「ふむ、リアスの女王の煎れてくれた茶はうまいなぁ。」
「痛み入りますわ。」
朱乃ちゃんは表面上は笑っているが、長い付き合いの俺にはまったく笑っているように見えない。まるで貼り付けたかのような作り笑いだ。いつもの「あらあら」や「うふふ」がないから余計に怖い。
ライザーはソファーに腰掛け隣にいるお嬢の髪や太ももを何度も触ろうとするがお嬢はそれを心底嫌そうに払いのける。
バンッ「いい加減にしてちょうだい!ライザー!以前にも言ったはずよ!あなたとは結婚しないわ!」
お嬢がとうとう痺れを切らしライザーに自分は結婚の意識がないことを怒鳴るが、ライザーはそれを怪訝に返す。曰く、先の三つ巴の戦で悪魔側は多くの純血悪魔を失いこの結婚にはグレモリー家、ひいては悪魔の未来を担っているのだと言う。対しお嬢は家を潰す気はなく婿養子も迎える気だが自分の相手は自分で決めると一歩も引かない。
「……俺もなリアス、フェニックス家の看板背負った悪魔なんだよ……この名前に泥をかけられるわけにもいかないんだ。それに君のために人間界に出向いて来たが、俺はこの世界があまり好きじゃない。この世界の炎と風は汚い。炎と風を司る悪魔として耐え難いんだよ!」
ライザーはソファーから立ち上がり炎の翼を広げる。
「君の下僕とお友達を全部焼き付くしてでも君をつれて帰るぞ。」
………あぁ?こいつ今何と言った?
「………おい、お前。今のは宣戦布告ってことでいいんだよなぁ?」
俺は龍のオーラを放ちやつを睨み付ける。見るとアーシア以外のみんなも戦闘体制に入っていた。
「……そこまでです。これ以上やるのでしたら私も黙って見ているわけにもいかなくなります。」
そう言ってグレイフィアさんは静かに睨み、俺たち全員に悪寒が走る。……やはりこの
「……最強の女王と称されるあなたに言われては仕方ない。」
ライザーはそう言って渋々引き下がる。
「こうなることは予想していました。こうなれば最終手段を取らせていただきます。」
その最終手段とは『レーティングゲーム』。曰く、本来レーティングゲームは成人した上級悪魔しか出来ないそうだが、家同士のいがみ合いなどの非公式の場なら参加できるらしい。
「おい、お嬢。こいつはおそらくお嬢の逃げ場をなくすためのものだぞ?」
「ええ、わかっているわ。……本当にどこまで私の生き方を弄れば気がすむのかしら?」
「ではお嬢様はゲームを受けないと?」
グレイフィアさんが尋ねる。
「いいえ、こんな好機はないわ。ライザー、あなたを消し飛ばしてあげる!」
「いいだろう。俺はもうレーティングゲームはすでに経験しているし今のところ勝ち星も多い。それでも受けると言うなら仕方ない。そちらが勝てば好きにするといい。俺が勝ったら君には即結婚してもらう。」
「…グレイフィアさん、少しいいですか?」
俺は手を上げグレイフィアさんに尋ねる。
「ええ、どうぞ。」
「なら遠慮なく、お嬢はまだレーティングゲームの経験はなく、対してそちらの金色鶏冠はゲームは何度も経験している。これではいくら何でもこちら側が不利だ。それ相応のハンデと勝った場合の報酬がなければ割に合わない。」
「……確かにそうですね。ではどのように致しましょうか?」
「おい、てかお前今金色鶏冠と言ったか?」
なんか言ってるけど無視無視
「まず、こちらに修行期間をください。10日もあればいい。あと報酬は……そうだな。」
俺はライザーの方を向く。
「そこのライザー君が俺たちの要求を何でもきく……というのはどうですか?」
「なっなんだとキサマ!人間の分際で!」
「え?何?もしかして負けた時が怖いから止めるとか?うわぁなんて根性なし。フェニックスからチキンに改名したらいかがかな、ライザー君?」
『プフッ!?』
すると部屋の中の何人かが顔を伏せ笑いをこらえて肩を震わす。
「なっキッキサマぁ!いいだろう!その条件で受けてやる。それにキサマも出ろ!この俺を侮辱したことを後悔させてやる!!」
「え?そんなこと可能なんですか?」
俺はグレイフィアさんに尋ねる。
「ええ、非公式のものなのでかまいません。」
「なら俺はお嬢の駒の空きの分に入ろう。確か戦車の駒が残っていたはずだ、そこに入らせてもらう。」
「主よ、では我々も」
「よし、お前たちは兵士の分に入れ。」
「「「「了解(っす)!!」」」」
「……というわけでお嬢、かまわないな?」
「ええ、わかったわ。それでいいわねライザー。」
「ふん、何人増えようと俺には関係ない。見るといい。」パチン
ライザーが指を鳴らすと後ろにフェニックスの魔方陣が描かれ、中から15人の女の子たちが現れた。
「これが俺の眷属だ。どうだ?お前たちのような下せんな輩には一生無縁なものだろう?」
「なっキサマぁ!!!我が主が下せんだと!?」
「聞き捨てなりませんわね。」
「にゃはは、鳥がピーピーわめいてるにゃあ?」
「てめえ、アニキを馬鹿にしやがったな!!!」
「やめろお前たち。」
見ると残りのミッテルト、カラワーナ、夕麻も光の槍を構えていた。ここで暴れるのは得策じゃない。
「しかし主よ!!!」
「俺は止めろと言ったんだ。」
少しドスを効かせて言うと皆は渋々と言った様子で下がる。後でねぎらいの言葉でもかけてやろう。
「悪かった、忘れてくれ。それとさっきの答えだが、別段うらやましいわけでもない。大体お嬢と結婚するという気なら女の子を侍らせるのはいかがかと思うが? 」
「ふん、人間の言葉で英雄色を好むと言うだろう?」
「は?英雄?アホ抜かせや、お前が英雄ならイッセーは大統領に成れるわ!!!」
「あれ?何で俺もディスられたの?」
「だっ大丈夫だよイッセー君!イッセー君の良さは私がわかってるから!」
「夕麻ちゃん……」
「イッセー君♡」
本当だれかなんとかしてこのバカップル
「こ…このぉ!言わせておけば…《グギュルルルル》あ゛あ゛ぁ!!!?」
急にライザーの顔色が悪くなり腹を抑えて震え出した。
「す…すまないがト…トイレを貸してくれ……」
そう言ってライザーはトイレによたよたと入って行った………さては
「……朱乃ちゃん、あの紅茶に何入れたの?」
「あらあら、ばれました?以前もらった下剤を砂糖に混ぜましたの♪」
ああ、以前便秘に悩まされていた依頼人のために作ったあれか。……けっこうエグいことするよなこの子も………
◆◆◆◆◆◆◆◆
一時間半後
「……はぁ、やっと収まった。……一週間分以上出したんじゃないか?」
そんなことを言ってトイレから出たライザーが見たのは、
「うわぁ!このクッキー本当に美味しい!!」
「うむ、確かに美味だな。」
「お兄ちゃんおかわり♪」
「あっイルずるい!ネルももっと欲しい!お兄ちゃんちょうだい!」
「ハイハイ、お土産用に包んでおいたから、はいどうぞ。」
「「わーい!!」」
「ほら、他の皆さんもどうぞ。」
「まぁそんな…ありがとうございます。」
「すまないな、気を使わせてしまって。」
「いえいえ、美味しいと言ってくれると俺も嬉しいので。」
自分の眷属たちとすっかり意気投合している竜也の姿だった。
「おいお前!俺の眷属と何やってるんだ!!?」
「「あっライザー様!」」
「ライザー様もいかがですか?この竜也さんのクッキー、とても美味しいんですよ?」
「そうだ食え食え。」
「ご主人様のお菓子は絶品ニャ♪」
「確かにこれは美味しいわね…」
「はい、とても美味しいです。良ければレシピを教えていただけませんか?」
「いいですよ。まず……」
見ると、リアス眷属や堕天使四人にグレイフィアまでもが舌鼓を打っていた。
「おお、悪いな待たせて、良ければお前も食うかい?」
そう言って竜也はライザーにクッキーの入ってバスケットを差し出すが……
「ふざけるなよキサマ!俺は今機嫌が悪いんだ!!!」
ライザーはあろうことかバスケットに炎を放った。
『『『『『!!!??』』』』』
「おっお兄様!?なんてことを!!」
「五月蝿い!帰るぞお前たち!」
眷属の一人がとがめる様に言うがライザーはまるでお構い無しに転送魔方陣を発生させて眷属たちを送る。そして自分も入ろうとした時……
ガシッ「………待ちやがれやこの可燃ごみ野郎…」
竜也が凄まじい握力でライザーの肩をつかんだ。相当力を込めているらしく、メシメシと音を立てている。
『あっあいつなんてことを………』
『よりにもよって主のクッキーを燃やすとは……』
『にゃ~馬鹿だにゃあ』
『死んだっすね、あいつ』
『愚かな……』
『ああぁ、竜也さんがあの状態に……』
『……?どういうことなの?』
『いいから離れていた方がいいですわよリアス。』
見ると、竜也をよく知る人物たちはこの後の展開を予想し、顔を青くしてライザーに哀れみの目を向けていた。………彼は踏んでしまったのだ。龍の尾を……
「なっ!?かっ可燃ごみだと!!?キサマいい加減に…」
「俺はなぁ、そんなに人嫌いする性格じゃないんだ。だがなぁどうしても許せない人種ってやつが3つほどあるんだ。」
ライザーの声を遮り竜也は話し始める。よく見ると、肩を震わせ顔の上半分には影が入っている。
「1つ目、食い物を粗末にするやつ。」
そう言って竜也はライザーに燃やされたバスケットを見る。
「2つ目、女の尊厳を傷つけるやつ。」
そう言って今度はリアスの方を向く。 (この時リアスは二重にドキッとした。)
「3つ目、俺の大事な物に手ぇ出そうとするやつだ……」
そう言って竜也は部室の中をいるリアスたちを見回し、そしてライザーに向き直す。
「……………全部……該当してるじゃねぇかぁぁぁァァぁぁ!!!!!!」ドカァァン!!
「ぶべらぁぁぁぁ!!!?」
言うや否や、竜也はライザーの顔面にドロップキックをかまし、ライザーはその勢いで魔方陣に突っ込み消える。
「首洗って待ってやがれ、この世にゃあ不死身より強いやつはいるってことを思い知らせてやるよ。」
その言葉が聞こえたかはわからないが、魔方陣をくぐった時、ライザーは大量に冷や汗をかいていたという。
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