「準備はいいか二人とも?」
「ああ、いつでもいいぜ!」
「こちらもいいですわ。」
現時刻午前4時、俺たちは公園に集まり模擬戦をすることになった。ちなみに公園には俺特性の結界をはり、誰にも見つからず、たとえ壊れても元に戻る。いささか魔力を消費するが、俺と堕天使四人が囲ってそれぞれ補っている。ちなみに俺は審判も兼任していて、戦闘不能と見なすと強制的に離脱させる仕組みだ。
「それでは……初め!」
「先手必勝ですわ、ネイチャーARM『ストーンキューブ』!!!」
まず最初に朱乃ちゃんが仕掛ける。ARMを発生させると、朱乃ちゃんの周りに石のブロックがいくつも浮かび上がる。
「はねなさい。」
言うや否やストーンキューブは一斉にイッセーに向かって(シャレではない)飛んでいく。
「その手は食わないぜ!ネイチャーARM『フレイムボール』!!!」
イッセーもまたARMを発動し、イッセーの周りに火の玉がいくつも発生しストーンキューブに飛んでいく。
「今だ!!! 」
『Boost』
するとイッセーの『赤龍帝の太陽手』から機械音が鳴りフレイムボールの大きさが二倍になってストーンキューブとぶつかり爆発する。
「触れると三秒後に爆発する爆弾石のネイチャーARM、そうやすやすとは食らわないぜ?」
「キャー!イッセー君カッコいいー!」
「いやぁ////」
レイナーレの声援にイッセーは頬を緩ます。
「あらあら、ずいぶんと余裕ですわね?ならこれはいかが?ウェポンARM『マジックロープ』」
すると朱乃ちゃんの前にドクロの模様の入った壺が現れ、中からドクロの頭のついたロープが無数に飛び出し、あっという間にイッセーを亀甲縛りにする………なぜに亀甲?
「うおおやべぇ!?」
『バカ!油断するからだ相棒!』
「ストーンキューブ。」
石のブロックがイッセーを囲むように現れる。
「………降参です。」
「そこまで、勝者朱乃ちゃん。……ったく情けないぞイッセー。いくらお前が強くても一瞬の隙が命取りになるって言ってるだろうが。」
「ごめんアニキ、つい……」
「ごめんねイッセー君。私が余計なこと言ったから……」
「いっいやそんな!?油断したのは俺のせいだし、夕麻ちゃんは悪くないよ!…それに夕麻ちゃんに応援してもらってすごく嬉しかったし……」
「イッセー君/////」
「夕麻ちゃん/////」
「おまいら……はぁ、お嬢、一応終わったぞ。」
「………」
おや?呼び掛けても返信がない。
「お嬢?」
「…………」
「お嬢!」ズイッ
「きゃあ!?ごっごめんなさい、ついぼーっとしてて……」
目の前に顔を突き出してやっと気づいた。
「?……まあいいや、次スタンバイしとけよー!」
そんなこんなで早朝の模擬戦は終了した。その後全員で登校し、あっという間に放課後の会合も終わり帰路についているのだが…
「……なあ、どうも最近お嬢の様子がおかしくないか?」
「だニャ、部活の時もしょっちゅうぼーっとしてたニャ。」
「何か悩み事でしょうか?」
「まあ、こればっかりは本人の問題だしな。あんまり個人のプライベートに詮索を入れるものじゃないし、俺たちはできる範囲でサポートしてやろう。」
「だニャ。」
「そう…ですね。」
「それよかお腹空いたっす、今日の晩御飯何すか竜也様?」
「おまいは……ロールキャベツだよ。」
その後、職務ゆえに遅れて帰って来たカラワーナとドーナシークも入れた全員で食卓についている。最初は我が家の面子におっかなびっくりだった堕天使の面々も、今ではすっかり馴染んでいる。いや~慣れって怖いね。
「……おいべーやん。ロールキャベツにレトルトカレーかけるなよ。」
「ほんとべーやんさんカレー好きっすね?」
「わかっていませんねぇ?カレーこそ森羅万象なんでもマッチするオールマイティーフードなのですよ!」
「確かにカレーはなんでも合うニャ。」
「基本炭水化物とはな。」
その後、女性陣が風呂に入り終わってから我ら男性陣が風呂を使える。
「ふぃ~、さっぱりした。」
風呂から上がり髪をタオルでふきながら部屋に入る。すると俺の部屋に転移用の魔方陣が浮かび上がる。そして中からお嬢が出てきた。
「タツヤ、私の処女をもらってちょうだい。」
「はぁ!?」
いきなりお嬢がとんでもないことを言い出した。そしてお嬢は服を脱ぎだし……って!?
「待て待て待て!何なんだいきなり!?何がどうしてどうなったらそんな思考に至るんだ!!!?」
なんとか上着をはだける程度に落ち着かせた。
「いろいろと考えたけどこれしか方法がないの。既成事実ができてしまえば文句もないはず、裕斗は根っからの騎士だし、イッセーにはレイ…夕麻がいる。身近ではあなたしかいなかったの。大丈夫、お互いに至らないところもあるだろうけど…」
「落ち着け」ピシッ
「あうっ!?」
とりあえずデコピンで落ち着かせる。
「お嬢、何があったか知らないが、そんなことをしてもあんたが傷つくだけだ。俺はそんな真似はしたくない。そういうのは自分の心の底から愛する人にとっておきな。」
「タツヤ……そうね、ごめんなさい、いきなり来てこんなことを……」
「いいさ、あんたは俺の弟分と幼なじみの王なんだ。俺もできる限りの協力をするから。……それと別にお嬢に魅力がない訳じゃない、ただ俺がヘタレだった、ただそれだけのことさ。」
「タツヤ……」
するとまたグレモリー眷属の魔方陣が浮かび上がる。そして中から銀髪のメイドが出てきた。
「こんなことをして破談に持ち込もうというわけですか。」
「………いえ、私も冷静じゃなかったわ。それでグレイフィア、あなたがここへ来たのはあなたの意志?それとも家の総意?……それともお兄様のご意志かしら?」
「全部です。」
「……わかったわ。お兄様の女王のあなたが来たことはそういうことよね。詳しいことは私の根城で聞くわ。」
「わかりました。……それとそこのお方は?」
「これはどうもはじめまして、俺の名は雷門竜也、少し規格外な一応人間です。以後お見知りおきを。」
「これはどうもご丁寧に、わたくし、グレモリー家に支えるメイドのグレイフィア・ルキフグスというものです。今宵はご迷惑をおかけしました。」
「いえいえ、お嬢はに俺の弟分と幼なじみがよくしてもらっているのでね。こんなことでなければ俺のできる限りの協力はするつもりですよ。」
「そうですか……ではお嬢様、参りましょう。今宵は失礼いたしました。」
「ええ、そうね。……それとタツヤ、」
「ん?なに《 チュッ 》……へ?」
お嬢に聞き返そうとすると頬に柔らかい感触が……へ?
「今日はこれで許してちょうだい。……それと、あなたはヘタレなんかじゃないわ。」
そう言い残しお嬢はグレイフィアさんと転送魔方陣で消えていった。俺はしばらく立ち尽くしたままで、様子を見に来たアーシアの手で正気に戻った。