ど、どうぞお楽しみ下さい……
イッセーside
なんか久しぶりに俺の目線になったな。基本アニキ目線か三人称だからなぁ……まあ、んなことは今はどうでもいいや。現在会場の全員の視線がアニキに集中している。
「……あの、すみません、普段の調子で話してもいいでしょうか?」
「ああ、かまわないよ」
「どうぞ楽な風にお話しください」
「ありがとうございます……じゃあ、言わせてもらう。」
口調を変えたとたんに、アニキの雰囲気がガラリと変わった。目も鋭く光り何時になく真剣な顔……いや、あれには怒りや憎悪も含まれてるな…
「正直あんたら三大勢力には言いたいことが山ほどあるんだ。ボンクラ総督にはもう大体言いたいことは言ったし、あとは弟がやってくれるからもういいが……」
ちらりとアザゼルさんの方を見ると、ヴァーリが黒い笑顔を浮かべてアザゼルさんの肩をメリメリと音が鳴るほど掴んでいた。……ヴァーリ、よっぽど許せないんだろうな……ってかあいつ段々アニキに似てきたな………
「まず天界だが、俺は教会が嫌いだ」
ちょっ!?アニキ!?それはいきなりぶっこみ過ぎじゃあありませんかねぇ!?
「………理由をお聞かせいただけませんか?」
「理由?アーシアを『魔女』と罵り追放したこと、フリードや裕斗、あと他の俺の友人への非人道的な実験、エクスカリバーのザル警備、さらにこの前のイリナとゼノヴィアの一方的な追放、上げればきりがないね。」
次々とまくし立てるアニキ、その瞳には憤怒と憎悪がはっきりと浮かび上がっていた。
「それは……」
「あんたら天使は人間をより良い方向に導くのが使命だろうが。そのお前たちの管理する大元がこの様たあどういうことだ?あぁ!?」
青筋をたてて声を荒げるアニキ、ってか怖っ!?怖いよアニキ!!!なんかヤのつく自由業の人たちみたいだよ!?
「て…天使長になんてことを……」
「イリナ!?しっかりしろ!?」
イリナが顔を青くしてうわごとのように呟やいている。見ると、ゼノヴィアやアーシアも似たようなことになっていた。
「誠に申し訳ございません、返す言葉もありません。」
「謝るのは俺にじゃないだろう。自ら裏切った連中は何も言わないけどな、てめえらの勝手な都合で追放しておいてお前たちは何をした?アーシアみたいに神器を持って生まれた人々を保護するような機関もないのか?追放された人の中には身寄りのないような人もいたはずだ。まさかそのまま放置してた訳じゃあるまいなぁ?」
「それは…」
「『システム』を守る為ってことはそこのボンクラ総督から聞いている。だがな、そのために人の心を、意識を、命を蔑ろにしていいのか!?これならアホのアザゼルのところの方が百倍ましだ!!!……それによぉ、お前たちはそもそも間違っている。」
「……間違い、とは?」
「アーシアの神器が悪魔や堕天使も癒せると知れれば信仰に影響が出るって考えはわかった。だがな、そもそも神器を作ったのは誰だ?他でもない、お前たちの『聖書の神』だ。つまりだ、アーシアの神器を悪魔や堕天使も癒せるように設定したのもその聖書の神ってことだ。」
「ッ………!」
アニキの言葉にミカエルさんは目を見開く。俺らが言うのも何だけど、天界のトップが気づかなかったのかよ…そのせいでアーシアが辛い目にあって来たっていうのに……あ、なんか俺もムカついて来た。これもアニキの影響かねぇ…
「わかったか?お前たちの言う主の意識を蔑ろにしているのはお前たち自身だ。アーシアは『魔女』なんかじゃない!俺は彼女ほど気高く優しい人間を知らない!アーシアはまごうことなき『聖女』だ!!!」
「ッ!?…………竜也さん…」
アニキの言葉にポロポロと涙を流すアーシア。そうか、アニキはそれが何より許せなかったんだ。
「クハハハハ!どうだミカエル、考えてみりゃその通りだろ?俺もこいつに聞かされた時は目から鱗が落ちたぜ。」
「何であんたが得意げなんだよダメ親父」ギュゥゥゥゥ
「イデデデデデデデ!!!?千切れる!千切れるってわりと冗談抜きで!!!」
アザゼルさんの頬を思いっきりねじるヴァーリ
「………申し訳ありません、確かにその通りですね……しかし、しかし我々はそうするしかなかったのです、『システム』を守る為にはこうするしか………」
「言い訳は聞きたくない。過ぎたことはしょうがない、大切なのは過ちを否定せずに悔い改めることだろうが。本当に申し訳なく思っているなら行動で示せ。」
「はい、その通りです……」
すげぇ、天使長に説教してるよこの人!?
「……あの、ミカエル様。わたしのことはどうか気にしないでください。たった一人と大勢の人々、どちらを取るかなんて比べるまでもありません。……それに、わたしは今とても幸せです。竜也さんや他の皆さんと一緒にいられて、毎日がとても幸せなんです。これ以上何も望みません。」
アーシアの嘘偽りない心からの言葉にミカエルさんの表情が明るくなる。この時俺は、アーシアはやっぱり『聖女』なんだと再確認した。
「ミカエル、逃がした魚はでけぇぞ?」
「……ええ、まったく同感です。そしてゼノヴィア、イリナ、貴女方にも心からの謝罪を。何一つ落ち度のなかった貴女方を神の不在を知ったがゆえに異端としてしまった」
「いえ、ミカエル様。私もアーシアと同じ気持ちです。教会にいたころは出来なかったことや出会えなかったものに触れて、新たな生き甲斐を見つけて、陛下という素晴らしいお方に使えることができ、毎日がとても充実しています。」
ゼノヴィアさん、その生き甲斐ってもしかしなくてもガンプラだよね?
「私も同じ気持ちです。昔みたいに、また竜也君たちとまた一緒にいられて、そしてイッセー君と結ばれることができて、今がとても幸せなんです。」
イリナ……俺も幸せだぞ。もちろん、夕麻ちゃんもだけどな。
「そうですか。あなたたちの寛大な心に深い感謝を。それと竜也君、大切なことに気づかせて下さりありがとうございました。」
ミカエルさんは深々と頭を下げる。すげぇ、あれだけボロクソに言われた相手に本当に感謝してるよ。ちょっと尊敬するな。アニキも若干機嫌がよくなっている気がする。
「こちらこそつい言い過ぎた。そっちはそっちで苦辛しているのは知っているしな。」
「いえ、あなたの怒りは最もです。確かに、神がいないことを言い訳に少し怠慢になっていたのかもしれません。これからは出来る限りの努力をするつもりです。」
アニキが謝るとミカエルさんも再び謝った。やっぱりアニキもミカエルさんも根本的にはいいヒトなんだな。
「それらを踏まえて、俺からそちらへの要求は、4つ。一つ目、アーシアの『魔女』という呼び名の撤回。二つ目、アーシア、ゼノヴィア、イリナの容疑の撤廃。三つ目、これまでに異端とされ追放された人々の意識を尊重した保護。……そして最後に、今後木場たちのような存在を二度と生み出さないことだ。………それが誓えると言うならば、俺はあくまで俺個人としてそちらに協力しよう。」
「……わかりました、三人のことは私自らふれ出しましょう。そして、教会の制度や現在行われている研究などを全て調べて、彼らのような存在をもう二度と生み出さぬよう全力で努めます。追放した人々も責任を持って保護します。」
「よろしくお願いします。ああそれと、後の二つについては任せて欲しい。」
アニキは懐から紙束を取り出してミカエルさんに渡す。
「教会内でキナ臭い動きをしている連中のリストです。俺の信用出来る先からの情報なので、ぜひ使って欲しい。」
「は、はい……」
アニキが手渡した紙束をミカエルさんは顔を青くして受け取った。あ、アニキ、マジでか……
ヒソヒソ 「……ねぇ、何でミカエル様は顔を青くしているの?」
ヒソヒソ「言うなりゃあれは暗示だよ。『こちとらてめえのとこの表立て出来ない情報をこんなにもってるんだぞ?手ぇ抜いたらわかってるだろうな?』……て言うな。」
俺の答えと共に元教会組は顔をさらに青くしてさらには白目を剥いている。アニキ……あんたはそういう人だったよ……
「さて、次に悪魔勢」
「…………何かな?」
サーゼクス様は少し含んで聞き返す。そりゃそうだよな。天界側があんなにボロクソにやられたんならこっちは何されるか内心冷や汗ものだよなぁ……
「なぜ未熟な悪魔を領主に着けたんですか? 」
アニキのその発言は部長を貶しているも同然の言葉だった。部長の方を見ると、部長は悲痛な顔でスカートの裾を握り締めていた。前もって聞いてはいたけど、やっぱり辛いよな。好きな人の言葉ならなおさらだ。
「リアスは将来グレモリーの領地を任される身だ。何事も経験だろう?」
「24体」
「?」
「俺たちがリアスと接触するまでに取り抑えたはぐれ悪魔の数だ。」
『『『『!!!?』』』』
これは知らなかった。はぐれ悪魔の取り抑えは俺も行くことはあったけどほとんどアニキと黒姉さんでこなしてたからなぁ
「引き渡そうにも、当時はそちらと連絡を取る手立てがなかったからな。とりあえず引き渡しの手続きはセラたんにお願いしたからもういいが……」
えっ!?アニキいつの間にそんなことを
「セラフォルー、今の話は本当かい?」
「うん☆授業参観の時にお願いされちゃったんだけど、こんなお願いならお安いご用だよ☆むしろありがとね、たっくん☆」
セラフォルー様、アニキの前だと生き生きしてますね。セリフに星が飛びまくってる。あ、生徒会長が頭抱えた。
「それに堕天使の侵入に気づかずに結果として放置してしまった件もある。せめてサポートの出来る人材を派遣するべきだ。事実、こうして被害が出てしまっている。」
「……わかった、これからは未熟な領主悪魔にはサポーターをつけるようにしよう。」
「うん、それがいいね☆」
「次に、転生悪魔に対する対偶。これはさっきの話も関係する。俺たちの取り抑えたはぐれ悪魔の内13名は、主に酷い扱いを受けて逃げ出して来た者たちだった。」
その言葉に全員が驚いた。特に悪魔勢は
「………それは本当なのかい?」
「ええ、俺の仲間には心に秘めた思いを暴露させる能力を持ったやつがいる。その能力を使ったので間違いはないでしょう。まあ、残りは力に溺れた真性のクズでしたけどね。」
その言葉に、悪魔勢は深刻な顔をしている。半数以上、それだけの眷属悪魔が蔑ろにされていたという事実に
「なので、引き渡すのはそちらの方をお願いしたい。そして、虐げられた転生悪魔たちは本人の意識を尊重した相応の対応をして欲しい。」
「……わかった、そのように手配しよう」
「昔の黒歌の件もある、これを期に、冥界での転生悪魔たちの待遇の改善及び『悪魔の駒』を渡す悪魔の選別、さらに眷属にする際の取り決めなどを行って貰いたい。」
「了解した。私に出来る限りのことをしよう」
「ならばこれを」
アニキはまたもや懐から紙束を取り出してサーゼクス様に渡した。
「保護した転生悪魔たちから聞き出した主の情報です。使って欲しい。」
「ありがとう、助かるよ。」
「ねぇねぇ、たっくんは結局どこの陣営につくの?さっきの言い分じゃ天界じゃなさそうだし、この様子じゃ私たちのとこも怪しいし……ひょっとしてグリゴリn」
「それはない。
『『『だろう(でしょう)ね』』』
「おい、お前ら後で表出やがれ」
食いぎみで否定したアニキに全員が同意してアザゼルさんは青筋を浮かべている。
「……ならばどうするのですか?まさか何処にもつかないおつもりで?」
「そう、
アニキの宣言にトップの全員が驚き目を見開いている。そうだ、これこそが俺たちがこの会談に参加した本当の目的だ!
「俺たちは何にも縛られない。さっき言った通り、要請を受ければ出来る限りの助力はするが、あくまでも全ては俺たちの意識と決まりで行動する。まあ、言うなればギルドみたいなものだ。とりあえず今のところの構成員は、俺を筆頭に……」
「私たち元グリゴリ所属の堕天使」
夕麻ちゃんたち堕天使組がアニキの後ろに整列する。
「わたし、アーシア・アルジェントやイリナさんたち元教会組」
続いて、アーシアを先頭に元教会組が整列する。
「悪いな、俺は兄さんの味方なんだ」
「けっ、このブラコンめ。……たまには帰ってこいよ。グリゴリはもうお前の帰る場所なんだ。」
「わかってるさ……行ってくるよ、父さん」
「ッ!!!?……ああ、行ってこい、ヴァーリ…」
ヴァーリはアザゼルさんとの挨拶を済ましアニキの隣に立つ。
「現グリゴリ所属、白龍皇にして雷門竜也の右腕!雷門ヴァーリ!」
アニキが此方に顔を向ける。俺たちは部長を先頭に前にでる。
「私、リアス・グレモリーとその眷属たちです。」
その言葉にサーゼクス様たち悪魔勢は多いに驚いていた。
「………どういうことだいリアス?」
「ルシファー様……いえ、お兄様。私、リアスは、雷門家に嫁ぐことを決意しました!すでに実家とは話をつけています。」
「何を言っているのリアス!?あなたの夢はどうなるの!?」
「全て覚悟の上の決断よ、ソーナ。私は彼と、タツヤと共に歩んで行くわ。今も、そしてこれから先も、未来永劫ずっとよ!」
その言葉と表情から、部長の決意を感じ取ったのか、生徒会長は押し黙った。
「………リアス、本気なんだね?」
部長はサーゼクス様の目を見つめ、無言でうなずいた。
「……わかった。竜也君、リアスのことをどうかよろしく頼む。」
「ッ!?…お兄様……」
サーゼクス様は寂しそうに、だけど少し嬉しそうな表情でアニキに言った。
「はい、もちろん。絶対にリアスを不幸にはしません!」
アニキは胸をドンと叩き、宣言した。サーゼクス様は笑顔で頷く。
「そして残りのメンバーだが」
ドガァァァァァァァァァァァン!!!!
その時、旧校舎の方角から凄まじい爆音が鳴り響いた。
人物紹介の方を更新しました。
感想等楽しみに待ってます。次回もお楽しみに