ソーナ嬢たちを修練の門にぶちこんでから6日後、現在俺たちは無事(?)帰還してきたシトリー眷属たちをシトリー家の一部屋に集めて修行成果の報告会をしていた。
「しっかしよく生きて帰ってこれたなぁ。一人か二人は死んでると思ったのに」
『『ちょっ!!?』』
「冗談だよ、本当は死にそうになったらギリギリのところで強制的に帰還させるつもりだったんだ」
「………でも、死ぬギリギリまでは放置するつもりだったんだよね?」
「うん」
『・・・・・・・・・・・・・』
「…………今思えばよく生きて帰ってこれたよね、私たち」
「ああ、この一年間何度目の前を死がよぎったことか……」
「私、これから先に何があってもへこたれない自信があるよ。『あの時の地獄に比べたら』って」
『『うんうん』』
「ハハハハ、皆さん息ぴったりですね」
「ま、この一年間地獄のしごきに耐え抜いた仲間なんだ。結果オーライだろうさ」
するとそこに、ソーナ嬢と匙を部屋に運んでいたアランとべーやんが戻って来た。
「あ、アランにべーやん」
「アランさん、べーやんさん、会長と匙君はどうでしたか?」
ソーナ嬢の『女王』である椿姫が二人に尋ねる。
「ええ、二人ともよほど疲れていたのでしょう。今は緊張の糸が切れたかのようにぐっすりと眠っていますよ。」
「ま、二人とも俺たちと竜也の分身のしごきに耐え抜いたんだ。しょうがあるめぇよ」
そう、修練の門の中での約一年の修行の間、生徒会メンバーそれぞれには俺の分身をつけていたのだが、チームの要とも言えるソーナ嬢にはさらにべーやん、匙にはアランがついていたのだ。その内容も他のメンバーと比べて断然ハードである。
「よし、じゃあ最終調整は明日にする。お前らも今日のところはゆっくりと休め。」
『『わあああああああああああああ!!!!』』
「あったかいお布団で寝られるーーー!!!」
「お湯で体が洗えるーーー!!!」
「もう食料は現地調達しなくていいんだーーー!!!」
俺の言葉に狂喜乱舞する一同。女子高生としてはそこは死活問題だったろう。そこも含めてよく耐え抜いたな。
こうしてその日は解散となった。
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翌日、目を覚ましたソーナ嬢と眷属たちはダイニングルームに集められていた。目の前にはたくさんの料理がところ狭しとテーブルに並べられている。
「た、竜也…これって……」
匙が恐る恐ると俺に尋ねる。
「ああ、見事修行に耐え抜いたお前たちに俺からのご褒美だ。好きなだけ食べろ!」
『『『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』
「おいしい……おいしいよぉぉぉぉ!!」
「はぐはぐ……グスッ…涙で……涙で前が見えないよぉ……」
「うう゛ぅ……グスッ……お米ってこんなに甘かったんだ……」
「貴族の娘として生きてきたつもりでしたけど……こんなに……こんなに食事を美味しく感じたことはありませんでした……ッ!」
「畜生……うめぇ…うめぇよぉ!!」
みんな約一年ぶりのまともな料理に涙を流して噛みしめながら味わってくれた。いやぁ、こんなに喜んで貰えると作った方としても嬉しい限りだ。
「さて、それじゃ俺たちはそろそろ行くぜ」
食事を終えてしばらくしてから、俺はソーナ嬢たちに言った。
「………竜也さん、それにアランさんにベルゼブブ優一さん、この度は本当に、本当にありがとうございました。このご恩はゲームの結果で必ずお答え致します。」
そう言ってソーナ嬢は頭を下げる。他のメンバーたちも、ソーナ嬢に続いて頭を下げた。
「…………ゲーム、楽しみにしてるぜ」
『『『ッ!……はい!!!』』』
そうして俺たちはシトリー領を後にした。
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「……と、まぁ、向こうではそんな感じだったな」
「そうかい、まぁとりあえずお疲れさん」
ところ変わってグレモリー領、現在俺は久しぶりに集まったメンバーの各々の修行成果の報告を受けていた。
「しかし、俺が言うのも何だがとんでもねぇこと考えたなお前ら。まさか修行開始から3日で山ぶっ飛ばしたとは……」
「いや、兄さんほどではないよ」
「で、修行場がなくなっちまった訳だから、残りの時間は『白龍皇の氷結籠手』と『赤龍帝の炎翼』の練習に当てたんだ。今ならだいたい5~6回ぐらいまで連続で使えるようになったぜ。」
「ほほう、しかし興味深いね。今度俺ともやってみるか?」
「いや、向こうしばらくは遠慮しとくよ」
「あんな痛いのはしばらくは御免だぜ」
「そうかい、まぁまた今度でいいや」
「だぁり~ん!会えなくて寂しかったにゃ~ん」
すると黒歌が後ろから抱きついてきた。とりあえず撫でてやる。
「はいはい、俺も寂しかったぞ」
「ごろごろ~♪だぁり~ん、頑張った私にご褒美欲しいの~」
「わかったわかった、それじゃ、みんなに俺の特別フルコースご馳走してやるよ!」
『『『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』』』
『『『わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』
俺の言葉に歓声を上げる一同。
「ハハハハ、んじゃ、俺は厨房に行くぜ」
そう言って俺は厨房に向かう。
「そういえば竜也氏、ソーナ嬢らに振る舞ったあの料理、ただの料理ではありませんね?」
厨房に向かって歩いていると、後ろからべーやんが追いかけてきて尋ねる。
「おや、わかったか?」
「ええ、あの料理を食べてから、彼女らの生命力が格段に上昇しましたからねぇ。」
「まあな、あいつらの疲労度合いから割り出したもっとも適切な献立だ。食物のエネルギーは無駄なく体に吸収される。もちろん今から作るメニューもな?」
「なるほど、それを想定した上でのあの内容でしたか。相変わらず抜け目ないことで」
「まあな?で、べーやんは何かリクエストとかある?」
「牛糞」
「ねぇよ」
「冗談ですよ。カレーライス、中辛、ビーフでお願いします。」
「了解」
そう言って俺は厨房に移動した。
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