短編ネタ Fate/zero × 神座シリーズ   作:天狗道の射干

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そんな訳で、最終話です。


最後 シュピーネさんよ。永遠に

――形成(イェツラー)我に勝利を与えたまえ(ジークハイル・ヴィクトーリア)   byロート=シュピーネ

 

 

 

 

 

1.

 永劫回帰。宝具と化した法則による無限ループ。

 そのループに囚われたシュピーネさんは、今こうして帰還した。

 

 否、帰還、と言う表現は相応しくはないだろう。

 サーヴァントであるシュピーネさんが聖杯戦争をしている裏で、彼だけはキャスターの下聖杯の研究を行っていたのだから。

 

 

「さて、こうして人質も用意した訳ですが――或いは、必要なかったかもしれませんねぇ」

 

 

 両手を広げて、シュピーネさんは笑みを浮かべる。

 その指先から広がる無数の糸は、まるで巨大な蜘蛛の巣の如く。既に間桐雁夜は彼の掌中にあった。

 

 

「…………」

 

 

 雁夜が訝しげな表情を浮かべて、身体を動かそうとするが、出来ない。

 宝具の糸によって生み出された結界は、内に捕らえた者を誰であろうと逃がさないのだ。

 

 

辺獄舎の絞殺縄(ワルシャワゲットー)。これに捕らわれたが最後、聖餐杯猊下といえども脱出できぬ逸品です」

 

「…………」

 

 

 自慢げに、勝利を確信しながら、解説するシュピーネさん。

 永劫回帰の恩恵によって、シュピーネさんが強くなったと言う訳ではない。

 

 英霊とは完結した存在。故に成長など、出来る道理は何処にもない。

 呼び出された分霊に知識の蓄積は起こり得るとしても、並み居る神霊に届く様な力を得る事など出来はしない。

 

 だが、それでも無限の積み重ねが、其処にはあった。

 四日と言う時間を繰り返す。その回数は既に那由他を超えていて、故にこそシュピーネさんはあらゆる可能性を経験したのだ。

 

 時に、衛宮切嗣やセイヴァーと共に戦い――最後に聖杯の薪になった。

 時に、ケイネス=エルメロイやソラウ=ヌァザレと行動を共にし――皆揃って、獣殿のご飯になった。

 時に、遠坂時臣と言峰綺礼の下に戻り――どこぞの八意思金神の影響で、道を踏み外した求道者による糞味噌展開の餌食となった。

 

 その全てを経験したのだ。故にこそ、ロート=シュピーネは彼らの事情や性格。その全てに至るまで理解していると言えるだろう。

 

 ならばこそ、雨竜龍之介をあっさりと改心させられたし、こうして間桐雁夜の隙を突いて捕らえる事すら容易であった。

 

 

「唯一人を救う為に、その理由すら忘れてしまっている。そんな姿には、素直に哀れみを感じますよ」

 

 

 自信と勇気に彩られた表情に、僅かに哀れみの色が影を差す。

 全身を縛られて動けぬ雁夜を前に、彼の理由を知るシュピーネさんは悲しさを感じている。

 

 

「まぁ、貴方は知らないでしょうが、他ならぬ貴方との約束です。此処で、この手で、その哀れな生に幕引きを与えて差し上げましょう」

 

 

 繰り返しの中で、僅か数度。シュピーネさんは間桐雁夜と対話した。

 聖杯の資料を求めて侵入した間桐家内で、未だバーサーカーに汚染されきっていない頃の雁夜と出会う事もあったのだ。

 

 そして、其処で交わされたのは、一つの約束。

 自分が守るべき人の事すら忘れてしまったのなら、終わらせて欲しいと言う願い。

 

 それを叶える為に、シュピーネさんはその指先に力を込めた。

 

 

「さあ、これで終わりです。……如何に天狗道の加護を得ようとも、一マスターに過ぎない貴方では――ひぎぃっ!?」

 

 

 なんと! シュピーネさんの糸が千切れた!?

 

 間桐雁夜の身体が膨張して、膨れ上がった筋力で無理矢理に糸を引き千切ったのだ。

 仮にも宝具。英霊の象徴を力技で破壊する。それはどれ程に、彼が外れてしまった証明となり得ようか。

 

 そして、それは策士であるシュピーネさんも予想外。

 四日目以降に雁夜に遭遇した事がないから、マスター達の激闘の中で急成長を遂げていた事を知らなかったから、海のシュピーネさんの目をもってしても、この結果は見抜けなかったのだ!!

 

 

「ま、待ちなさい!? こちらには人質が居るのですよっ! それが目に入らないとっ!?」

 

 

 だが、シュピーネさんとて、唯では転ばない!

 人器融合型の宝具を壊されて、全身から夥しい血を吹き出しながら、それでもシュピーネさんは挫けない。

 

 そう。人質とは、こんなもしもに備えて用意されている。

 遠坂葵。遠坂凛。間桐桜。三人の女は、間桐雁夜にとっては確かな盾となる者達であり。

 

 

「…………」

 

 

 僅かに、雁夜の目が桜を捉えて止まった。

 だがそんな停止は一瞬で、直ぐにも塗り替えられてしまう。

 

 

「……知らんし、見えんし、どうでも良いぞ」

 

 

 轟音と共に跳躍する雁夜。

 数キロと言う距離を一瞬で縮める速力が発揮され、シュピーネさんの眼前へと拳が迫る。

 

 正に絶体絶命。命の危機が間近に迫る状況。

 それでもきっと、シュピーネさんなら切り札の一つや二つは――

 

 

「ひぎゃぁぁぁっ!?」

 

 

 持ってなかった。現実は非情である。

 

 確かにロート=シュピーネは永劫回帰を乗り越えた。

 だが、膨大な叡智を手に入れても、中身が変わると言う訳ではないのだ。

 

 

 

 詰まり――所詮、シュピーネさんはシュピーネさんだった。

 

 

 

 

 

2.

 シュピーネさんと言う尊い無駄な犠牲がサンドバックをやっている間に、遠坂時臣は妻達の下へと向かう。

 

 

「葵。凛」

 

「貴方」

 

「……お父様」

 

「怪我は、ないな。ああ、良かった」

 

 

 背景でシュピーネさんが襤褸雑巾になっている中、時臣は妻子の様子を確認する。特に怪我もないと理解して、彼は安堵の息を吐いた。

 

 

「……」

 

 

 そんな中、桜はじっとその姿を見詰める。

 彼女に対して、時臣は何の素振りも見せる事はなく――

 

 

「時臣さん」

 

「葵?」

 

 

 代わりに、遠坂葵が動いた。

 貞淑な妻であった彼女には珍しい程に、確かな意志をその目に宿して。

 

 

「お話しが、あります。……桜と、雁夜くんについて」

 

 

 彼女は、見た。聞いて、教えられた。

 ロート・シュピーネより、魔術による映像再現で、桜と雁夜の全てを教えられたのだ。

 

 

「桜は、間桐の家で虐待されていたそうです。……跡継ぎとしての修練ではなく、唯胎盤として運用される為だけに」

 

「なっ!?」

 

 

 それは、遠坂時臣にとっても、想定外の真実。

 娘の幸福を願ったからこそ出した養子先で、桜を襲った悲劇。

 

 

「雁夜くんは、それを止める為に――あの子を助け出す為に、その結果、あんな風になってしまった」

 

 

 葵とて、一人の母だ。

 魔術師の妻として覚悟はしていても、それでもそんな光景を見せられれば揺るがずには居られない。

 

 ましてや、それが魔術的にも意味がなかったとすれば、果たして何を思えば良いのか。

 

 

「時臣さん。私達は、間違っていたんでしょうか。……桜に、何をしてあげれば」

 

「……なんと、言う事だ――何と、愚かな事をしたのだ。雁夜」

 

「時臣、さん?」

 

 

 だが、遠坂時臣の反応は違った。

 確かにそれは字面だけなら、雁夜の身を案じている様で、だが致命的に異なっている。

 

 

「確かに、臓硯氏の盟約違反は問題だ。魔術師として育てると、後々は家督を継がせるからこそ、桜を養子に出したのだ。……胎盤のみを目的としていたならば、それは重大な違反行為であろう」

 

 

 彼は骨の髄まで魔術師だ。

 確かに娘を愛してはいるが、その愛とて魔術師なりにと言う注釈が付く物である。

 

 

「だが、我が血族に連なる者ならば、その様な状況でも何れはあの老人を排斥出来たであろう。臥薪嘗胆に耐え、魔導の業を盗み、過酷な修練の果てに確かに間桐の家を奪えた筈だ。……桜の身体には、それだけの性能があった」

 

 

 故にこそ、冷静な思考としてそう断じてしまう。

 魔術師的に優れた素養を持つ桜の肉体ならば、臓硯の拷問に使う魔術から学び取れる筈だ、と。

 

 そうでなくとも、胎盤として使われ、生まれて来る末が必ずや臓硯を排斥し得ると、彼は性能値のみを見て、そう判断したのだ。

 

 

「だと言うのに、そんな桜を救う為に、それは愚かだぞ、雁夜」

 

 

 それは、確かにある意味では真実だろう。

 辿るべき一つの未来において、嬲られるだけだった桜は臓硯を殺せる。

 

 遠坂桜と言う器には、それだけのスペックは秘められている。

 

 

「遠坂時臣」

 

「……何だ、衛宮切嗣」

 

 

 だが、それは彼女自身を見ていない発言だ。

 内気で弱気な少女の意志が、耐えきれると信じて語る妄信だろう。

 

 

「お前は、我が子を愛してはいないのか」

 

「いや、愛しているとも、故にこそ最良の道を与えたいと願っている」

 

 

 同じ娘を持つ親として、思う所があるからこそ切嗣が口にする。

 そんな魔術師殺しに対して恥じる事すらなく、時臣は魔術師として発言した。

 

 

「その点で言えば、間桐は失敗だったな。盲目が過ぎたのかも知れん。聖杯戦争が終わったならば、次はあの子を別の家に――」

 

「っ!」

 

 

 それは、また桜を別の地獄に送ると言う言葉。

 それを耳にして、間桐桜は恐怖にその身を震わせる。

 

 もう終わったと、そう思っていたからこそ、もう新たな恐怖には耐えられない。

 

 

「お父様っ!」

 

「凛?」

 

 

 そんな恐怖に震える妹の姿に、姉は小さな心を奮起させる。

 何もかもが正しいと思っていた父に対して、凛は初めて反発してみせた。

 

 

「桜、泣いてた! 助けてって、泣いてたわ! お父様に、お母様に、私に、だからっ!」

 

 

 幼い少女の記憶に残ったのは、見せられた幻覚。

 桜が初めて蟲蔵に落とされた日の出来事を見せられて、凛は言葉を上手く纏められずに、感情的な叫び声を上げていた。

 

 

「……凛。魔術の修練に、苦痛は付き物だ。お前には必要がないから体験させていないが、或いは拷問や凌辱とて必要とする家系もあるだろう」

 

「けどっ!」

 

「お前は優しい。それは確かに美徳だ。――だが、優れた魔術師に、優しさも甘さも不要だと知ると良い」

 

「っ」

 

「ましてや、桜やお前は、魔術師に成らねば未来がない程の才能を得てしまった。……ならば、非情になる事を学びなさい」

 

 

 それが、魔術師の理屈。

 遠坂時臣にとって言えば、桜の体験など然程珍しい物ではない。

 

 悔しげに歯を食い縛る娘を見て、時臣は思う。

 魔術師として生きるか否か。それすらも選ばせてやれない彼女らに対して、後悔にも似た様な感情を。

 

 それでも、凛や桜程の才能は魔を引き寄せる。

 自衛の手段を持たない限り、彼女らには凡庸な平穏すら与える事は出来なくて。

 

 だから涙を堪える凛に、如何にして分からせようかと思考した時――パンと乾いた音が響いた。

 

 

「葵」

 

「時臣さん。……今から一度だけ、貴方に逆らわせて貰います」

 

 

 叩かれた頬に手を当てて、驚愕を浮かべる遠坂時臣。

 彼の妻、葵は凛の前に立って、初めて己の意志を時臣に示した。

 

 

「今更、なのかもしれない。都合の良い言葉なのかもしれない。けど」

 

 

 それに、どれ程の恐怖を感じているだろうか。

 

 未だ愛が冷めた訳ではなく、何よりも大切に想っている夫。

 それに対してこうして反意を示す事、それ自体がかなりの負担となっている。

 

 

「私は、アレがあの子の幸せには見えません。あんな事に耐えた果てに、桜の幸せがあるとは思えないんです」

 

 

 それでも、歯向かうのは真実を知ったから。

 碌でもない母であった事を自覚して、だからこそ葵は此処で我意を示すのだ。

 

 

「私は弱くて、鈍くて、あの子の悲鳴にも、雁夜くんの想いにも、シュピーネさんに言われるまで気付けませんでした」

 

 

 誰も好きになった事がない。そう思っていた弟分の真意を知った。

 それに答える事は出来ないけれど、それでも確かに想う事は其処にある。

 

 

「私は魔術師の妻です。……けど、桜の母でもあるんです。――だから、せめて今のあの子には、愛している事を伝えたい。伝えられる女でありたい。だから」

 

 

 どうか、あの子を。

 母と娘。揃って反発したその姿に、時臣は目を閉じて僅かに思案した。

 

 

「……私の意見は変わらない。あの子が真面に生きるならば、魔術師の保護を得るのは必要不可欠な条件だ」

 

「時臣さん」

 

 

 届かないのだろうか。そんな風に不安に思う妻と娘たち。

 それぞれの理由で、難しい顔をしながら時臣を睨み付ける切嗣とケイネス。

 

 そして、何か蹂躙されてるシュピーネさん。

 

 

「だが、既にあの子は、間桐桜だ。……私が今更、進退を定める理屈もない、か」

 

 

 そんな中でも揺らがずに、時臣は結論付ける。

 

 既に遠坂桜は此処になく、居るのは間桐桜である。

 ならば無理に干渉して、その進退を都合よく動かす権利はない。

 

 だから、出来る事はせめて――

 

 

「古き盟約に従い、遠坂家当主・遠坂時臣は間桐家当主代行・間桐雁夜に最大限の援助を行う事としよう」

 

 

 そんな魔術師然とした、支援だけが限度である。

 所詮遠坂時臣は魔術師だ。魔術師以外の何者にも成れぬのだから、魔術師としてらしい答えを返すのみ。

 

 

「時計塔の講師に依頼し、次代の間桐の魔術継承の為に支援を。そして、それに反意を抱く、次期当主に害意を抱く者らの処理を、フリーランスの傭兵に依頼したい。――受けてくれるかな、ロード=エルメロイ。衛宮切嗣」

 

 

 既に潰えかけている間桐に対しての援助と言う名目で、桜に最低限の力を付けさせる。

 後はまあ、雁夜と桜で好きにすれば良い。それが時臣に選べる、最大限の譲歩策。

 

 

「……良いだろう」

 

「ふんっ。本来ならば、そんな小事には関わらんのだがな。……成人後の間桐次期当主が、修羅道からの脱出に何らかの意味を持つかもしれん。受けてやるから、感謝するが良い」

 

「ええ、両名に感謝を」

 

 

 葵と凛が喜び、桜が驚愕する中、遠坂時臣は揺るがない。

 彼は魔術師として子を愛し、魔術師として相応しい道を与えるのだ。

 

 

「さて、そうと決まれば、雁夜を如何にかせねばなるまい。臓硯氏が失脚し、間桐の家系が潰えかけている今、名目上とは言え桜の保護者足り得るのは彼だけだからな」

 

「アサシンもそう長くは持たぬでしょう。師よ、どうなさる御積りで」

 

「決まっている。常に優雅に、我が家訓は揺るがぬよ」

 

 

 襤褸雑巾を超えて、残骸の果てに至ろうとしているシュピーネさん。

 そんな姿を遠目に眺めて、どう動くべきかと言峰綺礼が問い掛ける。

 

 マスター達の意志は一致している。

 シュピーネさんと言う肉壁が無くなる前に、間桐雁夜を止めるのだ。

 

 

「……どうして」

 

「桜」

 

「どうして、皆。無駄なのに」

 

 

 そんな光景を見詰めながら、心が壊れた少女は口にする。

 桜もまた雁夜の理由を聞かされて、それ故にこうして何も分からずに居た。

 

 

「おじさんも、遠坂さんも、どうして」

 

「それはきっと、貴女を愛しているから」

 

 

 戸惑う少女に、答えは返る。

 答えを返したのは、少女と同じく幼い精神を持つ女。

 

 

「アイリ? どうして、此処に」

 

「舞弥さんに連れて来て貰ったの。……この状況でしょう? 何処に居ても変わらないなら、せめて貴方の傍に居たくて」

 

 

 援護射撃を続ける切嗣にそう返して、アイリスフィールは桜に向き合う。

 愛を教えて貰った生まれたばかりの女が、壊れてまた生まれようとしている少女に愛を伝える。

 

 

「愛している、ですか」

 

「ええ、きっとそう。皆少し、やり方を間違えてしまったけれど、貴女を大切に想っていた」

 

 

 時臣も、葵も、凛も、雁夜も、皆がやり方を間違えた。

 それでも確かに、誰もが桜を大切に想っていた事は事実であり――

 

 

「愛」

 

 

 だからこそ、桜は分からなくなった。

 

 

「どうしたら、良いんでしょうか」

 

「何が?」

 

「……私は、あの人達に、何を返せば良いんでしょうか」

 

 

 憎悪を叫べば良いのか。怒りを向ければ良いのか。

 感謝を告げれば良いのか。涙を流せば良いのか。

 

 桜には、何も分からない。

 

 

「どうして、欲しいの?」

 

 

 ただ、どうしたいのかと聞かれたら。

 

 

「…………もう、こんなの嫌です」

 

 

 もうこんな苦しい思いをするのは、嫌だと言う思いがあった。

 

 

「なら、それを伝えましょう。きっと、それが大切な答え」

 

 

 雪の聖女はそう告げて、桜は頷くと一つの言葉を口にした。

 

 

「助けて」

 

 

 それは、きっと、ずっと叫んでいた言葉。

 だけど唯の一度も届かなくて、今初めて伝わる言葉。

 

 

「お父さん。お母さん。お姉ちゃん」

 

 

 大切な人の名を、助けてはくれなかった人の名を。

 

 そして、今、誰よりも傷付いている人の名を――

 

 

「雁夜おじさんっ! 助けてっ!!」

 

 

 桜の声は、確かに彼に届いた。

 

 

「……サ、クラ」

 

 

 ああ、そうだ。何を忘れていた。

 暴れ狂っていた間桐雁夜は、本当に大切な想いを取り戻して立ち止まる。

 

 そうとも、願っていたのは唯一つ。

 その願いが自分の独善から、少女からの祈りへと変わった。

 

 それだけで、それだけでも、命を掛ける理由には値する。

 そう。葵を中心とした理由ではなく、雁夜の身勝手な思い込みでもなく、確かに今、この理由は正当な救いへと生まれ変わった。

 

 ならばこそ、己は何をしている。

 何の為に力を望み、何の為に苦しんだと思っているのだ。

 

 

――決まってる。塵掃除の為だろう? 塵屑。

 

「あぁ、ああああああああああっ!?」

 

 

 されど、邪悪な神の呪いはこの程度では覆せない。

 自我を取り戻したが故に苦しみ始めた雁夜は、頭を両手で抱えて地に蹲る。

 

 もう忘れないと、忘れたくないと。

 抗えば抗う程に、身体を蝕む汚染は酷く増していく。

 

 また狂気に落ちるのも、時間の問題だった。

 

 

「……こ、此処までは、予想通りです。ええ、無論。予想してましたとも、確信に近いレベルで、やはりこうなったか、と。当然じゃないですかっ!」

 

「お前は、誰に対して言っているのだ」

 

 

 流石のシュピーネさんも、武者震いを隠せないのだろう。

 震える声で口にするシュピーネさんに、彼を壁に使っていた綺礼がそんな的外れな突っ込みを加えていた。

 

 

「さて、間桐雁夜には亀裂が生まれました。……救うべき少女の助けを求める声で、僅かであれ、確かに正気は戻りました」

 

 

 そんな無粋な発言を大人の余裕でスルーして、襤褸雑巾ながらもシュピーネさんは口にする。

 

 この状況すらも、全て彼の予想の内だったらしい。

 流石は、盤面不敗な神祇省の首領並みに、優れた作戦立案能力を持つ僕らのシュピーネさんである。

 

 

「ですが、これだけでは直ぐに潰えるでしょう。邪神の汚染は、そんな想い一つで覆せる程に弱くなく、間桐雁夜は抜け出せる程に強くはない」

 

 

 拮抗はきっと、僅かな間で終わるだろう。

 少女の叫びで戻った意識は、結局無為に消えるであろう。

 

 

「けど、誰かがその背を押せるのならば――」

 

 

 だが、それでも確かにある可能性。

 もしも今、雁夜を救える者が居るのだとすれば――

 

 

「ふむ。成程。それが私の役割か」

 

 

 それは、悲想を抱いた救世主以外に存在しない。

 

 

「水銀の思惑に乗るのは腹立たしいが、確かにその男を見過ごす事は出来ない、か。――ならば、それもよかろう」

 

 

 バーサーカーとの激闘の中、今にも消えそうなセイヴァーはそう口にする。

 誰よりも潔い神は、恨み骨髄なキャスターよりも残れたのだから、ここで終わるのも良いかと結論付けた。

 

 

「済まんな。切嗣。私は此処で逝く」

 

「……僕は救済を諦めない。貴方が此処で消えるなら、また呼び出す術を模索するだけだ」

 

「そうか。それもよかろう」

 

 

 マスターとサーヴァントは、そんな風に言葉を交わす。

 そしてセイヴァーは、己の全身全霊をもって、その宝具を起動した。

 

 

「全て清めん。原罪浄化せん。――ネツィヴ・メラー」

 

 

 対象となるのは、間桐雁夜。

 その体内にあるパスを通じて、内側からバーサーカーへと浄化の力を叩き付ける。

 

 

「あ? 何だ、コレ」

 

 

 それは、極大の邪悪を覆すには足りないだろう。

 それでも天狗道と言う法則は、嘗ての神話故に内側からの破壊に弱い。

 

 故に――

 

 

「亀裂が、俺の身体に?」

 

 

 セイヴァーの命と引き換えに放たれた浄化の輝きは、確かに間桐雁夜を救い上げ、バーサーカーの身体に僅かな亀裂を生み出した。

 

 

「俺のぉぉぉぉっ!? 俺の天狗道(カラダ)がぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 それは蚊が刺したよりは大きくて、それでも切り傷程にも大きくはない。

 浄化し切れずに消滅したセイヴァーが遺せた傷は、そんなちっぽけな掠り傷。

 

 

「てめぇらぁぁぁっ! 俺の身体に、何をしやがったぁぁぁぁっ!?」

 

 

 それでも、痛みを真面に感じた事もないバーサーカーにとっては、耐えられない程の重症。

 その痛みにもがき苦しんで動けないバーサーカーの身体を、黄金の輝きが襲った。

 

 

混沌より溢れよ(Du-sollst)――怒りの日(Dies irae)!」

 

「っ!? 塵が塵が塵が塵がっ! 塵がぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 痛みに震えるバーサーカーの傷口に、黄金の槍が突き刺さる。

 修羅道至高天の全霊の攻撃が、痛みに震えるその傷口を僅かに広げていく。

 

 

「卿から見れば、確かに消えかけの塵であろう。……だが、今の卿を相手に、僅かな時を稼ぐ自負はある」

 

 

 風に靡く黄金の鬣は、今にも消えそうな脆弱さなど見せはしない。

 滅び去って尚蘇らんとしているその総軍は、確かな神霊としての威容を示す。

 

 

「さあ、我が総軍よ! これが最期の幕だ! 僅かな時を稼ぐ為に――Alle Hände sortie verfügbar!!」

 

 

 白騎士が、赤騎士が、薔薇の夜が、太陽の子が、経津主神の剣が、霧の摩利支天が、八意思金神が、夜摩閻羅天が――

 

 そしてランサー本人が、バーサーカーに立ち向かって消えていった。

 

 

 

 そして、生まれたのは僅かな時。

 その僅かな時の中で、黄金の瞳を持つ白髪の少女は口を開く。

 

 

「甦る。そう。あなたはよみがえる」

 

 

 それは一つの結実。

 波旬を倒す、唯一つの希望へと至る祈り。

 

 

「私の塵は短い安らぎの中を漂い。あなたの望みし永遠の命がやってくる」

 

 

 死者しか愛せぬ女が言葉を紡ぐ。

 もう一度やり直す為の祈りを、愛娘と共に唱える。

 

 

「種蒔かれしあなたの命が、再びここに花を咲かせる」

 

「刈り入れる者が歩きまわり、我ら死者の欠片たちを拾い集める」

 

 

 姉と共に、妹と共に、母禮と呼ばれし天魔は背中合わせに唱える。

 確かな想いを共有して、手を繋ぎ合って彼女達は一心に祈り続けている。

 

 

「おお、信ぜよわが心。おお、信ぜよ。失うものは何もない」

 

 

 己は屑だと、救いなどないと口にする死人はそれに続く。

 どうしようもない屑であっても、出来る事はあるのだと確かに信じて。

 

 

「私のもの。それは私が望んだもの。私のもの。それは私が愛し戦って来たものなのだ」

 

 

 それは地星の魔女も同じく、彼の下へと帰る為に。

 その呪文を口にして、その詠唱を此処に紡いで、今彼の出陣を待つ。

 

 

「おお、信ぜよ。あなたは徒に生まれて来たのではないのだと。ただ徒に生を貪り、苦しんだのではないのだと」

 

 

 黒き甲冑の獅子が言葉を紡いで、確かにアヴェンジャーの下へと力は集っていく。

 

 夜都賀波岐七柱。

 その魂を贄として、彼は真実の力を此処に取り戻す。

 

 

「生まれて来たものは、滅びねばならない」

 

 

 だが、此処にあるは七柱に足りていない。

 本来生贄となるべき両面の鬼が欠ける今、変わる誰かが必要となる。

 

 

「滅び去ったものは、よみがえらねばならない」

 

 

 それは、誰か。

 誰がその最後の一柱となるか。

 

 そう。その人物こそ、第七の生贄となる事を了承した者。

 

 

「震えおののくのをやめよ。生きるため、汝自身を用意せよ!」

 

 

 まさか、こうなるとは思わなかった。

 そう苦笑しながらも、黒髪の美女は黄金の槍を手に声を高らかに叫ぶ。

 

 アーチャーのサーヴァント。

 伊邪那美命。久我竜胆鈴鹿が其処に居た。

 

 

『おお、苦しみよ。汝は全てに滲み通る』

 

 

 声を揃えて、アヴェンジャーの従属神達とアーチャーは紡ぐ。

 

 

『おお、死よ。全ての征服者であった汝から、今こそ私は逃れ出る』

 

 

 彼の復活を、その時こそ、波旬を倒す時だから。

 

 

―太・極―

 

『随神相――神咒神威・無間衆合』

 

 

 そして、彼は甦る。

 

 無数の命の散華と共に、強大な神威が放たれる。

 今のバーサーカーに勝るとも劣らぬその威容。それこそが、サーヴァントではなく神霊としての天魔・夜刀。

 

 

「アヴェンジャー」

 

「ふっ、ではな。ウェイバー」

 

「……ああ、行って来い! お前の強さを、見せてくれっ!!」

 

 

 全てが凍り付く世界で、契約故に言葉を交わせる彼らは別れを告げる。

 勝とうが負けようが、アヴェンジャーは消えるだろう。それを彼自身が誰よりも望んでしまっているのだから。

 

 

 

 そして、その場に立つのはアヴェンジャーだけではない。

 アーチャーが贄となったのだから、当然、この益荒男も此処に居る。

 

 

「思ってもみなかったぜ。こうして、アンタと肩を並べるとはよ。夜刀の大将!」

 

「ふっ、それが時空の果てに行われる、聖杯戦争の妙と言う物だろう。……遅れるなよ。覇吐」

 

「アンタこそなっ!」

 

 

 赤い髪の男達は、背中合わせに波旬を睨む。

 強大な神格のぶつかり合いに世界が持つ道理などはなく、ならば許される交差は唯一度。

 

 

「行くぞ、波旬。第六天!」

 

「これが俺と大将のっ!」

 

 

 ならばただ一度で、最高の一撃を。

 この神咒神威神楽を以って、此処に第六天を粉砕せしめん。

 

 

『全身全霊至大至高の一撃だっ!!』

 

「っ!?」

 

 

 斬、と覇吐と夜刀の剣が波旬を切り裂く。

 最強の邪神は積み重なる痛み故に動けず、その一撃の下に斬り伏せられた。

 

 

「……ああ、そうだ」

 

 

 そして、消えゆく刹那。思い出すのは、同じ感覚。

 どうして忘れていたのだろうか、この先にこそ在ったと言うのに――

 

 

「此処に、無謬の平穏が――」

 

『俺達の勝ちだぁぁぁぁっ!!』

 

 

 消滅する波旬へと、更に撃ち込まれる巨大な神威。

 全てを破壊する力の奔流に飲み込まれて、バーサーカーは消滅した。

 

 

 

 

 

 そして、最後。

 時の止まった世界にて、シュピーネが言葉を紡ぐ。

 

 

「さて、邪神はこうして討たれ、全ては解決した。――と言えれば良かったのですがねぇ」

 

 

 その手に握られた盃。

 それは今にも罅割れて、中身が溢れ出しそうになっていた。

 

 

「実はこの小聖杯擬き。短時間しか神霊を留めておけないのですよ。言わずもがな、バーサーカー程の怪物となれば、後数秒で大爆発しますね」

 

 

 既に限界を超えたアヴェンジャーと伊邪那岐命は消えようとしていて、彼らが消えれば更に盃は満たされる。溢れ出した神霊六騎分の力は、世界全てを蹂躙するだろう。

 

 

「膨大な力は消費せねばなりませんが、爆発的に膨れ上がった神霊五騎分の魂など、並みの存在では使用する所か受け止める事さえ出来ません」

 

 

 願いに使えば、確かに消費は出来るだろう。

 だが今のこれに願えるのは、この力全てを受け止められる神霊のみ。

 

 

「そんな訳で、頼みましたよ。ツァラトゥストラ」

 

 

 だからこそシュピーネさんは、その手にした盃を天高く放り投げた。

 

 

「ふん。相変わらず。無茶ばかりさせてくれるっ」

 

 

 愚痴を零しながら、それでも受け止める天魔・夜刀。

 己の消滅と共にこれを消し去り、全ての破壊を己で受け止めようと判断して――

 

 

「……これは、――ラインハルトっ!?」

 

 

 取り込んだ魂の中に、無関係な命がある事に気付いた。

 それは黄金の獣が魂食いによって食らい尽くした。何の罪もない人の命。

 

 このまま自分が消え去れば、彼らの命は消え去るだろう。

 それを望まないなら願いとして使わねばならず、そしてアヴェンジャーにとって死者を救える方法など一つしか浮かばない。

 

 

「やってくれたなっ! シュピーネっ! メルクリウスっ!!」

 

 

 憤怒と憎悪を抱いて叫ぶ。

 己が一番望まぬ事を、彼らを救う為には為さねばならない。

 

 悪辣な蛇が嗤う姿が浮かんで、アヴェンジャーは激しい怒りを撒き散らした。

 

 それでも、そんな感情に振り回されて居てはいけない。

 

 

「永遠の君に願う!」

 

 

 自分の矜持と、彼らの命。

 どちらを優先するべきかは明白で、ならば選ぶ道など決まっている。

 

 

「俺達に――至大至高の結末をっ!!」

 

 

 神霊五騎と言うエネルギーに、己と言う存在を触媒とする。

 

 願うのは一つ。

 全てに救いを齎せる一人の愛しい女の姿。

 

 

すべての想いに(Amantes amentes)巡り来る結末を(Omnia vincit Amor)――』

 

 

 消え去る刹那、夜刀の声に重なる女の声。

 言葉を交わす事もない一瞬に視線を交わして、アヴェンジャーは消滅した。

 

 

 

 そして、世界を黄昏の輝きが包む。

 全ての命と想いに、優しい女神の祝福が舞い降りていた。

 

 

 

 

 

「かくして、今宵の道化芝居(ファルス)はこれにて終幕。皆様、如何でしたでしょうか」

 

 

 そして動き出した時の中、世界を満たした黄昏の輝きを背にアサシンは語る。

 

 

「さて、幕後の余韻を崩さぬ内に、役目を終えた役者は去るとしましょうか。……このまま現界していると、余計な欲が出そうですからねぇ」

 

 

 これ程の舞台劇。その幕引きを穢す訳にはいかない。

 だからこそ、欲が出る前にアサシンは消滅する事を選んだ。

 

 彼らしくもない。

 さて、それは如何なる心境の変化か。

 

 

「言峰綺礼」

 

「アサシン」

 

 

 そして、召喚者とサーヴァントは向かい合う。

 彼から手渡された物を見て、言峰綺礼は驚愕を浮かべた。

 

 

「……これは」

 

「何、仮にもマスターであった貴方へ、サーヴァントからの餞別です」

 

 

 それは盃。

 願いを叶える万能の釜。

 

 

「小聖杯。低レベルな英霊一騎分しかありませんが、ちょっとした願い事ならば叶うでしょう。……最後に残ったマスターが勝者ならば、貴方こそが優勝者だ。故に、好きにされるがよろしいかと」

 

 

 それは空の小聖杯。

 そしてこれから、消え去るサーヴァントによって満たされる小聖杯。

 

 

「では、皆様方。――Auf Wiedersehen」

 

 

 それを後に遺して、アサシンのサーヴァントは消滅する。

 彼を主演とした聖杯戦争と言う名の道化芝居は、こうしてその幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

3.

 かくして、聖杯戦争は終わった。

 だが、彼らの道は終わらない。故に、ほんの少しだけ、その後に触れてみるとしよう。

 

 

 

 

 

◇セイヴァー陣営

 

 正義の味方を志した男は、何も変わらない。

 見果てぬ夢の先にある理想郷を垣間見たのだ。ならばそれを目指して、前に進み続けるだけ。

 

 

 五百年の妄執を持つ蟲の翁が居た。遥か過去の理想を忘れた男が居た。

 自らの末裔の身体に潜んでいた老人は、浄化の輝きを浴びて始まりの想いを思い出す。

 

 故にこそ、老人は魔術師殺しと同じ道を行く。

 過去に見た人類悪の根絶。其の先にこそ、望んだ未来があると知って。

 

 

 地獄を積み重ねる僧侶が居た。死に理由を求めて、その先を求めた男が居た。

 世界を満たした黄昏の輝きを追い掛けて、そして僧侶は魔術師殺し達に遭遇する。

 

 幾度かの問答の後に、彼は悲想の天を知る。

 その世界こそが救いなのだと理解して、地獄の様な男は同じ道を歩き始めた。

 

 

 狂気に狂った錬金術師が居た。人間は救えないと、第六の法を求めた男が居た。

 世界を満たした輝きの中で自我を取り戻して、そして虚言の夜は魔術師殺し達に遭遇する。

 

 幾つもの神霊。その法則の中で唯一、悲想の天こそが救いとなろう。

 哂いながら涙を零す吸血鬼は、そう結論付けると彼らと共に歩き始めた。

 

 

 幾度も、挫折はあっただろう。

 幾度も、ままならぬ世に挫けただろう。

 

 それでも、確かな未来があると分かっていて――

 それでも、確かに傍らには、常に雪の母娘が安らいでいたから――

 

 

「ねぇ、切嗣? 何処に行くの?」

 

「決まっている。……何時か辿り着くべき、永遠の楽園へ」

 

 

 衛宮切嗣は、その最期まで歩き続けた。

 

 

 

 

 

◇アーチャー陣営。

 

 遠坂時臣は変わらない。

 彼の意志は揺るがずに、ただ魔術師として根源を目指し続けている。

 

 彼らの関係も変わらない。

 遠坂葵は変わらず貞淑な妻としてあり、遠坂凛は後継者として魔術の鍛錬に励んでいる。

 

 ふと、窓際に目を向けると、庭には客人がやって来ていた。

 凛と葵に会いに来たのであろう。幼い少女に手を引かれた、車椅子の成人男性。

 

 

「さて、今回の聖杯戦争。想定外の幕引きを迎えたが、しかし未だ大聖杯は残っている。――ならば、それを求めるのは遠坂の責務だ」

 

 

 彼らが辿り着く前に、未だ少しだけ時間があるだろう。

 そわそわとした様子で、授業に身の入っていない娘の姿に苦笑する。

 

 ああ、だが――

 

 

「だが、そうだな。……何れ聖杯は現れる。それを得る事は遠坂の責務ではあるが、お前が為さねばならぬ事でもない。至れると思うならば、別の方法を探すのも良いだろう」

 

 

 未来を選択する自由を与えられないからこそ、その程度は良いだろう。

 聖杯戦争と言う命掛けの儀式に望まぬとも、ただの魔術師として至る事を望むなら。

 

 

「好きにすると良い。……さぁ、行ってきなさい」

 

「はいっ!」

 

 

 元気良く返事をして、新たな関係を築き始めている二人の下へと凛は駆け出す。

 その優雅ではない仕草に少し苦笑を深くして、仕方がないかと表情を和らげる。

 

 

「常に優雅に。それをもう一度、しっかりと教え込まねばならないか」

 

 

 遠坂時臣は変わらない。

 未だ一般人の幸福には興味がないし、魔術師として生まれたからには根源を目指すのは義務だと思っている。

 あの青年は落伍者に過ぎず、愛娘達が魔術師として大成する事を祈っている。

 

 そうとも、遠坂時臣は変わらない。

 娘に義務を背負わせない為には、次の機会で己が至れば良いのだから。

 

 

「さて、次の聖杯戦争に向けて、策を練るとしようか」

 

 

 

 

 

◇ランサー陣営。

 

 ケイネス=エルメロイ=アーチボルトは、一度は確かに絶望した。

 その黄金の威容を前に心を砕かれ、膝を屈して諦観に身を委ねた。

 

 だが、それでも彼は男である。

 愛した女の為に、そんな僅かな気概で立ち上がる。

 

 聖杯戦争が終わった後、それでも獣の聖痕は消えない。

 彼も彼の愛する妻も、死後には座に登録され、永劫獣の奴隷と化すであろう。

 

 このまま、では。

 

 

「ふん。舐めてくれる。……そんな結末など、私は望まない」

 

 

 不安げに見上げる赤毛の女を励ましながら、ケイネスは確かに誓う。

 この手に抱いた熱を、その温かさに湧き上がる想いを、それがある限り、彼は最期まで抗い続ける。

 

 

「あの最低スペックのサーヴァントでさえ、聖杯戦争の勝利者になり得たのだ。ならば、この私が至れぬ理由など、何処にあろうか」

 

 

 同じ苦境の中で、惚れた女と心は繋がり、その想いは成就する。

 故にこそ、ケイネス=エルメロイ=アーチボルトには、最早揺るぐ事すら許されない。

 

 遠坂との約定を果たした後、ケイネスは動き出す。

 約束された椅子を捨て、魔術師としての誇りも名声も全て捨て、ケイネスはソラウと共に時計塔から姿を消した。

 

 

 

 彼らが獣の城から解き放たれたのかどうか、記録は何処にも残っていない。

 

 

 

 

 

◇キャスター陣営

 

 雨竜龍之介と言う連続殺人犯が、冬木市の警察署に自ら出頭した。

 その出来事はセンセーショナルな報道として、連日連夜、お茶の間を騒がせる事となった。

 

 

「うーん。これは、こうじゃないんだよなぁ」

 

 

 獄中に繋がれた龍之介が望んだのは、唯一つ。

 絵筆と絵具と白い画用紙。それだけを用意してくれれば、遺体を隠した場所を全て語ると言う、そんな小さな交換条件。

 

 

「血液か内臓でも使えれば良いんだけど、それやると表舞台に出せないからなぁ。……あ、この色混ぜれば良い感じかも」

 

 

 龍之介は即座に裁判に掛けられ、有罪が確定する。

 死刑は逃れられず、その犯した罪が余りにも膨大であるが故に、裁判は長く掛かる事となった。

 

 

「Cool!! 中々良いんじゃない、コレ!」

 

 

 雨竜龍之介。西暦97年の冬。

 神戸拘置所内にある刑場にて、絞首刑に処される。

 

 彼が出頭する前に描いた数点の絵画と、彼が獄中にて描いた十数点の絵画。

 その完成度の高さと雨竜龍之介のネームバリュー故に、それらは多くの好事家達によって売り捌かれる。

 

 狂気と猟奇の中に隠れた美を描いた作品。

 それを描ける様になるまでの経緯、殺人鬼と言う風聞が消える事はない。

 

 それでも時事故に関心を呼んで、確かに美しいと評価される。

 曰くつきの名作を世に多く遺した芸術家として、雨竜龍之介は後世に名を馳せる事になった。

 

 

 

 

 

◇アヴェンジャー陣営

 

 聖杯戦争が明けた朝、ウェイバーはマッケンジー邸宅の玄関先に居た。

 

 

「行くのかい、ウェイバー」

 

「うん。おじいさん。……元より、僕が此処に居る理由はないんだから」

 

 

 暗示が解けてしまった。

 元より異物である彼は、謝罪をした後に、こうして立ち去ろうとしている。

 

 

「気に病んでいると言うなら、気にせんで良い。儂もマーサも、良い夢を見せて貰ったからな」

 

 

 グレンとマーサ。ウェイバーを見送る二人の顔には、確かな笑みが浮かんでいる。

 彼らは騙されていたと言うのに、それでも確かな親愛の情をウェイバーへと向けていた。

 

 

「……だから、かな」

 

 

 激しい戦闘によって、魔力の大半を消耗した。

 暗示一つ掛ける事が出来ない程に、今のウェイバーは消耗している。

 

 未だ騙していて欲しい。

 そう願う二人の暗示が解けて、掛け直す事が出来ない程に、ウェイバーは未熟だったと実感していた。

 

 だからこそ、ウェイバーはこの家を出ると決めたのだった。

 

 

「僕はさ、未熟者だ。アイツの相棒だって、胸を張って誇れる様な奴じゃない」

 

 

 最期まで皆を守り抜いて、あっさりと消えていったアヴェンジャー。

 最高のサーヴァントだった彼に、最高のマスターだったと言われたウェイバー。

 

 それでも、その評価は自分には不釣り合いだと、ウェイバーはそんな風に感じてしまう。

 

 

「だから、世界を見ようと思う」

 

 

 故に、釣り合う様になろう。

 不釣り合いだと思うならば、これから相応しくなれば良いのだ。

 

 

「知らなかった事を知って、見て来なかった物を見て、――アイツの女神が、見守る世界を歩いてみるよ」

 

「そうか」

 

 

 手にしたのは、小さな鞄一つ。

 それだけで世界を回ろうとするウェイバーの瞳に、確かな輝きを見つけ出す。

 

 だからマッケンジー夫妻は、旅立つ少年を笑顔で見送る。

 

 

「ウェイバーちゃん。何時でも帰って来てね」

 

「そうさな。……此処は、お前さんの家でもあるんじゃから」

 

「……うん」

 

 

 既に暗示なんてないのに、そんな風に言ってくれる温かな人達。

 涙ぐんでしまうけど、旅立ちに涙は相応しくはない。ウェイバーは鼻を軽く啜ると、彼らに背を向け歩き出した。

 

 

「行ってきます。お爺さん。お婆さん」

 

 

 ウェイバー=ベルベット。

 この戦争で最も未熟だった少年は、この旅路の果てに何を見つけ出すか。

 

 それは彼の相棒が愛した、優しい女神だけが知っている。

 

 

 

 

 

◇バーサーカー陣営。

 

 聖杯戦争が終わって、暫くの時が経った。

 春が過ぎて、夏が過ぎて、秋が過ぎて、冬が過ぎて――また、春が来た。

 

 

「桜が、見たいな」

 

 

 ふと、雁夜が呟いて、少女は微笑みを返す。

 寝たきりの男性を車椅子に移して、彼らは病室を後にした。

 

 バーサーカーによる力の汚染。蟲による拷問。

 既に間桐雁夜の身体は、限界を遥かに超えている。

 

 車椅子がなければ満足に動けず、助けた少女に介護されながら日々を過ごしていた。

 

 

「ねぇ、雁夜おじさん」

 

「……なんだい? 桜ちゃん」

 

 

 桜並木を歩きながら、紫髪の少女がその名を呼ぶ。

 何処か眠そうに微睡みながらも、雁夜はその少女に問い掛ける。

 

 彼の寿命は、もう余り持たないだろう。

 日々眠る時間が長くなり、起きている時間が短くなっていく。

 

 だから、最期を迎えてしまう前に、彼に何が返せるだろうか。

 確かにあの地獄から救い出してくれた彼に、小さな桜は問いを投げ掛けた。

 

 

「何か、して欲しい事はない?」

 

「……そう、だね」

 

 

 雁夜は目を閉じて、考える。

 

 間桐桜は、魔術師として一人立ちできる程度には、力を付けた。

 それ以外の道を与えられなかったのは業腹だが、それでも臓硯も時臣も干渉しない今、彼女の未来は可能性で溢れている。

 

 そして、笑顔も増えて来た。

 凛と葵との関係は変わったけれど未だあって、そして他にも多くの出会いに恵まれた。

 

 こうして、彼女から恩返しを口にする事。

 それ自体が、もう彼女があの蟲蔵に囚われていないと言う証明だ。

 

 

(ああ、安心した)

 

 

 もう、桜は大丈夫。

 ならば、自分の役目はもう終わりだろう。

 

 既に死に体の身体を意地で持たせていた男は、漸くに己の役目の終わりを悟る。

 辛い生も、苦しい闘病も、もう何も必要はなくて――だから最期に、少しだけ我儘を口にした。

 

 

「桜ちゃんの、笑顔が見たいな。……とびっきりに、幸せになった、ね」

 

 

 最初は、愛した人の娘だから、助けようと思っただけだった。

 遠坂葵に良い所を見せたくて、そんな感情がなかったなんて口には出来ない。

 

 そんな不純で始まった行動。

 偽善に塗れた行為であっても、それでも確かに想いはあった。

 

 そう。今は、純粋に少女の生末を願っている。

 桜と言う少女が何時までも笑って過ごせる事を、それだけを祈っていて――

 

 だから、笑顔が見たかった。

 

 今も視界に映る満開に開いた花の様に、彼女の笑顔も素晴らしい物だと知っているから。

 

 

 

 桜に見守られて、雁夜は瞳を閉じる。

 安心したと呟いて、最期に焼き付いたのは最高の笑顔。

 

 眠る彼の表情は、確かな安らぎに満ちていた。

 

 

 

 

 

◇アサシン陣営。

 

 言峰綺礼は一人、冬木の公園で過ごしていた。

 日が頭上に回って、夕陽となって落ちるまで、ぼんやりと思考したまま過ごしている。

 

 

「聖杯、か」

 

 

 あれから何日も経過したが、どう使うべきか答えは出ない。

 いっそ誰かに渡してしまおうともしたが、父も師も綺礼が使うべきだと断じた。

 

 根源に行くには出力不足で、けれど些細な願いを叶えるには十分過ぎる物。

 これで叶えられない願いでも、薪を継ぎ足せば大抵の事は為せる奇跡の釜であり――

 

 

――私にはおまえを愛せなかった。

 

 

 何故だろうか、願いを考えているとあの日の事ばかり思い出す。

 

 

――いいえ。貴方はわたしを愛しています

 

 

 あの愚かで哀れな女。

 最初から死が決まっている彼女ならば、或いは愛せるかと期待した。

 

 それでも結局愛せなくて、その死を前にして何の感情も抱かなかった。

 

 本当に?

 

 

――ほら。貴方、泣いているもの

 

 

 それが事実だとすれば、アレは余りにも見る目がない。

 けれどそれが事実ではないとすれば、其処に抱いた感情は――

 

 

「何と、悍ましい」

 

 

 あの日抱いたのは、一つの後悔。

 こんなにも愛おしく感じる女を、もっと苦しめたかったと言う醜悪な願い。

 

 それを認めたくなくて、何度も目を逸らした。

 けれど自分を誤魔化し切るには難しくて、叶えられる手段が手元にあるからこそ、何度否定しようと同じ結論へと至ってしまう。

 

 クラウディア=オルテンシア。

 既に今は亡き女とも、或いはまた会えるかも知れない。

 

 だと、すれば――

 

 

「私は、何を望んでいる」

 

 

 聖杯を以って、彼女を蘇らせる。

 それは英霊を呼び出すよりも難しくはなく、きっと望めば不可能ではない事。

 

 もう一度会えたのならば、その時は――

 

 

「この苦悩。この葛藤。全てを捨て去り、もう一度、あの女を――」

 

 

 最低最悪の結末を。

 あんな下らない終わりではなく、もっと血と絶望に満ちた幕引きを。

 

 その光景を夢想して、それだけで笑みが張り付いて。

 

 

「何と言う邪悪だ! 悍ましい! 許されない! こんな汚物が、あってはいけないだろうにっ!!」

 

 

 未だ残った理性が、そう結論付ける。

 導く王も居らず、堕ちるだけの理由もなく、故に綺礼は葛藤を殺せない。

 

 醜いと思い、見苦しいと知り、それでももう目を逸らせない程に、確かに自覚してしまった。

 

 或いは開き直れたならば、それはどれ程に救いであろうか。

 もしも生まれついてより邪悪な者の正体が、あんなにも救いのない汚物でさえなければ、或いはそれに願いを託せたかも知れない。

 

 それでも知っている。知ってしまった。

 振り切れない。振り切る程に必要な経験を、綺礼は積む事すら出来なかった。

 

 

「ならば」

 

 

 そう。ならば、この聖杯をもって、全てを忘れよう。

 何もかもを忘却して、また偽りの求道へと戻る事も良いだろう。

 

 葛藤と懊悩の果て、たった一つの奇跡の使い道をそう決めて――

 

 

「……おっさん、何やってんの?」

 

 

 ふと顔を上げると、其処には小さな子供が一人居た。

 

 

「おっさん。何か泣きそうだぜ、悪い奴でも居たのか!?」

 

「……悪い奴、か。ああ、そうだな」

 

 

 そう。悪い奴に泣かされた。

 あの紅蜘蛛は聖杯を渡された綺礼がどうなるか知って、散々な命令をされた復讐に聖杯を渡したのであろう。

 

 精々悩め、と嗤う姿が脳裏に映る。

 ロート=シュピーネのそんな言葉に、綺礼は漸く現状を理解した。

 

 ああ、確かにこれは効率的な復讐だ。

 こうも懊悩させられて、残った聖杯も消費出来るのだから。

 

 

「どうやら、悪い奴にしてやられたようだ」

 

 

 苦笑して、そんな風に口にする。

 そんな何処か疲れた姿の神父に、赤毛の少年は怒りを表情に浮かべて。

 

 

「何だよ、ソイツ! 腹立つ奴だな!」

 

「ああ、そうだな」

 

「けど、安心しろよ! 俺がそいつをぶっ倒してやる!」

 

 

 そんな風に口にした少年に、綺礼はその目を丸くした。

 驚愕を表情に浮かべた綺礼に対し、少年はその手に握った安物の玩具を振り回す。

 

 

「ジャスティスブレードって、さ! ほら、今日、母さんに買って貰ったんだぜ。これで俺も、正義の味方だ!」

 

 

 日曜朝の特撮番組。その主人公が使っている武器に似せた玩具で構えを取って、何処か自慢げに語る少年。

 

 幼い頃にありがちな、道具があれば憧れと同じに成れると言う思い込み。

 何の根拠もなくとも、今の彼は確かに自分が、正義の味方であると酔っている。

 

 だから――

 

 

「知ってるか、おっさん! 正義の味方ってさ、弱い人を虐める悪い奴を絶対に倒すんだぜ!」

 

「……そうか。お前は正義の味方、か」

 

「ああ、だからさ。おっさんも、そんな風にしょげた顔してんなよ! おっさんを虐める悪い奴はさ、俺が絶対倒すから!」

 

 

 赤い髪の少年は、そんな夢物語を口にする。

 それはどれ程真実からは程遠くとも、それでも少年の瞳は真剣さを語っていた。

 

 

「ふふっ、くくくっ」

 

 

 だから、笑いが堪えられずに吹き出す。

 これまでの懊悩をふっ飛ばす程に、少年の頭の悪さに息も出来ない程におかしく思えてくる。

 

 

「あん? おっさん、一体どうし――」

 

「士郎ーっ! 早く帰るわよー!」

 

「あ!? 母さんだ! やべっ!!」

 

 

 士郎と呼ばれた正義の味方は、己の名を呼ぶ母の姿に慌てて走り出す。

 未だ呼吸困難な程に笑い転げる綺礼に、一つだけ言い残して走り去って行く。

 

 

「じゃあな、おっさん! また虐められたら、助けるから言うんだぞー!」

 

 

 そうして、何時か悪と正義として出会うかもしれない宿敵は、互いを知らずに此処に別れた。

 

 

「くくくっ、はははっ」

 

 

 ああ、こんなに笑ったのは何時以来か。

 或いは生まれて初めてかも知れない。それ程に、今笑っている。

 

 

「なんだ。そうか。……なあ、アサシン。知っていたか? 悪い奴は、正義の味方に倒されるんだとよ」

 

 

 随分と気分はすっきりとしている。

 

 当然だ。鬱屈し続けていれば良い答えなんて出ない。

 こうして鬱屈を可笑しさで笑い飛ばせば、後には唯爽快な気分だけが残る物。

 

 

「ああ、ならば、きっと」

 

 

 爽快とした思考で思うのは、或いはあり得る可能性。

 懊悩の果てに道を踏み外して、自分が許されぬ外道となったとしても――

 

 

「私が悪い奴になっても、止めてくれる者が居るのだとすれば」

 

 

 きっと、あの少年の様な誰かが止めてくれる。

 ならば堕ちる事を恐れずに、ならば過去と向き合う事も恐れずに、この想いを抱えたままに進んで行こう。

 

 そうとも、忘れたい訳ではないのだ。

 愛していたと言う事実を、忘れたいと願う筈がないのだ。

 

 

「そうだな。忘れてしまうには、この感情は重い。お前の思惑通りと言うのも、腹立たしい話だ。……ならば」

 

 

 答えは出ない。懊悩は解決した訳ではない。

 

 きっと何時か、この結論を後悔する日も来るだろう。

 きっと何時か、あの時にした選択肢に絶望する未来もあるだろう。

 

 それでも――

 

 

「私に聖杯は必要ない。この懊悩と共に、歩き続けるとしよう」

 

 

 愛していた事実を認めた上で、これまで通りに生きていこう。

 何時か耐えられなくなって壊れてしまう迄、あてもない求道を進み続けよう。

 

 それこそが、言峰綺礼の出した結論。

 彼は聖杯を天高く投げ捨てると、公園の出口に向かって歩き始めた。

 

 

 

 そうして、聖杯戦争は終わりを迎えた。

 参加者の誰にもに僅かな変化と、世界全てにほんの少しの優しさを残して――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Fate/zero×神座シリーズ。ネタ。

 犠牲/zero? ~シュピーネさんの聖杯戦争~

 

 おしまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに、言峰綺礼の投げ捨てた聖杯は、地面に落ちて砕け散った模様。

 

 

〈みぎゃぁぁぁっ!?〉

 

 

 ついでに、中に残っていたシュピーネさんの魂も、粉々に砕け散った模様。

 

 

 

 

 

 




型月世界にマリィが降臨して、優しい世界になりました。(ただしシュピーネさんは除く)



そんな訳で、Fate/zero×神座シリーズ短編ネタ。シュピーネさんの聖杯戦争。終幕です。

こんなネタ作品にお付き合い下さり、ありがとうございました。



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