

初めてみる天井。でもなんとなく分かる。

 

清潔なベッド、真っ白なカーテン、少し薬品の様な匂いがするここは学園の保健室だろう。

 

「あ!岸波さん!よかった!目が覚めて!」

 

「山田先生……おはようございます」

 

「ええ、おはようございます。って違いますよ!もう!あんなに無茶をして!先生心配したんですからね!」

 

いつも通りの様子で少し頬を膨らませる山田先生。

 

それを見た瞬間、目の前が霞み始めて頬を一滴の水滴が伝っていく。

 

「うええ!?ご、ごめんなさい!少し怒りすぎですか!?」

 

いつもなら笑っているところなのに、涙が止まらない。

 

そして、やっとその理由がわかった。

 

自らを助けた者が目の前で消えた事への消失感。

 

心に出来た空洞が悲しみを溢れ出させる。

 

もしかすると、アーチャーが私を助けて消えた事と重なって見えたのかもしれない。

 

「違うん………です………ちょっとだけ、悲しい事を…………思い出して………しまって……」

 

ポロポロと涙が止まらない。何故だろう?そこまで長い付き合いではなかったのに。何故こんなに悲しいのだろう?

 

「一人に………して貰っても………いい………ですか………?」

 

「え、ええ。わかりました。でも、何かあったら先生を呼んで下さい。生徒の相談を受けるのも先生の役目ですから」

 

山田先生はそう言いながら保健室を後にする。

 

そして私は彼の為に、

 

この世の全ての悪としての役割を背負った一人の少年の為に、涙を流した。

 

 




白野さんもわかってますけど、涙を流す理由がかなりこじつけで理由として弱いです。何故書いたのかと問われれば気まぐれとしか答えられません。申し訳ありません

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