現在俺たちは若手悪魔たちの顔見せの行われる魔王領の都市、ルシフォードの一番大きい建物のエレベーターに乗っている。
「いいかみんな、俺は今回魔王と同格の立場としてアザゼルと共に出席する。みんなは他の若手悪魔たちと同じ場所に待機しててくれ。」
『『『『『了解』』』』』
エレベーターが止まり、案内人に先導されて会場に向かう。すると廊下に複数の人影があった。
「サイラオーグ!」
リアスが人影の内の一人に声をかけた。
「久しぶりだなリアス」
「リアス、知り合いか?」
「ええ、彼はサイラオーグ・バアル。私の従兄弟よ。」
バアルと言うと、魔王に次ぐ地位の大王家の跡継ぎか。
「貴殿が『魔源覇王』殿だな?俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次代当主だ。」
サイラオーグは俺に歩出て俺に握手を求め、俺はそれに応じる。
「でも何で廊下に?」
リアスが尋ねるとサイラオーグは心底嫌そうな顔をする。
「ああ、それはだな……」
ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!
「な、何だぁ!!!?」
サイラオーグが何か言おうとした時、爆音が周囲に鳴り響く。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
「こ、今度は地震だ!!!?」
「みんな、姿勢を低くして防災頭巾を被って机の下に!!!」
「いや、頭巾も机もねぇよ」
裕斗のボケは置いといて、地震の振動と共に伝わって来たこの魔力……
「あいつらか」
「は?」
「はぁ……ちょっと行ってくる」
「ちょっ!?アニキ!?」
イッセーの呼び掛けに片手を振ってあしらい、俺は会場に入る。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
イッセーside
アニキの後に続いて会場に入ると、中は滅茶苦茶に破壊されており、その中央で、同い年ぐらいと思われる、鋭い目付きの眼鏡をかけたドレス姿の美少女と、顔にタトゥーを入れ緑色の髪を逆立てたパンクファッションのヤンキー風の男が睨み合っていた。
「ゼファードル、こんな所で暴れて何考えてるの?バカなの?死ぬの?」
「黙りやがれシークヴァイラ!てめぇのその減らず口永遠に聴けなくしてやろうか!あぁ!?」
シークヴァイラと呼ばれた女の子が見下したように言い捨てると、ゼファードルと呼ばれた男が睨みを効かせて捲し立てる。
「はん、やってみなさいよ成り上がり風情が」
「ッ!!!?………ああいいぜ、やってやらぁ!」
するとヤンキーは床を蹴り女の子の正面まで接近する。
「『エクスプロードブロー』!!!」
ヤンキーがパンチを繰り出すと、女の子は横に飛び避ける。すると拳の直線上にあった床が爆発した。
「『クエイクウェーブ』!!!」
女の子の杖の先から衝撃波を放たれる。ヤンキーはそれを紙一重でかわすが、軌道上にあった壁が粉々に粉砕された。
「ちっ、チョロチョロとうざってぇなぁこのアマ!」
「あなたは殴ってばかりで単調なのよチンピラ」
「その口爆散させてやろうかこのワニ女!!」
「その矮小な頭粉々に粉砕するわよこの駄犬!!」
「「上等だぶっ殺す!!!」」
二人は再び攻撃を放とうと身構える。
「なーにやってんだお前ら」
するとそこにアニキが割って入った
「あ゛ぁ!?なんだ…お!?」
「邪魔するんじゃ…な!?」
すると二人は驚いたように目を見開く
「た、竜也様!?」
「あ、アニキ!?竜也のアニキじゃねぇですかい!?」
『『『『『『はぁ!!!?』』』』』』
え、何!?このヒトらアニキと知り合い!?
「『魔源覇王』殿、シークヴァイラとゼファードルとは知り合いなのか?」
サイラオーグさんがアニキに尋ねる。
「ああ、二年ほど前にな。当時俺は世界を回る旅をしていてな、その時ちょうど眷属探しをしている二人と出会ったんだ。」
「正確には俺が先でこの女が後から横入りしてきたんだがな」
ゼファードルがシークヴァイラさんを指差して言う
「ふん、よく言うわ。竜也様に喧嘩吹っ掛けてボコボコにされて金魚の糞みたいにくっついてた癖に」
「お前も似たようなもんだろうが!散々アニキのこと見下したこと抜かしといてメッタメタにやられてアニキの寛大さに触れたとたんに手のひら返しやがって!」
「落ち着けっての、ったく相変わらず仲悪いなお前ら。んで、喧嘩の原因は何だ?」
「あっ、そうだ!このアマ俺がアニキの組織に入りてぇつったら、『あんたなんかが入ったら竜也様の面汚しになる』…とか抜かしやがったんだ!」
「当然でしょう。あなたのような品性の欠片もないようなやつが加わったら竜也様の品格が下がってしまうじゃないの。私のような知性と気品に富んだ者こそが竜也様の配下にふさわしいのよ。」
「なーにが知性と気品に富んだだよロボオタクが」
「分子レベルまで粉砕するわよこの駄犬!!」
「チリも残さず爆破すんぞこのワニ女!!」
「「んだてめぇやんのかこらぁ!!」」
「だから落ち着けっての」
二人が掴みかかろうとするとアニキが抑える。
「はぁ、言っておくがなシークヴァイラ、俺は別に汚れるほどの面は持ち合わせてないし、入ってくれるやつにケチはつけん。」
「て、てことはアニキ!」
「ああ、来い来い。お前らなら大歓迎だ。」
「ほ、本当っすか!?ありがとうごぜぇますアニキ!」
ヤンキーもとい、ゼファードルは嬉しそうに両手でガッツポーズをする。
「た、竜也様!?本当によろしいのですか!?」
シークヴァイラさんは慌ててアニキに問いただす。
「別に構わんよ。なんならお前も入るか、シークヴァイラ?」
「!!!?わ、私が!?本当によろしいのですか!?」
「何度も言わせんなっての」
「ッ!!………ありがとうございます!!!」
…………な、なんか急展開過ぎてついていけないけど…新たに仲間が増えたらしい
「おいシークヴァイラ、俺が先に入ったんだから俺が先輩だぞ。せいぜい敬えよ」
「寝言は寝て言いなさいよ駄犬」
「んだこらてめぇ!!」
「止めろっての」
また取っ組み合いの喧嘩を始めた二人を抑えるアニキ、すると見覚えのある顔が歩いてきた。
「やれやれ、やっと終わったと思ったらしょうがないねぇ。やあ皆さんお久しぶり」
「「「「「何でいるんだてめぇはぁ!!!」」」」」
「ソモサン!!?」
俺たちのドロップキックを食らい吹っ飛ぶディオドラ
「おいてめぇ、何でここにいるんだこのストーカーが」
「い、いや何でって、僕も一応若手悪魔だし……」
「てめぇは日頃の行いが問題なんだよ!」
「痛い!ちょっ!?止めて蹴らないで!」
「あ、あの……その辺にしてあげてください」
すると誰かが話しかけてくる。見るとディオドラの眷属だった元シスターさんたちだ。
「あんたら、何でまだこいつのとこにいるんですか?なんか弱みでも握られてるんですか?」
「い、いえ違います!私たちは自らの意識でディオドラ様のもとにいるんです!」
「は?」
「真実が発覚した後、ディオドラ様は必死に私たちに謝り続けました。何時間も土下座して、蹴られても、ぶたれても、摩りきれて額から血が出ても頭を地面に擦り付けて……それに、それ以前もディオドラ様は、私たちのことを本当に大切にしてくれました。だから……」
俺はディオドラを見る。
「お前、今のは本当だろうな?」
「本当だ。僕は彼女らの人生を狂わせた。それに変わりはない。僕は責任を取らねばならない。この命に変えても」
俺はディオドラの目を見る。嘘は言っていないな……
「………はぁ、わかった。その言葉、信じるぞ」
「ありがとう」
なんだかんだでこいつも根は悪いやつじゃないんだな。ストーカーだけど
「あ、そうだ。僕らも『龍の紡ぐ絆』に加わったから」
『『『『『『はぁ!!!!?』』』』』』
こと後アニキに問いただしたところ、曰く『ほっとくと何仕出かすか解らんから手元に置いとくことにした』らしい。
感想等お待ちしております。次回もお楽しみに